宗純さんの今日のエントリーのタイトルは非常に意味深だと思いました。
日本の近代史の記述がガラパゴス化している最大の理由は、ソ連時代を含むロシアとの関係をごまかして扱ってるからだ、というのは何度も書いた通り。
だから、別の言い方をするならば、この対ソ戦争を終わらせない限り、いつまでもいつまでも屋上屋に嘘を重ねた歴史のようなプロパガンダのようなものに寄り縋って何かを語る他ない、ってことでしょうね。
で、直近の問題としては、ラブロフ外相がわざわざ何べんも言ってる通り、1956年の日ソ共同宣言の話。日本とソ連との戦後の関係は1956年の日ソ共同宣言で規律されており、これを基にして日本は国連加盟がかなった、という成り行きが非常に重要。
つまり、これを認めない日本は、はいはいそうですと言って国連加盟を達成したが、したら最後、そんなの知らねぇと言い出した。果実は食ったが、食ったのでもうないと言ってるようなものだろうか(笑)。
国連常任理事国ロシアとしてはそこをゆるがせにするわけにいかない、と言う。
どちらが論理的かっつったらロシアなんですよ。
だから、どっちみちここは動かせないと思う。
そして、ここで最大のブレーキになっているのが、実は安倍などの馬鹿右翼ではなくて、むしろ日本史学会を含むメインストリームの学者さんやらジャーナリストたちでしょう。
だって、気が付けば、こんなにたくさんロシアがボールを投げかけてきても、絶対に見ようとしないのが、実にまったくそれらのインテリさん、あるいは「リベラル」なんです。
見落とされている気がしますが、一見して見やすい馬鹿右翼の問題よりも、こっちの方がずっと病的です。
前の頃何度も紹介しましたが、事件から98年ぐらい経って初めて一般にも読みやすい、この貴重な貴重なご本が出ました。しかしこれは日本史学会の人たちから出たものではないです。
シベリア出兵 - 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書) | |
麻田 雅文 | |
中央公論新社 |
さらに、こんな具合に、勝手に日本が忘れていた戦争がクローズアップされてもまだ、日本のメインストリームの学者さんたちはこれを組み入れて歴史を見る気はない。
ジャーナリズムなんかさらにそう。
ということなので、ここらへんのタブーは凄いなと言うしかないですね。
■ ネトウヨと表裏のリベラル
で、これらのリベラルとか意識高い系の人たちは、安倍の周辺の大日本帝国万歳主義者たちとは一線を画しているわけだけど、でも、基本的な国際的な歴史認識において、似たり寄ったりなんじゃないの?というのが私の考えですね。
すなわち、両方とも、
ソ連が満洲の日本軍をクリアに破壊したからこそ大陸での日本軍は明確に敗北した。
これが認められない。
関特演と1945年ソ連満洲侵攻作戦
東西挟み撃ち体制が見たくなかったらしい
これが今日とっても問題なのは、日本の進退以外にも北朝鮮とは何ものかの問題に触るから。
しかし、現在の「リベラル」集団は、さりとて、アメリカが朝鮮南部に入っていったからこそ南半分は共産化せずにすんだのだ、ありがたいと思え、という、昔はよく聞いた話も言わない。
その代りに何をやっているかというと、ひたすら韓国を庇ってる。韓国という南半分の朝鮮は最初っから最後まで南朝鮮として存在していたかのように書いてて笑いをさそう。
■ ナチ・リベラル
で、それはそれとして、前から言ってますが、要するにこの「リベラル」系の人たちは、東ドイツを潰したように北朝鮮も潰して、そんなもの最初っからなかったことにするというのが理想なんだと思いますよ。
だからこそ、これまでの経緯に触れずにいる。とりわけソ連赤軍が「解放」したという話が嫌いとみえる。過去を正視してこそ将来も見えるとかなんとかよく言うわけですが、ソ連/ロシアが絡むと事情が変わるらしく見える。
そう、実のところ「リベラル」は、英米日共通して特定の民族に対する異常なまでの差別主義者で、そして歴史修正主義者。
ただ彼らはそうじゃないと思ってる。なぜなら、例えば東ドイツは、あるいはソ連は民主的でないから民主化させるのだ、と考えている。それがどんな混乱をもたらそうとも。
ネトウヨならこれを、彼らは共産主義で、共産主義は悪だから潰すのだと答えるところ。
結局やってることは同じ。自分の側の理想に合わないという理由で他人を不幸にしてもかまわないと考えている。
私はこれらのリベラルを「ナチ・リベラル」と言いたいと思ってる。
ものの考え方においてまずそう。そして、現実問題として、東ドイツはナチを嫌った人たちが作った国であったが、そこを潰して、言い訳もさせず、今ではなぜ東西に分かれたのかさえ説明させないというのだから、それはナチの仕業にしかみえないと言っても変でもない。
もちろん東ドイツにはそれ自体として悪いところもあったでしょう。でも、東ドイツはコミュニストで全体主義なので、いきなり他国が介入して国境線を破っても無問題だったというのは問題があったし、来歴を教えるぐらいのことはあって当然だと思うが、なされていない。
混乱を無視して進むドイツ流
エプスタイン事件 (3) エプスタイン「自殺」と赤狩り物語
対して、東ドイツを潰した西ドイツはナチ成分が濃い側で、そこが大手を振って東を潰して何をしたのかといえば、NATOの東方拡大。
NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた
再びセルビアを叩いて、辱めて、ロシア周辺をロシアから引き離して、ついにはウクライナを奪取!
まんまナチ(笑)。いやほんとに、メルケルはヒトラーもできなかったことをした。
ということで、ドイツは過去を清算して云々とやたらに褒める人は、単純にいって、ナチ・リベラルに騙されてる人ですね。
■ 変われるんだろうか?
というわけで、ナチ・リベラルが学会とかジャーナリズム界を握ってる以上、ロシア関連が公正に語られることになるのは、なかなか大変だと思う。
具体的にいえば朝日新聞、NHKあたりが相当に力を持っているように見える。
しかし、中露が歴史認識を揃えてきて、北朝鮮も同じ軌道に乗ってる。
そして、あまり大きく伝わっていないがこの間のG20で興味深いことがあった。
トランプと会ったプーチンは、来年ナチ打倒75周年なのでモスクワに来ませんかと招待し、トランプは前向きに答えたと言われている。
Kremlin spokesman Dmitry Peskov said that Putin also invited Trump to visit Moscow next year to mark the anniversary of the defeat of Nazi Germany. The anniversary is all but a sacred holiday in Russia, and the Soviet victory has been emphasized even more heavily under Putin.
https://www.rferl.org/a/trump-russia-g20-putin/30025076.html
もちろん、アメリカの中にはトランプを行かせたくない人たちは大勢いるわけだ。しかし、冷静に考えれば、ナチ打倒によってアメリカは偉大な勝利を収めましたというのが「正史」で、そこではソ連は関係ありませんでした、なんてのは捏造以外の何物でもない。
イギリス王室が率先してノルマンディーこそナチ打倒の決め手とかいう馬鹿なことを長年やってるが、そんなの嘘だとケネディーあたりまでのアメリカ人はホントは結構知ってた。いつまでも、エリザベスに付き合って鼻で笑われながら進むのか?と考えるとロシアに行くのもそう悪い話ではない。
こうなった場合、ナチ・リベラルはどう反応するのだろうか?
■ オマケ
あんまり考えてなかったんだが、このトランプご招待は、実現可能性が多少はあるんじゃなかろうか?
鍵は、イスラエルでは?
ナチズム打倒においてソ連が果たした役割を決して忘れない by ネタニヤフ
という下敷きがあるじゃないか。
プーチンてばなんでネタニヤフなんかと付き合うのぉとかいう方のために一言書いておくと、欧州と米のリベラルが「ナチ・リベラル」になって歴史改ざんをしつつ、ウクライナにネオナチをぶち込んで平気な現在、正面から語らせるのにイスラエルぐらい強いところはないです。
ネタニヤフとシオニズムと不滅の連隊
オーケストラまでは知りませんでしたが、ドイツが勝つから当然にソ連シベリアを取れるものと本気で思っていた人たちが少なくとも本当に存在したというのは、加登川幸太郎氏の本などを通して納得してました。
また、沿海州、シベリアを切り取ろう、略奪しようという執念はドイツの勢いで活気づいたものではなくて、結局シベリア出兵から1945年の敗戦まで一貫して存在したと言う他ないと思っていましたので、西村機関の方の発言はとても納得できます。
ということは、東京裁判の対ソ侵略の章はむしろとても控えめな記述で、日本軍のロシア切り取り作戦にかける妄執を描いてないですね(笑)。もはや、これはドラマにした方がいいんじゃないかという気もしてきました。大変なことになりそうですが。あははは。
ー西原征夫著「全記録ハルビン特務機関」より
関東軍は関特演のときに秘密に占領行政専門の第五課を設置して、満鉄の調査課の応援も受け、軍票の印刷をはじめ、内地から、通貨や財政の専門家の派遣も考え、文化政策のパンフレットを印刷、宣撫政策にオーケストラの派遣も考えるなどあらゆる段取りをしています。
一方ではヨーロッパでのナチスの電撃戦での戦果に幻惑され、「バスに乗り遅れるな」とばかり敗北した仏、蘭の植民地に食指が働き、南進となるのです。
身の程知らずというか、欲張りすぎて自滅したわけです。