遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「そらまめ」

2010-09-02 | 現代詩作品
そらまめ



空豆は
他の豆よりも
大きく 空とぶ豆と
呼んだ頃は
淡い緑の空にはじけて
いくつもの
物語も、まだ
浅草への道も 知らず


上野の音楽短期大学の
濃紺の女学生が
神聖な
藤棚をくぐって
毎朝、家の前を通る
その集団を 祖母と一緒に
二階から眺めていた
幼い頃


上野の家から
ひとりそろそろ
合羽橋通りをぬけて
入谷へと
はじめてたどった日よ
どこかで
空豆、そーらまめよと
呼び止めている人がいた


いろんな声を振り切り 
合羽橋通りから
入谷の鬼子母神をぬけて
浅い夢の道に
空豆を一個づつ撒きながら
あゆんだ日
みちしるべからも遠く
大人になって


あの幇間の「計らうこと」の
美学を 聞いて
映画吉原炎上の遊女の 
悲哀と反骨
下町の
泪の底意地をしって
どこ吹く風が
ほんとに恥ずかしかったよ
(空も飛べずに 雨に打たれていた
 古い記憶の中の 緑の珠玉はいずこへ)







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