「カラオケ行こ！」（ネタバレ注意）

ヤクザが中学生にカラオケを指導してもらうなかでの中学生の成長物語。
綾野剛のヤクザ役といえば「ヤクザと家族 The Family」を思い出す。

合唱部の部長で、ヤクザにカラオケ指導する中学生の聡実を演じた齋藤潤がよかった。
等身大の演技というのか、綾野剛演じるヤクザの狂児との触れ合いを通して成長していく様が伝わってきた。

狂児が声変わりに悩む聡実に、「きれいなもんしか出んかったら、この街は全滅や」という台詞がよかった。
この映画のクライマックスはここだったような気がする。
失敗したり、うまくいかないことも含めて、自分であり、人生だ。

ところで、カラオケであえて下手に歌うのも難しい。
ヤクザ役の俳優陣のわざとらしくない下手さの演技も見物。

点数は、8点（10点満点）。

タイトル：カラオケ行こ！
製作年：2023年
製作国：日本
配給：KADOKAWA
監督：山下敦弘
主演：綾野剛
他出演者：齋藤潤、芳根京子、橋本じゅん、坂井真紀、宮崎吐夢、ヒコロヒー、加藤雅也、北村一輝
上映時間：107分

「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」（ネタバレ注意）

漫画原作で話題のアニメが映画化。

父スパイ、母殺し屋、娘超能力者という家族。
ちなみにペットは未来予知犬。

敏腕スパイなのに家族の秘密には気が付かないのかというのは置いといて、家族の絆がテーマだったりする。
お互いに知られてはならない秘密を抱えながら、家族として生きていくということの幸せが描かれている。
設定が複雑でも、家族の本質は変わらないということが人気の理由ではないだろうか。

30分のアニメでは描き切れないスケール感があって、とても楽しめた。

点数は、9点（10点満点）。

タイトル：劇場版 SPY×FAMILY CODE: White
製作年：2023年
製作国：日本
配給：東宝
監督：片桐崇
主演：江口拓也
他出演者：種崎敦美、早見沙織、松田健一郎、銀河万丈、武内駿輔、中村倫也、賀来賢人
上映時間：110分

「月」（ネタバレ注意）

「人」とは、「生きる」とは、ということに向き合わざるを得ない作品だ。
まず、こういう作品が作られたことに、拍手を送りたい。

すべての人に生きる権利があるのは当然だとして、自力で生きることがままならない人もいる。
また、そういう人たちのケアを仕事としている人がいる。
自分も含めて、世の中の多くの人はその存在を見ようとしていない。

思いやりとか助け合いとか、言うは易しだが、家族でもなければ、親身になって他人の介護をできる人間が世の中にどれぐらいいるだろう。
気持ちだけではだめで体力や技術も必要だ。
そのことをわかったうえで、分業しているのが資本主義社会ではある。

安心して、他人に迷惑をかけられる社会が理想ではあるが、人間観が育まれていないと、実現は難しい。

自分ができることは、「人に優しくあれ」ということぐらいになってしまう。
結局、傍観者でしかない事実を受け止め、自分の道を生きていくしかないのか。

タイトル：月
製作年：2023年
製作国：日本
配給：スターサンズ
監督：石井裕也
主演：宮沢りえ
他出演者：磯村勇斗、長井恵里、大塚ヒロタ、笠原秀幸、板谷由夏、モロ師岡、鶴見慎吾、原日出子、高畑淳子、二階堂ふみ、オダギリジョー
上映時間：144分

「PERFECT DAYS」（ネタバレ注意）

ヴィム・ヴェンダース監督作品。
役所広司が東京の下町に暮らすトイレ清掃員を演じる。
演技というよりは、トイレ清掃員の一日を追うドキュメンタリーという趣きだ。

朝早く起きて、身支度をし、植木に水をやり、自販機で缶コーヒーを買って、車に乗る。
公共のトイレを掃除して、昼食を神社の境内で食べる。
休憩がてら神社の木々からの木漏れ日をフィルムカメラで撮影する。
午後の仕事が終われば、銭湯に一番乗りで駆け付け、居酒屋で一杯。
家に帰って、文庫本を読み、疲れたら眠る。

シンプルで単調にみえる暮らしを丁寧に過ごしていく。

たまに、リズムを乱す小さな事件が起きる。
それらにも真摯に向き合い、生きていく。

平凡にみえるが、こういう人はいそうでいないのだろう。
都会の片隅のファンタジーだ。
贅沢はしないし、孤独でもなく、過剰なものは何もない。

さみしさを感じるときもあると思うが、朝起きて、家を出るときの表情が、男が幸せであることを物語っている。
台詞や派手なアクションではない演技の凄みを感じた。

点数は、10点（10点満点）。

タイトル：PERFECT DAYS
製作年：2023年
製作国：日本
配給：ビターズ・エンド
監督：Wim Wenders
主演：役所広司
他出演者：柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
上映時間：124分