なんか面白そうな本ないかなー。
と書店をふらふらしていたら、興味深いタイトルの本を見つけたのでさっそく読んでみました。
「寂しい写楽」宇江佐真理著
写楽は一体何者なのか?
この定番歴史ミステリーを題材にしていますが、
実際のところ、その謎は早々に解かれています。
それよりも、
写楽に関わった人たちの悲喜こもごもがお話のメイン。
言ってみれば、写楽を売り出そうという版元・蔦屋の一大企画。
プロジェクト写楽、とでも言いましょうか。
その顛末やいかに、てとこですかね。
正直言って、
息もつかせぬ展開!とか、
涙なしには読めない感動作!とか、
心がほっこり温まりました、とか、
そういうんじゃないです。
わりと淡々と話が進んでいく感じ。
小説として、絶対面白いよ!おすすめ!!とは言いがたい。
ただ、
当時の絵師や戯作者、版元って、こういうふうに仕事してたんだなーっていうのが分かるのは興味深い。
まだまだ無名の若かりし北斎や、
自分探し真っ最中の十返舎一九をはじめ、
山東京伝、滝沢馬琴、大田南畝、喜多川歌麿などなど。
現代に名を残す作家たちが続々と登場し、四苦八苦しながら製作している様は、
フィクションといえどもなんだか感動。
あくまで「物語」だって分かってはいるけれど、
あなたは何百年も先まで残る作品を書く(描く)んだから、負けるながんばれ!
と応援したくなってしまう。
私にとっての北斎は、杉浦日向子さんの「百日紅」のイメージが大きいんだけど、
こういう北斎もいいなぁとか思ってみたり。
そして、
浮世絵を作るには絵師だけじゃなく、彫師と摺師もいなければ。
浮世絵は、まず絵を描く絵師がいて、
それを印刷するための版木を彫る彫師、
その版木を摺る摺師、
この3つの職人の手を程を経て完成します。
と、
初めて知った時にけっこうびっくりした。
分業なんだ!
って。
なんていうか、絵っていわゆる芸術作品じゃないですか。
それを複数の人で作るのって、うまくいくのかな・・・・・?モメたりしないの?とか考えちゃって。
でも以前、どこの美術館だったか、
浮世絵の展覧会を見に行った時、
浮世絵が完成するまでの彫師と摺師の作業工程をDVD上映していたのです。もちろん現代の摺師と彫師ね。
いやー。すごい。
まさに職人技。
あんーーーーな細かい線を彫って、
そんでまた微妙なぼかしとかまできれーーーーに摺って。
彫師と摺師、かっこいー!!とほれぼれでしたよ。
余談ですが、私は元来、職人という人種に弱い。職人になりたい。
そんな3つの師の関係って、どんなんだったんだろう。
その答えかどうかは分からないけれど、あくまで物語の一場面にすぎないんだけど、
この小説の中でこんな場面がありました。
絵師である北斎(当時の画号は勝川春朗)が摺師のもとを訪ねる。
迎える年配の摺師は、まだ年若い北斎を「春朗先生」と呼ぶのです。
絵師が描いてこそ、自分たちに仕事が回ってくるという思いからですね。
それに対して北斎は、摺師に「師匠」と呼びかける。
もちろん、摺師の頭には弟子がいて、実際「師匠」なんだけど、
でも北斎が呼ぶ「師匠」には、
その技に対する敬意が込めれているのだと思うのです。
絵師と彫師と摺師。
完成した浮世絵に記されるのは絵師の名前であって、
多分、ポジション的には絵師が上なのだと想像されるけど、
絵師が、彫師と摺師に信用と敬意を払って、その関係はうまく回っていたのかなぁ。
ま、当然、揉めることは多々あったと思うけど・・・・。
それと、
版元と書き手の関係。
書き手は、絵師であったり戯作者であったりしますが。
これもまた、なかなか興味深かった。
ていうか、ほとんど現代と同じなんじゃないかと思ってみたり。
売れる絵と売れない絵の話とか。
浮世絵って、印刷して売るのが前提の絵だから、
それはつまりイラストだと思うんですよね。絵画ではなく。
浮世絵師は画家ではなくイラストレーターだった。
イラストレーターは、たくさんの人に見て手にとってもらえるように描かないといけないわけだから、
言い方は悪いけど、
「うけを狙う」というのは必要なことだと思います。
でないと、版元に、出版社に使ってもらえない。
江戸の浮世絵師はそれをちゃんと心得ていた。
それに一石を投じたのが写楽だった・・・・・・。
イラストレーターは芸術家よりも職人に近いというのが私の自論ですけど、
お江戸の浮世絵師を見ていると、ますますそう思います。
イラストと絵画の違い。
なんかちょっと、そういう点でも考えさせられました。
そして、物語の中にはこんな一文も。
本当の絵師とは幼い頃から絵に親しみ、
何十年も努力を重ね、人の鑑賞に堪える作品を描ける者達のことを指すのだ。
付け焼刃では、いつかボロを出す。
うはー。
肝にめいじます・・・・。
お江戸の出版業界に興味のある人、
絵師に興味のある人にはちょっと読んでみてもいいんじゃない?っていう一冊です。
もちろん、写楽に興味ある人も!
と書店をふらふらしていたら、興味深いタイトルの本を見つけたのでさっそく読んでみました。
「寂しい写楽」宇江佐真理著
写楽は一体何者なのか?
この定番歴史ミステリーを題材にしていますが、
実際のところ、その謎は早々に解かれています。
それよりも、
写楽に関わった人たちの悲喜こもごもがお話のメイン。
言ってみれば、写楽を売り出そうという版元・蔦屋の一大企画。
プロジェクト写楽、とでも言いましょうか。
その顛末やいかに、てとこですかね。
正直言って、
息もつかせぬ展開!とか、
涙なしには読めない感動作!とか、
心がほっこり温まりました、とか、
そういうんじゃないです。
わりと淡々と話が進んでいく感じ。
小説として、絶対面白いよ!おすすめ!!とは言いがたい。
ただ、
当時の絵師や戯作者、版元って、こういうふうに仕事してたんだなーっていうのが分かるのは興味深い。
まだまだ無名の若かりし北斎や、
自分探し真っ最中の十返舎一九をはじめ、
山東京伝、滝沢馬琴、大田南畝、喜多川歌麿などなど。
現代に名を残す作家たちが続々と登場し、四苦八苦しながら製作している様は、
フィクションといえどもなんだか感動。
あくまで「物語」だって分かってはいるけれど、
あなたは何百年も先まで残る作品を書く(描く)んだから、負けるながんばれ!
と応援したくなってしまう。
私にとっての北斎は、杉浦日向子さんの「百日紅」のイメージが大きいんだけど、
こういう北斎もいいなぁとか思ってみたり。
そして、
浮世絵を作るには絵師だけじゃなく、彫師と摺師もいなければ。
浮世絵は、まず絵を描く絵師がいて、
それを印刷するための版木を彫る彫師、
その版木を摺る摺師、
この3つの職人の手を程を経て完成します。
と、
初めて知った時にけっこうびっくりした。
分業なんだ!
って。
なんていうか、絵っていわゆる芸術作品じゃないですか。
それを複数の人で作るのって、うまくいくのかな・・・・・?モメたりしないの?とか考えちゃって。
でも以前、どこの美術館だったか、
浮世絵の展覧会を見に行った時、
浮世絵が完成するまでの彫師と摺師の作業工程をDVD上映していたのです。もちろん現代の摺師と彫師ね。
いやー。すごい。
まさに職人技。
あんーーーーな細かい線を彫って、
そんでまた微妙なぼかしとかまできれーーーーに摺って。
彫師と摺師、かっこいー!!とほれぼれでしたよ。
余談ですが、私は元来、職人という人種に弱い。職人になりたい。
そんな3つの師の関係って、どんなんだったんだろう。
その答えかどうかは分からないけれど、あくまで物語の一場面にすぎないんだけど、
この小説の中でこんな場面がありました。
絵師である北斎(当時の画号は勝川春朗)が摺師のもとを訪ねる。
迎える年配の摺師は、まだ年若い北斎を「春朗先生」と呼ぶのです。
絵師が描いてこそ、自分たちに仕事が回ってくるという思いからですね。
それに対して北斎は、摺師に「師匠」と呼びかける。
もちろん、摺師の頭には弟子がいて、実際「師匠」なんだけど、
でも北斎が呼ぶ「師匠」には、
その技に対する敬意が込めれているのだと思うのです。
絵師と彫師と摺師。
完成した浮世絵に記されるのは絵師の名前であって、
多分、ポジション的には絵師が上なのだと想像されるけど、
絵師が、彫師と摺師に信用と敬意を払って、その関係はうまく回っていたのかなぁ。
ま、当然、揉めることは多々あったと思うけど・・・・。
それと、
版元と書き手の関係。
書き手は、絵師であったり戯作者であったりしますが。
これもまた、なかなか興味深かった。
ていうか、ほとんど現代と同じなんじゃないかと思ってみたり。
売れる絵と売れない絵の話とか。
浮世絵って、印刷して売るのが前提の絵だから、
それはつまりイラストだと思うんですよね。絵画ではなく。
浮世絵師は画家ではなくイラストレーターだった。
イラストレーターは、たくさんの人に見て手にとってもらえるように描かないといけないわけだから、
言い方は悪いけど、
「うけを狙う」というのは必要なことだと思います。
でないと、版元に、出版社に使ってもらえない。
江戸の浮世絵師はそれをちゃんと心得ていた。
それに一石を投じたのが写楽だった・・・・・・。
イラストレーターは芸術家よりも職人に近いというのが私の自論ですけど、
お江戸の浮世絵師を見ていると、ますますそう思います。
イラストと絵画の違い。
なんかちょっと、そういう点でも考えさせられました。
そして、物語の中にはこんな一文も。
本当の絵師とは幼い頃から絵に親しみ、
何十年も努力を重ね、人の鑑賞に堪える作品を描ける者達のことを指すのだ。
付け焼刃では、いつかボロを出す。
うはー。
肝にめいじます・・・・。
お江戸の出版業界に興味のある人、
絵師に興味のある人にはちょっと読んでみてもいいんじゃない?っていう一冊です。
もちろん、写楽に興味ある人も!