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いつか素晴らしい世界になって、誰でもが望む旅を楽しめる、そんな世の中になりますように祈りつづけます。

残酷な歳月 18 (小説)

2015-12-28 10:39:11 | 小説、残酷な歳月(16話~30話)

残酷な歳月
 (十八)

それは、加奈子の結婚報告を聞いただけではない!!

親しい友としてのジュノのマークへの信頼が揺らいだ事の重さを感じたからなのか!
「ジュノの中で、信じがたい、加奈子の結婚!」

この事が、後に、ジュノの運命に大きく影響して来る事など、今のジュノには、予想すら、出来ない事だった。

ただ、ジュノの心の乱れ、いい知れぬ、不安なのか、嫉妬なのか!
冷酷なまでに、加奈子を拒否した事への懺悔の思いなのか!
言い知れぬ心が乱れる、ジュノの執拗なまでの自己保身なのか!
長い間のジュノ自身が気づかない、傲慢さが、見え隠れしていた。

嫉妬する想い
この心は彷徨い
美しき人を苦しめる
戯言に惑う想い
未来の君は
何におびえて
私を見ているのか
あの光の中で
幼子を抱く姿に
美しき人は嫉妬する
母の面影と重ねあわせて
いつかこの手に抱く幼児


(傷心)
ジュノの定まらぬ気持ち、加奈子とロイが結婚したと聞くと、傷心のままで、ロスへ帰して、一方的に別離を決めさせてしまった、ジュノの冷酷さから招いた事だが、加奈子の傷心をなぐさめたであろう、若く美しいロイの存在は、鍛え上げられた若き肉体の美しさとジュノにどことなく面差しが似ていた事が、ロイと加奈子、ふたりの間が、急速に深まって行った、加奈子の心!

仕事を持たないロイは加奈子の要求する、すべてを、提供し、それは時間であったり、加奈子の寂しさを埋める愛であったり!

若きロイの強い肉体は、加奈子の偽りの求めを叶える!
若き恋人の、自由な生き方で、認め合う、ふたりの行動は!

ふたりに近しい人たちには、加奈子とロイの異様さだけが目立つ事を心配する気持ちと、同じくらい、好奇な心を動かして、興味を持つ事だった。

ジュノの知る、加奈子の姿ではない!
別の加奈子がそこにはいる!

加奈子のそんな行動がジュノの心を乱しながらも、どこかで、加奈子の事には触れたくない!
いこじなまでに、ジュノは、あえて、聞く事を拒否していた。

加奈子の不自然な行動にも、何の連絡もせずにいた結果、ふたりの間に、子供が生まれ、そして、結婚した!

加奈子の決断が、どれほどの苦しみの決断であったか、ジュノの知る加奈子の姿を想いながら、申し訳なさと、嫉妬心の入り混じった、複雑さが、ジュノは、ふたりの事を考え、想像する事さえ、打ち消していた。

りつ子は手術後の人格変化とでも言おうか、あの我儘で、傲慢な、りつ子のジュノに対して、ねじりよるような態度が消えている事が、ありがたい事!

ジュノは、死を覚悟したひとが術後に人格が変化した患者さんを何度か見たことがある!

大抵は、それまでの性格とは逆の姿に見える事が多い。
たとえば、健康で、はつらつとした活動している時は、非のうちどころがないように思える、性格の良い人、誰からも好かれている、そんな人が、ある日、突然の病がわかり、しかも、手術には、死をも覚悟するほどであって、ジュノの手術によって、大げさに
言えば奇跡的に助かった!

そんな人が、元気に快復後、それまでの人間性とは違う、たとえば、逆の、わがままで、傲慢さをむき出しに!
「自己中心的な人間に変わってしまった姿。」

そんな事例を、ジュノは何度か見ているが、ジュノが思うに、おそらくは、手術後に現われた姿が、その人の本当の姿なのだろうと思うのだが。

人は、育った環境やまわりの人の影響で、自我を抑えることを覚え、又、持って生れた性格などを自分では気づかず隠して、常識的で、人に好かれる人間として、それは自分では意識などはなく、本当に自然な姿なのだろうと思う。

大抵は、性格の良かった人が、意地悪になったりする事で、まわりの人が、びっくりしながらも、病気が、そうさせているのだろうと、許してしまうのだった。

だか、りつ子は、不思議なほど、我儘も、傲慢さもなく、少しやつれた姿がなんとなく、気を引く美しさを、病人とは思えないほど、白く、透き通るような肌が、上品さを感じさせた危ういほどの色香がある。

そんな魅力のある女性だったのか!
「ジュノは正直な感情だった!。」

三日ほどのマークの日本滞在も、結果的に、りつ子から、どんな援助を得られたかは、ジュノは知らないが、上機嫌で、笑い転げるように、ロスに帰って行ったところを見ると、りつ子からの融資は、マークを一時的であれ、助けたのだろう。

りつ子の経済的な余裕と死線を超えた者の不思議な魅力を際立たせた、一瞬がジュノには、眩しくみえた。

りつ子も、程なくして、地元、安曇野の病院へ転院して行ったが、ジュノのいる病院を離れる日に、りつ子は、ジュノに話した!

私ね、本当に、貴方を信頼していたし、大好きだった!
「貴方を愛していたのよ!」

だから!
今!「特別な、ブレゼントを、用意しているの!」

まだ、もう少し、時間が必要だけれど・・・
『きっと、ジュノの運命が変わる!』
『素晴らしいものに、変わる事を、願っているのよ!』
そんな、謎の言葉を残して、りつ子は、安曇野へ帰って行った。

ジュノは、ただ、心の中で、たじろぎながらも、今のりつ子なら信じられる!
「信じたいとねがった!」

そう思うことが、ただ一つの糸口である、大杉さんや妹、樹里へ
繋がる、手がかりなのだから!

季節はめぐりゆく
いつしか秋のおわり
何かが美しき人へ
近づいて来る気配
それはまだ誰なのか
美しき人に見えない愛
冷たすぎた運命
痛すぎた傷あと
優しさが心につたわる
君は私を導く人なのか

ジュノにとって、加奈子の結婚!
りつ子が安曇野の病院への転院して行った事はどこかで、ほっとした思いがある反面、寂しさなのか、とても気になる。
「加奈子とりつ子」

ジュノには友として、又、特別な感情を持った人として、すべてが大切に思う存在や心のよりどころにしている何かが、自分から離れて行ってしまいそうな空虚さ!
「孤独感がつのる事に耐えていた。」



            つづく





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