先日メリルリンチ証券が開発したオンデマンド・インデックス(MLODI - Merrill Lynch On Demand Index)について紹介した。MLODIとはソフトウェア会社がソフトウェアを販売する際に、売切りのライセンスとして顧客から対価を受け取るのか、あるいは利用料として対価を受け取るのかの比率を表したものである。
メリルリンチが何故MLODIを開発したのかを説明した資料を読むと、それが単なる企業評価指標の追加に留まるものではなく、ソフトウェア会社の評価方法をそのものを変えていくべきだという提言であることがわかる。"Software Goes On Demand"と名づけられたこの資料、もう少し読み込んでみたい。
背景
メリルリンチは2004年がライセンス売切型からオンデマンド型への転換点であると見ている。オンデマンド型は企業のIT投資の適正化にも繋がるため、ソフトウェアの販売方法は大きく変わるということだ。それゆえに、この変化の中にあるソフトウェア会社を投資家が正しく評価できるよう、MLODIを開発したという。ざっくりと背景を纏めるとこういうことになる。
3種類のオンデマンド
しかし、オンデマンドといっても以下の3つのバリエーションが存在するという。
①ライセンス売切りだが、IT企業が運用受託
②利用料型だが、顧客企業が自ら運用
③純粋なオンデマンド
①や②は③への移行期間に多く見られるとも言えるが、アプリケーションの種類、あるいは企業のIT管理能力によっては①や②の方が適しているケースもある。例えば、企業の差別化分野であれば①の型を採用し、大掛かりなカスタマイズを加えることが最適な判断であるかもしれない。また、IT管理能力が優れていれば、②の方が他システムとのインテグレーションが容易になる。つまり、オンデマンドといっても、その形態は一様ではない。
インデックスのカテゴリー
また、アプリケーションのカテゴリーによって、オンデマンドへシフトする速度の速いもの、遅いもの、あるいはシフトしないものがある。それゆえ、メリルリンチはインデックス化するにあたって、アプリケーションを以下の通りに分類している。
①アプリケーション・ソフトウェア
・ERP - Enterprise Resource Planning
・CRM - Customer Relationship Management
・SCM - Supply Chain Management
・Knowledge Worker Applications
・MCAD/PLM - Product Lifecycle Management
・Business Analytics
②インフラストラクチャ・ソフトウェア
・Operating Systems
・Database
・Application Server Platforms
・EAI - Enterprise Application Integration
・System Management
・Security
・Storage
このような分類することによって、例えば、SCMではオンデマンド化の進展が遅いだろうとメリルリンチは予測している。一方で、CRMやSecurityソフトの分野などでは、オンデマンド化が着実に進展していると分析する。つまり、インデックスを細分化することにより、より正確にソフトウェア企業のオンデマンドへの移行を把握することが可能となる。
オンデマンド時代のソフトウェア会社の評価
そして最後に、オンデマンド・ビジネスの世界においては、それに適した企業評価方法を用いる必要があるとメリルリンチは主張している。つまり、ソフトウェアがライセンス販売ではなく、利用料として売り上がるため、従来のように株価と収益、あるいは売上の比率を見てもあまり意味がないという。なぜなら、新しい契約が初年度に貢献する売上高及び収益は従来に比して小さい一方、それは中長期で売上・収益に貢献することになるからだ。ゆえに、メリルリンチは未実現収益としてバランスシートに計上される新規契約高、そしてその実現を表すキャッシュフローにより重点を置くべきだと主張する。さもなくば、オンデマンド型にシフトしつつあるソフトウェア会社を過小評価することになりかねないからだ。
MLODIの意味するもの
このように見てくると、メリルリンチの設定したオンデマンド・インデックスは、ソフトウェア会社に対する厳しい評価軸を突きつける一方、オンデマンド・ビジネスの評価方法を提案することを通して、ソフトウェア会社がオンデマンド型へ移行しやすい環境を作り出していると言える。そして、結果としては企業も恩恵を蒙ることが出来ることになる。
もし投資家が目先の売上と収益のみでソフトウェア会社を評価し続けるならば、短期的には売上・収益の減少を招く可能性のあるオンデマンド型への移行は経営者にとって有り難いものではないはずだ。逆にメリルリンチの主張するように投資家サイドの見方が変われば、オンデマンド型のITサービス提供が加速されることになるだろう。先日のオラクルの発表の背景には、こうした環境の変化もあるのかもしれない。
メリルリンチが何故MLODIを開発したのかを説明した資料を読むと、それが単なる企業評価指標の追加に留まるものではなく、ソフトウェア会社の評価方法をそのものを変えていくべきだという提言であることがわかる。"Software Goes On Demand"と名づけられたこの資料、もう少し読み込んでみたい。
背景
メリルリンチは2004年がライセンス売切型からオンデマンド型への転換点であると見ている。オンデマンド型は企業のIT投資の適正化にも繋がるため、ソフトウェアの販売方法は大きく変わるということだ。それゆえに、この変化の中にあるソフトウェア会社を投資家が正しく評価できるよう、MLODIを開発したという。ざっくりと背景を纏めるとこういうことになる。
3種類のオンデマンド
しかし、オンデマンドといっても以下の3つのバリエーションが存在するという。
①ライセンス売切りだが、IT企業が運用受託
②利用料型だが、顧客企業が自ら運用
③純粋なオンデマンド
①や②は③への移行期間に多く見られるとも言えるが、アプリケーションの種類、あるいは企業のIT管理能力によっては①や②の方が適しているケースもある。例えば、企業の差別化分野であれば①の型を採用し、大掛かりなカスタマイズを加えることが最適な判断であるかもしれない。また、IT管理能力が優れていれば、②の方が他システムとのインテグレーションが容易になる。つまり、オンデマンドといっても、その形態は一様ではない。
インデックスのカテゴリー
また、アプリケーションのカテゴリーによって、オンデマンドへシフトする速度の速いもの、遅いもの、あるいはシフトしないものがある。それゆえ、メリルリンチはインデックス化するにあたって、アプリケーションを以下の通りに分類している。
①アプリケーション・ソフトウェア
・ERP - Enterprise Resource Planning
・CRM - Customer Relationship Management
・SCM - Supply Chain Management
・Knowledge Worker Applications
・MCAD/PLM - Product Lifecycle Management
・Business Analytics
②インフラストラクチャ・ソフトウェア
・Operating Systems
・Database
・Application Server Platforms
・EAI - Enterprise Application Integration
・System Management
・Security
・Storage
このような分類することによって、例えば、SCMではオンデマンド化の進展が遅いだろうとメリルリンチは予測している。一方で、CRMやSecurityソフトの分野などでは、オンデマンド化が着実に進展していると分析する。つまり、インデックスを細分化することにより、より正確にソフトウェア企業のオンデマンドへの移行を把握することが可能となる。
オンデマンド時代のソフトウェア会社の評価
そして最後に、オンデマンド・ビジネスの世界においては、それに適した企業評価方法を用いる必要があるとメリルリンチは主張している。つまり、ソフトウェアがライセンス販売ではなく、利用料として売り上がるため、従来のように株価と収益、あるいは売上の比率を見てもあまり意味がないという。なぜなら、新しい契約が初年度に貢献する売上高及び収益は従来に比して小さい一方、それは中長期で売上・収益に貢献することになるからだ。ゆえに、メリルリンチは未実現収益としてバランスシートに計上される新規契約高、そしてその実現を表すキャッシュフローにより重点を置くべきだと主張する。さもなくば、オンデマンド型にシフトしつつあるソフトウェア会社を過小評価することになりかねないからだ。
MLODIの意味するもの
このように見てくると、メリルリンチの設定したオンデマンド・インデックスは、ソフトウェア会社に対する厳しい評価軸を突きつける一方、オンデマンド・ビジネスの評価方法を提案することを通して、ソフトウェア会社がオンデマンド型へ移行しやすい環境を作り出していると言える。そして、結果としては企業も恩恵を蒙ることが出来ることになる。
もし投資家が目先の売上と収益のみでソフトウェア会社を評価し続けるならば、短期的には売上・収益の減少を招く可能性のあるオンデマンド型への移行は経営者にとって有り難いものではないはずだ。逆にメリルリンチの主張するように投資家サイドの見方が変われば、オンデマンド型のITサービス提供が加速されることになるだろう。先日のオラクルの発表の背景には、こうした環境の変化もあるのかもしれない。