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中曽根&戦後政治とMRA

2019-11-30 21:29:41 | アジア情勢複雑怪奇

中曽根元首相を何かとっても大物であるように描く人がいて、予想はしてたけど大爆笑。こんなカンナっくずみたいな男を大物であるかのような幻影を作ってきたことから日本の戦後は倒錯フェーズに入ったと言えるのかもしれない。

この人が大物であるかのような扱いを受けるのは、多分ずっとそうなんだと思う。何が大物なのか全然わからないけど大物だった。

どうしてそうなるのかというと、櫻井ジャーナルさんが適切にも書いてくださったように、

その頃、中曽根は政治家の中でも「大物」になっていたが、彼が権力の階段を登り始めるのはMRA(道徳再武装運動)と関係するようになってからだ。この団体はCIAとの関係が深い疑似宗教団体で、岸信介や三井高維も参加。そこで中曽根はヘンリー・キッシンジャーを含むCFR(外交問題評議会)のメンバーと知り合い、1950年6月にはスイスで開かれるMRA世界大会へ出席している。

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201911300000/

 

要するに、1950年、MRAという疑似宗教団体の集合体みたいなのに参加して、ここを突破口としてアメリカのディープステートみたいなところとの縁ができ、中曽根は舞い上がり、逆に日本国内の政治家、メディアなどは、どうも中曽根はそこがバックにいるらしい、ってことでやたらに「大物」扱いしてたということでしょう。

ためらわずにいえば、幻影の大物。紐付きの大物。マスターが海の向こうにいる大物。そんなのがなんで日本の大物なんだよって話。

 

だけど、当時の日本人は今に比べればまだ全然マシだった模様で、この鉋屑のように言を吐く男を見透かしていたように見える。だから、マスコミが鉋屑を噴き上げるほどには支持がなかった。田中曽根と言われるように、一人では立てていない。

大岡昇平が、ソ連が攻めてくる、だから憲法改正だとかいう男の言明を信じるわきゃないだろうといったところ。

この不特定多数の怨念を秘めた見えない集合体を前に、憲法改正して日本も軍備持って世界制覇合戦にもう一度邁進しましょーなどとはさしもの日本の支配者層も言えなかったということなんだろうと思うわけですよ。

大岡昇平 時代へ発言 第二回 死んだ兵士に 1984.8 NHK

で、この、大岡昇平へのインタビューは3回シリーズで、1984年に行われている。そしてその中で、不沈空母などと言い出す人もいるわけですからね~みたいなことを言っているところがある。

<略>

ここから考えるに、中曽根が対ソ戦略に積極的な役割を引き受けるなどと言い出したことで、これを再軍備というより外征路線と捉えて、これはどうなんだろ・・・と考えた人たちがいて、一つの抵抗として大岡昇平インタビューをNHKが行ったということではなかろうか。度胸なしのNHKらしく、一度も論点を出さず、大岡さんの影に隠れて疑問を出す、みたいな作りといっていいかもしれない。

しかしそれでも十分に間に合ってしまうのが大岡昇平が持つインパクトと言えるかもしれない。兵を語りながら小さな嗚咽をもらすところがあるが、同じように目に涙を浮かべながら1984年から40年ほど前の日本に思いを致した人たちはテレビの前に多数いただろう。

大岡昇平のいない日本を憂う埴谷雄高

 

再軍備、再軍備といったって、結局はまた外征させるつもりだと、非常に多くの日本人、戦争から帰って来た日本人が疑念を持っていたということだと思います。

そもそも朝鮮戦争、台湾では既に、まったく日本国憲法体制下では違法であろうに、勝手に兵を出していたのが50年代の日本。つまり、宮澤喜一が50年代を指してそう言っていたらしいんだが、当時の日本には軍閥というものがありまして、という話が下敷きになってると思う。

 

■ MRAは不道徳への一里塚

MRAというのは、前にも書いたけど、活動は戦前からあるんだが、日本との関係で最も問題なのは1950年前後。つまり、これは中国で共産党が勝利してしまうことが見えてきた時から、アメリカで大騒ぎとなり、反コミュニストをモットーとするこのMRAが再び脚光を浴びた、みたいな経緯だと思われる。

そのころ一般住民をよそに、エリートを集めて、道徳再武装運動なるものが世界集会をしていた。

道徳再武装運動というのは、Moral Re-Armamentの訳でしばしばMRAと呼ばれている。では一体何を武装しようというのかというと、コミュニズムの進展に対し、我々はクリスチャンの道徳によって対抗する、精神を武装せよ、というのをメソジストの牧師ブックマン氏が1920年代に言い出した運動。

香港とアンチ運動の限界

そこでドイツ、フランス、オランダ、日本等などの国々のリーダーとなるであろう人々を多数呼び集めて、贅沢な会合を持って、そこで、互いに過去を悔いて、反省してる、私も悪かった、今後は和解をとかいって仲良しになる。我々はダークなコミュニズムに抗さなければならないのです、としっかり路線も決められる。日本の片面講和路線が決定する。 

 

だがしかし、前にも書いた通り、これってつまり、日本の(当時の)過去として問題にされるべきなのはアメリカ以上に、中国であり、ロシアであり朝鮮でありといった国々のはず。あるいはドイツであればそれはソ連ということになる。しかし、そこを敵として、私たちだけで和解しましょうという仕切りなわけだから、この運動は、道徳どころか、不道徳の奨め大会のようなもの。

しかし、信じがたいことだが、どうやらこれが今日まで日本の政治、言論に影響しているというしかないのが現状。

だって、このブログがしつこく追いかけてきたように、第二次世界大戦の帰結をしっかりと国民に理解させないで過去70年以上が経過し、様々な話が出て来ようが、ロシアの外務大臣がいろいろと水を向けようとダンマリを決め込んでいるんだもん。

日本とドイツは東西から挟み撃ちしてソ連を倒そうという恰好になっていたという、別に隠してみても始まらないことをすら見せてない。そもそも、ポツダム宣言や極東軍事裁判の記録を参照して戦争終結を話す習慣さえない。

東西挟み撃ち体制が見たくなかったらしい

第2次大戦の結果を認められない唯一の国

渾身の冷戦護持派大勝利であるらしい日本

 

しかも、まだ影響があるとしか言いようがない。

2015年、1945年から70年を迎えるにあたって、安倍ポンが行った談話や行動を思い出せばいい。多くの人は中国との関係で何を言うかを期待したが、結果的には日本とアメリカが戦いを経て仲良しになったのは素晴らしいという趣旨だった。

そして、当時の天皇の振る舞いもこれと同期している。戦争で斃れた日本人を慰霊しているというが、その戦地はみなアメリカとの戦争の場のみで、一番長く問題だった中国との関係、あるいはその前に7年も居座って領土切り取りを画策したロシアとの関係には一言半句もふれていない。

つまり、西側諸国とだけ仲が良ければこの世はハッピーという設定が日本の「正史」であるらしいわけだが、こんなものはアメリカでさえ通らない。

 

これは結局MRAで教唆され、というか、これだとラッキーだなと日本のリーダーたちが飛びついた設定にまだしがみついているというころなんでしょう。多分、日本軍は侵略などしていないという、謎の言明としか言いようのない言明が取り下げられない根本原因も結局このあたりにあるのであろうと思う。大丈夫、僕たちはMRAで知り合った「ディープな人々」の援護さあればこれで行ける、といったところ。

まったくもって、なんでこんなインチキ宗教みたいなものにひっかかったままなんだろうかと呆れる以外にないのだが、冗談ではなくて、どうも本当に結局そうなんだろうと思う。何度も何度もいろいろ考えたけど、結局そこらへんなのかと思うと、いやもう、ガッカリする。

 

■ 右だけでない

で、注意しなければならないのは、MRAは大きなファクターだが、どちらかといえば右には見えないような側にもまた秘密会合的なものがあるということ。それが三極委員会

1973年、カーター政権の時デイビッド・ロックフェラーが作った枠組みで、要するにアメリカが1つでは弱くなったので、日本と西欧を取り入れた世界支配の構図みたいな設。

カーター政権の大統領補佐官ブレジンスキーが差配してできたところから、まぁつまりここがソ連を砕くための枠組みだったんだろうとは思う。

ソ連を破壊するためなら、ムジャヒディーンも厭わずというこの人が取った戦略の帰結が、現在の西側の凋落を呼び込んでいることを考えると馬鹿な委員会みたいだなとしか思えないわけだが(不道徳その2みたいな)、まだ続いている。インドとかバルト三国などを入れ、結果的に、またまた対ロシア、そしておそらく対ロシア&中国となっていっているような感じ。

アルカイダ(名前はその時々)という非正規の軍事組織を使ってそこら中を荒らしまわって、それを米軍またはNATOが正義の味方として登場するという設計にまで関与しているのだとしたら、この委員会こそ後のすべての不埒な事件の数々の黒幕かもよ、と考えることができる。

だもんで、アメリカの陰謀論の中では三極委員会とビルダーバーググループはレギュラーみたいな感じ(笑)。

だがしかし、MRAを取り上げる人たちはとても少ないと思う。ということは、こちらの側が何かを隠している側なのかなと思わないでもない。

ということで、私としてはこの2つの組織の関係に興味を持つしかないわけよね、といったところ。

日本でのそれは、MRAは岸系、三極委員会が吉田系っぽいなと思う。でも、アメリカがよくわからない。

今後も調べたり考えてみたい。

いずれにしても、日本の言論環境はいいかげん、おかしな縛りから解放されるべき。特に、ジャーナリズムというより、それを支えるためのアカデミアに奮闘してほしい。

 

そうそう、MRAについてはこの本で結構な言及があるらしいです。ネット上の参考記事をいくつか読みました。

軍隊なき占領―ウォール街が「戦後」を演出した
John G. Roberts,Glenn Davis,森山 尚美
新潮社

 

これが原書。日本の政治を半世紀支配してるのはウォールストリートだ、と。

Occupation Without Troops: Wall Street's Half-Century Domination of Japanese Politics (English Edition)
Glenn Davis,John G. Roberts
Tuttle Publishing

 

■ 参考記事

香港とアンチ運動の限界

右派人脈とリベラルに垣根はない&反共集団のレゾンデートル

ファシズムとの戦い変じてファシズム内左右となる

 


 

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (かつまた)
2019-11-30 21:54:40
高校生ぐらいのときに、ふと感じた疑問を思い出しました。
何でロシアはそんなに嫌われるのだろう?
何かいいものを持ってって、うらまれてるのだろうか?
Unknown (ミール)
2019-12-01 09:37:34

この当時、アメリカに住んでいましたのでその時の空気はよくわかります。
とにかくソ連に対抗するものは何でも正義、ソ連を擁護するものは共産主義者(じゃあ中国はどうなるの?)という狂信的な社会。
あるときパーティーで訪れた家庭の冷蔵庫に新聞のカートゥーンの切り抜きが貼っていて、世界地図からソ連だけが崩れ落ちて下に破片が転がっている絵とともに “The Civilized World" のタイトルが踊っているもの。それを見せながら奥さんが「面白いでしょう!私たちとっても気に入っているの!」と。馬鹿かと思いながらお付き合いで笑うしかなかったのですが。

この当時のNHKはまだ、こっそり隠れるようにしてでも良識の片鱗を示すところがあったのですが、いまはそのかけらもありません。日本人自体が退化して、そのようなNHKの姿勢を問題と思わないのでしょう。対してアメリカ人は、少なくとも1984年当時よりはまともになっている、気づいている人が増えていると思います。

日本の支配層としての保守(そうでない保守:民族派などとは区別して)の系譜は次第に明らかになっていますが、難しいのは、どうして日本の左翼が翼賛政治に組み込まれてしまったのか、何が欠けていたのか、ということだと思います。
開いているのに閉じている (ブログ主)
2019-12-01 15:57:26
ミールさん、

その「The Civilized World」の絵の話、ホントに恐ろしいです。彼らは無邪気に人殺しをし、無邪気に他人が作ったものを破壊していることに気づいていない。

でもおっしゃる通り、Killing Hopeの話でも書きましたが、これは本格的におかしいと気付いた人は80年代に比べたら増えたと思います。それに対して日本は80年代からこっちの方の劣化の仕方が大きいと思う。

世界の様子がわかるようになった時代においてむしろ閉鎖化、ガラパゴス化が進んだ。

おっしゃるように左派が翼賛政治に組み込まれた点が私も非常に問題だと思います。

そこから、これを修正していく切り口はどこにあるんだろうと考えてみるに、その左右こそ半端な左右だったいうことなんじゃないか、と今考えているところです。

Unknown (ローレライ)
2019-12-01 16:47:15
十字軍ビジネス運動に売られた日本!十字軍は東西教会分裂からロシアを目の仇なの反共映画アレクサンダーネフスキーのとうりでホロコーストのターゲットである。

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