町工場 職人の声

職人と現場人間の想いを誰かに伝えたい!

小説「2023年日本転移」20話

2020年12月30日 | 小説

             20話 救援それとも

ミチとナツは全力で逃げていた。(怖い・・・怖い)顔が引きつる。
うまく10日は逃げれたのに・・・ダメ、もう足が・・・
中学2年生に成って新しい制服に喜んだのに大災害の津波。
仲良し6人組で生きてるのは2人だけ、みんな死んでしまった。
津波に怪我に病気に飢えて・・・そして襲われて。
避難集団から2人で逃げた、瓦礫を掻き分け食べ物探して、
ぼろぼろの制服、壊れた靴、ふけだらけの頭、垢まみれの体・・・
手足も骨が浮く・・・乞食以上にみじめよね、逃げながら涙が流れる。
ああ、もうだめ・・・行き止まり。
最後ならせめて傷ぐらいつけてやりたい、ああ私が男だったら・・・
崩れかけた住宅に逃げ込んで瓦礫を手に入口を睨んだ、同じくナツが並ぶ。
80m先で遅れてた1人が追い付くと立ち止まり4人で大声で笑ってる。
ゆっくり近づいてくる・・・怖いよ、くやしいよ・・・

10分前。
逃げてる2人を追いかける4人と言うことにモニターで気が付いた2人は
ドローンを40mに下げ逃げる2人をズーム・・・制服を見て互いを見た。
「ここは助けようぜ」タダシは直情的だ
「その前に、4人をズームさ」
「そうだよな、連中も銃を持ってるとやばい」
「・・・バットと鉄棒・・・」
「荷物も少ないし銃も無いな」
「良し、助けよう!」
「良いけど・・・向けて撃てるか?」
「・・・すぐ撃たないと殺されるよ」
「ああ、どうみても襲うのに慣れてるようだぜ」
「あの方向だと400mで行き止まりだよ」
「追い込んでる・・・」
「問答無用で銃殺、良いよね」
「良いぜ」
軽トラで回り込んでエンジンを止め、瓦礫を利用し行き止まりの住宅に死角
から接近、入口から10mで瓦礫に隠れ銃を手に息をひそめた。腰に予備拳銃。
汚れた2人が髪を振り乱し汗だくで逃げ込んで瓦礫を手に立つ。
(抵抗する気だ)目をかわしうなずく。
5mで二人が立ち止まり逃げ道を塞ぎ、もう2人が入口を超えた、
少女2人が振り回すが攻撃力とならない・・・
遊ばれて動きつかれた一瞬に手首をつかまれ押し倒された。
力の限り暴れるが両腕を頭上に抑えられスカートを剥がされ、右手が腰や
太ももをなぜ回す。身をよじりながら嗚咽しても笑いながらベルトを緩め
腰を落としてまさぐり続ける・・・
見張り役の2人が急かす
「おーい、早くしてくれよ、待つのは辛いぜ!」

ユウマが銃口を少し持ち上げタダシを見る、同じく銃口を上下に少し動かした。
ユウマが近い見張りを、タダシが遠い見張りを狙う。
車が衝突したような大音響が轟く、狙いは胴体。
特殊拳銃の威力は物凄い、腹のすべてが砕け散った。
二人が入口に走ると下半身裸の2人が手ぶらで逃げようと飛び出してくる。
片膝立で胴体を狙い、問答無用で銃殺。
少女の悲鳴は止んでいる・・・
(なに、なにあれ?助け・・・それとも)
(銃、銃よね・・・ヤバイやつ・・・平気で人殺しを)
下半身丸出しで両足を広げたまま声を失っていた
ユウマとタダシは困った、顔を見てるのに目に入るのは・・・
しばらくしてユウマが声をかける
「あのさ、服・・・着れば?」
「えっ、服?・・・ああー!」
(着ても良いんだよね・・・)


「あれ、持ってきてくれ」
「おう」
少女を50mほど現場から連れ出して待つと軽トラが来た。
2人は怯えたが連れだと判り少し安心。
水と食料を与えると無言で食いつく・・・
ポットの茶を4人で飲む。
ミチが諦めたような声をだした
「ねえ・・・あたし達・・・捕まったのかな?」
「捕まえた覚えは無いさ、好きな所に行けるよ」
「好きなところと言われても・・・そんなとこ・・・知らないわよ」
「そうよ、あいつらみたいなのがたくさん、いるわ・・・」
「酷くなるばかりよ」
「ねえ、あんた達、強いよ。困って無いみたい・・・」
「少し前は困ってたさ、まあ今はな・・・」
「あたし達、逃げることも、もう・・・食べ物も・・・」
言われなくても姿を見れば容易に判る、もうすぐ飢えと寒さで・・・
「ねえ・・・仲間に・・・ダメ?」
ユウマは考えた
(ぼろぼろだが目はまだ人間だよなあ・・・飯の用意も面倒だし)
「どうする?」
「ユウマに任せる、こういうのは苦手だぜ」
「なら、何日か様子見て仲間にするか決めるよ」
「それで良いわ、あの・・・ありがと」
「礼はいらない、助けたのはまあ勢いだから・・・」
(こいつら役立たずだったら・・・追放した後で・・・)

根拠地で簡易シャワー後、浮かれ騒いで無警戒で少女二人は熟睡中。
「よく眠れるよなあ」
「まったくだよ、姿が消えない・・・眠れないぞ」
「姿と言うなよ、忘れようとしてんのに」
食事、洗濯、掃除、服整理と確かに役立つ。
最初にライフルを教え、後で拳銃を教えた。
ユウマとミチ、タダシとナツの2人組が2個という部隊?が生まれた。
2台目の軽トラを手に入れ、2方向で活動、あそこを全部見られた少女と
少年で何日も周囲を警戒しながら生き抜けば自然に仲良し関係が出来た。

物資探索。
12歳少女サリが6歳少女ヒナと瓦礫のそばにうずくまってるのを保護。
物資は充分、ミチとナツが放置に反対し保護を主張、認めた。
(4人殺したし2人救えば数字では善人かな?悪影響が出たら・・・)

今度は少年3人の行き倒れ・・・飢え死に寸前、これも保護した。

拠点構えて1年と数か月、総勢15人の武装集団となっていた。
助けた少年の中に電子技術得意が一人、中波アンテナ取り付けて遠距離放送
受信に成功した。本人いわく、アンテナ使わなくても楽に受信できるはずと
首をかしげてるが・・・問題は内容だった。
被災者収容所の案内、近いのは琵琶湖近く。
拠点を放棄し車4台で大移動。
(不安はユウマとタダシ、何人も銃殺した事実・・・ばれたら・・・)
(でもいつかは大人の支配下に・・・政府が在るなら仕方ない)
(最悪は・・・人殺しで死刑かな・・・)

被災者収容所は混雑が酷い、歩きと車で列ができてる。
見た事ないけど軍隊的制服の者がテキパキ人々を処理していく。
「説明する!個人として隊員となるか家族として家で生きるかの二つだ!」
「あの・・・よく判らないけど・・・」
「簡単だ!集団を続けるか解散して散るかだ!」
「では・・・集団で・・・」
「良し!家族を選択と・・・家長名は?」
「えっ?ぼ、僕はユウマ」
「家長はユウマと、手続き終了、証明書だ。車両含め家族全員で右を進め!」
「判りました・・・」
不安いっぱいの仲間・・・
「右を進めと言われたよ」
「良し!行こうぜ」ほっとしたタダシが大声で指示した

同じような制服が証明書を確認、じろりと車両群を見て地図に赤印。
「連絡は8時、12時、18時に音響放送だ。行け!」
そこで暮らして数か月・・・
第二人事総局とかの命令で北に移動という・・・
(噂では北海道に町を作るのだと行く言うが・・・月が2個だし怪しい)
(だいたい銃を取り上げられないのが異常だよな・・・危険が在る?)
(全員が団結維持で結束してるなら何とか上手く・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」19話

2020年12月30日 | 小説

             19話 根拠地

いつも見かける瓦礫と二人とも思っていたが近づくと7階ぐらいのビルに
貨物船が激突しビルが半分から折れ曲がって倒れてる大きな瓦礫の山だ。
周囲は流されてきた車や瓦礫が積み上がり複雑なゴミの集まり。
南は船首が大きく潰れた貨物船、北は倒れたビル・・・
入れる場所が在るとすればここか裏側となる東側。
ワゴンを降りたタダシが無言で手を2度振るとエンジンを止めたユウマが下りて
周囲に目をやりながら小さくつぶやいた
「車は入れない、這って入るのもな・・・」
「這えば、入れそうだけど」
「東を見てからにしよう」
タダシはうなずくと車に乗った。
行き止まりに無駄な時間を費やしながら600mも迂回し東側にたどり着いた。
ビルに大きく口を開けてるのが見えた。
1.5トンも楽に入れる、これ以上は崩れないと感じる・・・
「なあ、ここなら当分良いよな」
「ユウマもそうか、もう動き回るのもな・・・」
「良し、ここにしよう」

外から見えない場所にワゴンと1.5トンを隠すように駐車。
周りにゴミを集め窓の高さまで隠してようやく一休み。
外の瓦礫に混ざってた2段梯子を運び込み崩れた階段の所から2階に掛けて
銃を握り上がる、今まで全く音は聞こえなかったが・・・
2階3階は異常なし・・・服飾販売のビルだろう、4階は瓦礫で埋まってる。
1階西側のドアを開けると瓦礫が前を塞いでるが人が這い出る隙間は在る。
軽トラを入れてから入口にロープで警戒罠を仕掛けた、これにかかるのは馬鹿
だが夜なら役に立つと期待して。
広すぎて寒い、いつもと同じに車内で食事。
「なあ、入口どうする?」
「ユウマが考えろよ、俺・・・苦手なんだ」
「そうかあ・・・車見つけてドアにするとか?」
「おっそれ良いよ」
「うん、外から瓦礫に見えれば入ろうとしないと思う・・・」
「行き止まりに小型バス有ったよな」
「バッテリ交換で動けば・・・」
「潰れて無かったし」
「朝一番で試そう」
やっと拠点に出来る場所を見つけた二人は楽しく眠りについた。

軽トラで瓦礫から引き出し交換、エアフィルター清掃、エンジンは大丈夫。
窓は割れてるが平気、低速で無事移動。
頭から入れて後部に瓦礫やゴミを取り付けて入口を塞ぐようにして気づく、
「まずい、下ががら空きだよ」
「何か縛り付けようぜ」
「俺たちが入るの、どうする?」
「あーそうだな、手順でどかすと脇から入れるで良いだろ、間違えたら
上から落ちて押しつぶす」
「それを横の瓦礫に仕掛ける訳か・・・」
「そういう事」
午後3時、昼飯抜きでようやく思い通りに完成。
入口は塞いだが1階はやはり寒い、2階に部屋を作ろうと一致。

翌日は雨。
2階の落ちた階段近くに場所を決め、周辺の物を利用し小屋を作った。
棚や毛布を利用、内部の明かりが全く漏れないように気を使った。
窓もカーテンで明かり漏れ防止。
エスカレータは外の瓦礫を使い封鎖の予定。
上がるには2段梯子だけ。侵入されても最後の安全を確保。
雨は2日続いた。6畳間2個だが広く暖かいので快適。
食後タダシが不安を口にした
「なあ・・・いつまでこんなんだろなあ・・・」
「判らないけど・・・助けは・・・何か月も先だよなあ」
「たくさん集めたけど、足らないかもな」
「ああ、多い方が良い」
「良し!なら軽トラで集めようぜ」
「うん、目立たないしドローン飛ばせば人を避けられるよ」
「決まりだ!」
1か月以上物資回収、冬を越すのに十分、それでも慎重に偵察しながら
回収を続けた。

「おい!やばいぞ、4人集団だ」タダシがモニターを見つめた
「見つかった?」
「まだ遠い・・・もう少し・・・北東に進んでる」
「良かった、見つかって無い」
「迷わず急いでるよな?」
「何か目当てでも在るのかな?」
「ドローン・・・気づかれたら・・・」
「ああ、高度80mに上げよう」

 

 

 


小説「2023年日本転移」18話

2020年12月30日 | 小説

             18話 探索移動東へ

雨は2日続いたがようやく晴れた朝、シートを畳んで幌の上に縛ると東への移動
を兼ねてタダシの運転練習が始まった。2人に増えたので食料や物資を見つける
と積んだので身動き取れないほど狭くなった。
ワゴンを見つけバッテリ交換で動く、ユウマが運転し2台で移動。
電気店の2階を探索しパッケージされたトランシーバーを発見、通信距離56キロ。
用意と準備をしてた2人だったが想定は一人での生存なので通信機は無かった。
車2台と拳銃2丁、トランシーバー3セットは心強い。
車には予備バッテリ2個を積んだ、消耗は速いと予想してる・・・
出会ってから7日、1.5トントラックを見つけた。
「これ動くかな」ユウマが呟いた
「たぶん・・・けど3人はいないよ」
「動けば荷物を載せ替えて軽トラは牽引さ」
「軽トラ・・・捨てれば?」
「小回り出来て便利だよ、音が小さいから偵察用に」
「ああ・・・暴力パーティか」
「動くか試そう」
タダシが車庫内を探索しバッテリー交換、キーは運手席に在った。

エアクリーナーを掃除、3回目でエンジン始動、走行を確認。
幌を取り付け荷物の移動で夜が訪れた。
ワゴンの余裕で手足を伸ばして眠れる、それだけで達成感に満たされた。
市街地域で手動ポンプ式の浄水器を2個見つけた、1年以上水に困らずに済む。
食料と物資、服や毛布は充分、燃料は車のタンクから得られるし灯油は家屋の
倉庫にポリタン1個が在ることが多い。
5人用テントを2個1.5トンに載せてある。
包丁、なた、鎌、ツルハシ、シャベルも当然、集めて搭載。
全国的な広域大災害・・・しかも何度も続いた絶望の被災地・・・
自衛隊?ヘリで救援はあり得ない・・・基地ごと壊滅だろう。
「なあ、ライフルを欲しいな」
「ライフル、いらないよ、俺たちには重いし」
「けど、拳銃だと50m以下とか・・・」
「ふつうはな」
「普通で無いのか?」
「ああ、銃身が250ミリだし強化薬9ミリ、駐退機付だよ」
「それ50m以上とか?」
「200mはいける、試してないけど」
「200mは俺たちに無理だよな・・・」
「ああ、無理だろう、けど相手は威力を無視できないさ」
「ライフルより目立たないとか?」
「それな、ライフルもって警戒されるより隠した拳銃で・・・」
「2人なら、このままでも良いよな」
「もしも仲間が増えたら・・・」
「銃も要るよな・・・」
「確実に在るのは、警察署」
「電動削岩機、サンダー、ハンマー・・・」
3日後、ライフル6丁銃弾600、拳銃14丁銃弾700、散弾銃2丁銃弾200を確保。

夕食を食べながら数年前のネット小説を思い出していた
「ネット小説だと銃砲店で手に入れてたよな」
「あれ無理と思った・・・で自作した」
「場所を楽に見つけられないよな」
「それに大勢が押し掛ける・・・」
「そして在るのは本格的なライフルじゃ無い」
「ああ、せいぜい狩猟や競技用で銃撃戦は無理さ」
「警察なら?」
「間違いなく銃撃戦用!」
「弾数が・・・」
「もっと欲しいし必要だよ」
ユウマが決定
「故障するしライフルを6丁追加で後は銃弾を集めよう」
警察にも銃弾は大量に無いわけで、少なくとも容易に見つかる場所には無い。
何日も費やし4か所でライフルと銃弾を充分に得たと判断し移動再開。
ユウマが軽トラで先行偵察、ドローンで周辺観察し動画通信。
警戒しながら東に移動して行く。

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」17話

2020年12月30日 | 小説

            17話 意気投合

雨の不安を感じつつ探し物をしながら無事軽トラに潜り込んだ。
持ち込んだのは洋服類にトイレペーパー。
車庫から積んできたブルーシートを車に被せ裾を瓦礫で抑えて安心。
濡れるのは嫌だがそれよりも荷台は寒い、雨と風が来ればより寒くなる。
終わったと同時にシートに雨が落ち始め空はどんどん暗くなる。
ユウマは奥にタダシは外側。
ユウマがコンロで湯を沸かしポットに入れてから玉ねぎの味噌汁を作る。
フライパンで4個分の卵焼、冷や飯をどんぶりに入れ湯を注いで夕食出来上がり。
「喰おうぜ」
タダシはまともな食事に目が輝いた
「うん、ありがと」
食事も良いが二人だと心強いとユウマは想う、タダシは軽トラと物資に関心。
食事終了、ユウマがトイレペーパー1個を取り出し前に置いたがタダシには
意味が全く分からない。少し千切ると食器を拭いてスーパー袋に捨てた。
視線に気づいた
「ああ、これな。老人の書き込みさ、洗う水なんて無いからな」
やってみると綺麗に汚れが取れるのに感心した(こいつ知恵が在る・・・)
(軽トラを運転出来てコンロを役立て物も選んで集めてるのも事前の準備・・)
「なあ、袋に何を入れてる?閉じ込められてたのに頭で抑えていただろ」
(こいつなら良いよな・・・)
出された中身を見て息を飲んだ
(おいおい、まさかの拳銃だ・・・自動拳銃2丁)

「親父のおじさん、いなかの工場で夏休みにさ・・・用意した」
「良く作れたなあ、弾は?」
「趣味だからな、弾も作れた、火薬は猟銃の弾から流用さ」
「おまえ、すごいな」
「いやあ、お前の方が用意は良いよ、俺は車ダメだから」
「何発ある?」
「多くないよ260発・・・」
「多いよ、充分!」

「お茶を忘れてたよ」注ぎながら興奮は続く。
「なあタダシ、俺たちパーティー作ろうぜ」
「ああ、もう今から仲間だ」
「俺も運転は田舎で習った、山歩きも」
「田舎サマサマだな」
「ほんとだよ」

意気投合。二人は久しぶりに安心して眠りについた。

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」16話

2020年12月30日 | 小説

             16話 出会い

耳を澄まし音の方向を見ると潰れた住宅・・・犬か怪我人・・・血は嫌だな。
手頃な棒切れを右手で握りしめ全力で振る気で音を抑え近づくと今度ははっきり
したうめき声が高さ70センチぐらいの隙間の奥から聞こえてきた。
犬じゃないとほっとしたが棒切れは手離さない。
苦しそうだが急いで助ける事じゃない、助けて良いかも判らないし。
右手の棒であちこち突いてみる、これ以上潰れないよな。
さて・・・中に居るのはどんな奴だ?
半開の家に入り込んで物探し中に潰れて、何かに挟まれたか動けない大怪我か。
開口部に近づいて臭いを嗅ぐ、血の匂いはヤギの解体で経験済み・・・
小便の匂いはするが血の匂いは無い、大怪我じゃないなら、挟まれたのか?
どうしようか・・・
立ち去るなら顔は見ない方が気分的に楽だし、見て助けられないのは辛いし。
ペット水とチューブ食料はポケットに在る・・・
顔を見てダメなら大人が助けると思って立ち去れば良いな。

左手にライト右手に棒で這いずりながら進むと頭が見える、奥にあるはずの足
が見えない、腰から下を家具に潰されるように完全に挟まれてる。
身動きしないで呻くだけ。
頭を棒で突くと声が止まった、うん意識は有ると。
動かせるのは両手だけ、こっちは両手両足で動ける、しがみ付いて来たら・・・
棒を置きペット水で頬をチョンチョンすると左右に首を振る、笑いを我慢する。
暴れ無いな。
水を少しづつ飲ませると手でつかみ自分で飲み始めた、なら両足は潰れて無い。
今風の家具だから取り除くのに苦労しないだろうな。
バールにノコギリ・・・
「喰い・・・食い物・・・」
口を外してチューブを握らせると夢中で食べてる。
後ろ向きのまま外に出て3軒隣で潰れかけた物置からバールと片刃のこぎりを
見つけ引き返した。あの状態なら助ければ動けるだろうな、問題は・・・
協力するか反発するか、味方になるか敵となるか・・・助ける価値は不明だ。
同じ歳ぐらいのあいつは腹ペコで体力が落ちている、バールはこっちの物・・・
敵と判ったらバールで・・・

潜り込んで呼びかけた
「おい、助けてやる暴れるなよな」
「うう、出してくれ・・・」
水と食い物で気力が静まり意識が遠くなる・・・2日も寝てないから当然。
ライトを固定し家具の解体を始める。穴をあけノコで切る事の繰り返しを3時間。
汗だくになって見ればスヤスヤ眠ってる。
外に出て水を飲みおにぎりを食べて茶を飲んで一休み。
軽トラからロープを持って来て助けに入ると目覚めていた。
「おい、ロープで引き出すぞ!」
「捨てられたかと思ったよ・・・とにかく外に出してくれ」
「ああ、黙ってろ」
わきの下で体に回し両肩から二本のロープを外に伸ばしてから見つけてきた
毛布を体の下に差し入れ外に出てゆっくり引き出した。
眩しそうに眼を閉じるのと少し血がにじんだ足に気づく。
「おい、足を見るぞ」
「ああ、しびれてるんだ・・・ありがと」
見ればジーパン、うん少しのはさみ傷だと安心した、怪我だと手当を知らない。
「怪我はしてないよ、休めば動けるさ」
「本当にありがと、もうだめかと・・・」
「礼はいらないよ、何か探してくる」
「戻って・・・来るよな」
「ああ、戻る」
探し物は服やタオルやソープや下着、ひとまとめに持ち帰ると座ってる。
「動けるか?」
「なんとか・・・」
「良し、俺は探し物して来る、着替えてろ」
「えっ?着替え・・・」
みるみる赤面、そうだった小便とうんちを・・・

ゆっくり探し物、2時間後に戻った。
とりあえず名前を「俺はユウマ」「俺はタダシ」
うん、暴れないし襲ってこない、味方に出来そう
「ネグラが有る、一緒に来いよ」
「行くよ」穴の中に在った袋を持って即答した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」15話

2020年12月30日 | 小説

      15話 さてどうしよう?

大勢が3日ぐらいで押し寄せてくる、山に物資はもう無い・・・それで大喧嘩。
ここらに必ず来る、あのガレージに隠れてもすぐ見つかるよな。
災害で必要な物リストは何度も見たけど、必要なのはコンロとボンベだよ。
「良し!軽トラを持って来よう」米5キロとコンロ、ボンベを背負ってガレージ
に向かう。物置で見つけたロープを手にぶら下げ急ぐ。
周囲に変わりは無い、当然だがほっとした。
2階を探した休憩室の感じで目ぼしい物は無い,お茶とコーヒー、砂糖は大量だ。
冷蔵庫で見つけたのはペット水とジュース、袋入り食品。ダンボールに菓子類。
たまごや酒は割れてるので無視。

隅に幌が在った、雨でも荷物は濡れにくい。幌を取り付け積み込んだ。
外のごみをどかし、ロープでシャッターを引いて固定、広げたとこから無理に
軽トラで出て5m移動し降りてロープを回収、ご飯の家にゆっくり向かう。
田舎の親戚農家で軽トラの練習をしておいて良かった。
警官も文句をいう者も居ない、そもそも人が居ないんだもん・・・
5分とかからず到着。
ごみを乗り越え裏手に車を止めて廃物で隠した。
近くの元一戸建てを探索、探すのは単独で引き出し式のプラ整理箱。
服の収納などに使うからどこでもすぐ見つかる、同じ箱を持ち帰った。

米とコンロ、ボンベを探し背負っていくつも回収。
朝飯も昼飯も冷や飯に塩と味噌・・・(今は急ぐだけだ)
数日の晴天も終わりそうな雲が増えてきていた、風も強さを増している。
山から下りてきた大勢が木曽川で止まっていた、簡単には渡れない。
鉄橋の先争いで大勢が大喧嘩、何人も鉄橋から突き落とされ流されて行く。
包丁はもれなく回収、空のポリタンク、ラーメンどんぶり、タオル、ソープ等。
洋間と居間に運び込んだ。
荷台の前方に2列4段の引き出し箱。下2段は米袋と隙間にボンベとタオルの箱。
2段の引き出しは内側に向かい合わせ。
3段目は中身は同じだが引き出しは外向き。
4段目は外向き、中身は全てボンベ。

荷台両側に雑多な物を入れた蓋付きプラ箱を並べ、毛布や布団を乗せて固定。
昔の芯出し式のストーブを1個乗せた。灯油を探そう・・・見つかるはず。
2日か過ぎてる・・・そろそろ大勢が渡って来る、灯油は後で良い。
朝、曇り空の下を北方に4キロ移動した。

ここで1日は見つから無い、時計だと9時。周辺を探索だよな・・・

潰れた家に近づくとうめき声がわずかに聞こえた。

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」14話

2020年12月30日 | 小説

             14話 探索

母と妹はどうしてるだろうか・・・腹ペコで忘れていたことを思い出す。
もう何日前か記憶に無い、車で海津市方向に逃げて・・・車を動かせず歩いて
西に逃げた時、大勢の人の波ではぐれて・・・それっきり。
きっと、きっと生きてる。
山には大勢いたが大人達の怒鳴り合いがひどくなって一人で逃げ出した。
ここがどこだか正確には判らないが南の桑名市に、東に移動で弥富市当たりだ。
目がくらむような鉄橋の残骸をはいつばって渡って正解、あれは木曽川。
まだ誰も居ない・・・
巨大な建物は近くにないが残骸の集まりはあちこちに在る。
マンションを目印に記憶し探し始めた。
都合よくロープは見つからない、現代生活にほとんど使わないから当然だ。
運が良かった家なのか少し傾いてるけど潰されて無い家を見つけて当然入る。
誰も居るはずが無いと思うが様子を見ながら慎重に・・・
向かうのはキッチン。
無事だった冷蔵庫が二次元キャラに見えるほど嬉しい。

椅子に座ってペット水をゆっくり飲むのは何日ぶりだろう、ジュースも飲む。
卓上コンロは二つも在る、ボンベも3個入りが20個、災害用の買い置きだな。
惜しいけどペット水を鍋に入れ、袋入りのうどんを投入、こんなにもおいしい。
眠る気は無かったのだろうがウトウトが始まると床にずり落ち横たわった。
冷えてきた空気に身じろぎし目を覚ました、もう16時頃。
夜を過ごすと決めた。
居間に寝室と洋間。2時間の探し物を続けたら物資が大量、災害備蓄と言うやつ。
ペット水が60個、缶詰、ビスケット、小麦粉、米5キロが10個、他にも。
備蓄を持ち出す暇も無かったろうなあ・・・
ご飯を食べたい。
フタ付きの鍋に茶碗で2杯の米、2センチの水、どんぶりを逆さに上にペット水。
付きっ切りでコメを炊く。
ガスは火力調節が簡単だ、たき火だとまともに炊けるか判らない・・・

災害から2か月以内、卵は常温でも2か月以内なら卵焼きで食えるとネットで
悲惨老人が書いてたのを思い出した。
卵はどこの家でもあるはず持ち出して逃げる人は居ない、貴重な食い物。
炊きながら思う、缶詰に卵に味噌汁に海苔にご飯、もうすぐ食えるんだあ。
鍋の香りがたまらなくおいしそう、弱火にして・・・消して、15分待つ。
2か月ぶりの夕食は一人で食べてもゲームクリアの気分!

もうどうにでもなれ・・・他人のベッドだが俺には関係ねえ、ふとんで眠った。

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」13話

2020年12月30日 | 小説

             13話 2024年3月10日北海道

大規模なジャガイモ生産地に中央領域から送られた農機と人員により規模拡大
を計画、回収した肥料も優先され送られた。
4月10日までに農地準備し作付終了の予定は4月28日、8月から収穫の予定。
総局陸上課が20万人の老人と40代50代の4万人を持続的農業支援に派遣した。
本土の平野部は数年に渡り大量の収穫を望めない・・・
農業生産は北海道が頼りなのだ、幸い天候の激変は無いと思われる。
海洋課が優先拠点として建設を進める室蘭、根室、稚内に連絡する鉄道を再建。
大災害の被害は津波で壊滅した札幌が人と財物で最大であり鉄道ごと壊滅。
若小巻も全滅・・・
鉄道再建の能力を集中し早期開通を努力中。
青函トンネルの被害軽微だったのが不幸中の幸い・・・

長期的には重要交通路を海岸から内陸山岳部に変更する政府支持が在る。
大規模津波と荒波は海岸道路を寸断し海水に消えた。
港湾が大被害で壊滅状態の現在、本土との交通は鉄道が唯一。
石油火力は燃料途絶で稼働不能、水力は多少被害を受けてるので約100万kw。
これが常時出力なら、かろうじて再建電力と成りえるが平均出力だと不足する。
点検整備で稼働可能と報告された泊原発の200万kwは心強い。
暖房さえ電力を頼る事に成るだろうから・・・本土も電力が便りだ。
海岸地下タンクに原油は在るが石油火力発電は全滅し工場も壊滅で数年は
機器を製造する事は出来無い、技術者と熟練工の多数死亡が深刻なのだ。

防衛老人隊がいつまで有効なのか誰にも判らない。
怪物が樺太に襲来したら時を置かず北海道に侵入するだろう・・・
それまでに最悪でも食料備蓄3年分確保が杉原総理の命令。

樺太のオハに海洋課の怪物漁獲拠点が建設中、政府支援は在るが殆ど独力。
本格化するには冷凍列車運行が不可欠であり電力再建も急務。

3月10日。
長浜臨時収容所から長野に向かう列車の中で少年9人少女6人の集団が1年を
振り返っていた。リーダーは15才のユウマと副の15才タダシ最年少は少女ヒナ。
壊滅した名古屋地域を中心に軽トラ2台とボックス1台で移動しながら回収で
生き延びた自然集合の仲間たち。

始まりは壊滅の町でユウマが軽トラを使おうとした事。
大きく傾きシャッターが大きく口を開けてる中の軽トラを見つけたユウマ。
(ここなら雨に濡れ無い、寒くも無い。それに誰にも見つからない・・・)
災害後は他人を恐れた・・・襲う大人を何人も隠れて見たし襲われた人も見た。
(建物が崩れる不安より襲われる事が怖い・・・)
最初にごみを集めてシャッターの穴を隠し壁とのわずかな空間を通路にした。
ライトを殆ど使わない、昼間なら隙間からの光で十分内部を見れる。
もうじき暗くなる、腹ペコだが荷台でシートを被って目を閉じた。
レーザー光線のような光に目をしかめながら起きて周囲に変わりないと安心。
(水と食料を探さなければ・・・)

ねじ曲がった内部階段を慎重によじ登ると傾いた床の下方に机や椅子が集積、
すきまから蛇口が見える。
(冷蔵庫が在るはず、食い物・・・水も、でも降りたら上がれない)
渇きと腹ペコで直ぐに降りたいが我慢し階段を下り耳を澄まし外の様子を観察。
災害後の町は異常に静かでありわずかな音も遠方で聞こえてしまう。
そして瓦礫を歩けば確実に音が出る。
名古屋は壊滅し、そこに集まるのは周辺から来た腹ペコの個人や集団で
自己優先を当然のように選んでいる。
弱い者は強者に襲われる。
(聞こえるのは鳥の声だけ、犬の声は遠い、)
床面に耳を密着し目を閉じて音を拾う
(うん、地面の音も無い)
這いながら通路の空間を進んみ外に出た。
(明るいうちにロープを見つけよう・・・)
(排泄を近くですれば臭いで犬や人間に見つかる)
小便と排泄を我慢し1000m動いて排泄し土を被せた。

個人や集団の存在を恐れながら必要な探索を一人で始めた。

 

 

 

 

 

 


小説「2023年日本転移」12話

2020年12月30日 | 小説

             12話 2024年3月3日

第二人事総局海洋課が拠点整備を進めた富山、富士、ひたちなか、に人員派遣。
各拠点に住居建設、無線、燃料、修理、補給、冷凍倉庫、海産工場など施設が
建設され漁船30隻、乗員漁労員600名。拠点要員500名、計画運用経理等100名の
約1200名の高齢老人が集合し船舶労働の習熟に励んでいる、総員3600名。
総局海洋課富山。局長、安岡。
総局海洋課富士。局長、岡本。
ひたちなか。  局長、木村。

総局は航空課を作り整備が進んだ各拠点飛行場に高齢老人を300名総計1200派遣。
拠点飛行場は哨戒機30機を中心に各種航空機20機、ヘリ20機を運用中。
松本、甲府、沼田、飯山は飛行場整備の進展に伴い産業の復興が加速している。

総局陸上課は国防軍の要請で富山、富士、ひたちなか、松本、甲府、沼田、飯山
周辺に大規模な高齢老人専用の収容所を設置。40万人が入所し暮らし始めた。
配置は国防省の指示の通り。
これが政府の怪物襲来対策で重要な事を鈴木は10日前に杉原に明かされた。
文字通りの肉壁、高齢老人の肉壁で防ごうという作戦・・・作戦なのか?
鈴木にもどうすれば怪物を防げるのか、まったく判らない。

第二人事総局にも秘密の弱点が在った・・・
命令を無視し現地からおにぎりぐらいの黄色縞黒石を3個を持ち帰り寝たきりの
90歳過ぎ老人達に探索のお土産として手渡した。
少しだけ身動きできる12人の老人達は喜んで涙を浮かべた。
4人部屋、頭を寄せて十字に寝かされてる中心の台に置き草花で隠した。
死を待つだけの12人の老人が喜ぶなら良いと皆で口をつぐんだ。
鈴木にも言い訳は在る。
(黒石を監視してるが全く何の変化も無い・・・岩石標本であり動物では無い)
優先すべきは大型海洋生物を食料に狩る事。
安岡が漁獲法を現場で研究中。

杉原総理に生物研究局長が報告していた。
「無人機を用いた野生の実物研究により怪物への効果を確認しました」
喜びを隠せない
「そうか!詳しい事を!」
「・・・実は老人の髪や風呂の汚れ排水を怪物に浴びせた所、防御能力が
一時的に急減、12.7ミリ対物弾で死亡する事を確認しました。約20分が無防備」
「公表は出来ないが用意や利用は出来る!後は軍の仕事だな・・・」
「まだ研究中です・・・確認は海洋怪物だけの事ですから」
「大きな進展だ!順調に行けば食料不足の解決となる」
(これで伸ばしてきた台湾への食料援助に許可を出せる)

3月10日。
望まれていた中央領域の外に多数の海岸拠点設置を決定、公表された。
また複数の航空拠点を決定し飛行場の運用が組織化され拡大。
樺太に第二人事総局と国防軍による観測所が24か所作られ襲来に備えた。
保管食料は残り2.5か月・・・だが先の見通しは出来た。
沿岸農地は塩水で当分耕作不能だが農業地拡大により将来の収穫を得られる。
気象も良い方に変動したと報告が在る。
樺太も沖縄も適度に中央領域と同じに変わり農業上は変わりなく作付可能、
あまりにも広大だが盆地の湖に出来た島が、我らの日本なのだから。

3月25日。
安岡達が、取り囲み怪物漁獲方法を実現。
国防軍も直撃怪物特殊弾を完成し量産開始。
国民救援隊は寝たきり、怪我や病気でも老人なら最優先で救い続けた。

4月3日。怪物漁獲方法は有効を全域で確認、海洋怪物の漁獲が軌道に乗った。

鈴木は困惑していた。
お迎えを数年と覚悟した自分が巨大組織の局長とは。
第二人事総局。
「統合計画会議」
「第一車両整備工場」
「海洋課」
「陸上課」
「航空課」
「探険課」別名探検家。

現在の総人数は鈴木にも判らない、200万を超えてるのだろうが。
時々思う(どうして未だに杉原は第一人事総局を作らないのか?)

 

 


小説「2023年日本転移」11話

2020年12月30日 | 小説

             11話 調査隊帰還

政府はもちろん本人達の予想を外れた全員無事任務達成の帰還を皆が喜んだ。
北方調査隊は死体だが怪物捕獲に成功し怪物は佐渡生物試験場に厳重隔離。
だが南方調査隊は岩のように動かない怪物を捕獲しようとしたが船で曳いても
ワイヤが切れてしまい1センチも動かせない。
一部標本だけでも採ろうと4時間の作業ですべての採集用工具が壊れた・・・
ダイヤモンド工具の歯が立たない・・・常識外の硬さと強度。
もとろん打撃も試したが変化無し、まあ予想通り。30ミリが通用しないのだ。
鉱物標本と植物標本の採集で帰還したが大成功と喜ばれた。
死体でも怪物捕獲は2000万年の奇蹟とは日本と台湾で知る者は一人も居ない。

帰還してから休養14日の安岡隊と岡本隊の現状に総局長鈴木はため息をついた。
(80で元気なのは良い事だ、しかし40歳の嬢ちゃんとおねん寝は元気過ぎだ)
(それも2~3人が常に周りに・・・楽し過ぎて、心臓が止まるぞ・・・)
それでも報告書は嬉しい。
帰還の漁労で大量の魚を得た、船を用意すれば食料不足解消の一つに出来る。
日本の食料が絶望状態と聞かされた時は死ぬかと思うほど心臓が乱れた。
ぼんくら総理と言われても背負う責任の重さは・・・命がちじむ。
近づいて来ないが海面下の大型生物多数をソナーで確認、何とか食料に。

杉原総理も帰還と食料に喜んでいたが関心は別の点に有った。
「生物研究所に尋ねる、活発凶暴な怪物集団がなぜ岩になるのだ?」
「・・・原因は特定も仮定も出来ておりません」
「国防軍に尋ねる、上陸前は活発に活動してた、間違いないか?」
「調査隊接近に伴い活動が低下し上陸時に完全に動きが停止しました」
「単純かも知れんな、怪物の活動低下は調査隊と関係が在る」
「国防軍が支給したのは試製といえ単なる対物ライフルで影響要素は無いと」
「生物として調査隊に遠隔影響力が在るとは思えません・・・
超能力や魔法や宇宙人なら別ですが、死期の近い老人に・・・」
生物局局長は会議室の全員に睨まれて口をつぐんだ。
 
ピンコロロンの音に入室許可を出すと饅頭と茶が配られた。
茶を飲む者、饅頭を食う者、交互に飲み食べる者、手を出さず考え込む者。
杉原は茶を飲み饅頭をゆっくり食べ、茶を飲みほして姿勢を正した
「怪物に対する老人の影響は生物上と考える、生物局長の考えは?」
立場は追い詰められたウサギ・・・
「・・・確かに・・・状況は・・・生物的影響と思われます・・・」
国防大臣がいつもの勢いを取り戻した
「思うとは何だ!確実に生物的影響では無いのか!」
饅頭の味も茶も忘れて言葉を探す(同意でなんとか・・・)
「怪物に対する老人達の影響と認識します」

杉原は穏やかに確認した
「局長、日本人の絶滅に関する事項だ・・・生物学の照明を待つ時間は無い。
そこでだ、ここは秘密会議で議事録も無い。局長の想像で良いから理由らしき
観点の発言を欲しい。我らより生物に関する知識は絶大に持つのだから・・・
局長の想像は単なる想像で無く直観なのだ。その直観に頼りたいんだ」
局長は5分も迷い続けようやく
「老人には特有の老人臭が在りまして・・・」
もう老人と言える周囲の顔色をうかがう
「この老人臭が怪物に対して不利あるいは嫌いで避ける性質を持つのでは」
国防大臣が態度を逆転
「それだ局長!すべてに説明が付く。海洋怪物も陸上怪物も逃げていく事の」
「そうだ、そうに違いない」
総理は詳細を気にした
「それで岩のように動かない点はどうか?」
「肉体の影響で無く、精神的影響なら動作停止は多くの観察が在ります」
「うむうむ、蛇に睨まれたカエルだな」
「怪物が例外なく動きを止めるほど精神に影響を与えるのが老人臭という事か」
「救世主ですなあ。機関砲や大砲爆弾まで成体に打撃不能と報告を受けた時は
・・・あー・・・困りましたが」
全員が知っていた、3日間国防大臣が酒を浴びて仕事を抛り出していた事を。
総理がまとめた。
「老人片づけ計画は全て破棄する。無価値老人を優遇し戦力に用いる。
秘密裏に攻撃、防御戦力に組織を整備する。どこまで通用するか不明だが他の
手は無いのだ」
(鈴木を利用すれば抵抗なく進めるだろう・・)

わずか数人が知るだけの老人戦力化が計画され動き出した