じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

男性同士の友情のかたち。

2006-06-19 03:08:29 | 介護の周辺
先日の日曜日の朝のこと。

マンションで最近、じいたんと親しくなった男性が、
とても珍しい花をプレゼントしてくれた。

「奥様にぜひ一輪、持っていって差し上げてください」

手渡されたのは、ホタルブクロ。
ごく薄い紫が控えめに差す、やわらかな色合いが素敵だ。



その方は既に80歳前後だと思う。
弓道6段、剣道5段の腕前で、
袴姿の美しい立ち姿が遠めにもすがすがしい。
奥様はとうに亡くされ、
今はお一人で、じいたんと同じマンションで暮らしている。

きっと彼は、鍛錬のために行き来する道端で
この花を見つけたのだと思う。



何気ない気持ちで、少しばかりの危険を冒して
(ホタルブクロは、採りづらいところに自生していることが多い)
この花を数輪、手折ってきてくれたのだ。
妻を思う、じいたんのために。

道端で摘んできた珍しい花をさりげなく渡してくださる
そのお心が、うれしかった。




じいたんは手近にあった、きれいに洗った牛乳パックに
ホタルブクロを活けて、

「どうだい、お前さん。なかなかいい思い付きだろう」
と、すこぶる満足そうに笑った。


<参考>ホタルブクロ
http://contents.kids.yahoo.co.jp/zukan/plants/card/0602.html