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アマゾン元バイヤー、土井英司による厳選ビジネス書評メルマガ。ベストセラー分析と本当に読むべき珠玉の一冊を提供しています。

『人生に小さな奇跡を起こす4つの習慣』

2004年09月30日 | Weblog
http://tinyurl.com/5fb76

もうお気付きだと思いますが、本日ご紹介する本もやはり、ストーリー形式の自己啓発書です。

著者のディック・ライルズさんは、ケン・ブランチャード・カンパニーの元社長であり、現在は世界的なコンサルティング会社、リーダーシップ・レガシーズ社のCEOを務めるディック・ライルズ氏。本書には、彼が提唱する「4つの習慣」と、その実践方法が書かれています。

他の自己啓発書同様、主張自体はきわめてシンプルですが、実践するのは、思い込みやプライドが邪魔をして、なかなかできないものです。

その点、本書のいいところは、主人公アルバートが、「4つの習慣」を疑い、屁理屈をいいながら、その効力に気付いていく過程が描かれている、という点です。

では、一体どんな内容なのか。さっそく見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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「二、三のよい習慣が君をずいぶん先まで連れていってくれるんだ」と提督は言った。「そういう習慣が辛いときも乗り越えさせてくれるし、次々と成功に導いてくれるんだ。そういう習慣のおかげで君は他の模範(ペースセッター)となる人になれるんだよ」

「人はよく指導者とかリーダーシップのことを話す。(中略)だが、ペースセッターになることを学ぶのはそれよりもっと大事なことだと、私は思っている。他の何よりもこのことが、君がキャリア上成功するかどうかを決めるんだ」

「昇進や出世のことばかり考えていてはいけない。君のまわりでいいことを起こらせる機会を探すんだ。そうすれば報酬はついてくる」

「君は仕事もちゃんとやっているし、十分賢明だと思うよ。だが、君にはまわりでもっといいことを起こす必要があるんだ。それこそが君が必要としている推進力になるんだよ」

「同僚の成果を貶めるのではなくて、君がより立派な貢献ができるように、他の人とはちがったことをしなければならないんだよ」

余分な努力というものは、ここぞというときの前にしておくものなんだよ。本番に備えて最高の準備ができるようにね

人生に小さな奇跡を起こす習慣、その1
最初に入って、最後に出て、付加価値を作り出せ!

頭のいい人間は――君もその一人だが―ー往々にして大きなまちがいを犯す。彼らは自分の頭脳だけが自分を動かしていると思っている

私自身に特別の才能がないことは、はっきりわかっている。好奇心、執念、それから頑固なまでの忍耐力が、自己批評の精神と結びついて、私のアイデアをもたらしてくれたのだ(アインシュタイン)

人生に小さな奇跡を起こす習慣、その2
結果に対していいわけをするな!

活動と生産性は同じじゃない。大事なのは結果なんだ。だから失敗したいいわけはぜったいに認めるべきではないんだよ

人生に小さな奇跡を起こす習慣、その3
前もって問題を解決せよ!

人が何かをしようと決めるときには――新しい決断を実行するためにしろ、問題を解決するためにしろ――意図しない結果を生み出してしまうことが往々にしてあるんだよ。こういう意図しない結果が新たな問題となるわけだ

問題解決の7つのステップ

1.問題を明確にする
2.目標を明確にする
3.代替案を出す
4.行動計画を練る
5.トラブルシューティング
6.コミュニケーションを持つ
7.実行する

常に行動に移す前にちょっと立ち止まって、何かまずいところはないか、と自問する習慣をつけることは、そんなに難しいことではないんだよ

人生に小さな奇跡を起こす習慣、その4
常に自分のまわりの人がいい顔でいられるようにする!

もし君たちみんながそのグループのそれぞれのメンバーについて自信を持って観察し、それぞれを貢献のレベルに従ってランク分けするとしたら、みんなのリストは同じものになるだろう
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著者もタイトルも地味ですが、なかなか興味深い内容です。
正直、冒頭部分は翻訳がスムーズではなく、読みづらかったのですが、本題に入ってからは、楽しく読み進めることができました。

というわけで、本日の一冊は、

『人生に小さな奇跡を起こす4つの習慣』
http://tinyurl.com/5fb76

です。今の境遇から抜け出し、飛躍するための習慣・仕事術のヒントが、いたるところにちりばめられています。

目次

アルバートの悪夢
アルバートの焦燥
ミセス・オライリーの助言
ファラガット提督との出会い
人生に小さな奇跡を起こす習慣、その1
アインシュタインの手紙…頭脳は成功とは無関係
人生に小さな奇跡を起こす習慣、その2
二つの習慣を身につけるための準備
二つの習慣に取り組む
そのとき、それは起こった!
ファラガット提督との再会
人生に小さな奇跡を起こす習慣、その3
意思決定と問題解決のステップ
常勝弁護士の成功の秘訣
「若きエグゼクティブ」はなぜトップになれたか
人生に小さな奇跡を起こす習慣、その4
提督は、第四の習慣を実践することの困難をいかに克服したか?
四つの習慣を身につけるための準備
四つの習慣に取り組むが……
キャンプ場での出来事
四つの習慣がもたらした最初の祝杯
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『ニート』

2004年09月29日 | Weblog
http://tinyurl.com/4bvak

著者は、東京大学助教授で、労働経済学を専攻する玄田有史さん。若年層の雇用に関し、衝撃的な問題提起を行った『仕事のなかの曖昧な不安』が話題を呼んだことでも知られています。

今回は、その玄田さんが、働くことにも学ぶことにも希望を失っている「ニート」(NEET:Not in Education, Employment, or Training)と呼ばれる人々に焦点を当て、この新しい概念と、それに当てはまる人々の問題点や悩みを紹介した、注目の一冊です。

ただ、正直、注目の一冊とは言え、中身の大半は読むに値しない、雑誌に毛が生えた程度の内容です。

この本は玄田さんとフリーライターの共著になっていますが、二人の論調はかみ合っていませんし、たわいない「ニート」との会話がだらだらと続くインタビュー部分は、正直、退屈以外の何ものでもありません。

ただ、最初と最後の玄田さんの論考は、読み応えがあります。

ということですので、本日の赤ペンチェックは、玄田さんの執筆部分から、おもしろいところだけを抜き出してみることにします。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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多くの若者が失業した原因は、職業意識の低下でも甘えでもない。不況のせいで求人が激減したことこそ、失業が増えた直接の理由である

業績の悪化と人件費の増大に追い込まれながら、多くの企業にとって、社員との軋轢がもっとも少ない人員調整の手段として選んだのが、若者の採用凍結だった

就職にも進学にも希望を失っている無業の若者が、今、日本に40万人いるのだ。なのに、この働くことも学ぶこともすべて放棄した40万人という巨大な存在は、社会のなかで、完全に忘れ去られている。

ニートにあるのは、将来見通しについての限りない希望のなさと、状況を転換することの困難さだ。ニートの日常の多くは、昼過ぎまで寝て、日常はぼんやりテレビを見たり、ときには夜まで「ブラブラ」したりといった生活を繰り返している

学業成績、不登校など、学校時代の状況がニートへのなりやすさと強い関連を持っている

ニートでは、最終学歴が中卒もしくは高校中退だという場合が、きわめて多い

衝撃をおぼえるのは、求職活動をやめてしまった理由として、「なんとなく」という、明確な原因を欠いている場合が一番多い事実だ

ニートが抱える対人関係の難しさは、多くが中学・高校時代にはじまっている

自分の存在意義に過大な不安を感じなくてすむような体験。他人と交わり働く自分に対するささやかな自信を実感できるような体験。そんな自信を持つためのリアルな方法を、義務教育を終えるまでの段階で、生きる知恵として身につけること。それこそが、今考えられる、ほとんど唯一のニート予防策だ

(兵庫県・富山県の職場体験プログラムをうけて)
教師に指示されるのではなく、自分たちだけで、遅刻することなく五日間通う。そのことが、教室にはない緊張感や責任感、そして充実感を、生徒たち一人ひとりに個人的な体験としてもたらすのだ

14歳が一週間働く意味は、そこでやりたい仕事をみつけることではない。自分がやりたいと思ってやってみた仕事の現実に触れ、自分の持っていた希望や夢がいかに表面的な印象や理解であったかを知ることのほうが、ずっと意味がある。(中略)やりたいことがあって、それが仕事にできれば、幸せだろう。だが、やりたいことがないからといって、それは不幸なことではない。仕事はそれがやりたいことであってもなくても、できるのだ。そこそこ、意外な面白みだってある

この本を読んだ人はわかるはずだ。ニートは、働く意欲の弱い一部の若者の問題ではけっしてない。自分も一歩まちがえれば、ニートだったかもしれない

私は、社会の深刻化の原因を意識や意欲の低下のせいと、単純に結論してはいけないことを経済学から学んだ。社会的に望ましくない事態が生じたとき、それを特定個人の悪しき意識の変化として解釈することには慎重でなければならないと経済学は教える。意識の変化という現実がそこにあったとしても、責めるべきは個人ではない。変化を生み出してきた、社会もしくは経済のシステムそのものなのだ
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最後の部分は、経済学者としての著者の真摯な姿勢を感じますね。きっと素晴らしい先生なのでしょう。

というわけで、本日の一冊は、

『ニート』
http://tinyurl.com/4bvak

です。仕事と幸せの関係について考える、よいきっかけとなる一冊かもしれませんね。

目次

第1章 「ニート」という若者
第2章 ニートに会う
第3章 14歳の分岐点
第4章 14歳と働く意味
第5章 ニートからの卒業
第6章 誰もがニートになるかもしれない
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『ドル暴落から、世界不況が始まる』

2004年09月28日 | Weblog
http://tinyurl.com/5qkn2

本日の一冊は、「ドル暴落→世界不況」の懸念を前面に打ち出し、その可能性を論じた、刺激的な論考です。

著者のリチャード・ダンカンさんは、ABNアムロ・アセット・マネジメント社の金融部門上級投資アナリストで、現在は香港に在住。1997年のアジア通貨危機の際には、IMFのコンサルタントとしてタイに乗り込み、事態の収拾に尽力したという人物です。

バブルが発生し、崩壊に至る、現在のグローバル経済の構造的な問題を、著者のアジアでの経験を交えながら語った、注目の一冊です。

アメリカ当局の対応や、それに伴って起きる問題など、さまざまな可能性を緻密に検証しながら、「ドル暴落→世界不況」の可能性を論じています。

では、さっそくその論点を見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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世界各国に巨大な市場を提供して、世界経済の原動力となってきたアメリカの経常収支赤字の修正・消滅は、アメリカを含む世界各国の経済が最も疲弊しきっている時に起きる可能性が大

大規模な経済ブームのほとんどは、大々的な信用創造の結果(中略)各国の中央銀行のみならず、世界中のエコノミストが見落としていた準備資産という変数が、過剰な信用創造をもたらす真犯人なのだ

かつての金本位制やブレトン・ウッズ体制の時代には、対外赤字に陥った国はその赤字を金でまかなわなくてはならなかったのに対し、黒字国が債権を受け取り続けるかぎり、赤字国は債務を積み重ねることが可能になったのが、ドル本位制の特徴であるという点がはっきりするだろう。そして、主たる赤字国こそ、アメリカというわけである

準備資産の増大には、強力なインフレ圧力が内在しており、日本もアジア諸国も、準備資産の激増に直面して、マネー・サプライをコントロールできなくなったのである。結果として経済は過熱し、資産価格の暴騰つまりバブルが発生し、ついではじけることとなった

過熱しつつある経済を冷却することも、資産バブルを初期の段階で鎮静することも、通貨当局にとっては政治的に難しい(中略)誰だって好況はうれしいし、それに水をさすような政策は、忌避される

バブルはどれも、最後はデフレに終わる。長期にわたって資金コストが低ければ設備投資が進むが、その結果として供給の増えた財・サービスを吸収するに足るだけ、消費者の購買力が増大することはないからである

アメリカは海外で売るよりもずっと多くを世界の残りから買い入れ、その支払いはドルですませている。そして、ドルを受け取った黒字国は、金利を稼ぐべく、受け取った分のドルをアメリカの証券に投資しなおす。つまり、アメリカが支払ったドルは、アメリカに帰ってくるのである

経済成長と銀行の融資の伸びとは、どちらが原因で、どちらが結果なのだろう? 実は、どちらの可能性も存在する。経済成長が融資残高の伸びをもたらすこともあるが、融資残高の伸びが経済成長に拍車をかけることもあるのだ(中略)アメリカでは融資の拡張が――いや、融資の拡張こそが――過去二〇年間の力強い経済成長と株式市場のブームを支えてきた

わずか一七年間でアメリカ企業の総資産は、一〇倍に膨張したのだ。狂乱の一九二〇年代に、そっくりではないか

投資が急落して失業率が上昇するというのは、景気後退が始まるときのお決まりのパターンだ。二〇〇一年のアメリカでも、まさにこのとおりのことが起きた。普通はこれに個人消費の急減速も見られるはずなのだが、驚くべきことに、アメリカではこちらはいたって堅調だった(中略)実は堅調な消費は、家計が消費者金融に背中を押されているからこそ、可能となっている(中略)アメリカ人は値上がりを続ける持ち家を抵当にして借金をし、それで消費を維持してきた

アメリカの家計には、困った時に引き出せるような貯蓄が、ほとんどない(中略)だいたい、所得よりも債務のほうが速く伸びていくという状態が、国家であれ個人であれ、いつまでも続くはずがない

アメリカの連邦政府の債務総額は六兆ドル、GDPの約五八パーセントである。絶対額で見ると、これは史上最大だ

長期的にはぼろぼろのアメリカ財政だが、短期的には強烈な好材料がある。それは、アメリカ政府の信用力が債務にまけないくらいに巨大なので、もうあと何兆ドルか債務を積み増そうとしても、おそらく何の問題も発生しないだろうという点である

政府財政の悪化が、もっとずっと急激なものとなる危険
・銀行危機の可能性
・デリバティブ市場のメルトダウン

短期的には、ドルの命運は、アメリカの連邦財政赤字がどれだけの規模、どれだけのスピードで拡張できるかということにかかってくる。(中略)しかし、アメリカ連邦政府でさえも、それだけの財政赤字をいつまでも垂れ流し続けることは不可能である。せいぜい、ドルの暴落は、執行猶予を与えられるだけで、いずれは確実にやってくるのだ

ドルがアメリカの主要貿易相手国のすべての通貨に対して大幅に下落しないかぎり、アメリカの経常収支赤字は今後数年間、大きくなるいっぽうだと思われる。それは裏返せばアメリカ市場で低賃金国からの輸入品の洪水が発生するということで、現在のアメリカのディスインフレーションは、これだけでも、全面的なデフレに化けてしまうかもしれないのだ

※この後は、著者による提言が続きます
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かなり読み応えのある内容でしたが、ページ数は200ページちょっとと、さほど多くはありません。現在のグローバル経済の構造を概観する意味でも、読んでみると面白いと思います。

というわけで、本日の一冊は、

『ドル暴落から、世界不況が始まる』
http://tinyurl.com/5qkn2

です。ぜひ、「論拠」まで読み込んでみてください。

目次

日本語版への序文
■第一部 ドル・バブル
第一章 帳尻の合わない世界経済
第二章 経済バブルは、どこから来るか
第三章 経済沸騰
第四章 アメリカのニュー・エコノミー・バブル
■第二部 ドル不況前夜
第五章 ニュー・エコノミー不況
第六章 ドルの命運
第七章 バブルの後遺症に苦しむ世界経済―銀行危機、財政危機、デフレ
第八章 自由貿易がデフレをもたらす
■第三部 ドル不況のかたち
第九章 世界不況の深度を測る
第一〇章 マネタリズム、マネーに溺れる
■第四部 ドル不況を超えて
第一一章 国際最低賃金制
第一二章 国際流動性を制御する
結論
訳者あとがき
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『知識資本主義』

2004年09月27日 | Weblog
http://tinyurl.com/6k7hq

本日の一冊は、アメリカを代表する経済学者、レスター・C・サロー氏による注目の論考です。

読んでいてすごいと思ったのは、資本主義の構造的な問題に着目し、なぜ資本主義が発展と衰退を繰り返すのか、それに伴い社会に問題が起こるのか、といった点を見事に解き明かしている点です。

学問をすることでこういった「本質」を学べば、経済活動におけるさまざまな嘘やペテンに騙されずに済みます。

株式投資ひとつをとっても、『今すぐ儲かる~』的な本を読むより、本書の方がずっと有意義だと思います。

『知識資本主義』というタイトルに必ずしも合致する内容ではありませんが、資本主義とグローバリゼーション、そして今後の世界経済の行方をうらなう上で、貴重な一冊だと言えるでしょう。

政治関連書としての側面もあるため、ここでは、ビジネス・経済にかかわる部分だけを抜き出してご紹介します。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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ビジネスという観点から考えるなら、通信技術の発展によってグローバル規模での販売と資材調達が可能になったことは、高い利益を生むと同時にグローバルであることが常に必要不可欠になったということでもある。

将来の経済的な成功の鍵は、新しい革新的なテクノロジーの開発にかかっている。そしてその技術を使いこなせる社会的能力や文化、そして知的態度の有無にかかっているといえる。経済発展の牽引車として、知的所有権が天然資源採掘の権利に取って代わったのである。技術、教育、文化といったソフトパワーが、他国への軍事的侵略と植民地支配というハードパワーに取って代わったといえる。

非常に稀に、普通より大きな、ないしはまったく予期せぬ事故が起こると、その当初は大きな関心を呼び、たくさんの意見が聞かれる。しかし、団体や委員会による組織的な行動がなければ何も変わらないのである。

我々は往々にして災害の検証を拒む傾向がある。なぜなら、そうすることがあまりにも悲観的だと考えがちだからである。同様の事件など二度と起こるはずがない。あまりにも悲惨すぎて、深く見つめることなどできないのだ。(中略)また人々は既存のシステムの改革や、そのシステムをつくったことの責任に直面したくないため、悪者を探し出して責任を擦り付けたくなるのである。

グローバル経済に参加した国々は、参加しない国々よりも速いペースで裕福になる。参加した国々は専門化や、規模の経済や、技術移転や、直接海外投資や、市場アクセスや、また参加することのみで得られる特殊な経営ノウハウを取得することができるなどの恩恵を受けることができる。しかし、その代わりにグローバル・ビジネスの要求に応えなければならず、そのためには教育、インフラ、よい治安などを提供する必要がある。

グローバリゼーションが人間生活を向上させる力となるのかどうかは、いかなるグローバル経済を構築するかにかかっている。星の運勢によって決まるものではない。それは人々が進もうとしている方向と、構築しようとしているシステムによって決まっていくのである。

資本主義の欠陥は、その成功同様、資本主義の遺伝子ともいえるその本質的な部分によって引き起こされている(中略)したがってグローバリゼーションは、資本主義の経済的不安定に耐えられるように構築されなければならない。

資本主義の成功とその不安定さの理由は、人間の三つの根本的な態度に求めることができる。欲、楽観、そして群集心理だ。

暗い将来を予見する者には報償はない。少なくとも、それが現実に起こるまではである。バブルの真っ最中に、株式アナリストの「買うな」という助言にカネを払う者はいない。(中略)銀行は融資をしてカネを稼ぐ。融資をせずに稼ぐのではない。

すべての資本主義下のバブルは、不祥事で終わるのである。バブルが終わろうとするころ、好景気をもう少し持続させようとする圧力はものすごく強くなる。目標の数字に達成させようと躍起となり(アナリストの予測したとおりに、売上や利益は上昇しなければならない)、目標達成のプレッシャーは企業のトップから末端にまで及ぶ。

(バブルの崩壊に関して)
理性的な左脳では、まったく利益を出していない会社に何百億ドルもの資産価値などあり得ないことは分かっていたはずである。個人投資家が株を買ったのは、騙されたからでなく、感情に支配される右脳によって簡単にカネ持ちになれるのではないかと思い込んだからである。

(会計監査に関して)
雇い主や自分をクビにできる人、または報酬額を決定できる人に歯向かう者はいないだろう。もし完全に正直な会計監査を望むなら、連邦政府は金融察なるものを成立させ、職員を雇い、手当たり次第に法律どおりの会計検査を企業に対して実施しなければならない。

新しい技術の導入による高い生産性の伸びは、短期的には問題もあろうが、長期的には歓迎すべきことである。雇用数は減少しているが、一人当たりの生産高は増大している。(中略)この生産性の伸びを国のGDPの成長に結びつけるためには、生産性の川下で職がなくなるよりもさらに早く、生産性の川上とその途中に位置する部署で雇用を増大させるようなマクロ経済政策が実施されなければならない。

民間が生産のために資本を貯蓄することを認める社会は、それを認めない社会(社会主義)よりも本質的により不平等なのである。

価格標準化現象はグローバリゼーションの度合いを測る指標(中略)価格標準化現象は個別の現象でなく、知識集約型社会の発展に伴って進展するものである。

(知識集約型社会において)技術のある者は、労働者であると同時に資本家である。自らが人的資本なのである。

グローバリゼーションを脅かす危機
・ドルの暴落
・知的所有権の崩壊

知的所有権が今日の知識集約型経済社会すなわち知識資本主義の核となっている。知識や情報はただではない。知識や情報を得るためには投資が必要である。金を保持することが許されないのなら、人は金鉱を掘らないように、それを保有することが許されないのなら、人は知識や情報を求めないだろう。数学、ソフトウェア、バイオ遺伝子工学、そして経営学の進歩は特許、著作権、商標の保護によるところが大きい。

今日、資源は誰でも世界市場で安く手に入れることができる(中略)今日、市場は世界のどこからでもアクセスすることができる。同様に、(中略)資本は借り入れることができる。残る本当の意味での競争力となると、それは他が持たない技術、侵すことのできない著作権、または他社と差別化することができるブランド名ということになる。

既存の知的所有権に関する3つの問題
1.現在のシステムは今日のテクノロジーに対応するようにはつくられていない
2.新しいエレクトロニック・テクノロジーは古い所有権の行使を不可能にしてしまった
3.知的所有権を守るグローバルシステムが存在しない

CKO(最高知識責任者)の概念と役割
・新しいグローバル知識資本主義における短期・長期の戦略と戦術
 を計画立案し、そして指導すること
・テクノロジーと、それがいかに社会と経済とに関わっているかと
 いう正確な情報を提供する

知識資本主義―成功の条件
・バイオテクノロジーに対する態度
・男女の経済的な役割に対する態度
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いかがでしょうか。グローバル経済と、知識資本主義社会に起こる問題点、課題が明らかになったのではないでしょうか。

というわけで、本日の一冊は、

『知識資本主義』
http://tinyurl.com/6k7hq

です。お堅いテーマの割には読みやすいので、ぜひ読んでみてください。

目次

第1章 バベルの塔
第2章 アメリカ・日本・ヨーロッパ
第3章 資本主義の本質
第4章 反グローバリゼーションの声
第5章 真の脅威
第6章 資本主義を建て直す
第7章 CKO(最高知識責任者)
第8章 知識資本主義――成功の条件
訳者あとがき
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『小さな会社のメルマガ営業術』

2004年09月26日 | Weblog
http://tinyurl.com/3jtoy

本日ご紹介する一冊は、メルマガの世界で実績を挙げている、カリスマコンサルタント、平野友朗さんの最新作です。

平野さんとは、本が出る前に打ち合わせをさせていただいたのですが、その熱心かつ謙虚な姿勢、そして鋭い質問に、「やはり本当に実績を出している人は違う」と感心しました。

今回の本は、その平野さんが、これまでにメルマガ500誌以上を支援、読者一万人超を50誌プロデュースしたノウハウを語ったものです。

自らもメルマガ営業だけで顧客1500社、年収3000万円を実現した、というだけに、説得力は抜群です。

では、実際にどんな仕上がりになったのか。さっそく内容を見ていきたいと思います。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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<メルマガ営業とは>
商品を販売することでそのプロセスを終了するのではなく、その後のメルマガによる情報配信を通して啓蒙・教育を行ない、お客様をファンにして、さらには信者になるまで育てる全体的なプロセス

大手企業だと、場合によっては広報の検閲が必要かもしれませんし、世間に与える影響力が大きいので、本当に伝えたいこと、考えていることを書けないことも多くなります。どうしてもよそ行きの言葉になってしまうわけです。中小企業では、担当者の名前を出し、「顔の見えるメルマガ」を作って成功している例がたくさんあります。

インターネット上のあらゆるところに広告を出して、資金を浪費している会社をいまだに見かけます。しかしそのような会社に限って、「顧客フォロー」(育成)がまったくできていません。既存客を育成するステップを見直し、そのためのシステムを構築することができれば、売上は驚くほど伸びます。

現在のインターネットにおける営業展開は、顧客名簿(メルアドリスト)をとても重視しています。この状況はしばらく変わらないでしょう。精度の高い(商品に興味を持ってくれているお客様の)メールアドレスを何件集められるかが、ビジネスの勝敗を分けるのです。

メルマガで成功しているのは、内容に「人」の要素が加味されている中小企業や個人なのです。

実は、私が一番参考にしているのは通販番組です。この業界はマーケティングを研究し尽くして番組を作るので、そこから最新のトレンドや効果的な販売方法を学ぶことができます。

メルマガを発行していると、メルマガそのものはもちろん、その発行者(社)が一つのブランドになることがあります。このメルマガを活用したブランド戦略は、メルマガ営業においてとても重要です。

メルマガ発行者は情報を発信しているだけでいいと思われていました。しかし今は、一方通行ではなく、”プラスα”が必要になっています。たとえば、メールで直接コミュニケーションする(質問に答えるなど)というのも、その一例です。また、読者の声を誌上に掲載したり、セミナー(講演会)を開催して直接、読者と会ったりするなどのアナログ手法を組み合わせるのも効果があります。

どのような目的で、どのような結果を得るためにメルマガを出すのかを、意識することが重要(中略)目的が決まったら、誰に対してどのようなメルマガを出すのか、そしてそこに何を書くのか、つまり読者対象と内容を選定する。

読者は、独自の視点や個性で情報を解説してくれることを求めている。

トレンドを見極めるために、常に読者に支持されているメルマガを研究しましょう。

メルマガを一瞬で読みやすくする8のポイント

ポイント1 意外に多い機種依存文字による文字化け
ポイント2 レイアウトは文字数、行間を意識
ポイント3 記号や罫線でメリハリを
ポイント4 冒頭に目次を入れる
ポイント5 専門用語はできる限りわかりやすく
ポイント6 読むリズム重視で漢字は少なく
ポイント7 読点を増やして読みやすく
ポイント8 URLやアドレスは半角のカッコでくくる

メルマガにはメインとなる情報以外にも、ちょっとしたアクセントを加えるコーナーが必要です。(中略)メルマガで言えば、読者の声を紹介するコーナーや、関連ニュース、編集後記などがそれに当たります。

メルマガが開封されるかどうかを決める要因の一つに、メールの受信時に表示される件名(subject)があります。メールの件名のつけ方によって、開封率は大きく異なります。

メルマガでも同じように、反応の良い曜日・時間帯があります。配信する内容・ターゲットによって曜日・時間帯を変えるべきです。

商品にはお客様ごとに納得できる価格帯というものが存在します。利益をもたらしてくれるお客様が、どのような価格で反応するのかを見極めることが重要なのです。

思わず買ってしまう「ホームページ」のヒント
・独自ドメインを用意
・販売者のプロフィールや顔写真
・お客様の声
・法律関係の表記
・商品の紹介ページ
・1ページで商品を売り切る
・冒頭・中段・結論の3段階で作る

クロスセルとアップセルで戦略的に単価アップを狙う

お客様をファンにしてしまう顧客フォロー術
1.申し込み時に感謝の気持ちを伝える
2.商品の発送時にひと工夫
3.届いたころに相手を気遣う心配りを
4.使用したころにもきめ細かな連絡を
5.その後で、やっと売り込みもOKに

インターネット広告
・バナー広告
・オプトインメール広告
・メルマガ広告
・PPC広告
・アフィリエイト

お宝広告媒体の簡単な見つけ方
1.毎回広告が出ている
2.発行者のメルマガ自体に人気がある
3.広告料金が載っている
4.発行者の信頼度が高い
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あまりに多いので、割愛しますが、本書には、ほかにも、検索エンジン対策、メルマガのブランド化など、さまざまなノウハウが詰まっています。これから始める人、読者数を増やしたい人、精読率を上げたい人には、参考になる一冊だと思います。

というわけで、本日の一冊は、

『小さな会社のメルマガ営業術』
http://tinyurl.com/3jtoy

です。メルマガに限らず、インターネットマーケティング全般に役立つ話が満載のノウハウ書です。

目次

プロローグ
Chapter1 次々にお客様が増える「メルマガ営業」のすごさ
Chapter2 人気メルマガが実践する、ちょっとしたコツ
Chapter3 売上につながるベストな配信方法はこれだ!
Chapter4 「メルマガ+ホームページ」で商品が面白いように売れる!
Chapter5 お客様をとらえて離さない(秘)顧客フォロー術
Chapter6 これからは顧客名簿「メルアドリスト」が勝敗を決める!
Chapter7 ライバルにあっという間に差をつける販促戦略
Chapter8 勝ち組メルマガのブランド戦略に学ぼう!
Chapter最終 どうしてもうまくいかない時の打開策
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『金持学』

2004年09月25日 | Weblog
http://tinyurl.com/566tu

著者は、上場企業メイテックの創業者で、現在はベンチャーセーフネットという企業の会長を務める関口房朗さん。

長者番付の常連で、その豪快なお金の使い方から、ついたあだ名は「ミスター大盤振る舞い」。プライベートでは、六本木ヒルズに住んだり、馬主として日本ダービー、アメリカのケンタッキー・ダービーを制覇したりと、何かと話題の多い方です。

長髪を後ろで束ねた奇抜な髪型と、口ひげ、ゴージャスなファッションがトレードマークだそうですが、見た目は正直言って「成金」。

でも、本日ご紹介する『金持学』を読めば、じつは苦労人で、骨太の思想を持っていらっしゃることがわかります。

さっそくその波乱万丈の人生ドラマと、骨太の人生論・経営論を概観してみましょう。
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 本日の赤ペンチェック――著者の言葉より
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私は貧困を否定しているのではない。私が否定しているのは、適当な言い訳を並べて夢を諦めてしまう「心の貧しさ」だ。

オシャレをするということは、他人の目を意識するということだ。これは自分の言動を律する上で非常に大切なことである。

ゴールなきチャレンジの連続こそが、人生(中略)目標に向かって全力で走り続ける。しかし最後までゴールに到達しない。このパラドックスの中にこそ、本物の成功があるんや。

■関口流・成功する男の七カ条■
第一条 セックスアピールを持て!
第二条 昆虫人間になるな!
第三条 自己投資を惜しむな!
第四条 基礎を積み上げろ!
第五条 常に三年先を読め!
第六条 自己アピール力を磨け!
第七条 夢とロマンを持て!

■関口流・失敗する男の三カ条■
第一条 金に執着しない男
第二条 人を大切にしない男
第三条 失敗を知識化できない男

金が入ると、ウソやジェラシーといった、人間の一番汚い部分を前面に出した人々が群がってくる。そして彼らに騙され、傷つけられていくうちに、だんだんと人を見抜く目が養われてくる。しっかりとした自分を保つ強さが生まれてくる。本物とニセモノの違いがわかるようになってくる。お金によって、人は大きく傷つき、やがて成長するのだ。

経営者とは、ネクタイを締めた瞬間から役者であり、芸人であるのだ。舞台の上では、一切の「私」を捨て去り、すべて「公」たる会社のために尽くさねばならない。その腹積もりがなかったら、真の広告塔にはなれん。もしも会社の名前が知れ渡るのであれば、ワシ個人が笑いものになっても構うもんか。自分がカッコつけたいために宣伝の機会を失うようじゃ、企業を経営する資格なんてないわ。カッコいいも悪いも全部引き受ける、それが経営者や!

成功したいと思うなら、特にリーダーとして活躍したいと思うなら、笑いものになる勇気を忘れないでほしい。メッキで飾ったリーダーの下には、同じような人間しか集まらない。リーダーが裸になってこそ、部下たちも裸になれるのだ。思い切って、ワシくらい世間から笑われてみい!

成長の過程で、部下は必ず失敗をする。イライラすることもあるに違いない。しかし、上司たるもの、そしてリーダーたるもの、決して逃げてはいけない。自分だって誰かにそうやって育ててもらったのだし、部下が育たないことには、組織全体が活性化していかないのだ。

プラス思考とは、何も考えずただただ前に進むことではない。自分の足元を見つめ、反省すべきを反省し、改めるべきを改める謙虚さこそが、真のプラス思考なのだ。だいいち、失敗を人のせいにするなんかカッコ悪いやんか。苦境に立たされたときこそ、カッコよく生きなアカンのや!

走るために生まれ、走れなくなれば消え去っていく競走馬の哀しい宿命を、私はどうしても自分自身と重ね合わせてしまうのだ。もちろん、私は駄馬として生まれた男だが、「走るために生まれ、走れなくなったら死ぬ」のは、ビジネスマンとしての私にも言えることなのである。
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このほかにも、泣かせるエピソードや、職人たちの情熱を感じさせるエピソード、若いビジネスパーソンに向けたメッセージなど、ためになる話がたくさん詰まっています。

派手な成金を演じる関口さんの、経営者としての悲哀。そして重ねてきた年輪の深さを、この一冊から感じました。

というわけで、本日の一冊は、

『金持学』
http://tinyurl.com/566tu

です。やはり、「本と人は見た目によらない」ようです。

目次

第1章 過剰なる日常
第2章 成功する男、失敗する男
第3章 金に好かれる男、嫌われる男
第4章 ひらめきの仕事術
第5章 二度の倒産、そしてクーデター
第6章 馬に学んだ常勝哲学
終章  若いうちにやっておくべきこと
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『郵政民営化で始まる物流大戦争』

2004年09月24日 | Weblog
http://tinyurl.com/5akqf

本日の一冊は、郵政民営化のインパクトを、さまざまな視点から検証した、注目の一冊です。

取扱高24兆円7000億円、経常利益約2兆6000億円の超巨大企業が本気で動けば、民間企業には、甚大なダメージがもたらされる可能性があります。宅配便、生命保険はもちろんですが、場合によっては予想もしていなかった業界にまで、影響が出るかもしれません。

それだけに、日本郵政公社の動向は、物流関係者ならずとも、非常に気になるところです。

本書では、日本郵政公社の事業がよりグローバル化していくことを視野に入れており、アメリカ、ヨーロッパなど、他国の物流事情についても、詳しく述べられています。

感動を求めるためではなく、情報を得るために読む本であるため、赤ペンチェックも単調になってしまいますが、さっそく要点を見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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二〇〇三年度の日本郵政公社の取扱高は約二四兆七〇〇〇億円で、経常利益は約二兆六〇〇〇億円。時価総額は四〇兆円にのぼるという試算もある。民営化により株式を公開することになれば、低迷気味の東京証券取引所にとっても絶大なインパクトを与えることになるだろう。

巨額の郵貯、簡保資金は民間から吸い上げたカネで、それが平成不況の遠因ともなっている。郵貯、簡保の巨額の資金は経済効率の悪い公共部門で塩漬け状態になっている。民間で広く活用されれば日本経済は間違いなく上向きになる。

近年、郵便事業は物流事業との関係から世界各国のビジネストレンドに組み込まれつつある。グローバル化の影響で重要性を増しつつある多国籍企業などの物流・配送ネットワークの構築に大きなスポットが当てられてきたのである。

インターネットで商品を購入した場合、輸配送が正確、迅速に行われるシステムと代金決済が安全にリンクすることが望まれ始めている。金融サービスと配送サービスがセットで行われるビジネスモデルが、グローバルなビジネス環境下で求められてきたわけである。

郵便事業の枠だけに留まらず、宅配便、ロジスティクス事業などの企業物流の構築に本格的に乗り出していくというのが日本郵政公社の描くロードマップ

欧州郵政改革の先行例:ドイツポスト
ドイツポストは企業物流改革の流れを郵便改革に転用し、郵便システムの効率化を図った。ちなみにその背景にはトヨタのかんばん方式などの日本式物流コンセプトも強く影響しているようだ。

郵便事業は人件費が経費の八〇%を占め、収益力がきわめて低い。経費削減を徹底させるだけでは競争力強化に限界がある。それゆえ物流企業への出資、あるいは業務提携を推進し、宅配便事業やロジスティクス事業などを強化、多角化する必要がある。

都市部における”不在”の問題
=宅配便企業が注目しているのが、家庭用の郵便受けや新聞受け、あるいは日中の不在のないオフィス。すなわち”ポスト投函市場”だ。
※ちなみにクロネコメール便はこのポスト投函にあたるが、年商500億円をたたき出している

郵政公社化に伴って、一部のビジネス信書を民間企業が配達することが認められた。(中略)すでにバイク便企業などが参入している。

日本郵政公社が運送委託を行うのは、ライバルであるヤマト運輸などの宅配便最大手ではない。むしろ、中小、あるいは中堅クラスの物流企業で、しっかりとした配送ネットワークを持つ会社が対象となる。

欧米の物流業界のトレンド

・3PL(サードパーティロジスティクス)
物流部門の戦略的アウトソーシング
・4PL(フォースパーティロジスティクス)
優れた3PLのノウハウを持つ物流企業が別の物流企業にノウハウ提供

巨大化した欧州各国ポストの例

・ドイツ=ドイツポスト・ワールドネット
・オランダ=TNTポストグループ
・イギリス=ロイヤルメール
・フランス=ラ・ポスト

ヨーロッパで注目を浴びるハイブリッドメール
=パソコンで作成した文書や画面をインターネット経由で郵便として出すしくみ。ドイツポストやオランダTPGが関心を示している

欧州郵便戦争における合従連衡

・DHL&ドイツポスト(DHLを傘下に)
・フェデックス&ラ・ポスト(業務提携)
・TNTポストグループ&TNT&ロイヤルメール&シンガポールポスト

欧州統合の最終段階・EU郵便市場統合
=郵便市場を全欧規模で統合することにより、モノの移動の自由をさらに徹底させていくのが、ブリュッセルのEU本部の方針

米国物流企業が欧州郵便戦争に対して”高みの見物”を決め込めないのは、欧州郵便・物流市場の動向が米州統合やアジア物流のゆくえに大きな影響を及ぼす可能性が高いからだ。

もはや「日本メーカーの物流は日本の物流企業が請け負う」という時代ケースではなくなりつつある。ドイツやオランダに進出した日本企業にとっても、ドイツポストやオランダTPGに自社の物流を任せたほうがうまくいくケースが増えている。

アメリカの例:米国郵政公社(USPS)
民営化の流れも、実際は慢性的な赤字垂れ流し
米国の郵便市場では、一部の書状と書籍・カタログの民間参入OK

クリントン大統領が認めた物流の規制緩和
=在庫管理、物流コストの削減など広範囲に及んだ

米州ワイドで宅配便・物流業界をリードするのは、業界最大手のフェデックスだ。すでに米州の翌日配達システムを完成。自社の貨物専用機は定期便として日本にも乗り入れている。同社は街中に自前ポストも設置。全米の郵便事業が民間に全面開放されれば事業参入に名乗りを上げてくる可能性も高い。

フェデックス・UPS
=ドイツポストなどの欧州郵便事業体との決定的な相違は、「郵便事業を自社の物流ネットワークに完全に加えているわけではない」ということ

アメリカ スタンプ・コム社
=イーベイ社などの有力ネットビジネス企業などの郵送サービスを提供

韓国 サーバーリンク社
=インターネット無料郵便局「ユーポスト」でビジネスモデル特許取得

郵便・宅配便システムで考えられる新サービス、新事業
1.物流ハイブリッド郵便サービス
2.公共データハイブリッドサービス
3.ハイブリッドメール事業を促進
4.電子公証

アジア物流の中核となるシンガポール
=シンガポールポストは、英国郵便自由化の流れのなかにある英国郵政ロイヤルメールとの業務提携を強化している。”アジア郵便市場統合”が将来、実現するとなれば国際的なイニシアチブを握る可能性もある。

シンガポールを中心とする東南アジアの郵便・物流に、これから日本郵政公社がなぐり込みをかけるのは容易なことではないかもしれない。そこで注目されるのが日中間の郵便や物流だ。

宅配便・企業物流と金融サービスのリンクという新潮流
=ヤマトコレクトサービス、クロネコ@ペイメントなど

カギを握る物流不動産ビジネス
=ドイツポスト傘下のポストバンクは不動産金融部門にも力を入れているが、このフィールドでも物流と金融の融合現象が顕著になっている。そして郵貯事業をリテール金融からコーポレート金融に切り換えていく過程でも、不動産金融が大きなカギを握る可能性も出てきている。
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ひたすら業界の動向と先行事例について述べた本なので、知っている人は、読む必要性はないかもしれません。

ただ、郵政の民営化により、各産業にどんな影響があるのか、について興味があるなら、きっと参考になるでしょう。

というわけで、本日の一冊は、

『郵政民営化で始まる物流大戦争』
http://tinyurl.com/5akqf

です。決して読んで面白い本ではないですが、ビジネスヒントが満載の一冊です。

目次

はじめに
プロローグ 郵政民営化で業界に激震がはしる!
第一章 郵政民営化で日本はどうなる!?
第二章 拡大を続ける欧州巨大ポスト!
第三章 輸送ビジネスを刷新する米国物流メガ企業
第四章 日本郵政公社が挑む世界物流大戦争
第五章 揺れる日本郵政公社の郵貯・簡保戦略
第六章 グローバル化のなかで物流企業を見定めるポイント
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『頭がいい人、悪い人の話し方』

2004年09月23日 | Weblog
http://tinyurl.com/527wu

本日の一冊は、6月の刊行以来、ずっと売れ続けている新書です。内容は、ざっくばらんに言ってしまえば、「頭が悪い人の話し方」の典型例を全部で40取り上げ、解説したもの。

著者は、大学受験の世界で「小論文の神様」と呼ばれる文章の達人、樋口裕一さん。型通りに書いて高得点をねらう、独自のメソッドが話題になり、私もかつては『ぶっつけ小論文』などでお世話になったものです。

参考:『ぶっつけ小論文』
http://tinyurl.com/4dbrl

しかし、今回は、社会人向けであるうえに、テーマが「話し方」。
どんな内容に仕上がっているのかは、まったく未知数です。

さっそく内容のポイントを見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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1.道徳的説教ばかりをする
まず、物事は道徳では動いていないこと、道徳を説教しても、ほとんどの場合意味がないことを知るべきだ。不道徳な行動をとる人も道徳を知らずに行動しているわけではなく、道徳を知った上で、それを否定しているわけだ。そのような人に道徳を説いても、意味はない。

2.他人の権威を笠に着る
自分でしっかりと考え、それを他者に示してこそ、知性が感じられるものなのだ。優れた本を参考にするのはよい。的確に学者や評論家の意見を示して、それを適用して考えようとするのはよい。だが、他人の判断に寄りかかっている限りは、知性は感じられない。

3.自分を権威づけようとする
権威をいくら増したところで、知性が増すわけではない。それどころか、自分を権威づけようとすればするほど、その人の知性の底が割れて、愚かに見える。それを忘れてはいけない。権威とは、自分で高めるものではない。人が認めてくれてこそ、権威になるのだ。

7.少ない情報で決めつける
世の中にはさまざまな可能性がある。そして、誰もがすぐに思いつくことが最も可能性の高いことだ。だが、そのほかにもいろいろな可能性がある。少ない情報で決めつけるということは、そのほかの可能性を除外することになってしまう。

19.低レベルの解釈をする
そもそも、人間はそのような欲望のみで生きるものではない。もちろん、原初的には欲望が突き動かしている面があるが、それ以上に、理想や理念や人生観のようなものが存在する。それに基づいて、行動する面が多い。それを一律に単純に、しかも欲望のレベルで解釈するということは、その解釈を口に出している人間の思考のレベルを示してしまうのだ。

22.強がりばかり言う
強がりを言わなくても、本当に力があれば、誰もがすぐにそれを認めるものだ。それに、強がりを言わなくても、さっさと自分の実力のなさを認めて精進してこそ、だんだんと実力がついてくるもの。(中略)自分の真の能力を見ないふりをするという「逃げの姿勢」を改める必要がある。そのような甘えが残っている限り、いつまでも逃げ続け、いつまでも能力を発揮できずに終える恐れがある。

26.正論ばかりをふりかざす
人間の弱さを知り、悪い心も知り、自分の中に誘惑に負ける気持ちがあることを認め、その上で清廉潔白であってこそ、知的な生き方だ。それを知らなければ、愚かとしか言いようがない。

30.差別意識を口に出す
差別をするということは、ある種の人の人格を認めないということであって、それは偏狭な精神を意味する。言い換えれば、まさしく教養がなく、多様な価値観を認めることができないということだ。

32.感動癖がある
考える癖をつけることだ。そして、感動するのは、その後のご褒美と考えるとよい。そうして得た感動のほうが、雰囲気で得た感動よりもずっと深くて大きいのだ。

40.バカでよいと居直る
「私はどうせバカ」という言葉に、人間に対する尊敬の念の欠如を感じるのだ。なぜなら、この種の人は、人間は成長できないと決めつけているからだ。そして、「バカ」ということを隠れ蓑にして、甘ったれているからだ。
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こんな風に、ただひたすら「頭が悪い人の話し方」が並べられています。決して科学的ではないですが、それなりにおもしろい読み物ですし、読みやすくまとめられているとも思います。ただ、正直言って、構成が単調すぎます。

また、ひとつ気になったのは、やたらと「この種の人」という表現が多用されている点です。人間をタイプ別に分けて、十把一絡げに論じてしまうのは、それこそ知的な態度とは言えない、と思うのですが、いかがなものでしょうか。

というわけで、本日の一冊は、

『頭がいい人、悪い人の話し方』
http://tinyurl.com/527wu

です。自分の態度を改める指針として、また難しい人々と付き合う際の処世術として、読んでみたらおもしろいと思います。

目次

第1章 あなたの周りのバカ上司――部下から相手にされない話し方
第2章 こんな話し方では、異性が離れていく――だから女性に嫌われる
第3章 絶対に人望が得られない話し方――こんな人とはつき合いたくない
第4章 こんなバカならまだ許せる――この程度なら被害はない 
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『「売れるブランド」のつくり方』

2004年09月22日 | Weblog
http://tinyurl.com/3pafn

本日の一冊は、ちょっと前までたくさん本が出され、盛り上がっていた「ブランド」に関する書籍です。

この一時期のブランドブームは、vol.63【口コミ新理論】でお話した「口コミ」ブーム同様、すぐにしぼんでいきました。理由は簡単。ほとんどの企業が、多額の費用を投下した割に、効果が出なかったからです。

ブランド論の書籍で紹介される事例は、ブランドブームの前も後も、すでに成功しているルイ・ヴィトンやウォルト・ディズニーのことばかり。つまり、ブームの後に、成果としての新事例は出なかったということなのです。

土井は、この失敗の理由は、主に3つあると見ています。

まず一つは、ドゥ・ハウスの稲垣さんが、著書『実学入門 なぜ売れないのか 』でおっしゃっていたように、ほとんどの客は、ブランドではなく、店頭で何を買うか決めている、という事実です。つまり、マーケティングの一要素であるブランドは、他のマーケティング要素と比べて、必ずしも優位に立っているわけではない、という事実です。

参考:『実学入門 なぜ売れないのか』
http://tinyurl.com/5exst

もう一つは、ブランディングそのものには効果があるけれども、それを実行する広告代理店が無能、もしくはやる気がなかった、という可能性です。

そして最後の一つは、これまでのブランド論が、例の「口コミ論」同様、本質に触れていなかったという可能性です。先日ご紹介した『おしゃべりで世界が変わる』で言われていたように、「口コミを利用しようとしてもヒット商品は生まれませんが、皮肉なことにヒット商品のすべては口コミによってのみ生まれます」的なことが、ブランドにも起こっている可能性があるのではないか、ということです。

参考:『おしゃべりで世界が変わる』
http://tinyurl.com/5vdq9

以上、長々と述べてきましたが、ブランド本ブームが終焉した今、あえて出版されたブランド本。どんな内容なのか、さっそく要点を見てみましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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先入観をいかに排除し、クリエイティビティを持てるか。これが、これからのブランディング、マーケティングには必要

企業においても「人格」が大切になってきているのが今の時代。だとすると、その「企業という人格」がどんなエモーションをもって顧客に接しているのか、接するべきかを、もっと考えていいのでは

「知ってもらい」「好きになってもらい」、その上で「買ってもらう」まで含めて、初めて現代のブランディングと言える

BrandScape(ブランドスケープ)
=「ブランド」+「ランドスケープ(景色)」つまり、「そのブランドに触れることによって、心の中にどんな景色が生まれるのか」
※強いブランドは、その名前を聞いたとたん、あるいはそのシンボルマークを見たとたんに、ある種の風景を思い浮かべさせます

キーワードは「夢」と「スタイル」
・強い目的意識(=「夢」)を持っている企業はブランドになる可能性を持っている
・強いブランドは永きにわたって固有の「スタイル」を貫いている

企業が生活者、株主、社会、そして実際にその会社で働く社員に対して何を「約束」できるか、が大変重要(=ブランドプロミス)(中略)「言っていること」と「やっていること」が一致すること

優しさを追求する企業と、時代の先端を切り開いていく企業とでは、名刺に使われるカラーも、紙質も、異なってくるはずです。それらによって創造される「イメージ」は、「見栄えがいいこと」をゴールとするのではなく、「ブランドの本質をより魅力的にデザインすること」であるべきだからです

なんのためのブランディングなのか
・論理的道筋を辿って他社のブランディングのまねをしていけば、自社もブランドになれるという勘違い
・「他社はこうやっている」ことを本で学び、異業種交流会で他人がどうやっているかを聞きかじり、そのやり方をなぞっただけでは、ブランドは生まれません。残念ながら。そこに、あなたの会社だけの、あなたの会社の商品だけのSomethingがなければ、人は魅力を感じてくれないのです

ある商品の「優れた点」は、大きく分けて二つある
・競合商品と比べた時の「機能的優位性」
・「消費者がその商品の中に見出す優位性」

マーケティングの仕事の基本は、まず担当する商品の特長を理解し、それが消費者の目にどう映るか、どうコミュニケーションすれば最も魅力的に見えるかを、リサーチベースで探っていくことです。いわば入念な調査と深い洞察により解を見出す探偵のような仕事です。特に重要なのは、「コンシューマーインサイト」と呼ばれるキーを探し出すこと

あるブランドとパーソナルな「物語」を持つことは、そのブランドとの結びつきをより特別なものにしてくれるはずです。その「物語」作りの時に、広告代理店が持っている資質の一つである「消費者行動とメディア特性の関係性」についての知識と経験が役立つのです

ブランドを創るのには、何かと前任者の業績を否定したがる新しいマーケティングマネージャーの着任や、”飽き”が最大の敵だ
(デビッド・オグルビーの言葉)

ブランドプロミス創造に向けた、三つのアプローチ
・ブランドの意思の確認
・生活者から見たブランドの実態
・市場環境

インタビューの席は、単に意見を伺うだけの場ではなく、ブランディングとは何なのか、そしてブランディングを成功させるためにはいかに社員の皆さんの主体的な協力が不可欠なのか、という話をさせていただく絶好のチャンスでもある

「着たい服」と「似合う服」は違う―自己認識と現実とのギャップを埋めるステップがとても大切

ブランドを創り上げていくための根本原則は、「『良さ』を『強み』に変えていく」こと

Core Valueを見つけるためには、
・先入観を捨てる
・客観的判断材料を手元に置く
・比較の対象を明確化するため、自らのドメイン(事業領域)をはっきりさせる
・自らに自信を持つ

「良さ」を「強み」に変えていくためには、
・Core Valueを、自らを高めるものとして全社員が認識する
・Core Valueを育てるための「企業風土」を明確にする
・その強みを顧客に強く印象づけるための「行動指針」を設定する

どんな人たちに好きになってもらいたいか、を明確に意識してコミュニケーションしていくことによって、ブランドは強くなれます
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若干、宣伝色が強いのが気になりますが、中身的には、従来の考え方に著者の主張を補足し、一歩実践に近づけた、という点で価値があると思います。

私も仕事を通じて感じていることですが、売るためには、「思い込み」は最大の敵です。本書には、この敵を排除するための考え方が示されていると言っていいと思います。

というわけで、本日の一冊は、

『「売れるブランド」のつくり方』
http://tinyurl.com/3pafn

です。コンパクトですっきりした装丁ですが、中身はなかなか読み応えがあります。ブランド論に辟易していた人も、久々に読んでみてはいかがでしょうか。

目次

Preface

CHAPTER1 ブランディングってなんだ?
1「ブランド」と「ブランディング」ってなんだ?
2BrandScapeでブランドの本質を探す
3ブランディングを始める前に
4「ブランディング」が目指すもの
5これはうまい! ブランディングの成功事例
それぞれのBrandScape(1)

CHAPTER2 ADKブランドデザインルームの仕事
1ブランディングエージェントを使うメリットって?
2ADK 13Fの仕事
3広告代理店がブランディングをするということ
それぞれのBrandScape(2)

CHAPTER3 ブランディングの実際
1ブランディングは「発見」と「驚き」と「決断」の旅
2はじめは「聞く」「聞く」、そして「聴く」
3「着たい服」と「似合う服」は違うもの
4ブランドの魂を探しましょう
5さて、どんな服を着せましょうか?
それぞれのBrandScape(3)

CHAPTER4 「ブランドデザイナー」を目指したいあなたに
1「聴く」チカラを身につけよう
2「深く解釈する」チカラ
3アイディアのヒント
4プロジェクトワークとプレゼンテーション
5ADKブランドデザインルームの人々
それぞれのBrandScape(4)

Commencement
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『決算書は3つの数字で読みなさい!』

2004年09月21日 | Weblog
http://tinyurl.com/5qqvk

著者は、『キャッシュフロー計算書が面白いほどわかる本 基本編』などの会計関連書で知られる、公認会計士の天野隆さん。

経営安全率(もうかっているか?)、自由資金比率(資金繰りはよいか?)、自己資本比率(つぶれないか?)という「3つの数字」を軸に、簡単かつ実践的な決算書の読み方を提唱しています。

冒頭で述べた通り、本書の最大の魅力は、実務に役立つ情報を織り交ぜながら決算書の読み方を解説している点です。

具体的には、「自己資本比率」の解説で、「節税に目を奪われると自己資本比率が改善されない」というコメントがなされていたり、また、固定資産について書かれた部分では、アウトソースやリースを視野に入れた「もたない経営」について、実践的なアドバイスがなされています。

そして、中小企業の社長や、経理担当者にとって便利なのは、必要な数字を入れるだけで、最低限の経営分析ができる「決算すっきりシート」が付いている点でしょう。これを使えば、決算書の肝となる「3つの数字」がひと目でわかるうえ、自社の数字が一般と比べてどうなのか、といった目安も知ることができます。

経営に必要な最低限の学習をしたい、という社長さんにおすすめの一冊です。
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『決算書は3つの数字で読みなさい!』
http://tinyurl.com/5qqvk
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※解説書のため、本日の赤ペンチェックはありません

目次

<第1部> 決算書から会社の現在位置を知る
第1章 決算書は読めなくて当然です!
第2章 決算書で読むのは三つの数字だけ
第3章 このツールですっきり現状把握

<第2部> いざ始めよう!わが社の経営改善
第1章 「決算すっきりシート」でしっかり経営改善
第2章 五つの改善項目に効く10のアクション
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『おしゃべりで世界が変わる』

2004年09月20日 | Weblog
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大規模調査などの結果を分析し、人々がおしゃべりにもとめていることや、おしゃべりの暗黙のルールなどを明らかにした本です。

版元は、社会心理学の本などで有名な北大路書房さん。タイトルは、その名も『おしゃべりで世界が変わる』です。

そういう目的で書かれた本ではありませんが、ネットビジネスにも役立つ、斬新な視点が盛り込まれた内容で、正直、教えるのがもったいない気がします。

では、さっそくその内容を見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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■おしゃべりの目標

1.楽しくする

おしゃべりでは、参加者は自分の話したいことを話すのではなくて、「楽しくする」ことが義務づけられているのです。(中略)嘘をついてでもおしゃべりを楽しくすることのほうがずっと大事なことになっているのです

2.お互いの体面を大事にする
3.社会的なつながりを深める
4.共通の課題を成し遂げる
5.共通理解への到達

おしゃべりの目標は、ほとんど意識されることはありません。しかし、おしゃべりを支配する暗黙の了解となっているのも事実なのです。読者にはすすめませんが、意図的にこれらの了解を踏みにじってみると、とても強い反発を生み出すことになります

おしゃべりがスムーズにいくためには、ある言葉を口にしたときにその言葉が発せられる状況とか、前後の文脈にあわせて意味を読み取ってくれることが期待されています。言葉の意味が的確に共有できるという前提がおしゃべりにはどうしても必要になります

社会的関係にあわせて、どんなことばづかいが適切かという判断もおしゃべりをスムーズにさせるための必要な条件になります

おしゃべりという相互作用が、両者の独特な関係性を作り上げていく

おしゃべりとは、おしゃべりのなかで自分の意図を実現しようとする駆け引き

周囲の人と活発に話をするということは、じつはあなただけでできることではないのです。それは、周囲の人があなたに活発に話すことを許しているからなのです。(中略)社会的な性格というものの多くは、おしゃべりをとおして一時的につくられたものにすぎない

■各種リサーチ結果から

・おしゃべりな人ほど長生きをする

・倍以上も女性のほうが「会話・交際」するものが多くなっています

・男性のほうが仕事関係でのおしゃべりが多く含まれている

・「うわさ話」をよくするのは、女性ではなくて男性

・これまでおしゃべりについて、男性の特性として、あるいは女性の特性として語られてきたことがらの多くは、本当の意味での男女差ではない

おもしろいことに、音声の通話は、心理的に重要な話題に使われる

自己表現の拡張につながるメディアだけがおしゃべりのメディアとして成功する

かつてマクルーハンは、メディアは人間の能力の拡張という言い方をしました。(中略)インターネットは、私たちの「おしゃべり能力」を拡張する

おしゃべりのなかの自己表現は、あくまでも相互作用のなかの「自己表現」であり、常に相手の協力が必要になります。もしも、聞き手を無視して自己表現に走る人がいたならば、結局相手から無視されてしまい自己表現できないことになるでしょう。インターネットにおける自己表現では、このような相互作用がずっと少ないのです。(中略)結果として、これまでは口にされることの少なかった話題、奇抜な内容や、社会的に抑圧されていた内容、反社会的な内容などにも光が当たることになります

イギリスの文化人類学者ダンバーは人々が交わす会話のうち30秒以上続いた会話内容を調べたところ、3分の2がゴシップだったと報告しています

あなたの人生に直接影響を与える身近な情報はゴシップからしか入手できないのです。また、ゴシップで得られた情報には交換価値があります。情報社会では、情報を多く発信する人にはより多くの情報が集まるといいます。その理由は情報には交換価値があるからです。(中略)社会的交換においては、金銭のような働きをゴシップはするのです

おしゃべりを宣伝の道具にしようと思っても、自発的に商品の宣伝をしてくれる人などいるはずはないのです。そこで口コミをしてくれる人をたくさん雇って周囲の人に商品の宣伝をしてもらうのですが、宣伝を聞かされた人が次の人に伝える理由はまったくないのです。宣伝は雇われた人が話した範囲以上に広がることは絶対にありえません。その理由はいたって簡単で、おしゃべりは話し手と聞き手の相互作用であり、おしゃべりの内容は、相手が喜ぶこと、自分が楽しいと思えることを話すという原則があるからです

口コミを利用しようとしてもヒット商品は生まれませんが、皮肉なことにヒット商品のすべては口コミによってのみ生まれます(中略)どうして消費者が商品の宣伝媒体になっておしゃべりをしてしまうのか、おしゃべりのなかにどうしてそのような影響力があるのかを考えてみたい

※続きは、ぜひ本を読んでください。
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というわけで、本日の一冊は、

『おしゃべりで世界が変わる』
http://tinyurl.com/5vdq9

です。正直言って、これほどいい内容とは思いませんでした。著者が「うわさ研究の第一人者」とマニアックな肩書きであること、科学的切り口で書かれているということで、期待はしていたのですが、それをはるかに上回る内容なので、これ以上は本書に譲ることにします。ぜひ、みなさん読んでみてください。

目次

はじめに
第1章 人はなぜおしゃべりをするのか
第2章 おしゃべりの行動学
第3章 メディアのなかのおしゃべり
第4章 インターネットがつくるおしゃべりの世界
第5章 うわさというおしゃべり
第6章 口コミというおしゃべり
第7章 組織のなかのおしゃべり
第8章 ワイドショーのなかのおしゃべり
終章  おしゃべりが世界をつくる
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『粉飾バンザイ!』

2004年09月19日 | Weblog
http://tinyurl.com/5579q

著者は、『借りる技術 返す技術』、『借金バンザイ!』などの資金繰りモノで知られる経営コンサルタント。

参考:『借りる技術 返す技術』
http://tinyurl.com/4feyz

参考:『借金バンザイ!』
http://tinyurl.com/6mc84

前作同様、本書でも、銀行の融資担当だった経験を生かし、貸す側の立場を踏まえた、実践的な資金繰りノウハウを提供しています。

では、さっそくその内容のポイントを見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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借りられるかどうかは、会社の内容だけじゃないんです。同じ内容の会社でも、借りられる会社と借りられない会社があるんです。だから、テクニックが必要なんです

繰越欠損がなくなってくると、法人税の負担が気がかりになってくる(中略)繰越欠損があればこそ、出た利益をすべて返済にまわせる

新たな担当者からすれば、リスケした融資先なんかは知ったことじゃない。(中略)もし、リスケしたときの期限が一年限りであれば一年経ったら元通りの返済に戻してもらうだけ。それでは借りてるほうは困るでしょ?だから、持って来いって銀行から言われなくても、最低三カ月に一度は試算表と計画・実績表を持って銀行の融資のカウンターを訪れなきゃダメなんですよ

■粗利を上げる裏ワザ

売上総利益(粗利)=売上高-売上原価

売上原価=期首棚卸商品+当期仕入高+期末棚卸商品

■売上総利益(粗利)を上げるには…

1.売上をあげる(難しい)
2.売上原価を小さくする(これしかない!)

■売上原価を小さくする方法

いじれるのは期末棚卸商品だけ
だから期末棚卸商品を多く計上する

■粉飾三点セット
・売上の前倒し
・仕入れの先延ばし
・在庫の水増し

(貸借対照表の)資本の部の△が、総資産の一割を超えてくると…追加融資はちょっと苦しい。ただ、この債務超過がもっと大きくなったら…。しかも目一杯借りてたとしたら…それはそれで借りられる可能性が出てくる。だってさ、追加融資止めたら、倒産しちゃうかもしんないでしょ?そうなったら銀行としては、それまでに貸したお金が全部パーになっちゃうかも?だったら、業績回復を期待して、もっと突っ込む(追加融資)しかないかなって思うかも

(流動資産の)バランスの良し悪しで、目先の資金繰りが忙しいかどうかがわかっちゃう。(中略)その中でも大事なのは、流動資産の中身。(中略)これら流動資産のなかの「商品」から下の科目…これ、ほとんどお金に換わりません(中略)

流動資産で肝なのは、現預金はもちろんだけど売掛金・受取手形と在庫(これらを「当座資産」と言う)

損益計算書をめくって、真っ先に見るのが減価償却費。これに、税引き後当期利益を足していくらになるか?ちゃんと長期借入金の返済に足りそうかどうか?を見るんですよ

償却前利益より借金返済が多ければダメ。問題アリ。法人税いくら払ってようが社長の給料いくらとってようが関係ナシ。会社決算としては、償還能力不足

机の上に、二年分の貸借対照表を並べてみましょう。真っ先に見るのは、売掛金・受取手形と在庫かな。これらが前期より比べて多くなったか少なくなったか?

■チェックポイント
・売掛金と在庫の関係
・買掛金
・固定資産
・短期借入と長期借入の関係

長期・短期の借入金の総額は大きく変わりないのに、短期が減って、長期が増えたら…それって回収の前触れ?だってさ、いままで短期で借りっぱなしだったのが、長期で毎月返済させられたらボディブローのように資金繰りに効いてきませんか?

「おわりに」から
やっぱりさ、決算のこと、自分でわかってなきゃ。人任せにしちゃだめですよ。自分の会社の、大事な大事な決算書なんですから…

※第3章、第4章は、粉飾の仕方について詳しく書いてあるため、読者のみなさんの良心におまかせします。ここでは紹介しません
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タイトルの奇抜さや、中身の点から、なかなか紹介しづらい本ではありますが、実際には、生きた会計がカジュアルに学べるユニークな本です。独立する前、独立直後の経営者は、読んでおくと役立つと思います。

というわけで、本日の一冊は、

『粉飾バンザイ!』
http://tinyurl.com/5579q

です。あたかも著者からコンサルティングを受けているような感覚で学べる、というのが、本書の最大の魅力でしょう。

目次

プロローグ
第1章 実録!「粉飾社長」
第2章 5分でバレる?あなたの会社のヤバさ!
第3章 粉飾するなら、ここまでやらないとバレる!
第4章 ジャンジャン粉飾!黒く塗りつぶす裏ワザ!
第5章 時代は変わった!ルールも変わった!だから、粉飾も変わった!
おわりに
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『日本のゆくえアジアのゆくえ』

2004年09月18日 | Weblog
http://tinyurl.com/5kjrd

本日ご紹介する書籍は、シリアスでハードな一冊です。

著者は、ご存知、広瀬隆氏。最近出された『世界石油戦争』『世界金融戦争』などの「陰謀系」書籍で知られる作家さんです。

参考:『世界石油戦争』
http://tinyurl.com/4kpjg

参考:『世界金融戦争』
http://tinyurl.com/5vhuy

今回は、日本への提言といった、比較的やわらかい内容ですが、それでも、ブッシュ大統領を「アメリカの馬鹿大統領」、小泉純一郎を「日本の歴史上、最低の首相」、石原慎太郎を「外国人非難に明け暮れる子供のような人間」と呼ぶなど、ところどころに見られる言動は、相変わらずの広瀬節です。

内容は、中国・アジアに関する記述が思っていたよりも少ないのが残念ですが、日本の金融システムや、年金、失業問題、食料問題、環境問題など、日本が直面している、さまざまな問題について、内情を深くえぐりながら、論じています。相変わらずの綿密な取材とデータ、そして、その是非はともかくとして、歯切れの良い主張は、非常に読み応えがあります。

非常に要点をピックアップしずらい本ではありますが、さっそくその内容を見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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アメリカの良質の産業や文化とはこれまで通りの関係を続けながら、アメリカ政府や金融界の悪質な部分と決別するべき時代が来た(中略)同じ金を注ぎ、同じ骨折りをするなら、アメリカではなく、アジアの同胞に顔を向ける時代である

中国が原料を独占して調達すれば、ほかの国の産業がつぶれてしまう。(中略)需要が高まれば高まるほど奪い合いになり、売値は吊り上げられる(中略)中国は、”世界の工場”なのだろうか。どうも、そうではない未来が幕を開いたようである

中国バブルの実情
=完全なインフレであり、先に断崖が見えてきたバブル
=国際金融マフィアがすでに資金引き上げのスケジュールを手帳に書き込み始めた
=人民元の切り上げ?

アジア全般のエネルギー事情は、人口の増加、生活水準の向上と共に、石油・天然ガス・石炭、すべてのエネルギー資源の生産量が、消費量に負けているところに大きな弱点がある

富士通が数千人規模の人員削減、NECが四〇〇〇人削減、松下グループが一万三〇〇〇人の余剰人員を整理へ、日立が二万人削減、東芝が一万八八〇〇人のリストラ策を発表……と深刻なニュースが続き、大手電気全体で七万人規模の人間が職場から追放されている。それで会社の業績が回復しても、日本社会に生きる人間がどうなったかが本当の問題ではないだろうか。会社が大事か、人間が大事か。日本の経済ニュースは、「会社が大事」だけで報道していないのか?

企業人であれば誰でも知っているように、小泉政権の政策と現在の日本の景気動向は、百パーセント何の関係もない(中略)とりわけここ三年の日本経済と産業界の動きは、リストラという名目で日本企業が厳しい首切りを進めて利益率を高め、一方で中国とウォール街の勝手な変化の影響を受けただけである

中東の石油依存をひんぱんに警告する人たちが、兜町のウォール街依存にほとんど警告を発しないのは、あまりに鈍感である

真の問題は、年金を払うお金をつくれない貧しい人たちに、国家がどのように手を差しのべるかである。これは税金によって、社会全体が正しく対応しなければならない

個人金融資産だけで、赤ん坊も含めて、一人当たり平均一一一三万円になり、四人家族で四〇〇〇万円を超えるとは大金だ。しばしば引き合いに出されるこの個人金融資産は、(中略)住宅ローンや消費者金融などの個人金融負債を差し引いていない嘘の数字なのである

郵政民営化とは、消費税増税を隠して日本の郵便貯金をブッシュのアメリカに送り込み、世界混乱を助長させる元郵政大臣・小泉のペテンである

郵政民営化を狙う国際金融マフィアを警戒せよ

(食糧問題)輸入に頼ると危険な四つの理由

1.地球の人口がこのまま増加してゆけば、やがて金で食べ物を買えない時代が訪れる可能性が高い。最大の問題は、日本が農地を失うと国内で食べ物を供給できない飢餓の危険性

2.輸入食料の船舶輸送には相当な時間がかかるため、腐らないように防腐剤などの薬剤処理をしなければならない

3.問題が発生した場合に国内では手を打つことができても、輸入品では輸入停止のほかに対策がない

4.税関での完全な検査は人員的に不可能である。外国からの輸入品が増加すればするほど、これからの検査は穴だらけになる

統計が日本社会のすべてを示しているわけではない。GDPが国民生活の指標になるという考えを捨てることが大事である。要は、失業しても、誰もが生きられればいいのである

慈愛のある医療を求めて、若い世代にも、パートの女性たちにも、多くの職場が用意されてよい。これからの医療は、その心意気のある人たちが担うべき

いつまでも優秀でないなら、日本人の給与を、アジアのほかの国のレベルまで下げるべきである

少子化を憂える人が大変多いが、なぜそんなことを心配するのだろう。狭い日本で一人当たりの土地が広くなっていいではないか

産業界が、昔のような企業城下町方式の支配ではなく、土地にしっかり根を下ろし、地方を甦らせる意気を持てば、日本は生き返る

これからの時代の三種の神器
・エネルギー産業
・リサイクルシステム
・農林漁業

これからの時代のエネルギーの三本柱
・ガス
・燃料電池
・自然エネルギー

これまでの日本の産業界とエコノミストと学者は、みじめにも絶えずアメリカの論説の後を追ってきた。もうそろそろ日本人は、自発的にアジアをリードすべき時である。これほどの機会はない。ゆきづまったアメリカなど、置いてきぼりにするぐらいの気概がなければならない

日本人のテーマは、アジアとのゆっくりした共生である。ただ進むのではなく、ゆっくり進む、というところがポイントになる

産業の目的は、何のために産業に従事し、どのように社会に貢献できるかを考えるのがまず第一歩である。その上で、商業主義を活かして自分たちが利益を増加すればするほど社会は改善される、という積極的な視点からマーケットを考える哲学が最良の成果を生み出す
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時折議論が過激になりますが、そこは差し引いて読めば、面白い読み物だと思います。

というわけで、本日の一冊は、

『日本のゆくえアジアのゆくえ』
http://tinyurl.com/5kjrd

です。これまでの著作よりはずいぶん読みやすくなっているのでこれまで怖気づいていた方も、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

目次

序章 明けない夜はない
第1章 中国とアジアの活況
第2章 郵政民営化と日本の金融システム
第3章 狂牛病・鳥インフルエンザと低下する食料自給率
第4章 日本の労働力と失業・倒産
第5章 燃料電池・新エネルギーと異常気象
第6章 あとがきに代えて――アジアとのゆっくりした共生
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『スリッパの法則』

2004年09月17日 | Weblog
http://tinyurl.com/5r7ol

著者は、ジャーディン・フレミングの中小型株チームで驚異的な実績を収めたファンドマネージャー、藤野英人氏。

冒頭のバフェットの話ではないですが、毎月四十社以上、これまでに累計三千社を超える企業のトップと面談してきたという、つわものです。

そのつわものが、バランスシートや目論見書、有価証券報告書などからはわからない、社長のキャラクターや企業文化、そしてそれらと業績の相関関係を導き出しているのが、本書『スリッパの法則』です。

ちなみに、タイトルは、法則26「社内では、スリッパに履きかえる会社に投資すると、不思議に儲からない」から取ったもの。

本書には、こんなユニークな「法則」が全部で63個、紹介されています。ただの相関関係にとどまるのでなく、考察を深め、因果関係とおぼしきところまで発展させているのが、おもしろいところです。

非常によくまとまっている本なので、今回は、法則のうちのいくつかと、興味深い言葉を抜き出してみることにします。
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 本日の赤ペンチェック
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【紹介されている法則の例】

法則 3 社長の自伝を本人からプレゼントされたら、その会社への投資は控える

法則 4 創業者のコンプレックスを聞くことは重要なキーになる

法則 9 平凡な社長は総論を話し、優秀な経営者は各論も話す

法則12 大成功している経営者は例外なく細かい

法則14 社長室の豪華さとその会社の成長性は反比例する

法則23 兄弟で経営している会社で、弟の学歴が兄の学歴を上回っており、保有株数に差がない場合は、現在および将来の兄弟喧嘩の可能性を考える。

法則29 トイレの汚い会社への投資は必ず損をする

法則30 極端に美人の受付嬢がいる会社は問題がある

法則31 自社製品以外のおみやげをくれる会社への投資は儲からない

【興味深かった言葉】

収益を伸ばす会社の社長や社長室には一定のパターンがあり、業績を悪化させる社長や会社にもまた類似性がある

机の前に座ってデータをメカニカルに分析するだけでは、ファンドマネージャーとしてよい成績を上げることはできません。企業のトップである経営者の話を聞き、実際に会社を見て、その雰囲気を肌で感じることが大切なのです。

人が会社を興し、活動していく行為には、人間の持つ欲望やビジョン、自己実現という精神の根底の部分に原点がある

投資という観点から会社を見ると、いままでの成功よりも今後の事業展開が重要な関心事です。創業者のキャラクターに魅了されてしまうと、その会社の事業の成長、ステージを見誤ってしまうおそれがあります。

よい社長の条件を簡単に言えば、話が具体的か、数字を使って客観的に説明できるか、人の話に耳を傾ける率直さがあるか、ということです。

私たち投資家にしてみれば、現在何をやっているかを熱心ノ語り、将来のビジョンについて語る経営者に投資をしたいのです。なぜそうしたビジョンを持つに至ったかを知るためには、その人の歴史を知る必要があるのです

経営者の歴史を知ることは重要です。とりわけ、家庭環境を聞くことは大きな意味を持ちます

コンプレックスは人を動かす大きな原動力です。ピラミッドから排除されたことに対する無意識の復讐心が強い闘争意識となり、会社を引っ張っていくことが多いのです

社長が経営理念やビジョンを話すときに目が輝いているかどうかがポイントです。いかにも興奮した様子で話す社長は信頼できます

優れた経営者は社員に思想教育ができます。十代、二十代の若者はゼニカネでは動きません。ボランティアをやりたい人も多いし、根本的には働かなくてもいいと思っている人もいます。(中略)だからこそ、経営者は旗を掲げる必要があります。仕事に対する社会的意義や、やりがいについて徹底的に教え、諭し、会社の業務がどのように日本の社会や文化に貢献するか、といった具体的な事柄を明確に説明しなければなりません

ビジネスの社会では、同業他社に競い勝つために努めて個性的である必要があります。そして、経営者はスピードを重視する必要があります。スピードがあるということは、時代感覚を持っている証拠です。(中略)経営者が会社の経営改革について、矢継ぎばやに具体的な行動を起こしているか、よい会社であってもさらによくする努力をしているかどうかで、スピード感の有無を見ることができます
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というわけで、本日の一冊は、

『スリッパの法則』
http://tinyurl.com/5r7ol

です。200ページに満たない薄い本ということで、当初はさほど期待していなかったのですが、藤野氏の経営者を評価する視点、そしてその根底にある哲学に、私は大変興味を持ちました。

みなさんも、ぜひ読んでみてください。

目次

まえがき
序章 ファンドマネージャーだからわかる会社の真の姿
第1章 社長の性格や人格で決まる会社の運命
第2章 要注意!会社を滅ぼす危ない社長
第3章 ダメな会社、こんなところに落とし穴!
第4章 よい会社と悪い会社の分かれ道
第5章 常識にとらわれると判断を間違える
あとがき
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『看板ひとつで売上が3倍になる魔法の誘客術』

2004年09月16日 | Weblog
http://tinyurl.com/4bpgs

本日の一冊は、看板を使って集客する方法を説いた本です。

何で今どき、と思われるかもしれませんが、以前にも申し上げたとおり、アナログの商売にはデジタルでも使えるノウハウ・ヒントが満載なのです。

本書では、看板を使った「攻撃的な立地マーケティング」の方法を説いています。

他の広告メディアに比べると、ずいぶん地味な印象を受けますが、実際の効果はそれなりにあるようです。

では、看板広告には、一体どんなメリットがあるのか。また、看板広告の要諦とは一体何なのか。さっそく本日の赤ペンチェックです。
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 本日の赤ペンチェック
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人の流れをつくるなんて、他の宣伝・販促方法ではできません。これが看板の本当の力です。言い換えると、看板は攻撃的な立地マーケティングが可能になる

看板はね、お店の前に置いておくだけで1日何人来店させられるかで価値が決まるんだ。だったら効果の測定ができなければダメ

多くの人は、看板は設備だと思っている

優秀な営業マンをひとり3か月雇うつもりで看板を作る

(看板の)コストはチラシを撒き続けるほど掛からない。ここ数年流行の、小冊子を作って請求させる方法より手間がかからない

チラシは商品のPR効果
看板は店舗ごとイメージチェンジ効果

商売の基本とは、シンプルに考えると三つのプロセスの繰り返し
1.見込み客を集める(店内に入店させる)
2.初取引をする(商品やサービスを購入してもらう)
3.継続取引をする(リピーターになってもらう)

看板の種類と効果
・パラペットサイン:電飾看板にすると、夜間はお店を明るく演出
・袖看板:視認性が高いのがポイント
・チャネル・プレート:お店の顔
・テント看板:アイデア次第でとってもおしゃれに
・ガラスシート(ウィンドウサイン):ポップな演出が可能
・フラッグ(バナー):活気さや面白さを演出
・A型看板:入店させる最後のひと押し
・電飾置き看板:暗くなっても営業するお店は必需品
…etc.

街には生活者の流れという、いわゆる「導線」があるのですが、その流れは都合よく自分のお店の前を通っているとは限りません

誘客を活用するためにはまず、自分のお店の地理的状況を把握(中略)「どの土地」で「どんな商売」を行ない、「どんな客層」に来てもらうのかを設計する、それがあなたのやるべき立地調査です

お客様は他店に足を運んでいると考えるより、自店に来るハズのお客様自体が消えてしまったというのが、問題の本質

「看板を置く場所も含めて、なぜそこにこの看板を置くのか」まで考えて企画・デザインされた看板が、世の中にどれだけあるのか

看板に使える書体
・明朝体
・角ゴシック体
・丸ゴシック体
・楷書体
…etc.

デザインを考えるときの六つのポイント
・可視性が高い
・可読性が高い
・造形性が高い
・独創性が高い
・象徴性が高い
・親近性が高い

街行く人に踏ませたい三つのステップ
・認知(魅せる)
・注目(読ませる)
・入店(お試しさせる)

(誘客に)向いている業種はズバリ、最寄品を扱うお店と、問題解決型のサービス(病院・飲食店など)をしているお店

自分の商売が趣味的専門的の場合は、はじめから目的を持って来店してもらうように、宣伝・販促するほうが効果的

看板の3E
・エモーショナル看板
・エンターテイメント看板
・エフェクティブ看板

エフェクティブ効果を高める秘訣
・シンプルで訴求効果の高いもの
・お客様に伝わるストレートな言葉
・印象深い視覚要素

キャッチコピーには好条件を先に挙げる

商品を5タイプに分類する
・先行型商品
・市場開拓商品
・エモーショナル効果商品
・市場定着型商品
・利益追求可能商品

お客様のタイプを四つに分ける
・王様タイプ
・お愛想タイプ
・民主主義タイプ
・インテリタイプ
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正直、当初思っていたよりは掘り下げ方が足りず、また主張にあいまいさが見られたりと、期待通りの内容ではありませんでした。

ただ、看板広告の要諦や周辺知識を体系的にまとめた点は斬新で、個人的にはいい勉強になったと思います。

というわけで、本日の一冊は、

『看板ひとつで売上が3倍になる魔法の誘客術』
http://tinyurl.com/4bpgs

です。お店を経営されている方、集客のしくみを再構築したい方には、良いヒントになるかもしれませんね。

目次

序章 事例/看板ひとつで売上を3倍以上にしたお店
第1章 立地条件が悪い店ほど看板で業績が飛躍
第2章 戦場の立場を把握する
第3章 看板デザインの極意
第4章 戦場に看板を仕掛けて誘客する
第5章 看板活用の前提
第6章 保存版 看板製作を依頼するときの注意
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