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シュロソウ

 植物の花の色はさまざまだが、黄、赤、青、紫、黒(完全な黒ではないが)の主要色素になっているのはアントシアニンとカロテノイド。クロユリ、クロバナロウバイ、クロバナハンショウヅルや黒いバラもアントシアニンによって黒っぽい色が発現している。
 一方、白い花には白い色素があるわけではなく、花弁の中に空気の泡がぎっしり詰まっていて、この泡が光を乱反射させて白く見せている。例えばクチナシの白い花弁を指で強く押してみると花弁の中にある空気が押し出されて透明になる。
 さて写真の黒っぽい花は「シュロソウ(棕櫚草)」。ユリ科シュロソウ属の多年草で背丈は50センチ程度。大きくなると1メートルを超えるものもあるようだ。花径は1センチほどで花被片は6枚。この花には高濃度のアントシアニン色素が多量にあるのだろう。シュロソウの名前は、葉が枯れても葉柄の繊維が残りシュロのように見えることから付けられているが、これは出来れば自分の目で確かめたい。
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奮闘記・29~五感

 日本経済新聞 “私の履歴書” で、マラソンランナーの君原健二さんが、こう語っている。
 『走るのがつらくなると、私は目標を小さくする。ゴールまでは遠すぎる。だからとりあえず、あと5キロ頑張ろうと、自分に言い聞かせる。それでもつらければ、あと1キロ頑張ろう、あの電柱まで、あと100メートルだけ頑張ろうと、目標を身近なところに置いて走った。肝心なのは最後まであきらめないこと。この考え方は1979年の公共広告機構の自殺防止キャンペーン “捨ててはいけない君の人生” のテレビCMでも紹介された。この広告で実際に自殺を思いとどまった若者がいたとあとで聞いた。』
 さて私だが、走っていて苦しくなると歩き出してしまうことが多々ある。しかしこの 『あと5キロ頑張ろう、あの電柱まで・・』 という気持ちは、実際に走っていて本当によくわかる。今度、もし歩きたくなったら、この言葉を思い出そう。
 さらに君原さんは、こう続けている。
 『競技者時代はマラソンを楽しい、面白いと感じたことはなかった。今は苦しみを伴うようなランニングはしない。ゆっくり走って五感でランニングを楽しむ。走りながら花や山を眺め、鳥のさえずりや波の音を聞く。おいしい空気を吸い、花や海の香りを味わう。そして人と触れ合う。その触れ合いが財産になる。』
 この心境は今の私のランニングに対する考え方そのもの。これを読むと、また週末に “五感” ランニングを楽しみたいという気持ちが沸いてくる。ウグイスの鳴き声も春先に比べればずいぶん上手になったし、セミも最後の力で鳴いている。カツラの葉が少し黄色くなり始め、甘い香りも漂ってきている。楽しみはたくさんある。
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ワレモコウ・1~有限花序

 松木日向緑地下の明るい草地に生えていた「ワレモコウ(吾亦紅・吾木香)」。バラ科ワレモコウ属の多年草で、小花が集まり長さ1センチほどの花穂を形成している。小花で花弁のように見えるものは萼片で、花弁は退化している。バラやサクラのように綺麗な花弁を持つ仲間達と比べると、ワレモコウは見た目ではとてもバラ科とは思えない。小花は花穂の先端のものから開き始め次第に下に向かっていく。植物学的にはこれを “有限花序” と呼ぶ。開花直後の萼片はピンク色だが、すぐに色褪せて濃紅色になる。写真では、花穂の上部の濃紅色が咲き終わった花で、中ほどに咲き始めたばかりのピンク色の小花が見え、下部にはこれから咲く蕾が確認できる。
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奮闘記・28~運動効果

 走っていると気分が良くなり頭がスッキリするということがある。 『ランニング中に仕事のアイデアが浮かぶ。』 というビジネスマンがいるようだが、私はさすがにランニング中に仕事のことは考えない。ブログ記事のちょっと気の利いた文章などが思い浮かぶことが確かにあるが、走り終える頃には文章が浮かんだことすら忘れているのが常で、相変わらず文章を磨くために頭をひねっている。
 走りが脳に作用して快感をもたらすのは、走ることで血中濃度が上がるβエンドルフィンが脳内で働き、気分を高揚させ “ランニングハイ” 状態を生み出すという仮説が有名。しかしこれはまだ立証されていない。ただこのβエンドルフィン仮説以外でも、運動で脳が活性化されることは様々な研究で認められている。
 脳科学実験のひとつで、前頭全野(大脳の前方部分)を検査するStroop課題というテストがある。これは書かれている文字が何色かを瞬時に答えていくもので、文字列は “あか” “あお” “みどり” という言葉だが、これが意地悪にも異なる色で書かれている。つまり “赤色” で書かれた “あお” という文字は、 “赤” と答えると正解になる。これを運動前と運動直後に実験すると、運動直後のほうが平均反応速度が50%上昇し、そしてこの時、前頭全野のなかで “ブロードマン46野” が非常に高く活性化することがわかっている。
 この46野は眉毛の上部、髪の生え際あたりで、 “AかBか” という対立する考えを区別する能力や、現在の行動が未来の結果にどう結びつくかを予測し判断する能力を司る “実行機能” がある。先日もこの46野についての効果に触れたが、鬱病や認知症、自閉症などでは、この “実行機能” が低下してしまうという報告があり、適度な運動は鬱病などの予防にも効果があるという仮説につながるわけだ。
 これからも植物観察を楽しみながら、ランニングで爽快な気分に浸っていきたいと思っている。写真は清水入緑地の山道。
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モミジガサ

 村上春樹氏の小説を好んで読んでいる。3年前に 『1Q84』(BOOK1~2) がベストセラーになり、続編(BOOK3)も面白かったが、彼は “走る小説家” としても有名で、エッセイの 『走ることについて語るときに僕の語ること』 では、彼の長距離レース体験や走ることについての想いが興味深く綴られている。そのタイトルは、レイモンド・カーヴァーの 『愛について語るときに我々の語ること』 をもじったものだが、このブログのランニング記事なら 『“植物を撮りながら” 走ることについて語るときに僕の語ること』 となるだろう。彼は昭和62年の 『ノルウェイの森』 のヒットで一躍有名になり、その後 、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』 『海辺のカフカ』 『ねじまき鳥クロニカル』 など次々に発表しているが、その平易な文章に誘導され、いつの間にか、いわゆる “村上ワールド” と呼ばれる不思議で難解な物語に引きずり込まれている。
 さて写真は “ねじまき” の姿がとても面白い「モミジガサ(紅葉笠)」。キク科コウモリソウ属の多年草で頭花はすべて筒状花で、花柱の先端が2裂して反り返る。葉がモミジ状に裂けることからその名が付けられている。

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