BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

絶園のテンペスト 第24幕 『それぞれの物語』

2013-03-30 10:24:53 | 絶園のテンペスト
気持ちのいい最終回。
綺麗なエンディング。
こういう話はやっぱり好きだなー。

多分、一般的には、これすげー!って評価は得られないのだろうけど、物語をネタにせずに、最後までちゃんと物語として完結させた姿勢は素晴らしい。

評価が別れるところは、多分、当初巨大な謎として立ち現れていた「はじまり/絶園の木/魔法使い」というのが、なんか神というか、外宇宙からの使者のような設定で有耶無耶にされてしまったところで、こういうところはガチに中二病的な人たちはがっかりするんだろうな、と思ったりする。

実際、最後に、羽村が召喚した「絶園の剣」なんて、もう、ご都合主義的なチート技でしかないわけでw

というか、羽村はかわいそうなくらい損な役回りだったので、あれくらいのチート感でごまかすのは必然だったんだろうけど。

でも、この物語は前に書いたとおり、結局のところ、ハムレットとテンペストを元にした、愛花による二次創作なんだよね。
とにかく、いろいろ超常現象があって悲劇も起こるけど、最後には皆が幸せになったと思えるお話。

そういう意味で、真広が言うように、愛花がこの物語の振付をしていた。

で、綺麗な幕切れだな、と思ったのは、その愛花が書いたシナリオを書き換えるという意気込みを真広がきちんと述べた後で、吉野と葉風の再会に続いたところ。

下手をすると、事件の解決後、葉風と吉野が付き合い始めることまで、愛花のシナリオの上にあったことのように思えてしまったら、吉野だけでなく、見ている側も、葉風は不幸だな、と思ってしまうから。

その葉風の恋心の扱いの部分は、彼女が過去に飛んで愛花と話した辺りから気になっていたことだったので、そこは、上手く、一旦区切りをつけて次のステップにいけてよかったな、と。

そういう意味で、この物語の主人公は、真広だよね。

まぁ、これも兄妹の関係があるから、主人公は皆の振り付けをする愛花/真広、ということなのだろうけど。

でも、これも、大元のテンペストがシェイクスピア自身の演劇観についての物語だった、という解釈からも理解できるところで。

今風に言えば、愛花/真広は、プレイヤーでありながらゲームマスターであった、ということ。ただし、その全能感を全面に出したら、物語として成立しないから、愛花は物語の冒頭で死ぬしかなかったし、真広は彼女の復讐が動機で動いているような描写が必要だった。そう思うんだよね。

大体、葉風と吉野を結びつけたのも、真広だしね。

というか、やっぱりこの物語の最大のご都合主義は、真広が葉風の瓶詰メッセージを見つけてしまったというところでw ここの都合の良さを冒頭のくろがね病の惨劇の描写で不問にしたところが、構成的にはうまかったと思う。

だから、第1クールの話と第2クールの話が文字通り、第一幕、第二幕のように、がらっと脈絡が変わったようになってしまったわけで。

個人的には、この転調は好きだったけど、上に書いたとおり、第2クールに入ってからのラブコメテイストにあれ?と思った人も多かったのだろうな、と思う。

でも、この作品は、魔法とか異世界からの襲撃とか、そういうのは主題でなく、ただの「舞台」にすぎない。

その上で、愛花/真広を中心にして、様々な人たちが愛憎入り交じってやり取りしながら、それぞれ大事なものが何であるかを再発見していく物語。

なかでも、葉風が恋を見つける物語。
そして、そのことで、吉野が救済される物語。

だから、主人公は真広、ということになる。

てか、真広、いい男過ぎるよねw?

いい意味で堅実で合理的で、でも超人系。
こういう男子キャラはいいね。
もうホント、一部のラノベにあるようなウジウジした男子が主人公の話は勘弁してほしいと常々思っているので、この真広のようなキャラはいい。
もちろん、吉野も良かったけど。

それにしても、最後の愛花のメッセージはやられたw
そして、このメッセージを語らせるために、CVは花澤さんにしたんだな、と思った。
真広と吉野に対して終始ツンでいたのが、最後に、ちょっとだけデレてみせる。
そういう慈愛感の表現には花澤ボイスはあってた。
一人の役者としてね。

そして、その愛花の向こうを張る葉風のCVが沢城さんだったのもマジでよかった。
この人の「演技」がなければ、第1クールの孤島にいる葉風と、第2クールで吉野を追いかける葉風とを演じ分けることはできなかったと思
う。
基本、吉野は唐変木系のキャラwだから、ラブコメテイストの多くは、葉風の言動で表現されていたわけだから。

前に書いたように、この話がシェイクスピア的な「演劇」であるなら、舞台に立つ俳優にも花がなければならない。その花としてこの二人は別格だった。

そして、その脇を固める人たちもよかった。
正直なところ、梶ボイスはベースが甘すぎるのであまり好きではないんだけど、羽村については、そのウジウジ感からヒーロー役への転換を含めてはまり役だったと思う。

あるいは、フロイライン山本についても。この人、一体何者?って最後まで思わせられたけど、第2クールに入って、真広と吉野に焦点があたるようになったことを受けて、語り部役になっていて、そこで超然としている水樹ボイスは合っていた。

あとは左門を始めバイプレーヤーはたくさんいるわけだけど、彼らの芝居もよかった。

ホント、この作品は超優秀な佳作だと思う。

ボンズは、こういう原作付きのものを映像化するときのほうが安定するね。
神のような異世界人のような存在が災厄をもたらしてしまった、それをみんなで解決するという意味では、最近だったらAOとかもそうだったわけだけど、出来は多分、1億対1くらいの差で、このテンペストのほうが良かったから。

こういう作品を安定の映像クオリティで引き続き見せてほしいな。

ということで、『絶園のテンペスト』、面白かった!

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絶園のテンペスト 第20幕 『フーダニット(誰がやったか)』

2013-03-02 09:41:31 | 絶園のテンペスト
あー、やっぱり、そう来たか。
愛花が絶園の魔法使い。

とはいえ、これは今までの展開からすれば十中八九そうだろうと思っていたので驚かない。
それに、前回も書いたように、この話が文字通り、テンペスト(とハムレット)を下敷きにしているなら、今、現実の時間で吉野を慕っている葉風と愛花がマッチアップしないと、悲劇にも喜劇にもならないからね。

となると、愛花の死については、愛花自身の自害か、葉風による殺害か、二つに一つ。

・・・なのだけど、今回の愛花の「私にとって都合の良い展開・・・云々」のセリフからすれば、やっぱり愛花の自害なんだろうね。

だって、そうでないと、愛花の死をきっかけに、真広を介して吉野と葉風が繋がらないから。既に、絶園の魔法使いと名乗った愛花であるならば、ここのところフライラインが述べていた、始まりの木と絶園の木の関係や、それらと人類の関わり方についても、彼女なりの理解があったと考える方が妥当だよね。

そして、再三再四、愛花が、ハムレットではなくテンペストを強調していたのなら、放っておけばハムレットのように悲劇に向かってしまうシナリオを、無理やりねじ曲げてテンペスト的展開にするために、自害を選択することで、始まりの木が登場以後の世界で、真広と吉野に躊躇なく行動する動機を与えた、ってことなのだろう。

というか、真広が葉風を知るようになるきっかけ自体も愛花が仕組んだことなのだろうな。

まぁ、そうして本来の絶園の魔法使いが消えたところで、その力がどうして他の人に継承されたのか、は不明なところだけど、そこにも何らかの計らいがあるのかもしれない。

それに、こうなると、フロイラインの役割も際立ってくる。

次回そういう話になるのだろうけど、愛花は葉風の力量を戦いの中で計ったところで、彼女が絶縁の木の真意を葉風に告げて、簡単に言うと、愛する吉野と真広が生き残れる世界を用意するために、葉風と取引をして、自害を決行するのだろう。

でも、きっと、その話を葉風は今の時代に戻ってもそのまま真広や吉野に伝えられない。で、そこでいろいろと悶々とした動きがあるところを、「女心としては・・・」なんて講釈を垂れることで、葉風の真意、そして愛花の真意を、視聴者に伝える語り部の役割をフライラインが果たすんだろうね。

だって、もう、葉風、真広、吉野、以外は、基本的にその他大勢の脇役だから。
なにしろ、関係者一同が既に同じ屋根の下にいるわけだからw

ということで、いい意味で、岡田麿里的展開でここからのラストスパートで示されるといいなぁ。

にしても、この物語がマジでシェイクスピアをなぞった演劇展開になるってわかったところから、作中のキャラだけでなく、それを演じているCVの人たちの存在感が大事だ、ということに気がついた。

で、そう考えると、葉風=沢城みゆき、愛花=花澤香菜、という配役がいかにこの終盤で重要か、ってことに気づいた。二人の大物感、が締めには大事、ってことだよね。

いや、正直、序盤というか1クール目の頃は、どうしてこの二人をキャスティングしたのか、疑問だった。特に花澤さん。だって、愛花って物語にどう絡むのか、よくわからない。そもそも物語時間では既に死去しているわけで。

しかし、それが、最後の最後で、葉風とのマッチアップとして存命中の愛花が登場し、しかも、その時点で、葉風は愛花亡き後の世界で吉野を思慕している、という構図で相対するのだから。この終盤があればこそのキャスティングだったわけで。

そういう意味でも演劇的。

いやー、途中どうなるかと思ったけど、これはいいお話になりそうで、ホント、ラストスパートが楽しみだよ。

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絶園のテンペスト 第19幕 『願ったものは』

2013-02-27 16:59:58 | 絶園のテンペスト
ちょっと遅れ気味のアップだけど、大事なエピソードだったと思うので、ちょっと書いてみる。

で、これは、ホントに、演劇を見てると思うべきだ、と思ってきた。
しかも、本当にシェイクスピアを、つまり、ハムレットとテンペストを想定しながら。

正直なところ、もはや、はじまりの木、とか、絶園の魔法使い、とか、そういう設定はどうでもいい。これらは、あくまでも現代の環境で、シェイクスピアを模した舞台劇を演じようと思ったらどうするか―――そのために必要な「舞台仕掛け」に過ぎない。

大体、テンペストにしたって、いきなりプロスペローが島に飛ばされてそこで魔法使いになって・・・、という話で、シェイクスピアの時代にしたって目が点になるような設定なわけだから。

なので、この物語は、葉風のセリフではないけど、正しく「ラブコメなのかー!」という気持ちで見ればいい。

それも、吉野、真広、愛花、の三人の関係を巡る話として。

気になるのは、物語の開始当初から死者となっている愛花に対して、葉風がどういう他立場を取るのかということ。葉風がただのトリックスターとして吉野・真広の二人を物語の進行上必要な「魔法の世界」に繋ぎ止めるためにあるだけなのか。
それとも、愛花に代わって、吉野と真広の間に割って入る役割をするのか。
もっといえば、愛花に代わって吉野の恋人の場所を占めることができるのかどうか。
そのあたりが物語的には核心になるのだろうな。

だって、もう話の流れから言ったら、愛花が死んだのは自殺、つまり、自作自演でしかないでしょ。彼女が、始まりの木や絶園の魔法使いといった物語の設定とどう関わっているのかはわからないけど。いや、まぁ、多分、大きく関わっているのだろうけど。

そうした真実は、単に、残された吉野たちの物語を進めるための事件でしかない。

多分、次回、葉風がタイムスリップして、過去の愛花がまだ生きている時間に戻って、愛花の死の場面を目撃するなり、その真相を掴むのだろうけど。

でも、それ自体はもうどうでもいいこと。

だって、これ、シェイクスピアを模したラブコメだからw

そう思って見直すと、後半になってからの羽村の登場や、前半中盤の潤一郎の登場も、一つ一つの物語の場面を前に進めるための鍵として現れたのがわかるので、文字通り、演劇的。

フロイライン山本とか、大人連中も、なんかこいつら必要あるのか―、と思っていたけど、今回の、吉野と真広の和解以降の場面で、彼らのやり取りを脇から優しい目で見続けるのを見て、あー、この人たちは、主人公たちの動きを見続ける観客の役割でもあるのだな、と思って妙に納得した。

うん、この話は、いい話だよ。
思い切り手の込んだラブコメ。
でも、一時あったセカイ系のように、世界の命運とそのラブが直結してるわけではない。

いや、直結はしているのだけど、でも、それらがゼロサムになっていない。

というか、多分、ゼロサムになっているのがセカイ系、すなわち、ハムレットで、ゼロサムになっていないのがテンペスト。愛花いうところの、皆が全てハッピーになって終幕するプロット。

だから、この物語はどこか清々しい。

で、こういう時思うけど、ホント、大人がちゃんと出るアニメは良作が多いね。

もう学園モノとかハーレムモノとか萌えモノとか、いい加減供給過剰で、視聴者にも飽きられてきているんだから、そういうのはやめて、ちゃんと大人が出て子供がいる話を作っていった方がいいと思う。アニメってもう真性オタクや子供のためだけでは事業としても立ち行かないはずだから。

ともあれ、次回以降、クライマックスに向けた展開は楽しみだ。

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絶園のテンペスト 第十幕 『タイムマシンの作り方』

2012-12-09 18:07:29 | 絶園のテンペスト
前回の引きから続く、吉野、真弘、葉風、左門、の間の心理戦。
単純にこれは面白かった。
もちろん、左門のテンパリ具合が最高なのだがw

しかし、テンペストかぁ、
シェイクスピアをうまく使ってくるね。
だから、第十幕という具合に「幕」なわけね。

これって、ガンガン連載なんだよね。
原作は未読だけど、お話としては面白い。

というか、前回から急速に面白くなってきている。

吉野が曲者であることはうすうす感づいていたけど、
これだけハッタリをかませるとはね。
そして、そのハッタリで周りを動かして、情勢を優位に変える。
場合によると、相手に必要な情報を吐かせるところまでいく。

いいなぁ、コン・ゲームで。
こういうのは好き。

もっともタイトルの「タイムマシンの作り方」はスルーされたままで終わってしまったけどw

でも、葉風が立ち直ったから、それでオッケーというのがいい。

ゲームの勝敗はプレイヤーの覇気や意気に掛かっている、というのはいい。

あと、構成的には、一見蛇足に見えるけど、エヴァンジェリンの戦いもね。
どうでもいい内容だけど、
ただ、吉野たちの膠着状態を側面から表現するものとしても機能していて。

なんというか、吉野と真弘たちの、極めて「個人的な」動機だけで、公の危機を左右しようという、ある意味で、選ばれた人間が世界の命運を決する、という流れを作る一方で、周りの者達は者達で、それなりに何とか事態を打開しようと励んでいる。

で、多分、この、一見バラバラなシーンもいずれ収束するのだろうな。

そういう期待を何となく抱かせるところが、演劇的でいい。

ということで、このテンペストは、俄然、盛り上がってきた。

同じタイミングで始まった『K』が、当初の思わせぶりな状況を脱して物語の収束に向かった途端、とても退屈でありきたりの話になってきているのと対称的。

さて、次回、葉風は、吉野たちの前に現れるのだろうか?
あと、真弘妹の役割もそろそろ明らかにしてほしいなぁ。

ハムレットではなくテンペストである理由、というか、そのセリフも含めて。

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