遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩{東雲草」

2010-08-22 | 現代詩作品
東雲草(しののめそう)



腐りかけの
果実の甘さが
しのぎをけずった
時代わすれの
死の勝利を、
読む。


明治の
ストライキ節は
名古屋旭新地での
東雲楼を廃業に追いこんだ
娼妓の唄と、
知る。


熊本説をまたいで
江東区豊洲の
東雲橋をわたると
まぼろしの
東雲飛行場の跡地に
至る。


露地から露地へ
鉢植えが
ところせましと咲き乱れていた
あれが東雲草だったか
一九五〇年代の上野の長屋の風景が
過ぎる。


追憶は
蔓に絡まって
贋のアルコールで、命を落とした
祖父の日課とは
新聞の中のある人物を針でぶすぶす刺すことだとか、
一九四五年の夏ごろまでの。


二〇一〇年の、天高く
雲がわき立つその向こうを
午後が滑り墜ちていく
白と黒の淡彩画に
とけ込んでみえにくい東雲草の
不運な棚の角度。


去年の目安を掘り返す
東雲草のそばに
文鳥を埋め、
そのそばに四十雀も埋めた
浅い地中には
蚯蚓一匹いなかったよ。



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