CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ

ニューロリハビリテーションの臨床応用を実践するリハビリ科専門医・道免和久の日記【CRASEED Rehablog】

医学書院『総合リハビリ』原稿より

2007-03-15 04:44:27 | リハビリ
もしも、あなたの左目が失明寸前で、眼科でこう言われたとしたら、どう思うだろうか?

「左眼は治療したとしてもほとんど実用にはなりません。左眼の治療にこだわることは、『障害の回復への固執』という悪い心理なので、忘れるべきです。そうしなければ私達はあなたを『障害の受容』ができていない『問題患者』とみなします。今の時代は、生活機能が最も重視されますから、右眼での日常生活の訓練をしましょう。繰り返しますが、決して左眼を治療しようなどと思わないで下さい。社会復帰を遅らせるだけです。」

おそらく、そのような医療機関は、医療を担っているとはみなされないはずであり、存続することはできないであろう。

ところが、多くのリハビリ病院では、今でも当然のように健側による代償訓練が偏重されている。その中で、患者によっては、麻痺の回復を願うことやそのような治療を希望することに罪悪感すらもっている場合がある。麻痺側上肢の回復の希望がないと理解するように、繰り返し「ムンテラ」されているからである。

このような日本の現状をよそに、脳卒中片麻痺上肢の積極的治療として、Constraint induced movement therapy(CI療法)が世界的に注目されている。

(総合リハビリテーション Vol.34 No.12 特集 脳卒中治療-最近の話題 『上肢機能障害』 道免和久、2006年12月 )

介護保険ではムリ!(患者会からの意見より)

2007-03-15 04:23:55 | リハビリ
「長期債務残高が204兆円におよぶ地方にとって、介護費用の25%を負担する地方の予算に介護保険を充実させる余裕は全くない。現実にサービスはどんどん悪くなっている。利益が出やすい回復期リハビリ病院を充実させたいがために、維持期の地道なリハビリ医療が犠牲にされたのではないか。」という主旨の御意見を頂きました。

その通りだと思います。介護保険で行われているリハビリは、リハビリが主たる目的ではなく付随的なものです。本物のリハビリ医療は、再生の医療であり、再チャレンジの医療、そして希望の医療でもあります。このことは、昨日放送のNHKテレビ生活ほっとモーニングで取り上げられたCI療法に具現化されています。

http://www.nhk.or.jp/hot/2007/0314/index.html

発症後4年経過した脳卒中患者さんの手が、治療によって改善する経過が、的確に描かれていました。

医療費としても少額のリハビリ医療とリハビリ患者いじめを行う理由は私にはわかりません。

推察するに、
1)どの分野でも良いから、象徴的な意味で、医療にまず「制限」を設けたかったこと
2)制限を始めるなら、地味で反発も少ない(と予想される)リハビリ医療からいじめようと考えた
3)患者にとっては命綱でも、病院経営としては赤字部門の維持期のリハビリを切り捨てることにより、急性期~回復期リハビリ医療の充実をはかった
4)さらに介護事業に参入する企業を手助けするために「リハビリは介護保険」という誤った認識を国民に植え付けようとした
5)つまり、リハビリ医療のあり方や患者の命などはどうでもよく、「制限」をつけたい厚労省の思惑と何らかの利益誘導の思惑が合致した
6)リハビリ制限を既成事実化すれば、他のあらゆる医療分野でも制限を導入しやすくなるという意図が見えかくれする。

中医協に提出された資料を見た患者会の方が、いみじくも「特定の病院の経営方針のようだ」と感想を述べられたこととも関連する気がします。

医療費抑制の象徴的意味でのリハビリ医療いじめが、介護保険の破綻をもたらすことになるでしょう。すでに医療として定着しているローコストのリハビリ医療をこれ以上破壊すると、取り返しがつかない事態を招くと思われます。

日数制限も疾患別リハビリも即時撤廃すべきです。