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◇企業システム◇ソニーがクラウドサービス事業に参入

2008-12-03 11:19:59 | アウトソーシング

 【アウトソーシング】ソニーは、法人向けITソリューションサービス「ビット・ドライブ」において、中堅・中小企業が抱える様々な課題を解決するクラウドサービス「マネージドイントラネット」を08年12月下旬から開始する。同サービスは、仮想化技術で構築したビットドライブ・データセンターのホスティングサーバーとユーザーのイントラネットをVPNで接続することによって、「イントラネット内でのホスティングサービス」という新発想を実現したもの。 (08年11月27日発表)

 【コメント】クラウドコンピューティングはいろいろと謎を含んだ新しい形態のコンピューターシステムである。インターネット経由であらゆるデータ処理を行うという、まさに長年の“夢”を本当に実現できるのであろうか。大昔、「これから企業にコンピューターが導入され、経営が自動化されるようだ」ということで、日本の経営者たちが米国に調査に出かけたことをふと思い出した。“経営の自動化”ということは現在実現されているともいえるし、あるいは実現されていないともいえる。経営者が何もしなくてもコンピューターが自動的に回答を編み出して、事業が進展しているかという観点に立てば、実現していないということになろうし、電子商取引などを考えると経営の自動化は実現されているということになる。

 クラウドコンピューティングを考えるということは、アウトソーシングをどう捉えるかということに行き着く。現在ではアウトソーシングの概念は市場に定着したが、ここまでくるには多くの関係者の苦労があったことを考えておかねばなるまい。これも昔の話であるが、ある金融機関がホスト機をアウトソーシングしたら多くの取引先から「経営がおかしいのですか」と問われたと担当者が話していた。当時はコンピューターは企業のステイタスシンボルで、一等地のビルのフロアーにガラス越しでわざわざ外から見れるようにメインフレームコンピューターが置かれていた。このメインフレームコンピューターもなるべく大きい方が企業のスケールを表現できるという発想であったのである。つまり、企業の見栄見たいものが当時のコンピューターには込められていた。

 そして、バブル崩壊を経て現在の企業システムに辿りつくわけである。現在ではその企業の本社ビルにサーバーが置いてないからといって不思議がられることはない。逆に土地代が高い本社ビルにサーバーを置いてあるほうが不思議がられる時代となってきている。ところでアウトソーシングで大切なのは、セキュリティ以外にもアウトソーサーとの間でサービス内容の確認作業、料金など複雑・多岐にわたっての条件のツメの作業が必須となってくる。

 冒頭に書いたクラウドコンピューティングの謎は、この点にあるのである。セキュリティ、サービス内容、料金などなどユーザーとサービスベンダーとの間で取り交わす部分が、クラウド・コンピューティングではなかなか見えてこない。個人や大学がクラウドコンピューティング機能を使ってデータ処理をするのは、今すぐにでも効果はでよう。だからといって企業システムにすぐに適用できると断定するのは急すぎまいか。もう少し情報収集をした方がよさそうだ。(ESN)