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企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇日本HPが次世代データセンター(DC)サービスの提供開始

2008-06-09 10:52:04 | システム運用管理

 【発表】日本HPは企業ユーザーにおけるデータセンター(DC)の変革を支援する製品・サービス群「HPデータセンター・トランスフォーメーション・ポートフォリオ(HPDCTポートフォリオ)」の日本での展開を開始した。中核となるサービスは①「HP DCCサービス」(DCの最適なコンソリデーション〈整理統合〉の支援)②「HP DCVサービス」(ITインフラの仮想化の支援)③「HP クリティカル・ファシリティ・サービス」(DCの企画・設計・運用のコンサルティング)の3つ。今回のサービスは、HPが05年から3年間をかけて大規模なDC統合を行った際の経験、技術、手法などのノウハウに基づいたもの。(08年6月2日発表)

 【コメント】HPは、全体最適化されたITインフラストラクチャを備えた次世代データセンターとして「NGDC(Next Generation Data Center)」を掲げている。これはプール化されたリソースを必要に応じて動的に分配できる機能を持ったデータセンターを指し、このNGDCを具体化するサービスとして発表されたのが今回の「HP DCTポートフォリオ」である。

 これまで、企業のデータセンターに求められてきたのは、いかに正確に速く計算処理を行うか、ということであった。このためメインフレームに処理を集中化させ、正確性と速さを確保してきたわけである。しかし、ここで問題となってきたのが、空調設備や電力消費量である。今は空冷が中心だが昔は水冷が多く、DCは水との戦いの場でもあった。それでもDCに求められる機能が正確さや速さだけならそれで済んだ。ところが、現在のDCに求められているのはBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)なのである。BPMとは何か。BPMとは「環境変化に合わせてビジネスプロセスを設計変更し、それに応じてアプリケーションの内容や連携を最適に組み換える」(日沖博道著「BPMがビジネスを変える」日経BP企画刊)ことである。企業システムが日々の企業活動と密着したものでなければ、その存在価値を年々低下せざるを得ない。つまり、DCに求められる機能は従来の正確性、スピードに加え、柔軟性と安全性がが重要な課題になりつつある。

 さらに、従来は“コンピューターは金食い虫”と揶揄されながらも、容認されてきたという事実があった。つまり、金がいくらかかっても必要悪といった感じで、情報化投資はしぶしぶ企業の中で認められてきた。しかし、経営者のIT投資に対する見方は年々厳しさを増している。それらは「『経営課題との整合性が担保されていない』『効果が現実化しない』『効果の測定結果が信用できない』『効果がフォローされていない』」(畠中一浩著「IT投資は3年で回収できる」PHP刊)などである。昔ながらのDCであっては、これらの経営者の厳しい評価を変えることは到底不可能であることは明白だ。

 これからの企業のDCに求められるのは、ビジネスプロセスの変化に柔軟に対応可能なシステムを、いかに低コストでしかも安全性を確保して実現できるかにかかっていると言っていいだろう。それにはどうすればいいか。ひとつは仮想化への取り組みでであろうし、さらにシステムコストの低減、中でもグリーンITに対する挑戦はベンダー側ばかりか、ユーザー側にとっても必須の要件となる。そして、これらの背景には“事業継続”という重い課題があることも忘れてはなるまい。この意味で今回の日本HPが提供を開始した「HP DCT ポートフォリオ」は、これからの企業システム構築にとって検討すべき要件が備わっていると言えそうだ。(ESN)


◇企業システム◇富士通がプロジェクト管理会社を設立

2008-06-04 11:54:55 | システム運用管理

 富士通は、システム開発(SI)における開発リスクを軽減し品質向上させるために、SIにおける豊富な経験やノウハウを持つベテランSEが、第三者として品質検証および品質教育を行う「富士通アドバンストクオリティ」を設立した。新会社はユーザーのシステム開発における一層の信頼性強化を図ると伴に、品質管理技術とノウハウの伝承を行い、SI品質の向上を図ることにしている。従業員数は25人。(08年6月2日発表)

 【コメント】今SI企業の最大の課題の一つはプロジェクト管理であろう。契約時に不明確な要件があっても、受注欲しさに不明確なままプロジェクトを進行させてしまう。この結果、最終的にトラブルが発生し、赤字の温床となってしまっている。赤字ならともかく訴訟問題まで引き起こしてしまっている。最近の例ではスルガ銀行、東京証券取引所、三菱UFJ銀行などの事例が挙げられる。いまやITは社会になくてはならない要素となり、技術の問題というより、社会問題化しつつある。このため各社とも社内に検証部隊を設け、トラブル発生の撲滅に躍起となっている。富士通でも、これまで社内のプロジェクト管理に全力を投入してきたわけであるが、今回このノウハウを事業として確立に向け法人化したもの。

 プロジェクト管理の新会社を設立したということは、富士通本体だけでなく関連会社、さらには富士通と関係ない企業のプロジェクト管理業務も受託するという任務を帯びてくる。ただ、富士通本体以外のプロジェクトについてはどれほど有効な手段が取れるかは、はなはだ疑問だ。というのも、プロジェクト管理は技術的問題以外にいろいろな問題が複雑に絡み合うからだ。自社内一つとっても、開発部隊と営業部隊の調整を図ること自体がトップダウン方式でやらないとなかなかうまくいかないのが現実だ。増してや他社のプロジェクトに首を突っ込むこと自体難しい。

 ただ現在、事業継続は政府が音頭をとるほど喫緊の課題となっている。特に金融、運輸のシステムがトラブルを起こすと、即社会問題化するのが現実だ。これまでプロジェクト管理をはじめシステム回りは、あまりにも技術中心になりすぎてはいないであろうか。つまり、技術者だけがかかわり、それ以外の人は遠くで見ているという構図になりすぎている。これからの企業システムは、経営の観点は当然だが、社会問題からのアプローチも欠かせない要素になってこよう。この意味で、今回の富士通のプロジェクト管理の新会社設立は英断だといえるが、同時に多くの課題を抱えていることになる。(ESN)


◇企業システム◇新日鉄ソル、日本オラクル、デルの3社が仮想化技術を使ったソリューションを提供

2008-05-26 09:06:46 | システム運用管理

 新日本ソリューションズ、日本オラクル、デルの3社は、サーバー仮想化製品「Oracle VM」を軸に、サーバー、ストレージに加え、データーベース、ミドルウエアも含むITインフラ全体を仮想化の対象とした「ITインフラ最適化ソリューション」を提供する。障害時の切り分け、ベンダーエスカレーションについては、新日鉄ソリューションズが一次窓口となるため、ユーザーは安心して導入ができ、運用面の負荷、リスクは大幅に軽減される。(08年5月21日発表)

 【コメント】オープン化はユーザーに製品選択肢の拡大とコスト削減という恩恵をもたらしたが、一方ではサーバー、ストレージの無計画な大量導入というデメリットをもたらし、これがユーザーを悩ます大きな課題となり、現在その解決策が求められている。そこで急浮上したのが仮想化技術で、既にVMwareやXenなどの仮想化ソフトが各ベンダーから提供されている。しかしながら、これらの仮想化ソフトを導入して、独自に自社システムを構築できるユーザーはそう多くないであろう。そうなるとユーザーは外部のSI企業に構築を依頼することになる。

 しかしながら、これらのSI企業も自社ですべての仮想化技術を体得しているわけでなく、それぞれ得意とするベンダーに割り振る。この結果どういうことが起こるかというと、ユーザーから見ると複数のベンダーと対応しなければならず、しかも、障害時において障害の原因の切り分けに時間がとられ、一瞬のダウンも許されないシステムでは致命傷にもなりかねない。

 今回の3社による仮想化技術を用いた「ITインフラ最適化ソリューション」はこのような悩みを持つユーザーには、朗報となるものだ。同ソリューションの注目点はいくつかあるが、一つは仮想化ソフトとして「Oracle VM」をベースとしている点である。これまで仮想化ソフトは主に、サーバーやストレージを対象とし、データベースやミドルウエアとなるとベンダーの動作保証は受けられないのが現実であった。今回「Oracle VM」が採用されているため、これらの解決が図られることが期待できる。もう一つは新日鉄ソリューションズに窓口が一本化されていることだ。ユーザーが一番困るのが障害時にベンダーの数が多く、対応が大変なことと、障害の切り分けをユーザー自身が行わなければならない点。障害個所が分かれば対応は簡単だが、障害個所が分かるまでに多くの時間を要するケースが多いからだ。

 これまで、ハードを中心としたアウトソーシングが注目を浴びてきたが、これからはソフトを中心としたアウトソーシング、すなわち今回の発表のような“ワンストップサポート”にユーザーの関心が集まるのではないか。(ESN)


◇企業システム◇NECが「次世代データーセンター構築ソリューション」発表

2008-05-16 09:29:38 | システム運用管理
 NECはデーターセンターの設計監理からITインフラ構築、ネットワーク構築、サービス提供までを含めた総合的なソリューションとして「次世代データーセンター構築ソリューション」を体系化し、販売を開始した。新体系は、データーセンターにおけるインフラのリソース最適化を行うことで、省電力化やTOC削減を支援する3つのソリューション「ファシリティ最適化ソリューション」「プラットフォーム最適化ソリューション」「ネットワーク最適化ソリューション」および、あらかじめNECで組み合わせ、動作検証を完了している製品群(ソフトウエア、サーバー、ストレージ、ネットワーク)によるシステムモデルに基づいた「サービスデリバリソリューション」から構成されている。(08年4月17日発表)

 【コメント】データーセンターの構築は企業システムの根幹を成すもので、これまで多くの試みがなされてきた。過去の挑戦は耐震構造のアクセスフロアの設置、水冷式冷却装置、空調装置の設置など、幾多の経験を経て現在に至っている。そして、最近はグリーン化がデーターセンターに求められ始めている。いかにサーバーなどの発熱を引き下げる消費電力削減対策などが急務となってきたわけである。そもそもコンピューターと発熱の問題は根源的なテーマで、コンピューターの発達は、いかに半導体から出る熱を下げるかに多くの労力が割かれてきた。

 最近、沸き起こってきたデーターセンターのグリーン化は、ユーザーとしては手の施しようがない問題と言えば、根本的にはその通りで、ベンダーサイドに頑張ってもらわないと解決のしようがない。しかし、サーバーの統合化、出力用紙の削減など、ユーザー側でも対処できる課題はないとは言えない。とはいえ、年々業務のシステムへの依存度が高まり、ユーザーサイドでの努力には限界が付きまとう。今回NECが発表した省エネ/TCO削減対応の「次世代データーセンター構築ソリューション」はそのような状況の下発表された。

 一方では、事業継続についての取り組みもデーターセンターには求められている。松下電器は今回国内の全システムの二重化を明らかにしたが、さらに海外にも拡大するという。つまり、システムをダウンさせないという事業継続への取り組みは、どうしても省エネとは逆の方向を走らざるを得ない宿命を背負っている。これからの企業の情報システム部門の課題の一つは、グリーン化と事業継続という二律背反的課題をどう解決するのかである。(ESN)