じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

介護者として人を観察するということ。

2006-06-12 20:55:20 | 介護の周辺
介護者として相手を観察する上で大切なのは

相手と接しているときに
ふとした瞬間に感じた「違和感」を
心にとどめておくということだと最近思う。

その「違和感」は、一種の「皮膚感覚」のようなものなので
明確に言葉にして表現することは難しい。
どこが以前と変化したのか、何が気になるのか
明確に指摘できない場合が多いのだ。


たとえば、

 通勤で使う駅に掲げられている、見慣れた広告看板に
 一箇所だけ、まちがい探しの絵のような
 「いたずら」が施されているとする。

 どこが違っていたとはぱっとは答えられないのだけれど
 「なんか変だなぁ…」
 という感覚だけがちらっと
 ―それこそ一瞬で忘れてしまいそうな程度に―
 頭をかすめる。

 だけど出勤途中なので
 その場でまじまじと広告を見直すわけにはいかない。
 ともすればそのまま忘れてしまいそうな、そんな違和感。

あるいは

 棒の先に鈴が、ぶどうの粒のようについていて、
 それを振ると「しゃらん」と音がする
 そんな楽器があるとする。

 その鈴のうちひとつふたつが、
 ある日ただの金属の玉にすりかえられている。
 楽器を鳴らすと、微妙に前と何かが違う「気がする」のだけど

 「気がした」自分の感覚を一瞬、疑ってしまう程度の
 感覚へのかすかなひっかかりがあるだけで
 何がどう違うということを明確に表現できるほどではない。 
 ましてや 音を聴いた瞬間に
 「実は金属の玉が混じっている」とは気づけない。

そういった感じである。


いちいちその、感覚的な違和感について神経質になっていたら
ノイローゼになってしまう、そういった意見もあるかと思う。

だからこそ「心に留めておく」のにとどめるのだ。
振り回されない程度に、覚えておく。


その場では「…あれ?」と一瞬思うのだけれど
うっかりすれば忘れてしまいそうな
(他のことに気をとられていれば気づかない、その程度の)
相手のちょっとした「昨日までと違うところ」
つい「気のせい」だと流してしまいそうなこと

そういったことを、やんわりと
心の片隅にメモしておけることが大切なのだと思う。
あいまいな違和感を、間に合わせで定義づけせず
あいまいなままで保留しておいて
相手と接しつづけること、とでも言えばいいのだろうか。


そうやって、何度か違和感と触れ合っているうちに
違和感の正体に気づくときが必ずくる。

人というのは基本的に、変化というものを嫌う生き物であるが、
何か起こったときに、より早くその変化に順応し
落ち着いて必要な手立てを打てるのだと思う。


いま、じいたんと日々接していて、
前の日記に書いたような変化をうれしく思う一方
こめかみの皮膚にぼんやりと、こういった違和感を感じることがある。

だからといってすぐ大騒ぎするというのではなく、
その場で手は出さずとも、見守る目は離さないようにすること
それがたぶん、わたしとじいたんを護ることになる

そんな気がするのだ。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは~。 (iso)
2006-06-13 23:32:31
 鋭い視点ですね。ちょっとした表情・しぐさ・行動…そこで見たこと・感じたことを大事にしたいなと思いました。

 

 利用者さんの側にいて思うのは、対する相手に気を使われる部分と、鋭利な自分という部分の大きさです。気を使って本音を隠す方、要求を通したい故に攻撃的になる方いろいろいらっしゃいます。何が今大事なのか、気をつけたらいいかを感じ取るために接したいです。

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isoさんへ (介護人たま)
2006-06-14 10:22:32
そうなんですよね。

遠慮する気持ちからの「だいじょうぶ」という言葉であったり、自尊心を護ろうとするが故の攻撃性であったり、…ふるまいの裏側に色々な気持ちや体調のよしあしが隠れていますよね。

漫然と傍にいるのではなく、ほんの少し意識するようにする(そしてそれを継続していく)ことが大切なのかなと思います。

時間がかかりますが、それにつぶされないように頑張っていきたいですね。
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はじめまして。 (elunar)
2006-06-14 12:42:23
こんにちは。はじめまして。

「違和感」の感覚。

私にも判ります。

あれ?いつもと違う。と言う感覚が、良い方向に動いているにせよ、悪い方向に動いているにせよ、いつもと何かが違うな?と言う感じ。



家の場合、介助者が何人かいるので、違う人が父の介護に関わると必ずちょっといつもと違うなぁって、感じがあります。

それも、違和感の一つなのかなぁ。



でも、日々の変化の点がいつか線になって、はじめて気が付く事もありますよね。



なんだか、温かいページですねぇ。(*^_^*)

良かったらリンクさせてください。

若いのに、優しくて温かい、たまさんが大好きになりました。

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elunarさま (介護人たま)
2006-06-14 15:18:50
はじめまして。コメントありがとうございます^^



>違う人が関わると

そういう違和感もありますよね。自分が介助しているときは見えないことが、人様がしている様子を見ると良くわかるって場合もあるでしょうし、色々やと思います。



>日々の変化の点がいつか線になって

ああ、すごくぴったりとした表現ですよね。点は集めないと線にならないから、点のデータを(それ一つでは何も判らなくても)覚えておくことが大事…みたいな。



リンクありがとうございます。こちらからもBlogPeopleに登録させていただきます。

それから四つ葉の記事をTBさせていただきましたのでご笑納ください。今後ともよろしくお願いいたします^^

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