「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

猫を抱いて象と泳ぐ

2010-08-09 | 
小川洋子さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」。チェスを通じて他者との共感やコミュニケーションをとる少年の物語は、独特の透明感ある世界を形作ります。純粋な余りにも純粋な精神。美しい詩的世界。彼は唇にすね毛がはえ、五十センチ四方の空間に長時間入っていられる。彼のチェスの師匠は贅肉がつきすぎて、住まいにしていたバスから亡くなったときに遺体を取り出せなくなってしまう。彼の好きな象は大きくなりすぎたためにデパートの屋上からエレベーターで下ろせなくなって生涯を屋上で過ごす。そして、想像のなかの恋人は家と家の間の狭い空間に挟まって抜け出せなくなっている。異形なのですが、というか異形という鎧を美しい精神にまとっていないと、この世界では美しい精神を維持しきれないという設定とでもいえましょうか。哀しげな、でも凛とした美しい物語世界に引き込まれて一気に読み終えました。