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★セブ島の旅・其の11★フィリピン・コメ事情

2013年02月12日 | ★旅行★外国
フィリピン人はご飯が好きだ。三食ともお米を食べないとダメという人も少なくない。この国は亜熱帯に属し、三毛作も可能なのにベトナムなど近隣諸国からの輸入に頼っている状況だ。

かつては米だけでなく砂糖も輸出するほど生産していたのに、今では自給すらできない。

フィリピンにはアジア最先端の国際稲研究所(IRRI)まであって、米の研究には地域で一番力を入れているはずだ。マニラの小中学生が必ず遠足などでそこを訪れ、フィリピンが世界に誇る研究機関なのに、目覚ましい成果が上がったとは寡聞である。

単純に比較するのは語弊があろうが、日本の農業人口は全体の21%、それでも米は減反を迫られるほど出来過ぎてしまう.フィリピンはまだ、基本的には農業国なのに主食の米ひとつ、自給できないのだ。

政府は外国から米を輸入しているが、制限しているので消費者への価格は高くなる。1日1ドル以下で暮らす人がフィリピンでは35%くらいおり、こういった貧しい人には米の値段の高さは致命的だ。

では、国内産の米の価格を安くしたらという声が聞こえてきそうだが、そうすれば農家は嫌気をさして米を作らなくなってしまう。そして供給が減れば価格は逆に高騰してしまう。

それならいっそのこと安い米を他からたくさん、輸入したらどうかといえば、これも問題だ。外国産の米と対等に競争できない国内の米作農家はたちまちのうちに淘汰されてしまうに違いない。膨大な失業が生まれるだけでなく、食料安保への懸念も高まること必至だ。

そんなことになったら、政権は持たない。要するに、今の事態を解決するには生産性を上げるしか他に有効な手立てがないのだ。

たとえ値段が高くても国内需要を賄えるだけの米の生産をどうしてフィリピンではできないのだろうか? よく挙げられる理由の一つとして都市化の進展による耕地の工場用地や住宅地への転換がある。確かにこれは急増してはいるが、開墾などによる新たな耕作地の拡大に伴い、作付け面積はネットでむしろ増えているのだ。

90年代に限ると90~94年の総作付け面積より95~99年のそれのほうが10%も上回っている。ラグナやカビテなどで農地がゴルフ場へと姿を変えていることに対して感情的な批判があるが、それは実態を把握していない印象に基づく憶測的意見でしかない。

もう一つ、人口に膾炙(かいしゃ)した見方としては、かんがい設備が不充分だからという理由である。事実、数年前まではベトナムより劣っている状況が続いていたが、近年ではだいぶ充実してきた。アジアではマレーシアが群をぬいて66%のかんがい率だが、フィリピンは61%とその他の東南アジア諸国や中国をしのいでいる。

一人あたりの耕作面積を比較すると、フィリピンはたった0.075ヘクタールで、タイはその4倍の0.28ヘクタール、中国、インド、インドネシアなどと比べてもずっと少ない。しかもフィリピンの農家はしばしば台風の被害に悩まされる。

さらにフィリピンでは米の耕作の比率が低く全体の30%でしかない。これに対し、ベトナムやタイは米の生産比率は全体の60%と圧倒的だ。フィリピンではトウモロコシなど、他の作物に頼る割合が高く、米の生産はむしろ二義的になっている。労働力にしてもフィリピンは農作にあまり時間を使っていない。

となると解決策は、効率のよい米作農業を目指すことになろう。それには風雨や虫害に強く大量に収穫できる米の品種の開発、政府の支援、農業インフラのさらなる整備などが求められる。

この文章では国際米研究所の農業経済学者DAWE氏のAsian Wall Street Journalへの論文を参考に自説を展開したが、同研究所の貢献度に対しいささかの不満が残る。日本にはこんな大層な研究所はなくとも立派に品種改良して米はすこぶるうまく、しかも大量に過剰の状況が続いている。この研究所の費用対効果は一体どうなっているのか?(出典・フィリピン万華鏡・国際アナリストフレッド吉野・フィリピンを理解するための『やわらか経済学』より)

ホテルレストランでの朝食で写真3・4が「お粥」。
写真10と11・13はレストランに張り巡らされた防虫防鳥ネット。