遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

中原中也ノート⒛

2019-09-08 | 近・現代詩人論
京都に来て、その年の暮れに、バイオリンを弾きながら全国を放浪していた永井伯叔に遭遇。中也から声をかけて下宿に招く。永井をきっかけに長谷川泰子に出合うわけだが二人の同棲生活が始まるのは大正十三年四月である。泰子は中也より三歳年長であり、当時マキノ・プロダクションの大部屋女優であった。広島女学校卒業、当時広島にいた永井に同行し女優になるため上京。併し関東大震災に遭い、永井と共に京都に移ってきていた。
永井は余り詩史には現れることはないが、キリスト教的無政府主義系統の詩人でその頃は『大空詩人』と称し、マンドリンを弾きながら、あちこちの盛り場を流して歩く一種の名物男であった。(大岡昇平解説より)中也は前年の暮れ路上で永井を知り親しくなり、泰子を紹介されたという。
中也からダダの詩の書きためたノートを見せられて、泰子は「ダダダダだ……というような感じでした。音を表現しているような片カナが、多く書き込まれていたよう」だと回想している。(「『ゆきてかえらぬ 中原中也との愛』)二人の同棲は、四年に進級してまもなくの、中也十七才目前のときである。


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