ブラス・ロックの波に乗り切れずに人知れず消えていったバンド・シリーズ、「ママズ・アップル・パイ」を紹介します。
グランド・ファンク・レイルロードを売り出して見事大成功を収めた後、バンド・サイドとの金銭トラブルで裁判沙汰にまで発展して勝訴したプロデューサー、テリー・ナイトが設立したレコード会社からの第1号アーテイストがこの「ままズ・アップル・パイ」です。日本発売もされていたのでですがもう今となっては知る人ぞ知る存在。
テリー・ナイトの奥さんがデモ・テープを聞いて強く推薦したとのこと。
1972年デビューのこのバンドは、アメリカはオハイオ州ワーレン出身の10人編成。ツイン・ボーカル、ツイン・ギター、3管編成。ちなみにトランペットとキーボードもボーカルをこなします。
平均年齢19歳というのも驚きですが、GFRもデビュー時は同じ平均年齢でしたね(もっともマークとドンはテリー・ナイト&ザ・パックのバックメンバーでした)。
若いのにブルージー、ヘビーでグルービー、かつファンキーなジャズ・ロックを巧みにこなして聞かせてくれます。ただボーカリストが2人もいるのに印象が薄く、ブラス・セクションもアレンジをそつなく吹きまとめてはいるのですが、ただそれだけという感じ。
面白いのは明らかにシカゴを意識したような楽曲がチラホラと顔を出すところ。
無意識にでも耳が反応してしまいます。
ファースト「ママのアップル・パイ」ジャケットはエプロン姿のママが舌舐めずりしている表情と、モロなデザインのアップル・パイ断面に滴り落ちる液が超卑猥とのことでセカンド・プレスからは修正が入りました。写真は激レアなファースト・プレスの「!*#?ジャケット」
セカンド・アルバム、この手の大所帯バンドにしては珍しくメンバーの変動もなく翌年発売。
タイトルはシンプルに「#2」
この調子で#3、#4・・・といく予定だったと思うのですがあえなく2枚で終わってしまいました。表裏ジャケットはスコッチ・テープのデザインを参考にしたとか。1も2もジャケットで話題になる狙い・・・商魂たくましいテリー・ナイトならではの策略ですね。
そつなくまとめ上げあげられたクセのないブラスロック(このジャンルってアクの強いバンドが多いです)サウンドがお好みの方向きです。