「ごく卑近な例であるが、私の家の始祖となった人は一種の田楽法師のようなものであった。・・・幼少の時ひどい疱瘡をわずらってあばた面になっており、生涯妻を持たなかった。長子であったが、そのため一生食えるだけの田畑をもって分家し、しかも自分はほとんど田畑に出て働くことがなく、人を使って耕作し、ただ遊んで暮らしていた。声がよくて歌をよくおぼえ、田植の頃になると田植しているほとりに立って太鼓を打ち田植歌をう . . . 本文を読む
「こうした仮りの親子の契りは実の親子についで大事にされ、吉凶禍福あらゆる場合に親子が行き来して助けあったものである。だから実の親に力がなくてもよい仮親をとっておいてやりさえすれば、その子が食うに困るということは少なかった。・・・ しかし子になったものは親方に対して恩はむくいなければならなかったし、また義理もはたさなければならなかったから、それでは主従的な関係も生まれたであろうと考えられるが、そうい . . . 本文を読む