【システム運用管理】NECはこのほど、システムの使いやすさ(ユーザビリティ)を客観的かつ定量的に評価できるチェックリスト評価法を構築した。同評価法は、京都産業大学と連携して構築したもので、ユーザビリティの項目ごとに評価手順や判定基準を詳細化したチェックリストと、用語定義集および事例集から構成されている。さらに、項目ごとに「学習しやすさ」「エラーの少なさ」「記憶しやすさ」「効率性」の4つの観点によるウエイトを設定している。これにより、評価者の知見や裁量によることなく、システムのユーザビリティを評価することができるようになる。 (08年11月6日発表)
【コメント】システムのユーザビリティの問題は、古くて新しい問題であるのだが、将来も永遠に続く問題でもある。今回NECと京都産業大学が連携して開発したシステムのユーザビリティに関するチェックリスト評価法は属人性をなるべく排除し、客観性を高めたところに意義がある。そもそもシステムの使いやすさが何故損なわれるのか。原因はほとんどがつくる側の論理が幅を利かせ、利用者サイドに立っていないところにあるのは確かなことだ。今は知らないが、昔スーパーやコンビニのレジ台は東芝テック製が圧倒的なシェアを占めていた。不思議に思って聞いてみると、現場のレジ係が東芝テック製のレジ台が一番使い勝手がいいという評価を下すからなのだそうであった。これでは競業他社は歯が立たない。ユーザビリティを高めるには、つくる側の論理を引っ込め使う側、特に最前線で使うユーザーの立場に立つことだ。
システムのユーザビリティに関していえば、マニュアルのお粗末さにはあきれ返るものがある。ほとんどのマニュアルは使う側に立っていない。それは、使い方をマスターした後でマニュアルを見ると良く分かることが何よりの証拠だ。マニュアルはシステムが分からないユーザーが見て、分かるものでなければ意味がない。何故このようなことが起きるのかというと、つくる側は「こんなことは当たり前である」と思って文章化しないからである。“当たり前”を文章化して初めてマニュアルの存在意義がある。ところが、「そうかそれならばすべて記事化してやる」とばかりマニュアルをつくると、それこそ「キータッチとは手をキーに置き押すこと」といった意味のない説明が延々と続き、この結果分厚いマニュアルが出来上がってしまい、誰も読まなくなる。マニュアルをつくる際には、素人がよく陥るミスのケースを調べ上げ、それを文章化することが肝要だ。
ユーザビリティが難しのは、これなら使いやすくなるだろうと考えてつくっても、必ずしも成功しないことが多いからだ。大分前から画面上で本のページをめくるようにしてスクロールする方式が開発され、専門家は将来これが主流になるだろうとと見ていたが、残念ながら普及しなかった。何故だめなのかは分からないが、ユーザーは本の代替をPC画面に求めてはいないということであろう。要するに画面が変わることが大事なことであって、ユーザーは本の感触をPCには求めてはいないということだ。先日テレビを見ていたら、動物園のチンパンジーに、塔のような高い柱とロープを設置してやったら喜んで遊んだという。つまり、森にいるチンパンジーにとっては木と枝が大切なもので、葉っぱは副次的な存在なのだ。システムのユーザビリティを高めるには、人間でも動物でも同じで、ユーザーが本当は何を望んでいるのかを引っ張り出してやることこそが大切なのだ。(ESN)