ビジネス書の厳選情報を毎日お届け 「ビジネスブックマラソン」 バックナンバーズ

アマゾン元バイヤー、土井英司による厳選ビジネス書評メルマガ。ベストセラー分析と本当に読むべき珠玉の一冊を提供しています。

『お客様が教える「売れる商品」の見つけ方』

2004年07月31日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894511649/

どうでしょう?このタイトル。おそらく多くの方は、既に購入する気をなくしてしまったと思います。私もこの本をいただいた時は、正直、「なんだこりゃ」と思ってしまいました。

しかし、この本はじつはすごい本なのです。まずは、タイトルを忘れて、説明を聞いてください。

ちなみに著者は、株式会社ヴェルジェと株式会社野菜ビジネスの経営者。ボランタリー・チェーンの加盟店舗は、既に100社を超えているという、野菜ビジネスの第一人者です。

この本が教えてくれるのは、「客単価と客数が同時にアップする」手法です。これは、通常の小売の感覚では理解できません。なぜなら、売上=客単価×客数で、売上を上げるには、「客単価か客数を上げる」のが小売の常識とされているからです。

そして、客単価を上げるには、一人の客に高い商品、あるいはたくさんの商品を「売りつける」、客数を増やすにはチラシや広告などで「集客」をするというのが、これまた常識です。

ところが、著者が説く「ロータス・メソッド」は、そうではありません。では、一体どんな手法なのか、一緒に見ていきましょう。

本題に入る前に、一緒に著者の質問に答えてみましょう。

「現在、食品業界では、1万品(単品)もの商品が売られていますが、顧客100人がお店に来店して10個以上売れる商品(その商品の支持率が10%以上ということ)はいくつあると思いますか?」

正解は、なんとたったの10品だそうです。

しかも、著者に言わせると「そのうちスーパーマーケットでは、100人来店して10個以上売れる商品は5~10品で、実際には10品を超えるお店はほとんどないに等しいのが現実」なのだそうです。

もう1つ、質問に答えてみましょう。

「顧客100人が来店して、1個以上売れる商品(その商品の支持率が1%ということ)はいくつあると思いますか?」

正解は、1万品のうち「200品」前後だということです。

つまり、「エブリディ・マーケット業界では、支持率10%以上の商品は10品もなく、1%以上の商品は200品前後しかない」のです。

著者の説く「ロータス・メソッド」では、この顧客の支持率が10%以上の商品をフロントエンドに陳列し、支持率1%以上の商品をバックエンドに陳列します。顧客支持率の高い品ぞろえにすることで、お客を引き寄せ、かつ買ってもらうのです。

ちなみに、野菜のビジネスで最も顧客の支持率が高いのはトマトだそうで、八百屋さんにとってはこのトマトをどう戦略的に売るかが勝負のカギを握っています。

さて、ちょっと脱線してしまいましたが、最後に、従来の考え方と著者のメソッドを比べて、まとめてみましょう。

【従来の考え方】
売上=客単価×客数

【著者の考え方】
売上=買上げ点数÷客数(PI値)×平均単価×客数

じつは同じ事を言っているのですが、著者いわく、「従来の売上式では、商品Aをどれくらいの顧客が買ったという値が客単価のなかにまぎれてしまって見えません。しかし、客単価を分解することにより、商品Aが購入される割合が浮かび上がります」という。

こうすることによって、これまでアナログ店舗では聞こえなかった、「顧客の声」や「購買パターン」が得られるようになるのです。アナログ店舗でも、ここまでできるのですね。

もし著者の手法をマクドナルドが知っていたら、頻繁な価格変更でお客様を戸惑わせることはなかったでしょう。

ということで、本日の1冊は、

『お客様が教える「売れる商品」の見つけ方』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894511649/

です。小売以外にも役立つヒント満載の1冊です。

目次

第1章 どうして売れない、顧客が来ない?
第2章 小さなことからお店が変わる!
第3章 顧客の声が数字で見える!
第4章 客単価と客数を同時にアップさせる!
第5章 勇気と誇りがお店を変える!
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『上司は思いつきでものを言う』

2004年07月30日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087202402/

この本は、『桃尻娘』『窯変源氏物語』などで知られる作家、橋本治さんが書いた本です。みなさんご存知の通り、非常に良く売れている話題の書です。

ただ残念なことに、この本は、私の選書基準からいったら、絶対に読まない本です。

――支持されるビジネス書には、2種類あります。

「共感を呼ぶビジネス書」と「ためになるビジネス書」です。本当に名著と呼ばれる本は、この2つの要素を兼ね備えています。

ちなみに、この本は、明らかに前者です。

この本が支持されているとしたら、それは「この本を読むであろう」部下たちの共感を得られたからであり、何か新しい発見や、ためになる内容が盛り込まれていたからではないと思います。

この手の本には、共通する特徴があります。それは、やたらと言い回しや比喩に工夫が見られること、内容の多くが、「ことば遊び」に陥っていることです。

この本も例外ではありません。要するに、なぜ、上司が思いつきでものを言うのか、あるいは言っているように見えるのかを、組織の問題点と絡めながらだらだらと述べているのです。

この本のなかには、上司の立場と部下の立場の違いを説明するための例として、「副葬品としての埴輪」を製造・販売する会社が登場します。つまり、古墳時代から続いている会社で、当然いまは埴輪が売れなくなっている、という話です。

上司はこのままではいけないと感じており、部下に、「何かアイデアを出せ」と指示します。現場の実態と企業活動の間の乖離を感じている部下は、ここぞとばかりに企画書を作り、完璧なものに仕上げます。そのアイデアは、「埴輪を美術品として販売する」というものです。

このアイデアは、上層部がこれまで時代の変化に対応してこなかったことの責任を迫る内容のため、密かな反発にあいます。そして、なぜか突拍子もない「コンビニ経営」のアイデアが採用されます。つまり、「このままじゃまずい」という認識と「これまでのやり方を守る」という防衛本能があいまって、この「思いつき」に落ち着いたというのです。

好意的な味方をした場合、ひょっとしたらこれは、上司の立場や思考プロセスを学ぶ上で役に立つ本なのかもしれません。あるいは、組織が陥りやすい罠を説いた本なのかもしれません。しかし、それだけなら、メールマガジン一通出せば終わったはずです。

手段の目的化や社内政治、立場による見方の違いなどは、ビジネスをやっていればしばしば直面する問題であり、本を読むまでこんなことに気付かない人がいたら、それこそ問題です。

また著者は、儒教が日本の組織に与えた影響について、数十ページを割いて説明していますが、それならなぜこのタイトルで、いたずらに、読まなくて済む人にメッセージを発したのでしょうか。

非常に腑に落ちない1冊で、珍しく(?)辛口でしたが、

本日の1冊は、

『上司は思いつきでものを言う』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087202402/

です。橋本治さんのファンや、思考遊びが好きな方にはおすすめの
1冊です。

目次

はじめに
第一章 上司は思いつきでものを言う
第二章 会社というもの
第三章 「下から上へ」がない組織
第四章 「上司でなにが悪い」とお思いのあなたへ
あとがき
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『初対面の1分間で相手をその気にさせる技術』

2004年07月29日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453403783X/

本日の1冊は、セールスに関する本です。

セールスの王道は「紹介」だとよく言われますが、著者の朝倉千恵子さんは、逆に「飛び込み営業」を武器にして成功した異例の人物です。

「地獄の特訓」で有名な社員教育研究所に入社し、10件回ったうち、少なくとも6~7件はアポを獲得。結果、2000年に同社でトップセールスに輝いたそうです。

なぜ「飛び込み営業」を武器にしたかというと、大阪から何のコネもない東京に出てきて、それしか手段がなかったからだといいます。彼女はこのような厳しい環境の中で、自分なりに、初対面で相手をその気にさせるコツを習得しました。

その中でももっとも重要なのは、「飛び込み営業」を「情報収集の場」と位置づけていることでしょう。受付の心をつかみ、次に面会すべき人物と肩書き、連絡先を明らかにする、そのための巧みな営業トークが紹介されています。

そのトークの一部を紹介しましょう。

■「お取り次ぎできません」と言われた時に、「かしこまりました」ではなく、「ありがとうございます」といって相手の言葉を軽く否定し、次の質問へ移る。

■面会する相手を明らかにしたら、「失礼があってはいけないので」と言うことで相手の役職名を聞き出す。

■「直通のお電話番号があれば、お教えいただきたいのですが…」ではなく、「直通電話はありますか?」ということで直通電話を聞き出す。

これらの質問により、次回面会すべき相手を明らかにしたら、それで飛び込み営業の目的は達成。著者によると、ここで「一回飛び込んだことが実績になり、断然アポが取りやすくなる」のだそうです。

アポ取りに関しても、「名簿は『わ』行から耕す」「同じ名簿を使って何度も電話をかける」など、著者独自のノウハウが示されています。

3章以降に書かれている、ビジネスマナーやセールストークなどは、さほど目新しいものではないですが、最初の1章、2章だけでも読む価値はあると思います。

『初対面の1分間で相手をその気にさせる技術』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453403783X/

次回は、ノウハウものではなく、著者の苦労話やエピソードがたっぷりのものを読んでみたいものです。

目次

プロローグ
第1章 はじめての飛び込みセールス「生涯無敗」の哲学
第2章 誰も教えてくれなかった!「電話アポ」必勝の方程式
第3章 「1分間でその気にさせる」ビジネスマナー&名刺交換術
第4章 初面談完全攻略キラートーク
第5章 初回からクロージングをかける魔法の質問話法
第6章 あなたが決めたとおりの人生になる!
エピローグ
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『シニアビジネス』

2004年07月28日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478502315/

シニアビジネスに関しては、10年以上も前からその重要性が叫ばれてきました。第一次シニアビジネスブームは、いわゆる「シルバービジネス」と呼ばれるもので、お客様を「老人」扱いすることでものの見事に失敗しました。

その点、現在のシニアビジネスブームは、ちょっと違って、「アクティブ・シニア」と呼ばれる、お金と時間に余裕のある50代以降をねらったものです。

この「アクティブ・シニア」向けビジネスの動向を紹介した本としては、かつて『シニア世代の心をつかむ7つの法則』といういい本がありました。

参考図書
『シニア世代の心をつかむ7つの法則』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4413032799/

この本は、シニア向けビジネスのコンサルティングを手掛ける著者が書いたもので、日米の先端事例も盛り込まれていました。団塊世代の心を的確にとらえており、当時としては画期的な1冊でした。

しかし、この本が書かれてから3年が過ぎ、シニアビジネスはまた新たなステージに向かっています。それは、単なるビジネスアイデアから、儲けるための、まっとうなビジネスモデルへの変化、そして、「団塊世代」を「かたまり」としてとらえることをやめ、その多様性に対応するようになった、という変化です。

本日紹介する『シニアビジネス』には、この多様性への対応方法と、まっとうなビジネスモデルを構築するための鉄則、そしてアメリカの最先端事例が書かれています。

『シニアビジネス』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478502315/

女性専用のフィットネスクラブで成功した「カーブス」や、シニア向けの話し相手を提供する「ホーム・インステッド・ケア」、シニア向けのスタイリッシュなグッズを通信販売する「ゴールドバイオリン」、一人暮らしの生活周りで生じる「雑用」を引き受ける「ミスターハンディマン」、世界最大のシニア向け体験学習サービス「エルダーホステル」などなど。

いずれもアイデアとしてはさほど目新しくないですが、労働集約型ビジネスに陥りやすいシニアビジネスを、見事に「企業化」した点が注目です。

徹底的にムダを省き、お手軽さと低価格を実現した「カーブス」や、必要な道具と材料がフル装備のバンを独自開発し、コストダウンと効率的経営を実現した「ミスターハンディマン」などは、その最たる例です。

著者が述べているように、「労働集約に陥りやすい人的サービスを、プロの専門スキルを提供する『システム商品』に仕立て」ることこそが、シニアビジネス、およびこれからの知識社会で求められるビジネスの成功要件なのでしょう。

そんなわけで、本日の1冊は、

『シニアビジネス』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478502315/

『シニア世代の心をつかむ7つの法則』のアップデート版としてもぜひ読んでおきたい1冊です。

目次
プロローグ 団塊市場を見ているだけでは、団塊市場は見えてこない
序章 多様性への適応力
第1章 「不の発見者」
第2章 商品シーズ編集者
第3章 エイジング・スタイリスト
第4章 出張駆込み寺
第5章 プライベート・コンシェルジュ
第6章 第三の場所
第7章 知的合宿体験
第8章 ナレッジ・ネットワーカー
第9章 知縁
第10章 ゆるやかな大家族
終章 「多様性市場」で成功する10の鉄則
エピローグ 自分の感性で判断し、自ら先駆者として一歩踏み出す
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『マンガ 相場の神様 本間宗久翁秘録』

2004年07月27日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4775930095

みなさんは、本間宗久さんという方をご存知でしょうか?まあ、ひと言で言えば、米相場で財を成した、江戸時代を代表する大富豪です。

ご存知ない方でも、「本間様には及びもせぬが、せめてなりたや酒井様 ※酒井様は庄内藩主」という歌は聞いたことがあるのではないでしょうか。投資家の方であれば、「『酒田罫線法』の生みの親」とでも言えば通りがいいでしょう。

じつは私、5月のゴールデンウィークに、この本間家の屋敷を見るために酒田に行って参りました。

最上川の川くだりを満喫して、その後酒田に向かったのですが、まず目に入ったのは、あまりに大きな土蔵造り三角屋根の倉庫。川のすぐ脇に立てられており、当時栄えていた地域とは川を隔てて向こうに置かれています。

この倉庫は「山居倉庫」と呼ばれており、全部で11棟。当時酒田ではしばしば大火事が起こったため、災害を防ぐために川向こうに作ったようです。おそらく、このしくみは、水運を活用する意味でも理にかなっていたのでしょう。

この倉庫以外に、現在、残っているのは、本間家旧本邸、別荘である鶴舞園と清遠閣、それに昔のお店です。

屋敷の大きさも驚きですが、当時で3000人の小作農を抱えていたというのだから、いかに本間家の事業の規模が大きかったかがうかがえます。

現在、本間宗久氏の本でまともに流通しているのは、投資レーダーから出ている『本間宗久相場三昧伝―相場道の極意―』ぐらいではないでしょうか。

参考『本間宗久相場三昧伝―相場道の極意―』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4925152092

そういう意味では、新しく出されたこのマンガの意義は大きいと思います。マンガとはいえ、解説が詳しく、非常にわかりやすく作られています。

酒田罫線法というと、テクニカルな部分だけを連想される方がいらっしゃるかもしれませんが、実際には、商売や投資において大切な心得についても、かなり紙数が割かれています。

例として、いくつか抜き出してみましょう。

■三位伝
 「機を待つに即ち 『仁』」※チャンスがくるまで努力して待つ
 「機に乗ずるに即ち『勇』」※チャンスが来たら勇敢に乗る
 「気を転ずるに即ち『智』」※次につなげるために切り替える
■「足らぬは余る、余るは足らぬ」※相場も食べ物も腹八分目がいい。
■「もうはまだなり、まだはもうなり」
■「人の商を羨むべからざる事」
■「腹立売買致すべからざる事」

これらの言葉は、「最後の相場師」として名高い、是川銀蔵氏の著書『相場師一代』でも引用されており、歴史上、数多くの投資家が宗久の投資理論を参考にしたことが伺えます。

参考『相場師一代』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4094034714

株式投資に関する書籍は日々、山のように出されていますが、今回ご紹介した『マンガ 相場の神様 本間宗久翁秘録』は、その原典とも言える古典的名著を、現代語訳とマンガでやさしく解き明かしたものです。

『マンガ 相場の神様 本間宗久翁秘録』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4775930095

投資に関心のある方は、ぜひ読んでみてください。

目次 あまりに多すぎるため、今回は割愛

※今回のメールの件名【マンガー】意味わかりましたか?わかった方はかなりの「通」ですね。
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『どん底からの成功法則』

2004年07月26日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763195395

著者の堀之内九一郎さんは、機械修理、中古車販売、ボイラー技士、溶接工、健康器具販売など、さまざまな事業に失敗。ホームレス状態から再起し、年商100億円超の企業を築いた人物です。日本テレビ系『マネーの虎』の影響で知っている方も多いのではないでしょうか。

プロローグに、「恥をさらしながら、泥を吐くようなつもりでこの本を書きました」とあるように、本書では、かなり赤裸々にご自身の半生を描いています。

仲間の何気ないひと言に猛省し、我に返って努力を始めたというホームレス時代から、メンターとの出会い、周りに迷惑をかけながら事業を拡大した成長期まで、読みごたえのある内容が続きます。

ヒューマンドラマとしても楽しめる1冊ではありますが、やはり注目すべきは、著者の「失敗」に対する考え方でしょう。

「百回挑戦したうち十回成功したとして、その残りの九十回を失敗だったといえるでしょうか。(中略)他人から見れば単なる失敗に思えるような経験も、自分にとっては、その失敗に至る経路の中でとったひとつの策が、今度は成功するための道順になる」

何度も何度も失敗を重ねてきた著者だけに、この言葉には重みが感じられます。

ほかにも本書には、

「成功者のイメージをとことんまねる」
「好きなことを一心不乱にやれば、苦手なことも克服できる」
「成功者は、儲けたお金の『使い方』を知っている」
「人のホンネを見抜くには、まずは自分が裸になれ」
「商売のうまい人は損得勘定で人を見ない」

など、著者の経験から導き出された成功法則がズラリと並んでいます。

200ページに満たない本であり、内容もよくまとめられているため、非常に読みやすい本です。述べられている内容は、大半の自己啓発書と重なりますが、著者独自のエピソードや、実際に経験した人間ならではのアドバイスが読ませてくれます。

『どん底からの成功法則』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763195395

目次

成功法則 その1 まず、真っ暗闇のどん底に膝をつき、地面の冷たさを知れ
成功法則 その2 プールの水を「とりあえずおちょこで」汲み出しはじめられる人間になれ
成功法則 その3 まずは「小さな欲」をとことん満たすことから始めよ
成功法則 その4 「儲け方」でなく、お金の「使い方」を必死に考えよ
成功法則 その5 とにかく「速さ」にこだわり、突風で勝負せよ
成功法則 その6 小指の先ほども疑わないくらい信じきれる師匠をもて
成功法則 その7 裸の自分をさらして、視線の奥のホンネを見抜け
成功法則 その8 分かれ道では絶対に、「得しそう」でなく「楽しそう」を選べ
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『「行列のできるダントツ飲食店」の秘密』

2004年07月25日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534037724/

今回はカリスマ飲食店コンサルタント、大久保一彦さんの新刊をご紹介します。

大久保さんは、あの「新宿さぼてん」の多店舗化を成功させた人物として、飲食業界では広く知られています。

本書に書かれている内容は、大きく4つに分かれます。

1.売れない発想パターンをリセットするための考え方
2.ウリとなる商品(4番バッター)の開発方法
3.来店したお客様を満足させるしくみ
4.お客様を来店させる(集客)方法

このなかでも特におもしろいのは、1番の部分です。

この部分によると、多くの経営者は、お客様が何を食べにきているのか、何に満足するのか、どうしてリピートするのか、という理由を勘違いしていることになります。

「100円回転寿司に来るお客様は、ネタを食べに来ているのではありません。『しょうゆを飲みに来ている』のです」

「とんかつも、肉ではなく、ソースを食べているんです」

「ちょっとくらいよい肉を使っても、一番人口の多い客層には支持されないんです」

こうした著者の言葉は、サクサクの衣を食べて欲しいという職人にとっては極めて受け入れがたいものですが、やはり何がお客様の購買に結びつくのか、という「ツボ」は押さえておきたい。

「ウリとなる商品」の開発に関して、「嫌いな人間がいる商品ほど、個性を出しやすい」と述べているのも印象的です。

ただ、惜しむらくは、テクニック論に終始して、著者の飲食事業にかける信念が伝わってこないこと。売れるためにはお客様の健康を害してもやむなし、という姿勢が行間から伝わってくると、読んでいて決して気持ちいいものではありません。

ということで、本日の1冊は、
『「行列のできるダントツ飲食店」の秘密』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534037724/
です。

ただ、商売をやっている人、マーケティング・セールスに携わる人にとっては、それなりに得られるものがあると思います。

目次

第1章 あなたの売れない発想パターンをリセットする
第2章 メニューの「4番バッター」を発掘せよ!
第3章 「打線を編成」せよ!4番バッターへのつなげ方で売上は
    激変する
第4章 「感動を設計」せよ!演出で差をつけお客様を固定化せよ
第5章 さあ演技しよう! 売上を倍増させる「感動」接客術
第6章 「タダでできる!」口コミ集客法
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『価格の決定権を持つ経営』

2004年07月24日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4891010282

企業にとって値決めの主導権をにぎりことが以下に大切なことか、また、それを実行するためにどうすればいいかを説いた本です。

著者の酒井光雄さんとは、日本経営合理化協会の五藤さんの仲介で今年5月に食事をしました。はっきり言ってナイス・ガイです。

ちなみに言っておきますが、著者と食事をしたから本を紹介する、ということは決してありません。むしろ因果関係が逆で、いい本を作る人だから、食事するのです。

酒井さんは、ブレイン ゲイトというマーケティング・コンサルティング会社の代表で、同社は、1997年の8月、日経がまとめた経営コンサルタントの利用実態調査で、第18位に輝いた、エクセレントカンパニーなのです。

この会社のおもしろいところは、マーケティングを、無機質な「市場調査」ではなく、「ヒトの心をつかむサイエンス」ととらえているところです。

本書『価格の決定権を持つ経営』には、そんな酒井さんのマーケティング・エッセンスがふんだんに詰め込まれています。

「市場原理でなく生産原理でモノを作る仕組みになっていないか」
「何かで評判の企業となっているか」
「量を売って売上を作ろうとしていないか」
「価値を最後まで守り抜く売り方になっているか」

といった問い掛けにはじまり、

「商品の開発哲学を疑う」
「顧客を疑う」
「原料を疑う」
「価格を疑う」
「売場を疑う」

といった、収益率を高めるための視点、オンリーワン企業を実現・維持するためのポイントなどが、さまざまな企業の実例を交えながら書かれています。

紹介されている事例に関しても、うどん一杯1500円の名物うどん店「山本屋本店」や、笛(ホイッスル)の世界的メーカー「野田鶴声社」、一流ギタリスト御用達のプレミアギターを作る「ギブソン」など、一味違うものばかりで、読みごたえがあります。

そして、なんと言っても、最終章の経営者に対する問い掛けが読ませてくれます。「経営者の語る夢こそが、事業発展の原動力である」と説いたこの章は、おそらく経営者にビジネスの醍醐味を、思い出させてくれることでしょう。

ということで、今日の1冊は、

『価格の決定権を持つ経営』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4891010282

です。お値段は本体15000円と少々張りますが、それだけの価値は十分あると思います。

つまり、この自体が価格の決定権を持っているわけですね(笑)。

目次

序章  はじめに
戦略1 価格を本当に決めているのは誰か
戦略2 ドロ沼の価格競争を絶て
戦略3 売りモノから、顧客の顔が見えるか
戦略4 利益率とは自社の価値尺度である
戦略5 先駆者だけに与えられる特権
戦略6 絶対的な強みを創り出す
戦略7 固有名詞で競争せよ
戦略8 オンリーワン企業となる3つの秘訣
戦略9 商品ラインを拡げる定石
戦略10 ヒットより、意図してロングセラーを狙え
戦略11 プロに認められるモノ作り5つの条件
戦略12 顧客とのあらゆる接点で、感動を生み出せ
戦略13 伝わるキーワードを持っているか
戦略14 市場シェアと顧客シェア
戦略15 1人の顧客に何十回と利用してもらう秘訣
戦略16 望ましいクチコミを意図して創り出す
戦略17 語らずにはいられない伝説を生み出せ
戦略18 超ごひいき顧客をつくりだす
戦略19 経営者の熱い想いを、伝わる形にして示す
戦略20 最適な収益ポイントで事業を展開しているか
戦略21 収益が繰り返す仕組みづくり
戦略22 参入障壁づくりは万全か
戦略23 事業を飛躍させる魔法
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『30分で5億売った男の買ってもらう技法』

2004年07月23日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757302444

この本、アマゾンのカスタマーレビューを見てもわかるように、読んだ人には非常に評価が高いのですが、いかんせん表紙やタイトル、帯に迷いが感じられるため、中身の良さが伝わってきません。

でも実は、ものすごいセールスノウハウが詰まった本なのです。

著者の星野卓也氏は、日大芸術学部時代に映画構造理論を学び、卒業後は脚本家のアシスタントを3年務めて独立。ドラマ・ゲームのシナリオや、企業マニュアル、DM企画構成などを手掛け、最近では、某有名テレビショッピングの構成に携わり、ゴルフクラブの売上でなんと5億円を達成しているそうです。

その著者が提唱する「買ってもらう技法」とは、ズバリ「ストーリーで売る技術」のこと。

「人にモノを買わせることは、人を物語で感動させることに似ている」

という著者が、その極意「物語論法」を紹介しています。「物語論法」の構成要素は、この本の章立てと一緒で、

■ビジョンを植えつけるための五つの「ツカミ」

■商品理解を深めるための三つの「リサーチ」

■最後に背中を押すための三つの「センノー」

の3部構成です。このステップを着実に進めることで、購買まで結びつけることができる、というものです。

もっと具体的に見ていきましょう。

■ビジョンを植えつけるための五つの「ツカミ」

1.潜在客の意識改革
直接商品名を出さずに売りたいものを意識させる

2.俯瞰図を示す
売るべき商品の全容を一言で述べる

3.ブランドの確かさを伝える
商品の出所や歴史を伝える

4.冒頭に、物語の中でもっとも印象的なシーンを持ってくる
セールスであれば、キャッチフレーズ・キャッチコピーで訴求する

5.商品イメージを伝える
繰り返しながら、軽い洗脳と箸やすめの効果をねらう


■商品理解を深めるための三つの「リサーチ」

1.メカニズム調査
売る商品の「仕組み」を知る―商品を構成する「パーツ」を理解する

2.売る商品の「素材(パーツ)」を分析する
その素材構成を採用した「理由」をしっかりと頭に植えつける

番外編.欠点の発見
「欠点」をイリュージョンの世界に導く

3.具体的な数値を調べる
「数値」を伴ったシーンが最大の見せ場


■最後に背中を押すための三つの「センノー」

1.「お得感」をアピールする
「限定××個」「今ならさらに」「なんと!」など

2.結果の姿を提示してあげる
使用することによってお客はどう変わるのか、をイメージさせる

3.体感
実際にお試しできないのであれば、「使用感」を伝える

どうでしょう? 非常におもしろいですね。つまり、これがテレビショッピングの構成要素そのものだということです。応用できるかどうかはともかくとして、どのようなステップをふめばよいのか、は明確にわかりますね。

ちなみに本には、著者が実際に売った「低反発ウレタンフォーム枕」の構成表がついています。著者が実際にどうやって表現したかが書かれているので、具体的なイメージがつかめない、という方はぜひ読んでみてください。

というわけで、今日の1冊は

『30分で5億売った男の買ってもらう技法』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757302444

です。本当はもっと売れてもいい本です。誰かがこの本のよさに気付いてくれることを期待しています。

主な目次

序章 本題に入る前の五つの「マクラ」
第1章 ビジョンを植えつけるための五つの「ツカミ」
第2章 商品理解を深めるための三つの「リサーチ」
第3章 最後に背中を押すための三つの「センノー」
終章 そして、驚きのテクニックへ[応用問題]
巻末資料 「低反発ウレタンフォーム枕」構成表
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『ものづくり道』

2004年07月22日 | Weblog
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4898310761

僕は知らなかったのですが、著者の西堀榮三郎という方は、知る人ぞ知る、伝説の技術者だそうです。登山家・探検家としても知られていたそうで、第一次南極観測越冬隊長としても多大な功績を残しています。東海大学名誉教授の唐津一氏や、世界一の職人として名高い岡野雅行氏がすすめていることからも、この方のすごさがうかがい知れます。

ところがこの本、商売的な見地でいうと、正直きびしい。おそらく版元が「伝説の技術者」を意識しすぎたためでしょう。装丁とタイトルからは、「ものづくり関係者以外お断り」のメッセージが感じられます。担当者にこの話をしたら、ちょっとむっとしていましたが、事実、ものの見事に売れていません。

では、実際の内容はどうかというと、この本は、ものづくりを超えた、普遍的価値を持っていると思います。

もう2年ほど前になりますが、かつて『発想する会社!』の著者、トム・ケリー氏にインタビューをしたことがあります。

『発想する会社!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/415208426X/

その時、氏がおっしゃっていたのは、「良いアイデアが生まれるかどうかは、良い観察ができるかどうかにかかっている」ということでした。

この『ものづくり道』では、まさにこの「観察」の手法から、アイデアの創出、実践までを、極めて具体的に書いています。統計の罠や仮説を導く際の注意点、実際にプロジェクトを動かす際のマネジメント上の注意点なども参考になります。南極で石油を運ぶ必要性に迫られた時に氷のパイプを作り出した、など、読みごたえあるエピソードも枚挙に暇がありません。

ということで、本日の1冊は、

『ものづくり道』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4898310761

現場で活躍中の技術者だけでなく、MBAホルダーにもおすすめです。

本書の主要目次

序文 ― 唐津一

1.オリジナリティのつくり方
知識がアイデアに変わる瞬間
小さなアイデアの伸ばし方
アイデアを殺さない研究開発
日本人の創造性

2.異質×異質
異質の積を生む方法
動きたくなる組織
本当のチームワーク
リーダーシップ論

3.価値を生む術
科学と技術
技術のあるべき姿
私と技術

4.現場にあるアイデア
事実からの出発
品質管理とは
統計的品質管理の方法
日本的品質管理

5.大自然と経験と
自然に学ぶ
私の自然観
未知の大陸
体験から学ぶ

6.ものづくり道
再び技術を考える
企業のあり方、技術者のあり方
未来へ

初版まえがき ― 西堀榮三郎
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『94%の顧客が「大満足」と言ってくれる私の究極のサービス』

2004年07月21日 | Weblog
知り合いからよく、「毎日ビジネス書を読んでいて飽きないの?」と言われます。もちろん、いくらビジネス書が好きだと言っても、毎日同じジャンルばかり読んでいたら、そのうち飽きが来ます。

そんな状況を避けるためには、同じビジネス書でも自分にとっての「癒し」ジャンルを作っておくことです。私にとって、それは「小売」や「サービス」について書かれたものです。なぜかと言うと、これらはエピソードたっぷりで、多くの場合堅苦しい文章とも無縁。しかもビジネスの基本とも言うべき「現場」について書かれたいる、刺激的なものだからです。

そう思って、今回購入したのが、

『94%の顧客が「大満足」と言ってくれる私の究極のサービス』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532311470

“Hug Your Customers”の名前で洋書でも話題になった1冊です。

この本の著者は、米コネチカット州にあるミッチェルズとリチャーズという2つの洋服店のCEO。これだけ聞いたら、「何だ、服屋か」とおっしゃるかもしれませんが、売上高を聞いたらぶっ飛びます。だって、2店の売上合計は、1年で6500万ドルを突破しているんですから。しかも、この2店のあるウエストポートとグリニッチの人口は、合計しても10万に満たない8万8千人というから驚きです。

つまり、この長ったらしい名前の本は、顧客満足を確実に実践し、大成功を収めた著者の成功哲学&サービス哲学を学ぶための本なのです。

しかし、その内容は…。平たく言うと、編集が悪いです。

具体的には、

1.顧客をハグする(抱きしめる)というコンセプトで300ページ引っ張るのはきつい
2.「56の成功法則」はちょっと多すぎる

もちろん、実務上、気を付けるべきことは無数にあるだろうし、56個あっても何ら不思議はないでしょう。ただ、56個もあるということは、骨も肉も皮もごちゃまぜに論じられている危険性があるということで、事実、本書はそれゆえに大変読みにくくなってしまっています。

ただ、そういった弱点を除けば、ビジネスのヒントが詰まった、なかなか面白い本です。とくに注目したいのは、顧客満足を実践するための人材の採用、育成、管理に関する部分。学校名や会社名ではなく、「その人物がトップの座につくことの苦労を味わったことがあるのか」「他よりもぬきんでたいという強い気持ちがあるかどうか」といった視点で採用し、権限と予算をもたせ、失敗から学ばせる。この方法のおかげかどうかはともかく、この企業には、100万ドル以上売り上げるスタッフがなんと20人以上もいるのだそうです。

ということで、今日の1冊は、
『94%の顧客が「大満足」と言ってくれる私の究極のサービス』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532311470

です。意外に、起業を志す方には面白い本かもしれません。サービスを学びたい方には、ちょっと目新しさに欠けるかもしれませんね。

以下、目次を引用しておきます。

プロローグ 私だけが実行していること
第一章 サービスは情熱から生まれる
第二章 はじまりは三着のスーツから
第三章 とっておきの秘密
第四章 永遠に働く優秀なスタッフ
第五章 勝負はぜったいに勝つ
第六章 お金が手元に落ちていく
第七章 失敗を愛する
第八章 気持ちはいつも新鮮に
エピローグ こんなサービスが想像できましたか?
付録 サービス達成度テスト
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『プロフェッショナルマネジャー』

2004年07月20日 | Weblog
出版業界7不思議のひとつ。それは、「編集と営業の仲が悪い」ということです。これはどうやら雑誌部と書籍部にも当てはまるようで、先日来社した某社の営業マンは、「雑誌に著者のインタビュー記事が載っているにもかかわらず、書籍紹介がまったくない」と嘆いていました。

こんな出版界の現状をあざ笑うかのように、1冊の黒い本が売れています。そう、ユニクロ柳井さんの「幻のバイブル」として、プレジデント誌ででかでかと紹介された

『プロフェッショナルマネジャー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/483345002X
です。

行間がびっしり詰まっていて、翻訳も決して読みやすいとは言えませんが、内容は本当に素晴らしい。著者は、かつてITTのCEOとして、14年半連続増益を達成した辣腕経営者、ハロルド・ジェニーン。ITTはジェニーン在任中、あのエイビス・レンタカーやシェラトン・ホテル、ハートフォード保険会社はじめ、名立たる企業を傘下に持つ、一代企業グループだったようです。

この本は、日本企業が世界を席巻していた時期に書かれたもので、若干、アメリカ人へのエールといった要素も含まれています。
MBAホルダーに対する風当たりが強かった時期でもあり、ジェニーンも第13章「気になること」でこのように述べています。

「MBAの称号をもらって社会に巣立った若い人たちは、経営の情緒的要素の価値と、それを身につけるために支払わなくてはならない代価を知るまでは、私の定義に当てはまるビジネス・マネジャーにはなれない」

他にも彼は、

「マネジメントには目的が、献身がなくてはならず、その献身は情緒的な自己投入でなくてはならぬ」

「リーダーシップは物事を遂行するように人びとを駆り立て、答えを出さなくてはならないと感じるがゆえにそれをやり続け、満足できる結果を得るまでやめないように駆り立てる情念の力である」

などと言った金言を残しています。

賢明な読者なら、もうお気付きでしょう。そう、この本は、極めてロジカルでありながら、一方で非常に「人間くさい」本なのです。

それもそのはず。ジェニーンは、証券取引所のボーイから、図書の訪問販売、新聞の広告営業を経て、一流のプロフェッショナルマネジャーになった、まさに「実践の人」だったのです。

だから、中小企業経営者や、普段薄い本を好んで読む人も、装丁を見て敬遠しないでいただきたい。この本は、読む価値がある本です。何たって、久々に、本が赤ペンで真っ赤になりましたからね。

※今日の教訓:良い本は優れた人物に聞くのが一番手っ取り早い

『プロフェッショナルマネジャー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/483345002X

主要目次

はじめに 「これが私の最高の教科書だ」柳井 正
第一章 経営に関するセオリーG
第二章 経営の秘訣
第三章 経験と金銭的報酬
第四章 二つの組織
第五章 経営者の条件
第六章 リーダーシップ
第七章 エグゼクティブの机
第八章 最悪の病―エゴチスム
第九章 数字が意味するもの
第十章 買収と成長
第十一章 企業家精神
第十二章 取締役会
第十三章 気になること―結びとして
第十四章 やろう!
付録 「創意」と「結果」7つの法則 柳井 正
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