DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

「NATOは解体させて別の安全保障システムを」 by ドイツDie Linke

2017-01-25 20:51:41 | 欧州情勢複雑怪奇

前のエントリーでトルコの国会議員が率直なことを言っている話を書いて思い出した。

数日前には、ドイツの野党Die Linkeのワーゲンクネヒトさんが、

NATOは解体されるべきで、ロシアを含めた集団的な安全保障システムに置き換えられるべき

"NATO must be dissolved and replaced by a collective security system including Russia," Wagenknecht told Germany's "Funke" media group.

と言った、というのが話題になっていた。

しかも、これはロシアメディアが引っ張ってきたのではなく、ドイツ国営DWが報じたもの。

http://www.dw.com/en/german-opposition-leader-calls-for-security-union-with-russia-dissolution-of-nato/a-37154925

 

とはいえ、これはそんなに驚く話しでもない。というのは、冷戦期に出来たOSCE(欧州安全保障協力機構)に既にその萌芽はあるから。

何度も書いてますがこの機構がウクライナを停戦させたところ。で、現在もなんとなく話しあいの枠組みとしては機能しているような感じ。EU内では何だっけかフランスが力を持ってる組織がロシアとの関係において生きていた。欧州には様々なレイヤーで様々なパイプがあるのが、結果的には安全保障に役立ってると思う。

また、ドイツが冷戦時代に東西冷戦の最前線に立たされていたことからいろいろ知恵を絞った、そのアセットが今も生きているとも言えますね。(西ドイツが東ドイツを絶対潰してやるという覚悟の下にソ連との関係を維持した、とも読めますが。混乱を無視して進むドイツ流)。

で、いずれにしてもこういう機構に優位性をもたせて、NATOかまたはそれに代る組織を穏便に収める、という形になるんじゃないですかね。将来的に。

前にも書いたけど、ロシアは現在の狂ったNATOは嫌ってるでしょうが、ポーランドみたいな国が単独でプラプラするよりドイツ、フランスが抑えにまわってくれる機構を望んでいると思う。それができるのなら、つまりあくなきアングロ・シオニスト勢力の画策を防止できるメカニズムを構成できるのならNATOだろうがTOTOだろうがなんでもいいと思う。

そう。その意味において1930年代において最も問題だったのはドイツというより1919年に英米が独立させた、気がついたら誰も手綱を握ってなかった傀儡国家ポーランドという言い方もできる。このへんが今後多少解明されていくことが欧州の安全保障にとっては重要でしょうね。


で、こうなるとドイツとロシアは接近コースに行くというか戻る可能性は高まってくるでしょう。というか既に十分接近していたからこそウクライナ問題が仕掛けられたのだ、と解釈する人も前からいる。
 
ドイツ、ロシア、中国が並ぶ、関係が深まるということですからね。
 
で、ここで思い出すのは2014年7月のドイツの世論調査。2014年はウクライナ危機が2月にあった年。だから若干ロシア嫌いが高まり始めた年と言えるでしょう。
 
そこで、ドイツ人にドイツは将来どの国と協調していくべきでしょうと尋ねた。
これがその結果。

 

左が好意的。右があんまり好ましくない。

フランス、ポーランドは地続きの両隣なので理解できるし誰も驚かない。問題は、左の緑のところで、米国、南アフリカ、ロシアで大差がない、ってところ。

2014年7月にこの記事

だいたい上手く行ってる国ドイツの世論調査

を書いた時には私はこんなことを書いていた。

数値的に考えても、アメリカもロシアも今ぐらいでちょうどいい、って感じなのかなと思ったりもする。私は実は驚いてはいないんだけど、時節柄、アメリカからすれば、こんだけロシアをEUから離そうと騒ぎまくってもまだこれなのか、という感じじゃなかろうか。ロシア的には十分OKでしょう。

調査チームは、ドイツ人のロシアへの親近感は長い間見て取れますし、そう簡単に壊せないでしょう、と呼べ、アメリカについては、transatlantic partnerとの協調を言う人が明確に多いだろうと思っていたと語る。でましたね、大西洋を挟んだパートナーという概念。こういう結果となったのは、潜在的な反米、イラク戦争以降のイメージの劣化と、NSAのスパイスキャンダルが原因だろうとのこと。

 

多分、この感じはそこから2年半たった今でもだいたいあんまり変わらないのではなかろうか?

単純に、アンケートを取ったりする時に、ロシア向けの好感情が減った、減った、とかはあって、西側メディアが喜び勇んで、やったやったとか言える確率は上がるでしょうが、全体から見て、だからなんだよ、という感じじゃないですかね。なんてか、もうアメリカ覇権ってのがほんとに屋台骨がくさっとる、と思うのはこのへんなんですよね。経済すら真面目でない。

 

現実問題として、ここでも書いた通り、ユーラシアは欧州を含めて大きなパースペクティブでものを見ている。

中国・イギリス間の直通貨物18日で到着

でもって、トルコ、イランあたりが落ち着いて来たら商圏は拡大するわけだから、今ロシアがやってることには、ドイツにとっても基本的には結構なこと、ぐらい思ってても不思議はない。だったらお前も手伝えよ、なんだが、まぁそれはそれ。

南北回廊:ハンザ同盟とバルバロッサ作戦の果てに

バルト三国とポーランドに対してはこんな態度だし。ご存じない方のために書くと、ロシアとドイツが直通で天然ガスのパイプラインを敷いている図です。

 
 

というわけで、Die Linkeという、その名も左翼党のリーダーがかける掛け声は、一見すると驚きをもって迎えられるようでいて、実際には、今後ドイツ・ロシア平面のための一歩になるであろうと見えるわけで、ドイツはこの党を潰さないでよかったねと言いたい。少し先を走って何か言える人がいないと困るでしょ、だって。

Die Linkeは東ドイツの流れを汲んでいる点で嫌悪されているわけだけど、このリーダーは頭が良いし、今回のウクライナ危機に端を発したドイツの混乱でも度胸よくメルケル政権を批判してたので考えてみればドイツ国外でもよく知られる人となった珍しい小党のリーダーかも。

そうそう、大事なことはここはイラク戦争であろうとアフガン戦争であろうと常に一貫して批判的だという点でも評価されているらしい。しかもバカじゃないから、プーチンだって空爆してるぅううううう、みたいなところでは引っかからない。笑えるけど日本のリベラルはそうでしょ。

そう。気がつければこの党は今では世界的に珍しくなった、リベラルなレフトではあっても「リベラル」ではないレフト、と言えるんじゃないのかな。ドイツの「リベラル」は現在連立与党を組んでるSPD。ここは経済でネオリベ路線を取ったので支持者が離れたまま。ドイツが今後どうなるのかちょっと興味深い。

 


 

トランプ大統領とアメリカの真実
副島 隆彦
日本文芸社

 

戦国大名と天皇 (講談社学術文庫)
今谷 明
講談社

 

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 宴の始末-II (1): 「NATOは... | トップ | メイおばさんのイメージ戦略 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『ドイツ共産党』生きてます! (ローレライ)
2017-01-26 06:37:34
『ドイツ共産党』が『NATOリストラ提案』て歴史の因果を読んでしまうイベントですね。おりしも『ベルリンの壁に替わるメキシコの壁』が築かれるタイミング。
返信する
いやほんと、歴史を見てしまう (ブログ主)
2017-01-26 07:44:50
ローレライさん、

いやほんと、ローザ・ルクセンブルクの党が生き残ったんだなぁと感心というか興味深い。

でも今回はユダヤ系ポーランド人といったある種の可燃物みたいな人たちがいなさそうなのが前回と違うかも。

で、美人のリーダーはイラン系のドイツ人だそうで、アーリア人度があがってるな(笑)とか面白がりたい気もします。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

欧州情勢複雑怪奇」カテゴリの最新記事