じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

一文字一文字、いとおしむように。

2006-06-13 22:38:12 | じいたんばあたん
昨日、ばあたんに後見人をつける申立てを
伯父叔母と一緒にしに行った。

その際、夫であるじいたんの承諾書が必要とのことで、
夕方わたしは、叔母を送っていったあと
家裁から預かった書類を持って、
デイケアから帰ってきたじいたんを訪ねた。

今朝まで伯父が泊まっていて、
昨日などは叔母やバウちゃん(わたしの彼)も来て
にぎやかだったせいか、
今日のじいたんはなんだか、とっても朗らかで元気だ。


書類のことを説明して、サインしてねと言うと

「お前さん、傍で見ていてくれないかい。」

じいたんは、毎日日記(のようなメモ)を欠かさず書いている。
けれど最近になって、色々と書く欄があるそんな書類を書くときは、
少しばかり自信がないようだ。

じいたんの横に座る。
こんな、書類書きの作業でさえ最近は、
じいたんとわたしにとって、結構楽しみなひとときなのだ。


じいたんは、几帳面な人である。

この手の書類にサインするときは、えんぴつでまず下書きをし
その下書きをボールペンでなぞりながら清書して
最後に消しゴムをかけて仕上げる。

とても真剣な顔つきだ。

ここ1年くらいだろうか、
じいたんは字を書くとき手が震えるようになった。
ペンの先が、紙の上で随分と迷っている。

「これであっているかい、お前さん」

下書きの文字につられるのか
書き順が少し変だったり、字の形がおかしかったりもする。

それでも、とても丁寧に、
ゆっくりといとおしむように
じいたんは一文字一文字を大切に綴っていく。


そんなじいたんの姿こそが、いとおしい。