【システム構築】日本IBMは、エンタープライズ・プライベート・クラウドやデータセンターにおいて、設置から数日でクラウド環境が利用可能となる新製品「IBM CloudBurst(クラウドバースト) V1.1」を発表した。提供開始は、8月18日の予定。「IBM CloudBurst V1.1」は、企業内のクラウド・コンピューティング環境やデータセンター内において、ファーストステップとして迅速な環境構築やパイロットを容易に実現するために、必要となるサーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアをすべてあらかじめ組み合わせた製品に、その導入サービスをパッケージしたソリューション。これまでユーザーのITインフラのクラウド化には、システム要件の決定や設計と構築で数ヶ月かかっていたが、IBM CloudBurst V1.1を導入することにより、数日でクラウド環境が利用可能となる。 (日本IBM:09年7月14日発表)
【コメント】いよいよIBMがクラウドコンピューティングの取り組みを本格化させてきた。今回の「クラウドバースト」の発表は、ユーザーに対して具体的なソリューションの提供である点が何よりの証拠であろう。システム構築において、従来の数ヶ月が「クラウドバースト」により数日で済むと謳っている。例えば同製品を開発・テスト環境に利用したIBMの社内事例では、従来、平均5日間かかっていた導入・構築時間が、平均20分以内に短縮されるとともに、サーバーの台数が77%、運用管理者の人数が87%削減できたという。
今回のIBMの「クラウドバースト」の発表を見る限り、既に、クラウドコンピューティングの技術的な課題はかなり解決しつつあるようにみられる。これまでは外部のクラウドサービスを利用して、クラウドコンピューティングを利用する形態から、今後は自社内にクラウドコンピューティング環境を構築して、そのシステムを使おうという試みに挑戦するユーザーが増えてきそうだ。
ここまでは新しいシステム化への挑戦ということで、いいことずくめであるが、具体的にどのシステムをクラウド化するのかという議論はあまりされていないのが気にかかる。単なるオフィスソフトだけなのか、グループウエア的なSNSなのか、それともセールスフォース・ドットコムのようにCRMのようなアプリケーションなのか、さらにもっと基幹システムに近い業務システムまでを含めるのか、どうもその辺が曖昧のように
みえる。また、クラウドコンピューティングを取り入れるといことは、システムの仮想化が欠かせなくなるが、サーバーの仮想化に加え、ストレージの仮想化、さらにクライアント機器の仮想化まで入るとなると、企業システム全体が仮想化されることになる。
企業システム全体が仮想化されると、トラブルへの対処は大丈夫なのであろうか。物理的システムとは別に仮想化されたシステムが稼働しているときにトラブルにみまわれでもしたら、十分の対応はできるのであろうか。これは企業システムだけでなく、社会のシステム全体が仮想化に覆われたら・・・・混乱だらけの社会が出現するのではなかろうか。この辺に対する回答もベンダー側は十分に用意していてほしいものだ。(ESN)