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4種混合ワクチン、11月1日から定期接種へ

2012-08-02 20:12:36 | Weblog

利便性から4種混合普及、供給不足の懸念も

2012年8月2日 m3.com 

 

厚生労働省の「不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会」(座長:岡部信彦・川崎市衛生研究所所長)が8月2日開催され、7月27日に薬事承認された4種混合ワクチンを今年11月1日から定期接種に導入する方針とその使用ワクチン案を了承した。ただし、企業の供給量の確保、ワクチンの国家検定、市町村の接種体制の整備などの事情により、導入が遅れる可能性もある。

 今回承認された4種混合ワクチンは、DPT(百日せき、ジフテリア、破傷風混合ワクチン)とポリオ不活化ワクチンの混合(DPT-IPV)。単独のポリオ不活化ワクチン(IPV)は、ポリオ生ワクチン(OPV)に代わり、9月1日から定期接種に導入されることが既に決まっている。

 厚労省が提示した使用ワクチン案は、後述の通り。臨床研究の結果、(1)初回はOPV、2-4回はDPT-IPV、(2)初回はOPV、2-4回はIPV、(3)DPT-IPV2回とIPV2回、といういずれの組み合わせでも、同等の効果が得られることが明らかになっている。


2012年度末時点でのIPVの需要量は、396.5万ドーズ、供給予定量は477万ドーズ。DPT-IPVの需要量は「105.7万ドーズ+α」、供給予定量は147万ドーズ。厚労省は、需給バランスを踏まえ、原則として開始したIPV (単独もしくは4種)を最後まで使用することを求めている。しかし、IPVを単独接種した場合は、別途DPT接種する必要があるため、両方を一度に接種できるDPT-IPVの希望者が出ることを想定、その分が「α」に当たる。

 会議で呈せられたのは、DPT-IPVの接種希望が大幅に増え、供給不足になる懸念だ。川崎市保険福祉局医務監の坂元昇氏は、「1回も接種したことがない人については、DPT-IPVとIPVプラスDPTのどちらがいいのか、自治体は判断を迫られることになる。ある程度、指針を示してほしい。また、もしDPT-IPVが供給不足になり、接種間隔が空いた場合、特例的に接種間隔を延ばしてもいいのか。その場合は、IPVプラスDPTの形でいいのか」などと、接種を担当する自治体の立場から質問。

 日本医師会常任理事の小森貴氏も、「心配されるのは、DPT-IPVの供給量。国民の理解が得られれば問題ないが、DPT-IPVでは一度に接種できるため、希望者は当然出てくる。医師会としてもすべての医療機関に、原則として開始したIPV (単独もしくは4種)を使用するよう通知するが、本質的にこの周知は国の責任で行うべきもの。そうでなければ、混乱が生じるのは必至」と指摘した。

 DPT-IPVを定期接種に導入する場合、予防接種法の省令改正を行うため、新規に接種を開始する人については、「DPT-IPV」を推奨することになる。ただし、坂元氏や小森氏が指摘したように、既にOPV、個人輸入したIPV、あるいはDPTを1回接種した人が、「IPVプラスDPT」とDPT-IPVのいずれに移行するか、医療現場では混乱が生じる可能性がある。

 岡部座長は、「最初にAというワクチンを接種した場合、Aワクチンで終了することが、データから言って安定している。そこを原則にしないと、需給バランスが崩れることになる。がちがちにこの原則を求めるわけではないが、最初からこの点についてルーズに打ち出すと、自治体にも混乱が生じる」と述べ、理解を求めた。さらに、「とにかく最初に接種してほしいのは、未接種の人。百日せきは日本で根絶されたわけではない。DPT-IPVの導入を待つのは、疾病に対するリスクが高まる」と強調した。

 IPVの導入を待つ親が多いことから、OPVの接種率は低くなっている。2012年4月から6月の3カ月間で、15都市のサンプル調査を実施した結果、平均接種率は62.2%、最も高い市で78.3%、低い市では44.7%にとどまっている。従来は90%以上の接種率だった。

 なお、厚労省は、IPVは国内での使用経験がほとんどなく、DPT-IPVは新規に開発されたものであるため、「不活化ポリオワクチン予防接種後副反応検討会」を新たに設置する。予防接種や小児感染症の専門家などから構成する予定。

【使用するワクチン案】
1. DPT未接種かつポリオワクチン未接種の者
・DPT-IPV未導入の時点で開始する者:DPTプラスIPV
・DPT-IPV未導入後に開始する者:原則としてDPT-IPV
2.いずれかのワクチンを接種している者
・OPV1回、IPV1回以上(個人輸入等による)、DPT1回以上:DPT- IPVの導入にかかわらず、原則としてDPTプラスIPV


ポリオワクチンへの社会的な関心の高さから、「不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会」には、テレビ局なども取材に。

 ポリオアウトブレイク対応も検討課題

 そのほか、会議では、IPV接種に伴う抗体価を長期的にフォローする必要性も指摘された。IPVの接種回数は4回だが、「追加免疫として、5回目をどうするかについて早急に議論して結論を出してもらいたい」と岡部座長は求めた。

 さらにポリオのアウトブレイクへの対応も議論。日本では1980年を最後に野生株ポリオの発生は見られていないが、野生株または伝播型ワクチン由来ウイルスが検出された際に、その地域において免疫を持たない集団で、集団発生する可能性がある。昨秋、および前述のように今春は接種率が下がっており、厚労省は、「現状では免疫を持たない集団が、一定程度存在すると見られる」とする。海外では最近、2010年にはタジキスタンで、2011年には中国新疆ウイグル自治区で集団感染が見られている。

 ポリオ流行時には、伝播阻止効果が優れていることから、米国CDC(米疾病対策センター)などでは、OPVの接種を勧めている。ただし、米国でもOPVの承認を既に取り消しており、米国をはじめ、IPVを臨時に予防接種する体制を取る国が多い。

 厚労省は、アウトブレイク対策として、IPV の備蓄状況とポリオワクチンの接種率などを考え、2014年夏までは、(1)感染拡大の恐れが高いと判断された場合には、原則としてOPVを臨時に予防接種、(2)感染拡大の恐れが高くないと判断された場合には、IPVを臨時に予防接種、という案を提示。2014年夏以降は、IPVを臨時に予防接種として用いるとした。ただし、2014年以降も、ポリオワクチンの接種率が向上せず、感染拡大の恐れが残る場合には、接種率向上までOPVの迅速な製造供給体制を確保する。