Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

ポストペイの発想

2004-09-26 | ◆ビジネス
電子マネーといえば90年代から数々の実験が繰り返されたものの、なかなか日の目を見ることが出来なかった。しかし、ついにEdyとSuicaという金融機関を母体としない企業から始まった電子マネーは着実に浸透しつつあるように見える。今後はこの2つの争いかと思っていたが、まだまだ新しい敵が待ち構えているようである。

ポストペイの発想
EdyもSuicaも原則として事前入金が必要であり、カードに残高が十分あるかどうか気にしなくてはならない。つまりプリペイの仕組みである。それに対して、使った分だけあとで精算するというのが、ポストペイの考え方である。つまり、小口決済を行う時にICカードの残高がいくらかを気にする必要はないし、入金の手間もない。と聞くとクレジットカードを思い出すが、まさに小口決済のポストペイを実現しようとしているのは、クレジットカード会社なのである(詳しくは9/25日経「カードビジネス総力戦(4)少額利用狙え――新技術、便利さ追求。」を参照されたい)。

ポストペイとする場合には、利用限度をどう設定するのか、センターとの残高チェックをどうするのか、などの疑問も湧く。100円の決済のために、通常のクレジットカードと同様のセンター通信を待つというのは有り得ないからだ。そのあたりの仕組みがどうなるのかは判らないが、利用に当たっての手間がプリペイ型と変わらないならば、プリペイや残高確認が不要な分、ポストペイの方が便利である。となれば、プリペイ型に対する強敵出現となる。

究極のポストペイ
先の日経記事によれば、決済用のICはカード型だけではなく、キーホルダー型なども考えられているという。しかし究極の認証手段はICではなく、生体認証である。JCBは既に小口決済の認証に指先の血管の形状を利用するという技術を実用化しようとしているそうである。インターネットが匿名化を押し進めている一方で、生体認証は究極の個人認証である。クローン生成へのインセンティブとなりそうで怖い話でもある。

ということで、電子マネーを取り巻く戦況は、方向性が見えてきたというより、まさにこれからということになる。








個人の金融資産と株式投資

2004-09-26 | ◆ビジネス
最近、個人の金融資産と株式市場に関するニュースがいくつか出たので整理しておきたい。9月26日の日経によれば、株式市場(東証+大証+名証)における株数ベースの売買シェアは4割を超えたにもかかわらず、個人株主の保有シェアは2割強で大きなギャップがある。今後の個人金融資産の動きは、金融機関にとって大きな関心事だけにそのギャップは興味深い。

株式市場における個人投資家 - 日米比較
先の日経記事を整理すると以下の通りである。委託売買シェアは株式数ベースであるのに対し、株式保有シェアが株式数ベースなのか金額ベースなのかが記事では不明なので、一概に委託売買シェアと株式保有シェアを比較して良いものなのか判らない。しかし、日本と米国における株式保有シェアについては、統計のベースが同じであると仮定すると、その差には目を見張るものがある。特に投信・年金まで含めた個人投資家のシェアは3割と8割という違いである。

<日本>
委託売買シェア:4割強(株式数ベース)
株式保有シェア:2割強(投信・年金含めても3割)

<米国>
委託売買シェア:?
株式保有シェア:4割(投信・年金含めると8割)

個人金融資産 - 日米比較
日銀のホームページの「教えて!にちぎん」コーナーに国際比較:個人金融資産1,400兆円 という記事がある。それによると、日本の個人金融資産は、総額でも一人当たりでも、米国に続く2番手に付けている。

<日本>
総額:1,461兆円
国民1人当たり残高:1,148万円

<米国>
総額:4,257兆円
国民一人当たり残高:1,494万円

しかし、問題はその内訳で、日本人は金融資産のうち54%が現預金であるのに対し、株式はわずか7%である。一方、アメリカ人は現預金11%に対し、株式が34%を占める。このデータ自体は2001年と少し古いが、先ほどの株式保有シェアの違いも納得が行くというものである。

その意味するところは...
先ほど引用したのと同じ9月26日の日経5面に「米投資家萎縮、株離れ」という記事が出ている。原油高やテロ懸念などから米投資家がより安全資産に資金を振り向けているという話だ。たしかにそうした傾向はあるのだろうが、株式市場において個人投資家の株式保有高が高いか低いかによってそのインパクトは異なる。機関投資家ほどには企業業績に敏感に反応して売買を行うわけではない個人投資家は安定株主となる可能性が高い。従って、個人株主の比率が高いことは、景気後退局面においても株価下落の抑止効果があると推測できる。一方、日本のように個人株主の比率が低い一方で、売買シェアのみ高い市場では、景気後退などが一気に株式相場をパニック状態に落としいれ、株価下落の追い風となりやすい。

金融システム不安の後退により6月末の流動性預金の残高が200兆円を突破したそうである(日経9/25)。これはタンス預金が銀行へ還流したことによる。これがリスク資産への待機残高となるが、これが長期の株式保有へと繋がれば、日本の証券市場もより健全なものとなるであろう。これが収益性を追求する短期売買へと繋がれば、日本の証券市場は更に脆いものとなるのだろう。