【発表】日本HPは企業ユーザーにおけるデータセンター(DC)の変革を支援する製品・サービス群「HPデータセンター・トランスフォーメーション・ポートフォリオ(HPDCTポートフォリオ)」の日本での展開を開始した。中核となるサービスは①「HP DCCサービス」(DCの最適なコンソリデーション〈整理統合〉の支援)②「HP DCVサービス」(ITインフラの仮想化の支援)③「HP クリティカル・ファシリティ・サービス」(DCの企画・設計・運用のコンサルティング)の3つ。今回のサービスは、HPが05年から3年間をかけて大規模なDC統合を行った際の経験、技術、手法などのノウハウに基づいたもの。(08年6月2日発表)
【コメント】HPは、全体最適化されたITインフラストラクチャを備えた次世代データセンターとして「NGDC(Next Generation Data Center)」を掲げている。これはプール化されたリソースを必要に応じて動的に分配できる機能を持ったデータセンターを指し、このNGDCを具体化するサービスとして発表されたのが今回の「HP DCTポートフォリオ」である。
これまで、企業のデータセンターに求められてきたのは、いかに正確に速く計算処理を行うか、ということであった。このためメインフレームに処理を集中化させ、正確性と速さを確保してきたわけである。しかし、ここで問題となってきたのが、空調設備や電力消費量である。今は空冷が中心だが昔は水冷が多く、DCは水との戦いの場でもあった。それでもDCに求められる機能が正確さや速さだけならそれで済んだ。ところが、現在のDCに求められているのはBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)なのである。BPMとは何か。BPMとは「環境変化に合わせてビジネスプロセスを設計変更し、それに応じてアプリケーションの内容や連携を最適に組み換える」(日沖博道著「BPMがビジネスを変える」日経BP企画刊)ことである。企業システムが日々の企業活動と密着したものでなければ、その存在価値を年々低下せざるを得ない。つまり、DCに求められる機能は従来の正確性、スピードに加え、柔軟性と安全性がが重要な課題になりつつある。
さらに、従来は“コンピューターは金食い虫”と揶揄されながらも、容認されてきたという事実があった。つまり、金がいくらかかっても必要悪といった感じで、情報化投資はしぶしぶ企業の中で認められてきた。しかし、経営者のIT投資に対する見方は年々厳しさを増している。それらは「『経営課題との整合性が担保されていない』『効果が現実化しない』『効果の測定結果が信用できない』『効果がフォローされていない』」(畠中一浩著「IT投資は3年で回収できる」PHP刊)などである。昔ながらのDCであっては、これらの経営者の厳しい評価を変えることは到底不可能であることは明白だ。
これからの企業のDCに求められるのは、ビジネスプロセスの変化に柔軟に対応可能なシステムを、いかに低コストでしかも安全性を確保して実現できるかにかかっていると言っていいだろう。それにはどうすればいいか。ひとつは仮想化への取り組みでであろうし、さらにシステムコストの低減、中でもグリーンITに対する挑戦はベンダー側ばかりか、ユーザー側にとっても必須の要件となる。そして、これらの背景には“事業継続”という重い課題があることも忘れてはなるまい。この意味で今回の日本HPが提供を開始した「HP DCT ポートフォリオ」は、これからの企業システム構築にとって検討すべき要件が備わっていると言えそうだ。(ESN)