山形建築研究所-BLOG-休憩室

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<坪単価>の謎・・・

2008年10月25日 | オープンオフィス
家を建てようと考えている方の、ほぼ全員の方々が、実際の価格より安く建つと思い込んでいる。
または、思い込みたがっている。それに対して、こちら側(設計者、施工者)は実際の価格の動きをよく知っていること
設計を少し自由にやりたいから、ギリギリより少し高めに値段を言ってしまいがち!という、両者のズレがある。
どうして『坪いくら』という概算で家の値段を口にするのか。また、実際に建つ時とそんなに差が出るのか。

ひとつは、建て主の思い込み
お金が余って家を建てる人はまずいない。誰でも、少しでも安く建てたいと思っている。
こういう状況の人は、誰が家を建てたか、新聞の記事とか、とにかく安い家が建つという
情報ばかりが耳や目に入りやすくなっている。
そういう状況がしばらく続くと、その値段が常識として固定してしまって
「自分の家は、仕上げがそんなによくないから」
「冷暖房は、2部屋でいいから」
「あの家は、大都会だけど、うちは地方だし」などと
勝手に安い値段を設定してしまう。これは、悲しい人間の「性」
例えば、嫁さんの実家の兄さんは、坪55万だったから、うちは、50万で建つだろう、と
勝手な思い込みが頭の中に定着してしまう。

次に、売る側、つくる側が意識的に安い値段を設定して、買い手、建て主に吹き込んでの結果である場合
ハウスメーカーがよくやる手で、「標準価格は坪40万です」という営業マンの言葉で、その気にさせておいて
その後、打ち合わせして分かるのは、それは、規格の部分でカタログにある、おいしそうな部分は全てオプション!
フローリングはこれに、オーブンつけて、この部屋にも冷暖房がほしいな、コンセントも各室3ヶ所ね
カタログの写真に載っている門や塀は別途なの、無用心だからつけといて・・・・・・
それを全部別途注文品ということで見積書にこと細かく、ついでにかなり高めで
それを全部集計して坪で割ると坪当たり70万円になっている。
自分で注文したんだから仕方ないと思わせるのがこの商法の「ミソ」

工務店も、この方法で、坪40万で建ちますと請け負っておいて
電気の引き込み、ガス工事、水道は専門業者だから入っていません。
台所の流し台は奥さんの好みのものを買っていただこうと思って入れてありませんと途中から言い出し
出来上がってから、思いがけず地盤が悪くて地盤改良に100万もかかっちまって。
追加見積もりが出てきて、結果としてやっぱり坪50万に

「家を建てるんなら最初の見積もりより2、3割高くなると思ってないとダメだよ」という
おばあさんの忠告はこのことを言ってたんだ。昔、おばあさんも痛い思いをしていたんだ。

大体坪いくら・・・・・・という、いい加減な計算の仕方がおかしいとは昔から専門家が指摘していること。
物の値段は内容に対する価格であるはずなのに、内容なしで値段を決めているのが
この坪いくら?という値段のはじき方。
車っていくらで買える?って聞いているようなもの。
一応4輪付いて人を乗せて無事走るという最低仕様はあるにしても
国産中古の5万くらいからロールスロイスやフェラーリの新車の数千万まで開きがある。

どれくらいの構造、仕上げ、どんな設備、というように、先ず最低基準の仕様を決めて
それなら、いくらというような値段の付け方にしろ。
落とし穴はいくらでもある。言葉で仕様を表現しようにも素人には限界がある。

例えば、「暖房だけはちゃんとして」といえば
壁の格子からソヨソヨと吹いてくるホテル並みの家が出来てくる・・・・・・・・
と注文する側は勝手に思い込んでいるし。
安くしようと思っているつくり手側は、各部屋に灯油ヒーターを置くか、壁にエアコンをつけるかで片付けようとする。
言葉だけでいえば、暖房完備には間違いないし、お金もないくせに勝手にホテル並みの空調を期待した建て主が悪いと言われておしまい。

そこで、設計図なる<設計図書>が必要になってくる。
こと細かく仕様を決めた設計図を基に施工業者に<見積書>をつくってもらう訳だが
この<見積書>なるものも、かなりの曲者・・・

ということで<見積書の怪>へと続きます・・・続編をお楽しみに!



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