茨城ではおむすびのこと 『にんこ』 と言います。
あるおばあちゃんの介護保険を使っての工事が終了し、息子さんあてに請求書を提出しに行ったときの出来事です。
そのおばあちゃんは、その時代の人がみなそうであったように、苦労人のおばあちゃんです。私がおじゃますると、たいそううれしそうにお話しを始められた。
でもその話しは、楽しい話はまったくと言っていいほどない。これまでの苦しかった話し、悲しかった話を、涙を流しながらお話しになる。最近では目が悪くなってしまい、白内障・緑内障でつらい毎日が続く。
家族からも大切にされていない雰囲気がよく伝わる。10年前にご主人を亡くしてからというもの、息子からも言葉による暴力が頻繁に吐き出され、息子の嫁さんからは殴られたこともあるのだそうだ。最近交通事故にも遭遇してしまい、からだの痛みが抜けないと言う。散らかりっ放しの居間を見ているだけでも悲しくなってくる。
『だんなさぁんょ、歳をとるのはぁ、ほんとに、ほんとにぃ、惨めなもんだょ・・・』『おれなんかぁ、死んじまえばよかったんだよぉ。あんとき、死ねなかったばっかりにぃ、こんな惨めな思いしてぇ。。。』
話しはとめどなく続く。人の悲しみの深さは、これほどまでも言葉を早口に、一度に大量の情報を吐き出したがっている。悲しみがあふれてくる。
そろそろ帰らないと、、、と思いきや、
『だんなさぁんょ、にんこにぎってやっから、、、、、』
背中を丸めた小さなおばあちゃんは、ぼくの予定などお構いなしに、うれしそうに笑顔を浮かべながら奥の土間に消えていった。
なかなか出てこない。ごそごそやっているのを見かねて、『ばあちゃん、もう昼だから、おれ、帰るよ・・・』 というと、『ちぃとまってろ、ちぃとまってろ、いまでぎっから・・・』 と一所懸命に言う。
のりの袋を開けようとするが、開ける力がない。ぼくが代わりに開けてあげた。でもそののりは、湿気てくっついてしまっていて、使い物にならなかった。
土間に直置きされたカンカンの中から、とっておきの黒ゴマを取り出して、白いご飯にたっぷりかけた。『いま梅ぼしのっけてやっから』 と、そのまた奥の土間から手づかみでふたつ、おっきな梅干を持ってきて埋め込んだ。
『ほれっ、ほれっ・・・』 とさしだすおばあちゃん。
押し頂いた帰り道の車の中、その姿を思い出して、ぼくは、涙が止まらなくなった。なんか、かなしくって、うれしくって、、、よくわからないけれども、涙があふれて止まらなかった。
おばあちゃんの肩をたたきながら、自然にでた言葉、
『ばあちゃん、、、生きてたらさぁ、きっと、いいこと、あるから・・・』
どんな時代になろうとも、どんなに価値観が多様化しようとも、ひととして大切にしたいもの、失ってはいけないものがある。
ぼくは、そのおばあちゃんの 『存在』 に、こころ打たれた。おっきくて、あったかい、特製にんこ。おばあちゃん、ありがとう。
ひととの関わりって、すてきですね。
ではまた。
おさむ
あるおばあちゃんの介護保険を使っての工事が終了し、息子さんあてに請求書を提出しに行ったときの出来事です。
そのおばあちゃんは、その時代の人がみなそうであったように、苦労人のおばあちゃんです。私がおじゃますると、たいそううれしそうにお話しを始められた。
でもその話しは、楽しい話はまったくと言っていいほどない。これまでの苦しかった話し、悲しかった話を、涙を流しながらお話しになる。最近では目が悪くなってしまい、白内障・緑内障でつらい毎日が続く。
家族からも大切にされていない雰囲気がよく伝わる。10年前にご主人を亡くしてからというもの、息子からも言葉による暴力が頻繁に吐き出され、息子の嫁さんからは殴られたこともあるのだそうだ。最近交通事故にも遭遇してしまい、からだの痛みが抜けないと言う。散らかりっ放しの居間を見ているだけでも悲しくなってくる。
『だんなさぁんょ、歳をとるのはぁ、ほんとに、ほんとにぃ、惨めなもんだょ・・・』『おれなんかぁ、死んじまえばよかったんだよぉ。あんとき、死ねなかったばっかりにぃ、こんな惨めな思いしてぇ。。。』
話しはとめどなく続く。人の悲しみの深さは、これほどまでも言葉を早口に、一度に大量の情報を吐き出したがっている。悲しみがあふれてくる。
そろそろ帰らないと、、、と思いきや、
『だんなさぁんょ、にんこにぎってやっから、、、、、』
背中を丸めた小さなおばあちゃんは、ぼくの予定などお構いなしに、うれしそうに笑顔を浮かべながら奥の土間に消えていった。
なかなか出てこない。ごそごそやっているのを見かねて、『ばあちゃん、もう昼だから、おれ、帰るよ・・・』 というと、『ちぃとまってろ、ちぃとまってろ、いまでぎっから・・・』 と一所懸命に言う。
のりの袋を開けようとするが、開ける力がない。ぼくが代わりに開けてあげた。でもそののりは、湿気てくっついてしまっていて、使い物にならなかった。
土間に直置きされたカンカンの中から、とっておきの黒ゴマを取り出して、白いご飯にたっぷりかけた。『いま梅ぼしのっけてやっから』 と、そのまた奥の土間から手づかみでふたつ、おっきな梅干を持ってきて埋め込んだ。
『ほれっ、ほれっ・・・』 とさしだすおばあちゃん。
押し頂いた帰り道の車の中、その姿を思い出して、ぼくは、涙が止まらなくなった。なんか、かなしくって、うれしくって、、、よくわからないけれども、涙があふれて止まらなかった。
おばあちゃんの肩をたたきながら、自然にでた言葉、
『ばあちゃん、、、生きてたらさぁ、きっと、いいこと、あるから・・・』
どんな時代になろうとも、どんなに価値観が多様化しようとも、ひととして大切にしたいもの、失ってはいけないものがある。
ぼくは、そのおばあちゃんの 『存在』 に、こころ打たれた。おっきくて、あったかい、特製にんこ。おばあちゃん、ありがとう。
ひととの関わりって、すてきですね。
ではまた。
おさむ