リューさん編に続く「ダンまち ファミリアクロニクル」の第2弾、フレイヤ編!
それにしても、なんでまた、いま、フレイヤ外伝?と疑問にも思うわけだけど。。。
ともあれ、とりあえず、スペース、空けときます。
実のところ、フレイヤ外伝よりも、本編、先に進めてほしいのだけど、というのが正直なところで、その結果、なかなか読み進められずにいたのだけど・・・
でも、読み終わって、はっきりわかった。
このフレイヤ編は、とにかく、最後の7ページのためだけに書かれたものだった、ということ。
都合300ページもあって、だったらこれだけで単行本で良かったんじゃね?と思いたくなってしまう、最初の「アリィと8人の眷属」にしても、続くオッタルのバックストーリーを扱った「最強の起源」にしても、そして、アランたち他のフレイヤ・ファミリアのトップ眷属のバックストーリーを簡潔に記した「それぞれの昔日」にしても、これら全部が全部、最後の7ページのためにあった、ということ。
それは、シルとフレイヤの出会いのエピソード。
そして、多分、その7ページから想像されるのは、きっと、今の(ベルくん登場以後の)オラリオにおけるフレイヤは、シルと入れ替わっている、ということ。
正確には、きっと、お互いの身体と魂を入れ替えているに違いないということ。
急いで付け加えると、そうはいっても、本作で書かれているのは、フレイヤとシルとの間で何かを交換したことが示唆されているだけのことで、それが身体と魂を巡るものとは決して明示されていない。
けれども、その記述の直後のシルの描写を見ると、これはきっと中身はフレイヤなんだろうなぁ、と思わずにはいられない。
そして、そう感づいた途端、あぁ、なるほど、この「シルとフレイヤの間での魂と身体の交換」のために書かれたのが、アリィ編の話だったんだ、と思ったのだった。
細かいことを言えば、シルとフレイヤの「入れ替わり」が果たして恒常的なものなのか、それとも何らかの条件付きのものなのかまではわからないけれど、でも、二人の間で身体と魂を入れ替えていることは、多分、間違いないと思う。
というか、そう考えると、なぜ、今、時間軸で言えば、ダンまち本編よりも前の、いわば前日譚にあたる「アリィと8人の仲間」が書かれなければならなかったか、その理由がわかるから。
要するに、「アリィ編」は、フレイヤが直接、自らの「伴侶」を得ようと思うと、最後には失敗してしまう、という、フレイヤからすれば苦い経験を記したものだったから。
簡単に言うと、「アリィと8人の眷属」は、もう、まんま完全に、カリ城(『カリオストロの城』)だから。
アリィがクラリスで、フレイヤがルパン3世wの。
有名なカリ城の最期のシーンにあった、
「奴はとんでもないものを盗んでいきました!」
「え?」
「あなたの心です!」
「はい!」
という銭形のとっつあんとクラリスのやり取りのような内容だった!、といえば通じるかな?
でも、大事なのは、アリィがフレイヤに心を盗まれた・・・というところではなく、実はクラリスへの思いがまんざらではなかったルパンが、自らクラリスの場を去らなければならなかったところ。
つまり、これもまた有名な、クラリスの「今はできないけど、泥棒なら、覚えます!」と必死にルパンに訴えた言葉と同じことを、アリィもフレイヤの眷属になることを最後に選ぼうとしたから。
でも、クラリスが泥棒になってはルパンが愛したクラリス「姫」はただの少女になってしまうのと同じように、フレイヤが惹かれるほどの魂の輝きをもっていたアリィ「王子」も、王子であることをやめてしまえばただの少女になってしまう。
それでは、ルパンにせよフレイヤにせよ、自分の存在が、クラリスやアリィの輝きを損ねてしまう。
だから、自分がいつまでも心惹かれる存在であってもらうためには、クラリスやアリィのもとから自分の方から去らねばならなかった。
惹かれた相手をいつまでも輝かしい存在にとどめておくために。
要するに、「アリィと8人の眷属」という物語は、フレイヤ視点で見れば、彼女が「伴侶を見つけようとした旅」の失敗談であり、そして、この経験からフレイヤが得たことは、彼女が惹かれてやまない「魂」を手に入れることは、決して叶わぬ夢ではないのか、ということだった。
なにしろ、アリィ編で再三再四強調されたように、「フレイヤが本気になって『魅了』を用いれば、全てが茶番になる」ことが定められているから。彼女の魅了は、発言させれば、相手の自由意志を根こそぎ奪うものだから。その意味で、文字通り、フレイヤの人形となってしまう。
フレイヤの魅了とは、ルルーシュのギアスのようなもので、まさに「王の力は孤独にする」のを地で行っているのが、フレイヤ、ということになる。
だから、彼女は、オッタルたちに対しては魅了を用いず、あくまでも彼らの自由意志に任せる立場を取る。それが、眷属たちにとっては、「フレイヤの寵愛を得る」という媚薬のような魅力になって、いつの間にか、オラリオ随一のファミリアにまで発展するのだけど、でも、フレイヤからすれば、そんな最強ファミリアを得ることには、多分、関心はなく、欲しいのは、あくまでも「伴侶」となる相手。
つまり、相手の魂の輝きを損なわずに、その上で相手も自由意志のもとで自分を選んでくれた、とフレイヤ自身と確信できるような相手、ということ。
今回の物語をみれば、フレイヤが何より嫌いなのは、人間の自由意志を奪う仕組みや存在であり、だからこそ、アリィたちを奴隷の身から解放することを選ぶし、ヘグニやヘディンを彼らの自由を束縛する「王国」から解放してしまう。
でも、それもこれも、魅了という困った能力をもつ自分を呪った、一種の自己嫌悪の表明に過ぎない。
要するに、フレイヤが望むのは、きっと、燃えるような「自由恋愛」なのだと思う。
それこそ、深窓の令嬢のような想い。
そして、そんな想いを抱えたまま、束縛から解放してあげては熱狂的な眷属を増やし、その力を携えて伴侶を探す旅にでたものの、結局、その相手たるアリィを望むがままに手に入れることもできなかった。
そんなアリィを巡る苦い経験を得たところで見つけたのがベルくんだった!、ということ。
だから、読んでいたときは、そこで、あぁ、この話はダンまち本編の前日譚だったんだな、というのがようやくわかったわけだけどw
ともあれ、そのような時に現れたのが、あろうことかフレイヤの存在のあり方が欲しいと告げるヒューマンの娘シルだった。
結局、390頁もあったこの外伝で一番驚かされたのは、このシルとの出会いを描いた最後の最後の7ページほどだったということ。
明確には書かれてはいないものの、シルがフレイヤに向かって告げた「あなたになりたい」という言葉に面白みを感じたフレイヤは、シルとの間で、魂と身体を取り替える取引を提案したんだと思う。
要するに、「入れ替え」。
シルがフレイヤとして振る舞い、フレイヤがシルとして振る舞う時間を持つ。
もちろん、その「入れ替え」の主導権はフレイヤが握っているのだろうけど。
フレイヤからすれば、自分が「町娘」として外界に降りることで、今回のアリィ編でさんざん語られた、「フレイヤが本気で魅了の力を用いればすべて茶番になる」という自分の強すぎる「神性」という属性から解放されたかったのではないか。
だったら、今回の外伝が、ベルくんを見つける前のフレイヤの話だった、というのも納得がいく。
だって、ベルくんが、仮にアリィ並の「伴侶」となるような魂の持ち主だったとしても、本巻で描かれたような、アリィに示したような「接し方」をしたら、きっとベルくんとの結末も、アリィと同じようなものになってしまう。
フレイヤが、本気で相手を欲しいと思ってしまったら、その瞬間に、相手は、自分の意志からではなく、フレイヤの権能という「外部からの強制力」によってフレイヤに「魅了」されてしまう。
でも、それでは、フレイヤが見初めた魂は手に入らない。
つまり、フレイヤは大きな矛盾を抱えている。
その矛盾から逃れるために、なんの神性の力を持たない人間の身体に自らの魂を移すことができれば、仮にフレイヤが(シルという人間の身体を通じて)どれだけベルくんに好意を示したところで、そこには「魅了」の権能は発現しない、それゆえ、一番近い特等席から、ベルくんの魂の輝きが増す過程を眺めることができる。ときには、その手助けすらすることができる。
これは、「アリィ伴侶化計画」の失敗を通じて挫折を経験したフレイヤからすれば、願ったり叶ったりの状況ではないか。
あくまでも「町娘」として、人間の力でできる範囲のことで、精一杯、ベルくんのサポートをする。
要するに、今回の「外伝フレイヤ編」で描かれたことは、ダンまち本編が、フレイヤ視点で見た時「フレイヤの伴侶発見計画・第2弾」であることを「示唆する」ためのものだった。
そういう意味で、本作の物語はすべて、最後のシルとの出会いと、おそらくその時交わした誓約のためのものだった、ということ。
アリィ編は、まさに計画半ばで頓挫した「フレイヤの伴侶発見計画・第1弾」。
続くオッタルの最強伝説では、彼のバックストーリーとして、オッタルがレベル7の猛者に至った過程を描き、その勢いでアレンをはじめとした他のフレイヤ・ファミリアの一級冒険者についても、ダイジェスト版のバックストーリーが示される流れを、極めて自然のものに感じさせながら、しかし、最後の最後で「シルトの出会い」という爆弾を落としてきた。
本命は、あくまでも最後に出てきたシルだった。
だから、最後に、ベルくんに向けたお弁当を作ろうとプンスカしながら健闘するシルは、実は中身はフレイヤなんだよ。だから、フレイヤの眷属に「護衛」を気にさせ、「シル様」とかわざわざ呼ばさせていたわけで。。。
有り体に言えば、フレイヤ様は、ただの「自由な」人間になることを望んでいた。
だから、一種の「人魚姫」みたいなものだよね。
ひとりの町娘として、人間の輝く心に触れたい。その心が成長する過程を目の当たりにしたい。
うーん。
でもこう書いてきて思ったけど、そうすると、シルとフレイヤの魂の入れ替わりは多分、条件付きではなく、恒常的なものだよね。
そういう意味では、ダンまち本編が始まったときから、フレイヤ様の中の人は、実はシルだった、ということだよね。
で、そのシルが、もはや自分が人間であったことを忘れるくらい、完璧にフレイヤを演じてみせている、というわけで。一種の影武者。
ただし、現在シルの中にいるフレイヤの魂の願いは絶対に叶えるつもりであると。
だからこそ、フレイヤ(魂はシル)の隣には、お目付け役のオッタルが控え、地上に降りたシル(魂はフレイヤ)の護衛には常にアレンがついている、ということになるわけだ。
それなら、シルが、ミア母さんの下で給仕をしているの理解できるし。
だって、ミアのそばなら何よりも安全なわけでw
うむ。納得納得。
うん、きっと、今のシルは、中身はフレイヤで、そのフレイヤ様がずっと、ベルくんのことをこっそり期待した目で思慕し続けているんだよ。
さすがは戦いの神、魅了の神。
ヘスティアが素でやっていることを、シルという身体を得ることで、魅了の権能から解放されることで初めて行うことができた。
となると、この「シル(中身はフレイヤ)」は、今後、どういう形でベルくんの冒険に、本気で絡んでくるのだろう?
もはや、町娘なんて、いってられなくなるね。
で、あとちょっとだけ。
前巻のリューさん編もそうだったけど、外伝は、だいたい、本編の進行を加速するために必要な背景情報や設定を先見せする機会になっている。
今回で言えば、オッタルの過去話を聞かされているうちに、かつての「最強」であったゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアが、今のオッタルから見ても規格外の集団であったことが明かされた。
なにしろかつてはレベル9やレベル10の猛者がいたのだから。
正直、このパワーインフレがいいのかどうかは悩ましいところだけど、これで、ベルくんの目標も、アイズやオッタルではなく、かつてのゼウス/ヘラ・ファミリアのトップランカー級ということになった。
もはやレベル5とかレベル6とかで驚いている場合ではない、ということ。
ということで、多分、本編では近々、ベルくんのランクアップ、それも二階級特進の、いきなりレベル6、という展開もありだな―、と思った。
だって、それでも、まだレベル9やレベル10の道は遠いのだからw
それから、アリィだけど、今後は、もしかしたら、オラリオの冒険者達を外部に召喚するための役を果たすのかもね。
つまり、本格的に黒竜が現れて・・・という事態。
アリィが今回感じたように、外から見れば、オラリオの上級冒険者は、一騎当千どころか一騎当万の、危険極まりない「戦略兵器」に該当するので、その彼らをダンジョンが抑止力として押さえつけている。
その行使の要請を行う核になるのがアリィなんじゃないかな。
もっとも、ダンジョンをそのような抑止力として使っているのは多分、ウラノスなのだろうけど。
それもきっと、ゼウスとヘラとの間の、同じギリシア神話の神のよしみでの計画だったんだろうな。
そういう意味では、ゼウス/ヘラ・ファミリアなき後の最強ファミリアが、フレイヤ/ロキ・ファミリアという、北欧神話の神の率いるファミリアというのは、意味深なのかもしれない。
なんたって、竜殺しといえば、やはり北欧神話、ゲルマン神話だからねw
ということで、思いの外、このフレイヤ外伝、内容が濃く、今後の本編とも大いに関わる設定バレのものだったことがわかった。
それにしても、この作者、ミスディレクションの掛け方が3重掛けとか4重掛けとかだから困るw
まあ、そこが魅力でもあるんだけどね。執筆意図が常に隠されているというw
終わってみれば、大満足。
(最後の7ページまでは退屈だったと思っていたのは、ご愛嬌w)
ということで、とにかく、本編の新作を早く!
この感じだと、4月か5月くらいなのかなぁ。。。
それにしても、なんでまた、いま、フレイヤ外伝?と疑問にも思うわけだけど。。。
ともあれ、とりあえず、スペース、空けときます。
実のところ、フレイヤ外伝よりも、本編、先に進めてほしいのだけど、というのが正直なところで、その結果、なかなか読み進められずにいたのだけど・・・
でも、読み終わって、はっきりわかった。
このフレイヤ編は、とにかく、最後の7ページのためだけに書かれたものだった、ということ。
都合300ページもあって、だったらこれだけで単行本で良かったんじゃね?と思いたくなってしまう、最初の「アリィと8人の眷属」にしても、続くオッタルのバックストーリーを扱った「最強の起源」にしても、そして、アランたち他のフレイヤ・ファミリアのトップ眷属のバックストーリーを簡潔に記した「それぞれの昔日」にしても、これら全部が全部、最後の7ページのためにあった、ということ。
それは、シルとフレイヤの出会いのエピソード。
そして、多分、その7ページから想像されるのは、きっと、今の(ベルくん登場以後の)オラリオにおけるフレイヤは、シルと入れ替わっている、ということ。
正確には、きっと、お互いの身体と魂を入れ替えているに違いないということ。
急いで付け加えると、そうはいっても、本作で書かれているのは、フレイヤとシルとの間で何かを交換したことが示唆されているだけのことで、それが身体と魂を巡るものとは決して明示されていない。
けれども、その記述の直後のシルの描写を見ると、これはきっと中身はフレイヤなんだろうなぁ、と思わずにはいられない。
そして、そう感づいた途端、あぁ、なるほど、この「シルとフレイヤの間での魂と身体の交換」のために書かれたのが、アリィ編の話だったんだ、と思ったのだった。
細かいことを言えば、シルとフレイヤの「入れ替わり」が果たして恒常的なものなのか、それとも何らかの条件付きのものなのかまではわからないけれど、でも、二人の間で身体と魂を入れ替えていることは、多分、間違いないと思う。
というか、そう考えると、なぜ、今、時間軸で言えば、ダンまち本編よりも前の、いわば前日譚にあたる「アリィと8人の仲間」が書かれなければならなかったか、その理由がわかるから。
要するに、「アリィ編」は、フレイヤが直接、自らの「伴侶」を得ようと思うと、最後には失敗してしまう、という、フレイヤからすれば苦い経験を記したものだったから。
簡単に言うと、「アリィと8人の眷属」は、もう、まんま完全に、カリ城(『カリオストロの城』)だから。
アリィがクラリスで、フレイヤがルパン3世wの。
有名なカリ城の最期のシーンにあった、
「奴はとんでもないものを盗んでいきました!」
「え?」
「あなたの心です!」
「はい!」
という銭形のとっつあんとクラリスのやり取りのような内容だった!、といえば通じるかな?
でも、大事なのは、アリィがフレイヤに心を盗まれた・・・というところではなく、実はクラリスへの思いがまんざらではなかったルパンが、自らクラリスの場を去らなければならなかったところ。
つまり、これもまた有名な、クラリスの「今はできないけど、泥棒なら、覚えます!」と必死にルパンに訴えた言葉と同じことを、アリィもフレイヤの眷属になることを最後に選ぼうとしたから。
でも、クラリスが泥棒になってはルパンが愛したクラリス「姫」はただの少女になってしまうのと同じように、フレイヤが惹かれるほどの魂の輝きをもっていたアリィ「王子」も、王子であることをやめてしまえばただの少女になってしまう。
それでは、ルパンにせよフレイヤにせよ、自分の存在が、クラリスやアリィの輝きを損ねてしまう。
だから、自分がいつまでも心惹かれる存在であってもらうためには、クラリスやアリィのもとから自分の方から去らねばならなかった。
惹かれた相手をいつまでも輝かしい存在にとどめておくために。
要するに、「アリィと8人の眷属」という物語は、フレイヤ視点で見れば、彼女が「伴侶を見つけようとした旅」の失敗談であり、そして、この経験からフレイヤが得たことは、彼女が惹かれてやまない「魂」を手に入れることは、決して叶わぬ夢ではないのか、ということだった。
なにしろ、アリィ編で再三再四強調されたように、「フレイヤが本気になって『魅了』を用いれば、全てが茶番になる」ことが定められているから。彼女の魅了は、発言させれば、相手の自由意志を根こそぎ奪うものだから。その意味で、文字通り、フレイヤの人形となってしまう。
フレイヤの魅了とは、ルルーシュのギアスのようなもので、まさに「王の力は孤独にする」のを地で行っているのが、フレイヤ、ということになる。
だから、彼女は、オッタルたちに対しては魅了を用いず、あくまでも彼らの自由意志に任せる立場を取る。それが、眷属たちにとっては、「フレイヤの寵愛を得る」という媚薬のような魅力になって、いつの間にか、オラリオ随一のファミリアにまで発展するのだけど、でも、フレイヤからすれば、そんな最強ファミリアを得ることには、多分、関心はなく、欲しいのは、あくまでも「伴侶」となる相手。
つまり、相手の魂の輝きを損なわずに、その上で相手も自由意志のもとで自分を選んでくれた、とフレイヤ自身と確信できるような相手、ということ。
今回の物語をみれば、フレイヤが何より嫌いなのは、人間の自由意志を奪う仕組みや存在であり、だからこそ、アリィたちを奴隷の身から解放することを選ぶし、ヘグニやヘディンを彼らの自由を束縛する「王国」から解放してしまう。
でも、それもこれも、魅了という困った能力をもつ自分を呪った、一種の自己嫌悪の表明に過ぎない。
要するに、フレイヤが望むのは、きっと、燃えるような「自由恋愛」なのだと思う。
それこそ、深窓の令嬢のような想い。
そして、そんな想いを抱えたまま、束縛から解放してあげては熱狂的な眷属を増やし、その力を携えて伴侶を探す旅にでたものの、結局、その相手たるアリィを望むがままに手に入れることもできなかった。
そんなアリィを巡る苦い経験を得たところで見つけたのがベルくんだった!、ということ。
だから、読んでいたときは、そこで、あぁ、この話はダンまち本編の前日譚だったんだな、というのがようやくわかったわけだけどw
ともあれ、そのような時に現れたのが、あろうことかフレイヤの存在のあり方が欲しいと告げるヒューマンの娘シルだった。
結局、390頁もあったこの外伝で一番驚かされたのは、このシルとの出会いを描いた最後の最後の7ページほどだったということ。
明確には書かれてはいないものの、シルがフレイヤに向かって告げた「あなたになりたい」という言葉に面白みを感じたフレイヤは、シルとの間で、魂と身体を取り替える取引を提案したんだと思う。
要するに、「入れ替え」。
シルがフレイヤとして振る舞い、フレイヤがシルとして振る舞う時間を持つ。
もちろん、その「入れ替え」の主導権はフレイヤが握っているのだろうけど。
フレイヤからすれば、自分が「町娘」として外界に降りることで、今回のアリィ編でさんざん語られた、「フレイヤが本気で魅了の力を用いればすべて茶番になる」という自分の強すぎる「神性」という属性から解放されたかったのではないか。
だったら、今回の外伝が、ベルくんを見つける前のフレイヤの話だった、というのも納得がいく。
だって、ベルくんが、仮にアリィ並の「伴侶」となるような魂の持ち主だったとしても、本巻で描かれたような、アリィに示したような「接し方」をしたら、きっとベルくんとの結末も、アリィと同じようなものになってしまう。
フレイヤが、本気で相手を欲しいと思ってしまったら、その瞬間に、相手は、自分の意志からではなく、フレイヤの権能という「外部からの強制力」によってフレイヤに「魅了」されてしまう。
でも、それでは、フレイヤが見初めた魂は手に入らない。
つまり、フレイヤは大きな矛盾を抱えている。
その矛盾から逃れるために、なんの神性の力を持たない人間の身体に自らの魂を移すことができれば、仮にフレイヤが(シルという人間の身体を通じて)どれだけベルくんに好意を示したところで、そこには「魅了」の権能は発現しない、それゆえ、一番近い特等席から、ベルくんの魂の輝きが増す過程を眺めることができる。ときには、その手助けすらすることができる。
これは、「アリィ伴侶化計画」の失敗を通じて挫折を経験したフレイヤからすれば、願ったり叶ったりの状況ではないか。
あくまでも「町娘」として、人間の力でできる範囲のことで、精一杯、ベルくんのサポートをする。
要するに、今回の「外伝フレイヤ編」で描かれたことは、ダンまち本編が、フレイヤ視点で見た時「フレイヤの伴侶発見計画・第2弾」であることを「示唆する」ためのものだった。
そういう意味で、本作の物語はすべて、最後のシルとの出会いと、おそらくその時交わした誓約のためのものだった、ということ。
アリィ編は、まさに計画半ばで頓挫した「フレイヤの伴侶発見計画・第1弾」。
続くオッタルの最強伝説では、彼のバックストーリーとして、オッタルがレベル7の猛者に至った過程を描き、その勢いでアレンをはじめとした他のフレイヤ・ファミリアの一級冒険者についても、ダイジェスト版のバックストーリーが示される流れを、極めて自然のものに感じさせながら、しかし、最後の最後で「シルトの出会い」という爆弾を落としてきた。
本命は、あくまでも最後に出てきたシルだった。
だから、最後に、ベルくんに向けたお弁当を作ろうとプンスカしながら健闘するシルは、実は中身はフレイヤなんだよ。だから、フレイヤの眷属に「護衛」を気にさせ、「シル様」とかわざわざ呼ばさせていたわけで。。。
有り体に言えば、フレイヤ様は、ただの「自由な」人間になることを望んでいた。
だから、一種の「人魚姫」みたいなものだよね。
ひとりの町娘として、人間の輝く心に触れたい。その心が成長する過程を目の当たりにしたい。
うーん。
でもこう書いてきて思ったけど、そうすると、シルとフレイヤの魂の入れ替わりは多分、条件付きではなく、恒常的なものだよね。
そういう意味では、ダンまち本編が始まったときから、フレイヤ様の中の人は、実はシルだった、ということだよね。
で、そのシルが、もはや自分が人間であったことを忘れるくらい、完璧にフレイヤを演じてみせている、というわけで。一種の影武者。
ただし、現在シルの中にいるフレイヤの魂の願いは絶対に叶えるつもりであると。
だからこそ、フレイヤ(魂はシル)の隣には、お目付け役のオッタルが控え、地上に降りたシル(魂はフレイヤ)の護衛には常にアレンがついている、ということになるわけだ。
それなら、シルが、ミア母さんの下で給仕をしているの理解できるし。
だって、ミアのそばなら何よりも安全なわけでw
うむ。納得納得。
うん、きっと、今のシルは、中身はフレイヤで、そのフレイヤ様がずっと、ベルくんのことをこっそり期待した目で思慕し続けているんだよ。
さすがは戦いの神、魅了の神。
ヘスティアが素でやっていることを、シルという身体を得ることで、魅了の権能から解放されることで初めて行うことができた。
となると、この「シル(中身はフレイヤ)」は、今後、どういう形でベルくんの冒険に、本気で絡んでくるのだろう?
もはや、町娘なんて、いってられなくなるね。
で、あとちょっとだけ。
前巻のリューさん編もそうだったけど、外伝は、だいたい、本編の進行を加速するために必要な背景情報や設定を先見せする機会になっている。
今回で言えば、オッタルの過去話を聞かされているうちに、かつての「最強」であったゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアが、今のオッタルから見ても規格外の集団であったことが明かされた。
なにしろかつてはレベル9やレベル10の猛者がいたのだから。
正直、このパワーインフレがいいのかどうかは悩ましいところだけど、これで、ベルくんの目標も、アイズやオッタルではなく、かつてのゼウス/ヘラ・ファミリアのトップランカー級ということになった。
もはやレベル5とかレベル6とかで驚いている場合ではない、ということ。
ということで、多分、本編では近々、ベルくんのランクアップ、それも二階級特進の、いきなりレベル6、という展開もありだな―、と思った。
だって、それでも、まだレベル9やレベル10の道は遠いのだからw
それから、アリィだけど、今後は、もしかしたら、オラリオの冒険者達を外部に召喚するための役を果たすのかもね。
つまり、本格的に黒竜が現れて・・・という事態。
アリィが今回感じたように、外から見れば、オラリオの上級冒険者は、一騎当千どころか一騎当万の、危険極まりない「戦略兵器」に該当するので、その彼らをダンジョンが抑止力として押さえつけている。
その行使の要請を行う核になるのがアリィなんじゃないかな。
もっとも、ダンジョンをそのような抑止力として使っているのは多分、ウラノスなのだろうけど。
それもきっと、ゼウスとヘラとの間の、同じギリシア神話の神のよしみでの計画だったんだろうな。
そういう意味では、ゼウス/ヘラ・ファミリアなき後の最強ファミリアが、フレイヤ/ロキ・ファミリアという、北欧神話の神の率いるファミリアというのは、意味深なのかもしれない。
なんたって、竜殺しといえば、やはり北欧神話、ゲルマン神話だからねw
ということで、思いの外、このフレイヤ外伝、内容が濃く、今後の本編とも大いに関わる設定バレのものだったことがわかった。
それにしても、この作者、ミスディレクションの掛け方が3重掛けとか4重掛けとかだから困るw
まあ、そこが魅力でもあるんだけどね。執筆意図が常に隠されているというw
終わってみれば、大満足。
(最後の7ページまでは退屈だったと思っていたのは、ご愛嬌w)
ということで、とにかく、本編の新作を早く!
この感じだと、4月か5月くらいなのかなぁ。。。