環境にやさしい?翻訳者日記

環境分野を専門とする地方在住の翻訳者が、自らもなるべくエコなライフスタイルを目指します。がんばりすぎず、ぼちぼちと。

ジェンダー・クオータ制

2017-09-13 12:08:27 | 持続可能性/サステナビリティ
クオータ制(政府や企業幹部に占める女性の割合をあらかじめ決めておく制度)に関する翻訳をしていて、下調べの最中に見つけた興味深い記事からメモ。

クオータ制は、男性への「逆差別」になるのか? (日経ビジネス ON LINE)

興味深い実験結果がいろいろと示されていた。
「男性は男性だけで競争する時は自信がなくなるが、女性が競争に加わったとたん競争に勝つ自信が出てくる」
「女性は、女性だけの競争だと勝つ自信が大きい一方で、男性が競争に加わるととたんに自信がなくなる」
「クオータ制の下で女性が女性を相手に競争する状況を作ることが女性の能力の発揮につながる可能性がある」
「リーダー育成プログラムは、女性が男性と一緒にプログラムを受けると自信を失い能力を発揮できないかもしれない」
「女性が昇進のための競争に参加したがらないので昇進の候補にさえあがってこない可能性」
「女性が混じった競争で自信過剰になる男性は男女が同じように扱われる昇進システムでよりアグレッシブになっている可能性」

「1993年に一部の村に村会議員数のクオータ制が導入されたインドでは、クオータ制で女性の村会議員が増えたことが、村の政策や女子生徒への教育にプラスの効果を与えた」
「とはいえ、女性議員のクオータ制が導入された村では公共サービスが増え、かつサービスの質も低下しなかったにもかかわらず、女性議員に対する村人の評価は低かった。つまり女性の生活を向上させる努力をし、政策を変えたにもかかわらず、女性の村会議員のがんばりはあまり評価されなかった。」
「女性の間にも男性の方が優秀だという潜在意識があるのかもしれない。」
「クオータ制が導入された後、すでに2回選挙が行われた村では、学校への進学の男女格差がなくなったことが明らかになった。……まだ一度しか選挙がない村ではそれらの影響は顕著ではなかった。」
「自分の村の中に身近なロールモデルが居続けることが、女子生徒の意識を変化させたのではないか」


企業に女性幹部クオータ制 先進ノルウェーに聞く (NIKKEI STYLE)
以下、引用。

 ――2002年に世界で初めて提案されたクオータ制法案は、08年までに取締役会の4割を女性にしない大企業(主に上場企業)は強制的に閉鎖するなどかなり過激な内容でした。

 ――経済界は猛反発したと聞きます。

 「今でもあれほどの非難を受けたことはない。ガブリエルセン大臣(当時)が150人ほどの大企業の経営者を会議室に集めて、『クオータ制を導入する』と宣言したときに私も同席したが、『そんなことをしたら経済が壊れる』『株が暴落する』『ノルウェーから企業はいなくなる』と大騒ぎだった」

 ――導入でなにが変わりましたか。

 「結局期限の08年1月までには、すべての対象企業が条件を満たし、強制閉鎖される企業はなかった。反対の立場を貫き自ら上場廃止を選ぶ企業もあったが、それは5社ぐらいだったと記憶している。ビジネスの面では、女性役員により情報開示や法令順守対応が進んだなど様々な検証結果が出ているが、導入前と変わらずというのが大方のところだ。それ以上に社会全体が変わったことが大きい。女性が働くことや、男性も仕事と家庭を両立させることが当たり前になった。出生率もトップクラスになった。今のオスロではいたるところで子守をする男性の姿を見るが、それはこの10年ぐらいの話だ」



それから、ちょっとクオータ制のテーマから外れるけど、共感したので、おまけの引用。

平田オリザ「母親が何かを犠牲にする社会はおかしい」 (NIKKEI STYLE)

―― 平田さんは「子育て中のお母さんが、昼間に、子どもを保育所に預けて芝居や映画を観に行っても、後ろ指をさされない社会を作ること」が少子化対策には必要だと述べられています。

 今の日本では、保育園に子どもを預けているお母さんが、レストランで普通に食事をしているだけで(保育園などに)通報されるなんてことが、現実にあります。芝居や映画に行く以前の問題ですよね。こんな社会は、本当に異常です。日本人は、いつからこんなにとげとげしい、ギスギスした民族になってしまったのでしょうか。

―― なぜ、後ろ指をさされてしまうのでしょうか。

 ヘイトスピーチに象徴されるように、「自分だけが苦労して、誰かがズルをしている」「誰かがいい目をみている」という妬みが日本社会の基盤になりつつあることが原因です。「子育て中のお母さんが、保育園に子どもを預けて映画を観に行くと後ろ指をさされる社会」と、「失業者や生活保護者が、昼間に芝居を観に行くと通報されてしまう社会」。そして、ヘイトスピーチ。日本で起こっているこれら3つの現象は、すべて根っこの部分でつながっていると思います。そして、こうしたマインドの問題が一番大きいのに、それを無視したまま、目先の対応だけが議論されています。




おかげさまで開業15周年

2017-09-07 08:07:06 | 翻訳
私が正式に翻訳者として仕事を始めた(税務署に開業届を出した)のがちょうど15年前、2002年の9月。
おかげさまで、
祝・15周年


当時は、翻訳誌の翻訳者募集コーナーを見ても、取扱分野に「環境」を挙げているエージェントは本当に少数派で、全社片っ端からトライアルを受けてみようかと思えるほどだった。

それが今では、『翻訳事典2017年度版』の関東地域を見た感じ、ざっと半分以上は「環境」も挙げている。
「CSR」を挙げているエージェントも、3社。

私のカバー分野も、「環境」を軸に、「持続可能性」「サステナビリティ」へと広がった。
なんといっても、国連がメインに掲げる目標のタイトルが、「持続可能な開発目標(SDGs)」となる時代だもの。
もはや傍流ではなく、主流派なのだよ。ブワッハッハ(^ ^)


同じく、15年という時の流れを感じるのが、翻訳の作業のやり方について。

15年前はまだ、ダイヤル回線でジーコジーコとインターネットにつないでいた時代で、納品物はワードファイルだったけど原稿は今ほどデジタル化されていなかったし、まだまだ「アナログの世界にデジタルがだんだん入ってきつつある」程度だった。

それが、TRADOS、Google検索、CATツール、クラウド、Google翻訳、果てにはAI、と世の中のデジタル化の流れに沿って、翻訳業界も驚くような変遷を遂げている。

これからはおそらく、機械的に翻訳する文書と、人の手で文脈を読み取りながら翻訳する文書とで、分かれていくことになるのかなと思う。

正直、今から新たに翻訳を始める人は大変だなーと思う。
最初から後者で使い物になる人はなかなかいないので、たぶん最初はある程度前者のデジタルツールにも手を染めないと、とっかかりがつかめなくなるんじゃないかな(どうなんだろう?)
私はまだ世の中アナログが主流だった時代に下積みを積めて、助かった。


そんなこんなを思いつつ。
次は20周年に向けて、引き続きがんばりまっす!