【SI企業】米マイクロソフトとノベルは、両社の提携によりWindowsとSUSE Linux Enterprise Serverの技術協業が2周年を迎えたことと、相互運用性を向上させつつユーザーをを知的財産権に係わるリスクから保護するというビジネスモデルと戦略がユーザーから大きな支持を受けていることを明らかにした。同時に技術協業の結果、WindowsとSUSEの一元的運用管理ツールなど2つの新たな成果およびノベルが新たに提供する新サブスクリプション(定額で一定期間の使用権を持つソフトウエアのライセンス形態)/サポートプログラムがマイクロソフトが販売するサポート付き利用証明書を通しても利用可能であることが強調された。 (08年11月21日発表)
【コメント】マイクロソフトとノベルが電撃的提携を発表して2年が経過した。この間、ITを取り巻く環境は激しい変遷の道を辿ってきており、これからもクラウドコンピューティングなど新たな技術の登場が様相を一変させることも大いにあり得る。つまりいかに大手IT企業といえども、安閑としてはいられない状況にあるといって過言ではあるまい。げんに日本IBMは08年7-9月期は前年同期比5%の減収で前期より業績が悪化している。このため同社では年内をメドに1000人規模の人員削減を実施する計画でいるという。ところでマイクロソフトとノベルが何故提携したのかというと、両社の思惑がみごと一致したことに他ならない。今、サーバー用OSの市場規模を金額で見ると①Windows②Linux③メインフレーム④UNIXの順序となるが、WindowsとLinuxが増えているのに対しメインフレームとUNIXは減少傾向にある。つまり、メインフレームとUNIXの市場をWindosが奪うか、あるいはLinuxがとるか、今後市場では激しい争いが展開されることになるのは必死だ。
マイクロソフトは、当初LinuxをはじめとしたOSS(オープンソースソフトウエア)は敵と見なし、大キャンペーンを張ったが思ったほどの効果は得られなかった。この結果、マイクロソフトの首脳陣は一転しinux陣営の一部、すなわちノベルと提携し、Linux市場を取り込む“逆転の発想”の新戦略を編み出したのである。この背景には昔インターネットが普及を見せ始めたとき、当初マイクロソフトは独自ネットワークを全世界に構築しようと試みたが、インターネットのあまりにも凄まじい普及を見て、急遽独自のネットを取り下げてインターネットを取り込み、危ういところで危機を回避したという経験を持つ。何故独自ネットに拘ったかというと、インターネットはもともとUNIXをベースに普及したもので、マイクロソフトからすると“敵性ネット”であったわけである。もしあのときマイクロソフトが独自ネットに固執したならば、今頃はどうなっていたであろうか。いずれにしても、マイクロソフトとノベルの提携は、変遷の激しいIT業界の表れの一つにほかならない。
現在のコンピューターセンターは、異機種混在環境の中で多数のサーバーが複雑に接続されており、これが今様々な問題を引き起こしている。一番の問題はコストの増大ということだろう。このためユーザーは現在必死になって仮想化によるサーバーの統合化に取り組んでいる。こんな中、WindowsとLinuxが一元管理できればユーザーにとってこんな有難いことはない。マイクロソフトは今回の発表の中で「ノベルの新しいExpanded Supportプログラムが利用できるサポート付き利用証明書の販売によって、Red Hat Enterprise Linuxを運用しているユーザーを含む、さらに広範なユーザーが、当社とノベルとの提携がもたらすメリットを受けられるようになる」と述べている。つまり、マイクロソフトとノベル狙いは、共通の“天敵”であるレッドハットの牙城をいかに切り崩すかであることが、ここから読んで取れる。
これに対し、レッドハットはどうかというと、このほどシステム運用管理で富士通と提携し、企業の基幹システム市場に本格的に取り組む意向を明らかにした。ここで注目されるのは、レッドハットと富士通の提携が世界市場をターゲットにしていることだ。日本のIT企業は、日本の市場で米国企業と提携することは多いが、世界市場を対象にしたケースはあまりない。それだけに、今回のレッドハットと富士通の提携は、マイクロソフトとノベルの提携とともに、その成否が今後どうなるか、大いに注目されるところである。(ESN)