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『自由と規律』

2006年08月16日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004121418

本日の一冊は、イギリスのパブリック・スクール、およびケンブリ
ッジ大学で教育を受けた著者が、彼国の教育に学び、自由と規律、
そして教育のあり方について論じた、名著中の名著です。

奥付によると、本書の初版が出されたのは1949年の11月。つまり、
50年以上売れ続けていることになります。

現在のパブリック・スクールがはたして古き良き伝統を守り続けら
れているのかどうかはさておき、その教育システムからは、学ぶべ
きことが数多くあります。

著者によると、「オックスフォードやケムブリッヂの、自由な、飽
くまで豊な生活に比べて、パブリック・スクールのそれは、きわめ
て制限された、物質的に苛薄な生活」。

そしてそれは、「パブリック・スクール教育の主眼が、精神と肉体
の鍛錬におかれているからに外ならない」のです。

以前、教育熱心な土井の知人が、「与えることは奪うことだ」と言
っていましたが、本書を読んでわが国の教育を振り返るとき、正に
そのことを憂うのです。

「苦難に堪えられない素材は、到底、その先に待つさらに厳酷な人
生の試練に堪えられるものとは考えられない」

真に価値ある教育とは何か、規律ある態度を身につけるために教育
はどうあるべきか、深く考えさせられます。

もし、教育者や指導層が古典に学ぶ習慣を持っていたら、本書によ
って、ベストセラー『国家の品格』は出番を失っていたと思われます。

※参考:『国家の品格』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106101416

それほど読み応えのある内容です。

名著の持つメッセージの力を、思う存分味わってみてください。

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■ 本日の赤ペンチェック
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良識とは、この世に何が大切であり、何が然らざるかを識別する力

叩いて、叩いて、叩き込むことこそ、パブリック・スクール教育の
本質であり、これが生涯におけるそのような時期にある青少年にと
って、絶対必要であるとイギリス人は考えているのである

教育に無理解な両親が不必要な干渉をもって臨んだり、意志薄弱な
家庭教師が子弟に阿ってこれを甘えさせ、みずから尊敬と信頼を失
った場合など、弊害は正に致命的である

共同目的である母校の名誉の賭された勝敗を措いて一人超然として
他事に没頭することは、全体の利益に対する奉仕を怠ることであり、
一種の裏切り行為であるとさえ考えられている

その行為自体の善悪が問題なのではない。ある特定の条件にある特
定の人間が、ある行為をして善いか悪いかはすでに決っていて、好
む好まないを問わずその人間をしてこの決定に服せしめる力が規律
である。そしてすべての規律には、これを作る人間と守る人間とが
あり、規律を守るべき人間がその是非を論ずることは許されない

現実が如何に苦悩に満ちたものであっても、時の経つにつれて、人
はそれに馴れたり、それを忘れたりする習性をもっている(中略)
平凡なこの道理を、彼等はその耐乏生活によって体得している(中略)
忍耐の精神がそこに生れ、少年達自身は幾度か繰り返された経験を
もとに、たとい無意識であるにせよ、人間のもつ適応性を信頼して、
正面から現実と取り組んでゆく勇気が起るのである

罪を犯したら男らしくこれを認めて罰を受けよ

青雲の志は大なるをよしとするかも知れない。しかし子弟の素質才
幹を究めず、徒らに「大臣たれ」「大将たれ」と責めたてることは
彼等に過重な負担を課し、空しくその精神を萎縮せしめるに過ぎな
い。あるものは負担に堪え兼ねて試験に不正手段を弄するに至るで
あろうし、あるものは学問修得の意欲を失うであろう。そしてその
多数は自己の才幹を的確に評価する良識を失い、また、上長に服す
る謙譲の精神を失うに至る――わが国の過去にはこれが一大禍根と
なっていたのである

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『自由と規律』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004121418
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■目次■

パブリック・スクールの本質と起源
その制度
その生活
スポーツマンシップということ

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