だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

世界情勢対話(2)

2016-10-01 17:07:34 | Weblog

私 こういう世界情勢の中で、日本はどうなっていくのでしょうか。

A まず人口減少ですね。これは止めようがありません。今、仮に出生率が2以上になっても、それが人口減少の停止として現れるためには一世代、つまり30年以上かかります。人口が減り、特に若い人の数が減るわけですから、国内需要はどんどん減少していきます。GDPはここ20年ほど増大せずに横ばいですが、これからは明らかな減少を見せるでしょう。世界の大国としてはじめて本格的な経済の縮小段階に入ります。明治の産業革命から100年にして、全く違う歴史の段階に入るということです。

私 大企業はどんどん海外に出て行きましたね。どこの会社で聞いても、国内よりも海外の事業所の方が従業員数も売り上げも多いという話です。

A そうですね。日本の大企業は多国籍企業化を終えました。かつてはあれほど貿易黒字でアメリカを悩ました日本ですが、今では貿易は赤字です。工場が海外に出て行って、日本で製品を作って輸出しなくなったから当然ですね。経常収支の黒字、つまり、多国籍企業が海外で稼いだ利益を国内に還流させることで国際収支がトントンになっています。

私 かつての大英帝国のパターンですね。

A そうです。それで国全体ではお金は入ってくる。一方、高齢者が増えて、若い世代が少なくなる。そうなると何が起こるでしょう?

私 人手不足ですか?

A そうです。需要はあるが、働く人がいない、ということです。ここしばらくは様々な業種で慢性的な人手不足が続くでしょう。もう一つは格差の拡大です。多国籍企業の大企業の社員の給料は上がるけれども、国内向けの商品やサービスを提供する中小企業は需要が減りますから、売上げが落ちる。高い給料は払えない。いきおい非正規雇用が増える。人手不足にもかかわらず給料は上がらず、労働が強化され、一方で非正規が増えるという、これまでには考えられなかった事態になります。これも縮小型経済のなせる技ですね。

私 国の財政赤字も気になります。

A バブルが崩壊して赤字国債の発行を一気に増やした1990年代からもう20年以上も、一般会計予算の半分以上を赤字国債で賄うという異常事態が続いています。10年物国債が償還時期を迎えて、借金をして借金を返す借換債の発行額もうなぎのぼりです。

私 よくこんなことが続いているなと思いますが。

A 借金は増えれば増えるほど良いのです。

私 え、どういうことですか?

A もちろん金融資本から見た時の話です。身近な例でお話ししましょう。クレジットカードのローンでお金を借りている人は多いですが、中には借入限度額、例えば50万円いっぱいまで借りています。そういう人は、少しお金を返して例えば借金が45万円になったら、またすぐに5万円借りてしまいます。そうやって、ずっと50万円の借金が続くことになります。

私 はい、そういう人の話を聞いたことがあります。

A 貸す方からしてみれば、毎月50万円×金利分のお金が入ってきます。黙っていても入ってくるわけで、こんな簡単な商売はありません。貸金業者からすれば返してもらわなくて結構なのです。

私 なるほど。

A では、国の借金は誰が貸しているでしょうか。

私 国内の銀行ですね。

A その通り。日本政府が発行する国債のほとんどは国内の銀行が買っています。しかも銀行はその資金を預金から調達しています。自前の資金はなくても、国民が貯めたお金を政府に貸して、利子を得るという仕組みですので、二重にうまい話です。政府は借金を減らすどころか、借換債を発行して、借金を維持しています。先ほどのカードローンの話と一緒です。

私 でも、借りた側が破産しては元も子もありませんよね。

A その通りです。ですので、個人向けのカードローンでは限度額が設定されています。一方、国の方は限度額などありません。どこまでも借金が増えていきます。国が国債を発行し、銀行がそれを引き受ける限り、破綻しません。今や国の財政が破綻すれば銀行も倒産するので、運命共同体です。

私 とはいえ、借金を無限に増やすことは不可能ですよね。どこかで限界があると思うのですが。

A そうですね。一つの限界は、国内の預金量です。これが全て国債に置き換わった時点で、銀行は国債を引き受けられなくなります。国内預金量は680兆円に対して赤字国債の発行残高は555兆円でもう余裕はそれほどありません。ただこの20年の間、GDPは伸びていませんが、預金量は順調に増えています。それで、赤字国債を発行し続けることができたわけです。

私 なるほど。

A  でも何でもない抜け道があって、ようは海外で国債を買ってもらうということです。

私 でもそうなると、対外債務ということになって、ブラジル、ロシア、ギリシアなどのような金融危機のリスクが高まりますね。

A そうです。グローバルな金融資本のさじ加減一つで、一国の財政が破綻してしまう、その時には国内の銀行も共倒れです。

私 それは大変なことですね。何か国内で対応出来る回避策はないのでしょうか。

A 一つだけあります。

私 何でしょう。

A 徳政令です。

私 は?

A ようは財政破綻をある程度わざと起こし、混乱を防ぐという名目で銀行を閉鎖します。そして、一定の保護金額以上の預金を没収するということです。それで国債はチャラになります。政府と銀行の偽装倒産と言えば良いでしょうか。国債が紙切れになると同時に私たちの預金が消滅するということです。

私 ・・・

A ようはグローバル金融資本の餌食になるのか、国内での徳政令か、究極の選択です。

私 恐ろしいことですね。

A 今すぐにという話ではありません。まずはご心配なく。もうしばらくは今の借金体制を維持するでしょう。日本の銀行と言ってもグローバル金融資本の影響力を受けています。やたら混乱させてみすみすうまい汁を吸う仕組みを壊すはずはありませんから。

私 それにしても老後の蓄えとか言ってお金を貯めておいても当てにならないかもしれないということですね。

A そうですね。お金のある人は、銀行に預けたりパッケージ型の投資商品を買うんではなくて、自分で判断して良い事業に投資して欲しいですね。

私 良い事業というのはどういうものでしょうか。

A ようは今の世界も日本も行き詰っています。グローバル経済が進めば進むほど、金融資本はともかく、一般庶民の幸せは減っていきます。豊かになるというのは、単にたくさんお金を稼げることではないということが、日本だけでなく世界中で理解されるようになってきました。ではどういうことが豊かになり幸せになることのか。それを切り開き実現していく事業に投資をして欲しいですね。

私 再生可能エネルギー発電所への投資などはその例ですね。小水力発電などは利益も確実に出るし良いと思います。

A そうですね。他にも、例えば若い人が田舎に移住して、オーガニックな農業を始める。それに投資をして、そこで作られた作物を優先的に購入できるとか。配当は少ないか、もしくはないかもしれませんが、そのかわりに、安心とか若い人との交流とか、お金に換算できない価値を手に入れるという投資です。

私 クラウドファンディングなども日本に根付くとは思っていませんでしたが。

A 銀行に預けておいても最後は紙切れになるのであれば、投資ではなく寄付であっても、それで安心で暮らしやすい社会ができた方が良い、そういう考え方もできると思います。

私 今後の日本が進むべきイメージというのはどういうものでしょうか。

A 落ち着いた2等国、美しい野山と水辺のある農林業と観光の国、ということではないでしょうか。グローバル経済の先頭に立って政治的・軍事的にアメリカ、中国を始めとする大国とやりあうのは、日本はいかにも力不足だし、割に合いません。そういう大騒ぎとは距離を置いて、経済が縮小しても人々の幸せ度、満足度が上がるような国ですね。美しい野山があり、それに根付いた確かな暮らしをしている人がいれば、世界の範として、多くの国の人が訪れてくれますよ。観光というのは、その国の「光を観る」ということです。そもそも光っていないところに人は来ません。たくさんの光を輝かせたいですね。

私 今日は幅広い観点のお話をありがとうございました。


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