江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

笠の川の民が天狗に裂き殺される 「土佐風俗と伝説」 天狗怪禽

2024-06-22 00:00:13 | 天狗

笠の川の民が天狗に裂き殺される 「土佐風俗と伝説」 天狗怪禽

                    2024.6

長岡郡岡豊(オガウとルビがふってある)村(高知県南国市岡豊村)笠の川と八京(やきょう)の境に、瀧戸(たきど)と称する谷がある。左右の山から、年老いた樹木がおおいかかって昼もなお薄暗かった。夜は、特に天狗の遊び場のようで、笛太鼓の音の響がすると言って、その場に近寄る者も無かった。
 
今は昔、笠の川の一人の農夫が、この谷の辺(あたり)にささやかな畑を、もっていた。そこで、甘藷を栽培していたが、毎夜兎が出てきて畑を荒したので、ある晩に、兎を追いに出かけた。その夜は朧月で、雨が降っていたので、蓑笠を着て行ったが、それから一向に帰ってこなかった。
それで、村中で大騒ぎで探した。
数日して、瀧戸の上の扇谷に、無惨にも八裂きの死体となっているのが、村人に発見された。
皆は、天狗の仕業と断定した。
その後、又瓶岩の重之丞と言う男も何物かにつかまれ、扇谷の辺(あたり)に落とされたと言う話がある。
村民は皆、扇谷を非常に恐れ、今に至るも、その谷の水を一滴も汲まないようになった。
所の名にも不飲谷(のまずのたに)と言う名が残っている。


天狗に裂かれし女  「土佐風俗と伝説」 天狗怪禽

2024-06-21 23:56:27 | 天狗

天狗に裂かれし女  「土佐風俗と伝説」 天狗怪禽

                     2024.6

今は昔.安政五年(1858年)の頃だそうである。
高岡郡岩目地(いわめぢ:今の加茂村)の婦人が、天狗につかまれて、ある木の山で引き裂かれて、その死骸が松の枝に掛かっていた。
その事が、真覚寺日記の安政五年二月六日の條に記されている。
当時、大いに、噂されていた、と。

 


天狗に浚(さら)われた村娘 「土佐風俗と伝説」天狗怪禽

2024-06-20 23:52:43 | 天狗

天狗に浚(さら)われた村娘 「土佐風俗と伝説」天狗怪禽

                     2024.6

今は昔、安政三年(1856年)三月の頃、高岡郡宇佐村字芝に一人の娘がいた。
同郡の日下(くさか)村に下女奉公をしていた。
ある夜、たちまち天狗にさらわれ、空中を飛び、その夜宇佐村の我が家の近くへ連れられて来て、おろされた。
そして、その娘の衣類の袂(たもと)に、椿の葉などが沢山入っていた。
又、数日は、魚の臭気を大にいやがった、とのことである。
後日、その娘に様子を聞くと、振袖を来た美人が誘いに来て、大内(おうち)堤の上を通ったことは、はっきりと覚えていた、とのことであった。

 

 


上の山の天狗  「土佐風俗と伝説」天狗怪禽

2024-06-19 23:49:44 | 天狗

上の山の天狗  「土佐風俗と伝説」 天狗怪禽

                2024.6

今は昔、土佐郡薊野(あざみの)村に斎藤平兵衛実純(谷秦山の門人)と言う大胆な武士がいた。
ある年の正月に、上の山と言う深山の奥深くに鴨打ちに行った。山路をたどりたどりして、ふと黒味の林へ入った。

老木が森々(しんしん)と打ち茂がり、昼も寂しい様であるが、ここは昔からの魔所であった。

ふと頭の上に、大きな鳥の羽音が聞こえた。
不思議に思い、見上げた所、丁度、長さは五尋程(ごひろほど:7.5m位か?)の翼をひろげた鳥の様な大きな物が、ふわりと樹上に止まっていた。
流石(さすが)の平兵衛も気味悪くなり、鴨打ちどころか銃を小脇に抱えて一目散に山を下った。
その後、平兵衛はこの日の怪鳥のことを人に話した。この世の中に、天拘と言うものは無いと思っていたが、そのように言い切ることは出来ない、と常に物語った。