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プーチン論文がNational Interest誌に掲載される

2020-06-20 13:25:30 | WW1&2

6月19日に、プーチン大統領が去年から書く、書くといっていた第二次世界大戦に至る1930年代の一連の出来事についてのかなり長いエッセイを書きあげ、このたびアメリカの National Interestのサイトに掲載された。

Vladimir Putin: The Real Lessons of the 75th Anniversary of World War II

https://nationalinterest.org/feature/vladimir-putin-real-lessons-75th-anniversary-world-war-ii-162982

クレムリンサイト、スプートニク等にも同時に掲載されている。

75th Anniversary of the Great Victory: Shared Responsibility to History and our Future

http://en.kremlin.ru/events/president/news/63527

 

中核をなすのは、1930年代にドイツが力でベルサイユ体制を力で破っていく一連の出来事で、英仏が確固たる反対をしないばかりか、欧州各国がむしろヒトラーに妥協し、最終的にチェコスロバキア解体となっていったあたりの話。

しかし、事ここに至るには、第一次世界大戦の後ベルサイユ条約が締結され、結果として中欧が不安定な状況におかれ、他方、国際連盟が生まれたが執行主体に力がなく、結果的にベルサイユ体制を打破していくドイツを前に英仏とソ連が反目して集団的に対処できなかったという構図があったことも指摘される。

したがって、第二次大戦の結果として出来た国際連合はその反省の下に立っているんだし、結果から見れば、安保理は大戦争に至らせないためのメカニズムとしては有効だとプーチンは言う。

そして、共有される歴史的記憶を通して私たちはお互いを信頼することができるのだし、そうしなければならない、それが引いては、交渉や協調行動の基礎になり、それが世界の安定と安全の強化に役立つし、みんなの繁栄と幸福につながる。

だから、そういう状況を作ることが現在と未来の世代に対する私たちの共同の義務と責任だ。(ロシアが付けてきた英語タイトルはこれ。Shared Responsibility to History and our Future)

 

といった感じでしょうか。

夕べ一読して、これ自体歴史的な出来事だなと思ったので、National Interestの画面をスクシャした。

 

 

で、上で書いたように、そして繰り返し書いてきたように、この論文が出てくる理由は、1945年に終わった戦争から75年という節目の時にあるからというだけでなく、もちろん、折から西側の一部が熱心に取り組んでいる「第二次世界大戦はスターリンとヒトラーの両方が始めた」という嘘話を放置することは1930年代を繰り返すような危機的状況を招来する可能性があるという考えからだろうと思って間違いない。

特に、そういうことを少数の個人がやっているのならともかく、昨年2019年9月19日に欧州議会という歴とした機関が、第二次世界大戦はモロトフ・リッペントロップ条約の直接の結果として開始されたという認識を示してしまった以上、これ以上この問題を放置しておくわけにはいかないと判断したのだろうと思う。

European Parliament resolution of 19 September 2019 on the importance of European remembrance for the future of Europe

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2019-0021_EN.html

 

歴史は過去にはとどまってくれない。現在の政治的なナラティブにそれが利用されるのなら、それは現在の話として取り扱わないとならない。

そして、一度嘘をつけば、例えば、スターリンとヒトラーが始めた戦争、といったことを語れば、あの戦争がどういう経緯を辿ったのか、どうやって終わったのか、それらすべてをもまた偽の書き方をしないとならなくなる。そうして出来た嘘の歴史が声の大きなところから提示され、否定されることもなく垂れ流されればどうなるのか。架空戦記に基づき人々は憎しみを新たにし、そもそも架空なのだから「事実」という紐づけを辿ることもできない。

この結果が小さな紛争ですむ保証はなく、私たちは望まない対立、望まない悲劇を繰り返す可能性を日々大きくしている。

具体的にいえば、NATOを存続させて、東欧諸国を反ロシアに持って行くためという極めて愚かしい問題のために、本当の破壊に引き込まれる可能性がある。

 

■ 思い返せば・・・

で、ふと思えばこの間5月8日、9日の欧州戦線の終結を記念する日に際して、ドイツがソ連軍捕虜の記録をロシアに渡したり、

ドイツ、ソ連軍捕虜の記録をロシアに渡す&産業的大規模殺人

果ては、わざわざドイツの現職の外相が、ポーランドを攻撃したのはまず何よりもドイツだ、という点を強調した論文を自国の主要紙に乗せたりしていたのは、上の欧州議会の「蛮行」に対するドイツ政府の姿勢を表明したということですね。

6月24日モスクワでパレード&「歴史のない政治はない」by 独外相

また、ちらっと見えたのは、5月8日にはドイツ政府は多くの人を招いてこの日を記念しようとしていたようだった。

コロナ騒ぎはこの一連の日程を潰した。

 

そして、昨日The National Interestというアメリカのサイトに載った。紙の雑誌本体に載るのかどうかはよくわからないけど今日ネットの方がずっと重要。今のところまる2日巨大なトップ記事。

ナショナル・インタレストは、今サイトを見ると単なるシンクタンクの軽薄記事の発表会の場みたいになってるけど、従来は、外交専門誌として扱われて来たもの。名誉会長がキッシンジャーであることからわかる通りずっと共和党寄りというか、軍よりというか、といったところが、「フォーリン・アフェアーズ」と異なる。フォーリン・アフェアーズはCFRの発行。

キッシンジャーは、昔彼が何をしたかを置くとして、オバマ政権がバンデラ主義者を使ってウクライナでクーデーターをやった直後からの言動は、明らかに、バンデラ利用の勢力を危険視している。

 

さらに、この間から出てるこの話も関係が大ありでしょう。

トランプ大統領 ドイツ駐留米軍大幅削減の意向表明

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200616/k10012471921000.html

この間書いた時には、5万から1万人程度の削減だったので、その分をポーランドに持っていったら前線が東に移動することになるからより危険だと思ったが、

今回見ると、5万を2万5000に減らすというスケールなので、こうなると事情が違う可能性ありかなと思った。この分をポーランド、ルーマニアetc.の東欧諸国で支えることは、経済的に難しいから。

ってことは、本当に米軍のスケールダウンになる可能性がある。そして、ドイツがナチになりたいという希望をもっていないのだとしたら、全体として東欧狂犬リスクは低減される。

 

■ ポーランドについて

上掲論文中のWWIIのポーランドについての1文

ポーランドが被った悲劇に対する責任は、英国、フランス、ソ連の間の(対独の)軍事同盟の形成を妨げ、ヒットラーの破壊マシンの蒸気ローラーの下に自分の国民を投げ込んだポーランド指導層にある。

 

■ オマケ

昨日書いた通り、結局、CFRとかチャタムハウスが絵を描いてるから「リベラル」がこんなにおかしいんだろうな、と私は思ってる。

田岡俊次の「古い」解説&リベラル勢の危機

 


 


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2 コメント

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Unknown (ローレライ)
2020-06-20 16:32:23
大戦前のポーランドと日本のロシア侵略もクローズアップする問題だ!
返信する
そこも含めたいですね (ブログ主)
2020-06-20 16:57:10
ローレライさん、

プーチンの論考ではなにかとっても怪しい日本とポーランドの関係は出てこないですけど、同時期の動きとして当然日本は言及されてます。

私としてはそれを読みながら、同時期、やたらに防共ブロックを作りたがっていた日本の動きは、ドイツ&ポーランドの反ソ、反ボルシェビキの乱れた騒ぎとまったく同一なんだから、もっと両方から見て書いた方がいいんだな、など改めて思いました。

そのためには、それに乗らなかった英仏の判断をテーマにして、逆照射した方がいいのかな、などとも今日になって思ってるところ。
返信する

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