パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

新国立劇場の「神々の黄昏」

2017年10月06日 08時21分30秒 | 見てきた、聴いてきた(展示会・映画と音楽)

「ラインの黄金」から一年後の去年の秋は「ワルキューレ」
そのまた一年後の今年の夏は「ジークフリート」
そして、その数ヶ月あとの「神々の黄昏」
飯守泰次郎さんが進める「ニーベルングの指環」のプロジェクトは自分の中では
この秋の10月4日で終わった

待ち遠しかったこの日
でもスタートがいつもの14時からではなく16時から

おまけにとてつもなく長い
これでは田舎からのお上りさんは、東京に宿泊するしか手はない
翌日は地元で用事ができたので、ホテルで寝るだけで直ぐに帰ることになった

それにしても、長い!
特に第一幕、2時間ほど延々と続く、そのため心配したとおりお尻が痛くなってきた
だが隣の人もいるので自分勝手にゴソゴソできず、正直なところ後半は少しきつかった
音楽は相変わらず雄弁、物語の背景を3人の運命のノルンが話す
人はここで大枠のストーリーを再確認することになるが、スッキリ明確にいかないで
何度も行ったり来たりするところがヴァーグナーらしい
2時間もの音楽と台本を書ききったヴァーグナーの精神のスタミナ(しつこさ)は、
日本人には少し驚きを覚える(やっぱり彼は怪物だ)

一応レコードで予習しようとしたが全部まではいかず、結局本番を楽しむことにしたが
一幕はだいたいストーリーは分かっていた
音楽自体は歌手陣が誰で、どのくらいのクラスの人か情報に疎いので偉そうに言えないが
フト感じたことを言えば、ブリュンヒルデが最初に声を出した瞬間、それまで声を出していた人たちとは
何かが違う(透明度とか訓練の度合いとか)と根拠のない印象をもった

この「神々の黄昏」のヒロインであるブリュンヒルデに対する共感、感情移入は
第2幕はもっとハッキリしたものになる
それはこの役を演じたペトラ・ラングの性格描写の凄さかもしれない
ここで見られるジークフリートとの夫婦喧嘩みたいなものは、一般家庭でもよくありそうな
というか、世間にいそうな女性の怒りみたいで、すごくリアリティがあった
おまけにノートゥングを突き立てて、横で眠るブリュンヒルデには手を出さなかった
というグンターに化けたジークフリート(記憶を失っている)は、最近不倫騒動で
「一線は超えていません」とか「男女の関係はありません」といったスキャンダラスな芸能ネタを
連想させられて、いつの時代も、どこでも似たような事件とモラルに対する要求(貞節)があるものだ
と変なことに納得した

「神々の黄昏」は演奏、パフォーマンスの良し悪しを批評・比較できるほど聴いていないので
実演では音楽を聴いているのか、筋を追っているのかわからないところだが
第3幕でラインの乙女たちが出てきたのは、このニーベルングの指環の一番最初のシーンを
回想させられて、しかも、回想することによって物語の統一感がしっかり出て、
そして物語の主役は「権力をもたらす呪いをかけられた指環」であることがわかった
そして物語の一番最初に登場したもう1人の人物アルベリヒも、今回の演出では最後に
ヨボヨボと登場し、これまた物語に余韻を与えた
(このアルベリヒは結局、どんなことになったか、、自分はよくわからなかったが)

こうした楽劇とかオペラは声が良い、声量があるだけでなく演ずる役の性格を想像させる様な
ニュアンス(演技と歌い方)が必要だが、策士ハーゲン役に佇まいや声の質、
勢いだけで屈託のないジークフリート役の若々しい様は、それぞれの歌い手さんがその道では
評価を受けているのは納得できるものだった
(ハーゲンはアルベルト・ペーゼンドルファー ジークフリートはステファン・グールド)

さてオーケストラの演奏は、、、
特に気になることはなかったから可もなく不可もないというところかもしれないが
大音量だな、、と変な記憶だけが残った
盛り上げるには大音量だが、ちょっと必然性のある流れとかニュアンスとは違うような
(と言ってどこがどうのとはよく分からなくて、ただそう思っただけなのだが)
もう少し踏み込んだ演奏はやりようがあるような気がしたが、それは西欧人と日本人の
元々持っている違いによるものかもしれない

最近「ニーベルングの指環」は日本で多く上演されるようになっているらしい
この物語の権力求めての策略や、それを求めることがもたらす運命、そしてその犠牲者等は
現在の政治の世界のドタバタをまるで暗示するかのようだ
だからこそ、読み直しの演出が幾種類も出てくるのだろう
しかしプロトタイプの神話的要素の「ニーベルングの指環」の方が
想像力を刺激して、面白そう、、、(だが、もう生で指環を見ること聴くことはない、、かな)
 

 

 

 

コメント (1)
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