遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「水府まで」

2010-09-04 | 現代詩作品
水府まで



波に乗って異界へ
無意識な漂流は椰子の実ばかりか
洗剤用のポリの容器に
すり減った歯ブラシ
毀れかけた椅子や
へこんだバケツなどが渚へと
必死で脱出する(意志を偲ばせ、
運の悪い
人々の、それは
荒野にはじめて鉄道レールを引いた時に
流しただろう泪まで連れてくる


日本海沿いの
仮定空間の霧ふかい夢隣りを走る
遺失物と区別が着かない車内に
行旅死亡人という
漂流がある
死んでなおその先の世界で生き直す
漂流のひとの
仮の栖であればなおさら
他人に見えない、見せない
無意識のさみしさは
錆びた鉄路に蔓延する雑草の不安な愛か。


金沢発上野行きの
夜行列車「北陸」「能登」が
静かに冥土に至り
新生ふるさと喪失者たちは
命の細い文学ように泪にくれて
動画に明け暮れる作家だと思いこむ負傷
郷土という特権的な幽霊の
水府もあるか
泪の種子の発火点から風媒花のように
いつか地中に根を張る
不安な花の日もあるのだきっと、


それどころか
個人の幸福度を追求するには
わがままでなければうまくいかないと
遠慮知らずで
とりかえしのつかない支線を乗り換える
行旅死亡人の悲運な生涯と
どこが違うのか
その泪の漂流化(天涯孤独の?)
その泪という水平線の運の悪さか、
耳で看るしかない
波と波でつながる自由という不安な贈り物ばかり



*昨日は少し小雨があったので今朝はいくぶん涼しめです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿