「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

「イムリ」1~7巻

2010-04-24 | 
三宅乱丈さん著の漫画「イムリ」。09年の文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞作品です。いま出ている7巻までをまとめ読みです。実は絵をみて最初はやや抵抗感があったのですが、それも最初の数ページまで。あとはこの独自世界に引き込まれ、息をもつかせぬ展開にぐいぐいと読み進みました。

ストーリーは、ウイキペディアを引用すると
「支配民族「カーマ」は戦争によって惑星ルーンを凍結させ、隣星のマージへと移住した。 それから四千年後、過去の戦争の記憶は風化し、カーマは他者の精神を侵犯する能力を用いて奴隷民「イコル」を最下層とする階層社会を形成していた。ルーンの氷が溶け始め、カーマたちはかつての母星への移住を始めていた。かつて古代戦争を争い、四千年の氷河期を経てその記憶を忘れ去った原住民「イムリ」の住むルーンへと・・・」

要するにSFファンタジーですが、アイヌ世界をモチーフにしたような、自然との共生文化を大切にするイムリ。必ず双子で生まれてお互い、そして恋人どうし、親子同士は夢を見合うという万葉の「夢路」のような設定が日本人の世界観にしっくりとくるようです。名前を知ることで相手を術にかけられるのは「ゲド戦記」の魔法使いと同じで、本名をめったなことでは明かさない。言霊信仰ですよね。

こうした一見のどかなイムリの世界ですが、カーマとの関係の中で実にえぐい扱いを受けます。奴隷化は精神の自由を一切奪われた状態で生ける人形とさせられます。それだけではなく、もっと恐ろしいことをしているのですが、それはネタバレなので書きません。

主人公(とおぼしき)デュルクもイムリの血を引く者。カーマよりも本来的にはイムリのほうが強力な力をもつようですが、それがなぜカーマに支配されるようになったのか。イムリの未来は? 謎が次々と広がります。7巻でおおきくストーリーが転換した印象を受けます。さて、この後、どう展開していくのか。まったく読めないだけに楽しみです。