【ユーザー】セールスフォース・ドットコムは、ヤンマー(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長: 山岡 健人)が、「Salesforce CRM サービス サポート」および「Salesforce CRM Partner Portal」を中心とした「Service Cloud」により、国内外の販売代理店とのリアルタイムの情報共有に向けた取り組みを開始したことを発表した。 ヤンマーでは、従来、電子メールやWebでの問い合わせ対応に自社開発のシステムを利用してきたが、近年の問い合わせ増加に伴い、回答の遅延や漏れの発生リスクが拡大していた。このような状況を改善するため、08年9月、NECが提案する「Salesforce CRM」の導入を決定。導入決定から約30日という短期間でカスタマイズを完了、同年10月から農業機械部門で本稼働を開始し、問い合わせ情報の一元管理と、顧客対応履歴の時系列での管理ができるようになり、顧客対応状況が可視化され、回答の遅延や漏れの不安は払拭された。 (セールスフォース・ドットコム:09年7月22日発表)
【コメント】クラウドコンピューティングによるクラウドサービス事業で、他社に比べ先行しているセールスフォース・ドットコムからの導入ユーザーの発表が相次いで行われているが、今回はヤンマーでの導入事例の発表が行われた。ヤンマーの事例は、顧客からの問い合わせのメールの返事の迅速化という狙いが明確となっているところが特徴だ。将来はともかく、現状ではクラウドサービスを有効に活用するためには、目的の明確化は、必須事項といえるだろう。目的を絞り込まずクラウドサービスを導入すると、コストばかりが常に一定額取られ、成果は思ったほど挙げれなかったということになってしまう。
さらに、クラウドサービスを導入するのに欠かせないのが、まず一カ所で導入してみて、それを全国展開さらに世界拠点に拡大させ、スケールでのメリットの認識だ。なにしろクラウドサービスの威力が一番発揮できるのが、面の拡大に十分に対応できるという特性であるからだ。ヤンマーではまず、導入決定から約30日という短期間でカスタマイズを完了させ、同年10月からは農業機械部門で本稼働を開始し、これにより問い合わせ情報の一元管理と、顧客対応履歴の時系列での管理ができるようになり、顧客対応状況が可視化され、回答の遅延や漏れの不安を払拭させた。
そしてヤンマーではその後、09年3月に、マリン分野のグループ会社であるヤンマー舶用システムにも利用を拡大、部門内だけでなく、国内販売拠点がユーザの過去の問い合わせ履歴に常にアクセスできる環境を「Salesforce CRM Partner Portal」を活用して整備し、回答レベルを高水準で均一化する基盤を確立。さらに、ヤンマーは、09年7月からマリン分野の海外販売拠点および代理店との情報共有にも利用を拡大、今後リアルタイムの情報共有体制を確立を目指すことにしている。
この結果、ヤンマーではセールスフォース・コムのService Cloudについて「Service Cloudにより、お客様対応プロセスにおける回答の遅延や漏れがゼロになりました。また、社内の販売部門やグローバルに展開するヤンマー販売拠点および代理店との情報共有がスムーズになり、お客様の生の声を製品やサービス品質の改善に生かせることも大きなメリットです」 (ヤンマー グローバル改革部 VOCグループ マネージャー ジョージ・ウッドコック氏)と評価している。
今回のヤンマーの導入事例は、クラウドサービスを導入する場合の課題を、導入を検討しているユーザーに対し具体的に指し示しているところに意義があろう。ベンダー側はどうしても売上げを上げるために、あれもこれもという提案を盛んにしてくるが、ユーザーはベンダーの言いなりになるのではなく、目的を徹底的に絞り込んだ上で、クラウドサービスを導入すべきである。そうでないと、クラウドサービスの問題点(特に長期間使用するときのコストなど)が後になって表面化することも考えられる。(ESN)