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NATO←封じ込め←マッキンダー&奥の院の決定論

2020-06-18 16:17:56 | WW1&2

昨日、現在の混乱を、「先人が営々と築いてきたアメリカのヘゲモニー」をトランプが崩していることだ、けしからん、と考えているらしい米山隆一さんの発言を見てまったく困惑させれているという話を書いた。

で、そこから日本の「リベラル」なる珍妙なグループはどこから出てきたのだろう、ということを夕べ考えた。左翼が崩れて「リベラル」なる本質的にタカ派のグループが出てきた、と私は思っているんだけど、この展開を考える前に、そもそも、戦後秩序はどうやって成り立ったか問題が大事だろう、などと思った。

すると、今朝RTを見たら、スコット・リッターが

NATOはトランプ2期目を生き延びられないんじゃないかという話を書いていた。

NATO cannot survive a second Trump term 

https://www.rt.com/op-ed/492155-nato-trump-second-term/

 

これは、たどり着き方、テーマの持ち方が異なるが、米山さんが見ている光景と同じではある。

違いは、日本人の米山さんはこの秩序が崩れるのはダメだろ、と思っており、

アメリカ人のスコットは、崩れるのは当然だろう、そもそも作りに問題があったし、今じゃさらに適用できない、と思ってる

というところ。

この違いはどこから来るかというと、私の考えでは成立していった過程を見てる人と、そのようにして成立した仕組みを与えられた人の違いだろうと思う。

 

■ 仮想敵国ソ連

で、NATOこそ問題だ、これを潰せなかったことが問題だというのは、もう前からず~っと出てる話なわけだけど、マジで、これこそ戦後政治をおかしくしていった元凶だと思う。

NATOの成立自体は1949年だけど、これは別に軍事的緊張を理由として出来たわけではない。ソ連封じ込めという発想と、これを正しい解答のようにして使い始めた「戦略家」たちがいて、その成果としてできた。

ソ連封じ込めは、今日みんな知ってるように(当時は匿名Xだった)、ジョージ・ケナンが書いて、1947年2月に「フォーリン・アフェアーズ」に掲載された論文を基に、1943年3月のトルーマン大統領が般教書演説で示したいわゆる「トルーマン・ドクトリン」で政策となった。

これによって、ソビエトの拡張政策を止めさせることがアメリカの外交方針なのだということになった。

しかし、では、1947年にソビエトは拡張政策を取っていたのか?

トルーマン・ドクトリン当時、ギリシャ内戦で共産主義勢力が伸長していたでないか、などと言ってみたいとは思うが、これは別にソ連が拡張主義で共産主義勢力を支援していた、などという話ではない。

1945年の連合国の勝利によってドイツ軍が作ってた傀儡政権、要するにファシズム勢力が地に落ちたために、その時代に抑圧されていた現地の共産党が勃興してたという話。東欧全域であった話と事情は一緒。

違いは、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー etc.は、ソ連の影響圏に入ったのでファシストが負けて共産党が勝ちましたで、連合国勝利と矛盾しない形で終わったが、ギリシャは、イギリスがスターリンに頼み込んで、ここは絶対渡さないと踏ん張ったので、話がややこしくなった。

壮絶に話がややこしいのでここはパスするけど、これをソ連とイギリスのせい、みたいに言うのは間違ってる。イギリスが、いつものように、自分たちにはそんな力はないのになんとしてギリシャを勢力圏に置こうと思ったことから混乱したのにすぎない。そしてアメリカのトルーマンがそれを拾って、そこから米ソ対立の構造が本格化した。

 

■ 仮想敵国ソ連

で、チャーチルを代理人とする奥の院は何が気に入らなかったのか。

それは、ソ連がドイツを追い出しベルリンに至る過程で、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、チェコスロバキを「解放」して、自分たちの影響下に置いちゃったこと、これがとにかく気に入らなかったように見える。

特に、ポーランドを英米主導で解放して、イギリスに作ってた臨時政府を正当な政権にできなかったことが、非常に問題だったようだ。

しかし、冷静に見て、そもそも英米軍は自分たちでナチス相手に戦って、ポーランドを解放させるような力はなかった。ナチスは最後までしっかり戦車部隊持って反抗作戦をしながら退却しているので、真面目な作戦が必要で、そうなったらソ連と協調する以外にないわけだが、でも英米主導でやりたい、ソ連じゃない、と粘ったが結局ソ連がワルシャワを解放した。だから、ソ連に好意的な政権ができた。

1945年1月17日:ソ連赤軍ワルシャワ解放

 

【脱線】今に続くこの問題は、当時、1944年後半に駐ソ大使のハリマンがソ連当局にかけあって支持を求めるも、アメリカが考えてきた作戦ではナチスに勝てないっしょ、それとソ連からきっぱりと断られているという資料が米国務省にあるようだ。アメリカは、ワルシャワのレジスタンスグループに空中投下して支援すると言ってたようだ。

敵と対面した市街でやるのもリスクあるし、そもそも空港は遠いし、量を運べない・・・。そのぐらいじゃどうしようもないだろうとソ連軍が言うのも無理はないんじゃないの、これ。

Lack of outside support during the Warsaw Uprising

https://en.wikipedia.org/wiki/Lack_of_outside_support_during_the_Warsaw_Uprising

 

■ 東欧を支配しないとならいの!

ではなんでそこまでポーランド他の東欧諸国に拘るのか。イギリス人がワルシャワを第二の故郷と思ってるなどという話は聞いたこともない。アメリカ人はきっと今でもどこだかわからない人が大半だろう。

じゃあなんだ。多分、東欧を支配するものは世界を支配する、といったモデルに沿って世界当地を志してたグループがいた&いるからではなかろうかと思うんです。

マッキンダーとかその変形としてのスパイクマンとか。

下図のオレンジのところが「ハートランド」で海洋勢力はここの拡張を防ぐのだ、黄色をハートランド側から離すのだ、とかいうわけ。(かなり適当だが、だいたいそう)

実際、1904年に書かれたマッキンダーの理論が第一次世界大戦の終結後のベルサイユ条約、すなわち、世界各地の分割と承認にかなり影響していることは否定できないでしょう。

そもそも、ポーランドというのはこの分割と承認の嵐の中で、120年ぶりぐらいに唐突に出来た。

それのみならず、マッキンダーはバルト3国、ルーマニア、チェコなどをドイツ人とスラブ人を分割する国家として作ることを進言していたと言われている。

 

さらに、マッキンダーは、上掲の書物 The Geographical Pivot of History で、

ハートランド(ほぼロシア/ソ連)への侵入は、20世紀におけるグローバル支配への弾みになる可能性があると指摘

He outlined the following ways in which the Heartland might become a springboard for global domination in the twentieth century (Sempa, 2000): 

その手段として、西欧州の国、おそらくドイツがロシアを侵略すること、鉄道の利用によってハートランドへの侵入が可能になっていく可能性あるなぁ、と言ってた、と。

つまり、まぁこれから起こることというか、起こすことというかの概論みたいな本なわけです。

 

にもかかわらず、ソ連が勝っちゃった。しかも、東欧まで持っていかれちゃう、せっかく作ったポーランドまでソ連側になったら、元も子もないやん!!! というのがこれら「マッキンダー地政学原理主義」みたいな人たちの発想だったじゃないでしょうか。

例のダレスたちは、マッキンダーやスパイクマンに影響を受けているという指摘も既になされているようなんだけど、後からまとめてみれば、実際、こういう構想の下にソ連を囲んで、追い込むような対立構造を作っていったと考えると矛盾はないと思う。

また、ダレスたちは弁護士といった肩書で出てくるわけで、こういう人たちは自分で考えてやっているのではないでしょう。迷いもなく、さっさかやっているのはピクチャーがあるから、指示があるからそうなのだ、と考えることができる。

 

■ 誰なのそれ?

で、そんなものをフォローしようとする原理主義一派は誰なの、ということになると、その具体的な名前のようなものはわからない。

だけど、例えば、イギリスのチャタムハウス(王立国際問題研究所)とCFR(外交問題評議会)みたいな「シンクタンク」というか勝手な政策立案部隊を設立していった人たちなんだろうと考えることはできる。

【脱線】チャタムハウスを作っていったのは、The Round Tableを発行していたグループだろうとは言われているけど、ここがドンづまりではないと思う。

 

それまでは各国の外交官の交渉こそ重要だったわけだけど、第一次世界大戦後のパリ講和会議以降、この手の「シンクタンク」が世界の政策を作って、世界中のメディアや学者を総動員して流れを創っちゃうという手法が取られるようになった。

どこが「自由と民主主義」なのかさっぱりわかりませんが、より正確には、「自由で民主主義的な強制」ですね(笑)。

で、これが、私たちがすべてがステルスだと認知するしかない仕掛けなんだろうと思うわけです。どこで決まってるのかわからないようなことが世界の常識化されていく。

終いには、それを強制する仕掛けとして、各地で福音派とその派生形のような宗教集団まで使い出した。統一協会も福音派も、ソ連憎しの表現として、共産主義は悪魔だ、サタンだ、みたいなことを言うでしょ。こんな馬鹿な話が政治言論を支えているこの体制は無茶すぎる。

 

■ 秩序を作りながら壊す

で、去年からプーチンが、ドイツがソ連に侵攻するまでの1930年代の動きを明らかにしていて、その中でとりわけポーランドに焦点を当てているのは、この古いメカニズムはもはや機能しないどころか、危険をさえ呼び込むんだから、壊すぞという意思表示なんじゃないかと思う。

でもって、トランプはそれでいいという西側の一部から支持されている、って感じ。できてるか否かはともかく、また、トランプにその能力があろうがなかろうが。

トランプ:終わりのない戦争時代を終わらせてるの!

そもそも、「東欧を支配する者が世界を支配する」って、1800年代後半の情勢を受けて、1904年のイギリスから見てロシアが強大すぎて困ったから言ったまでで、恒常的に当て嵌まるような原理ではない。

実際、100年たってみて、中国や日本という当時想定外のところがこれだけ大きくなった今では、意味がない。

結果、NATOという不用意な戦争準備機構が生き延びたために、対立が必要となり、対立を仕掛けるもんだから秘密が増え、秘密を保持するために金がかかり、結果的に金儲けできる一握りの人以外の誰のメリットにもならない。

(その上、アメリカは、軍事技術で遅れを取る始末!!)

そして、「自由で民主的な強制」を専らとするステルス体制は諸国民の利益になるわけもない。

 

そういうことで、今後は、戦争準備構造を支持するための様々な仕掛けにも解体のメスが入っていくんだろうと思う。で、それがイヤさに、各地の「対立構造護持派」が抵抗しているんだと思う。

アメリカの民主党が強くおかしいのは、よりCFR的に出来てるからだと思う。

 

■ WW2シリーズ

1943年2月2日:スターリングラードでドイツ軍降伏

1944年1月18日、レニングラード包囲解消(プーチン献花

1945年1月17日:ソ連赤軍ワルシャワ解放

1945年1月27日:ソ連赤軍アウシュビッツ解放

1945年2月4日、ヤルタ会談始まる

1945年2月13日、ブタペストついに陥落

プーチン&トランプ:エルベ河の邂逅を記念して共同声明

 


 

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ローレライ)
2020-06-19 08:33:21
ドイツをユーラシア大陸側に置こうする逆マッキンダーの思考がハウスホーハー路線だったがヒトラーに裏切られた、南京の活躍したラーベの思考に見て取れる。
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日本共産党 (セコイアの娘)
2020-06-20 07:41:26
ソ連憎しといえば、一時日本共産党が、ソ連を覇権主義として激しく攻撃していたのを思い出し、しかもソ連崩壊直後、長らく日本共産党の顔だった野坂参三がソ連のスパイ容疑で、除名処分になるというビックリ仰天があり、あれは一体何だったのか、日本共産党とは一体何なのか、ここ数日気になってネットであちこち探索している。野坂さんは、ソ連のスパイと言われているけれど、もしかしてアメリカとも通じていたのではなかろうか?彼の失脚がソ連崩壊直後というのも、意味深。今の日本共産党は、香港デモに対する中国の対応やベネズエラ政権を非難している、一体この政党の役割って何なんだ?見習うべきはキューバ。

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Unknown (ローレライ)
2020-06-20 11:34:38
ナポレオン、ヒトラー、関東軍がマッキンダーの下請けでロシア侵略して滅びた。
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アンチ大日本帝国 (ブログ主)
2020-06-20 14:20:26
セコイアの娘さん、

日本の共産党は大日本帝国復活願望勢力に対するアンチという役割を持っていたという点で、日本の歴史にとって価値があるとみなされてきたんだと思うし、私も(昔はわかってなかったですが)最近は壮絶にそう思ってます。倒れないで、その名前も変えないで、大日本帝国の死に水を取ってもらいたい(笑)。

国際問題については、多分、いろんな流派があったんだと思うけど、いずれかの時点からはソ連憎しというよりスターリン憎しの側なんだと思う。その意味で、アメリカの共産党あたりと似てるのかなと思うけど、系統だった知識がないので、誰かちゃんと書いてほしいものです。
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