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◇企業システム◇富士通がプロジェクト管理会社を設立

2008-06-04 11:54:55 | システム運用管理

 富士通は、システム開発(SI)における開発リスクを軽減し品質向上させるために、SIにおける豊富な経験やノウハウを持つベテランSEが、第三者として品質検証および品質教育を行う「富士通アドバンストクオリティ」を設立した。新会社はユーザーのシステム開発における一層の信頼性強化を図ると伴に、品質管理技術とノウハウの伝承を行い、SI品質の向上を図ることにしている。従業員数は25人。(08年6月2日発表)

 【コメント】今SI企業の最大の課題の一つはプロジェクト管理であろう。契約時に不明確な要件があっても、受注欲しさに不明確なままプロジェクトを進行させてしまう。この結果、最終的にトラブルが発生し、赤字の温床となってしまっている。赤字ならともかく訴訟問題まで引き起こしてしまっている。最近の例ではスルガ銀行、東京証券取引所、三菱UFJ銀行などの事例が挙げられる。いまやITは社会になくてはならない要素となり、技術の問題というより、社会問題化しつつある。このため各社とも社内に検証部隊を設け、トラブル発生の撲滅に躍起となっている。富士通でも、これまで社内のプロジェクト管理に全力を投入してきたわけであるが、今回このノウハウを事業として確立に向け法人化したもの。

 プロジェクト管理の新会社を設立したということは、富士通本体だけでなく関連会社、さらには富士通と関係ない企業のプロジェクト管理業務も受託するという任務を帯びてくる。ただ、富士通本体以外のプロジェクトについてはどれほど有効な手段が取れるかは、はなはだ疑問だ。というのも、プロジェクト管理は技術的問題以外にいろいろな問題が複雑に絡み合うからだ。自社内一つとっても、開発部隊と営業部隊の調整を図ること自体がトップダウン方式でやらないとなかなかうまくいかないのが現実だ。増してや他社のプロジェクトに首を突っ込むこと自体難しい。

 ただ現在、事業継続は政府が音頭をとるほど喫緊の課題となっている。特に金融、運輸のシステムがトラブルを起こすと、即社会問題化するのが現実だ。これまでプロジェクト管理をはじめシステム回りは、あまりにも技術中心になりすぎてはいないであろうか。つまり、技術者だけがかかわり、それ以外の人は遠くで見ているという構図になりすぎている。これからの企業システムは、経営の観点は当然だが、社会問題からのアプローチも欠かせない要素になってこよう。この意味で、今回の富士通のプロジェクト管理の新会社設立は英断だといえるが、同時に多くの課題を抱えていることになる。(ESN)