ポーランドからの報告

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ポーランドの 「移民問題」 

2006年10月10日 | 政治・経済

ポーランドは非常に移民の少ない国です。首都ワルシャワでさえ、道を歩いている人の95%以上がポーランド人で、残りがその他の白人とアジア人、黒人です。私の住むクラクフも、外国人が目につくほうですが、ほとんどが観光客で、3・4日滞在して帰る人たちです。

そんな移民の少ないポーランドでの生活に適応していただけに、先日旅行でイタリアに行ったときは、そのあまりの移民の多さにびっくりしました。西欧は移民が多いとは聞いていたものの、ミラノはお城裏手の公園が中華共和国でしたし、フィレンツェ・ヴェネチィアも中国系・東欧系・アラブ系・アフリカ系など、世界の全人種が集う、コスモポリタン・シティでした。(写真:フィレンツェ)

改めていかにポーランドに移民が少ないかを知る機会となったとともに、ここだけの話、ちょっとほっとしたのを覚えています。なにせ周囲の人からジロジロ見られることなく道を歩けるのは、やはりとても気が楽ですから。ポーランドでは、アジア人はどうしても目立ってしまうため、何をしていても周囲からの視線を感じ、自分でも気づかないうちに、ストレスが溜まっていたのだと思います。

   


さて、ポーランドに少数ながらいる移民は、だいたい以下に分けられます。

  ・ウクライナ国籍やベラルーシ国籍のポーランド系住民(労働移民)
  ・アメリカやイスラエルから帰国したポーランド系ユダヤ人
  ・ベトナム人(ワルシャワを中心に数万人。マフィアを組織しており、問題となっています)
  ・中国人(飲食店経営など)
  ・チェチェン難民や、その他カフカス系難民(人口比では極少数)
  ・諸外国から国費留学生として来て、そのまま定住した人(極少数)
  ・留学生・外国企業駐在員(ほとんどが数年で帰国)
  ・その他外国人(極少数、ポーランド人の配偶者含む)

そして、ポーランドになぜ移民が少ないかといえば、、

  ・ポーランド経済が魅力的でない(給料が低い)
  ・ポーランド語ができないと就職が厳しい(ポーランド人の失業率も高いので競争になる)
  ・3K(キツイ・汚い・危険)の仕事も、ポーランドではポーランド人がやっている
  ・ポーランドに行くぐらいなら、皆ドイツに行く...

というような理由が思いつきます。
要するに、移住する国としての魅力にかける、この一言に尽きます。

西欧諸国に多いイスラム系移民は、ポーランドではほとんど見かけません(留学生やチェチェン難民を除く)。ポーランドという国自体が、保守カトリックの色が濃いのに加え、クラクフ郊外のアウシュビッツ収容所や、ワルシャワのゲットー跡・戦没者記念碑などに代表されるように、ユダヤ・イスラエルとの結びつきも大変強く、それゆえイスラム教徒からは敬遠されるようです。
(イスラム教徒は観光客すら皆無です)。

また同様にアフリカ系黒人もほとんどいません。西欧各国に比べ、有色人種に対する偏見が根強く残っていることが理由にあるかもしれません。難解なポーランド語を必死で覚えても、仕事もない、居心地も悪い、ではペイしませんから。それでも最近は多少増えてきているようですが。


そんなポーランドで「移民」に関する問題といったら、目下深刻なのは、国内への「流入移民」ではなく、ポーランド国外に流出している「ポーランド人移民」の問題です。

というのもポーランドでは、20代・30代の働きざかりの若者、とりわけ、学歴が高くアンビションのある若者が、次から次へと他国へ移住しており、国内の空洞化が深刻な問題となっているからです。実際2004年5月のEU加盟以来、すでに人口が100万人減り、国民の平均年齢が一気に高齢化したことが確認されています。

追記:
「ポーランド人移民」の問題については、こちらの記事 もご覧ください。また こちらのブログ では、「ポーランド人移民」に関する問題を、イギリスからの視点でレポートしており、大変参考になります。


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