パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

汗が見られない映画「剣岳」

2009年06月21日 20時57分21秒 | Weblog
いつか登りたいと思っていた剣岳
しかし、持病の腰痛は、重いリュックを背負って
何時間も歩くことを拒否
結局果たせぬ夢になってしまった

ということで登れなかった剣岳の仮想登山体験を求めて
見に行ったのが映画の「剣岳」

だから話の内容よりは、ただただ自然が見られたり
登りのしんどさが感じられればいいと思っていたし
同じように感じた人は隣にもいたようで
上映が始まるまでずっと登山の話を楽しそうにしていた

で映画は?

一番残念だったのが登山の辛さが少しも感じられなかったこと
俳優の人たちの服が汗で全然濡れていなかった
自分が登った時は(穂高や槍など)それこそ汗を絞り出す感じで
眼鏡からも帽子からも縁から顔からの汗が伝わってボトボト落ちた
そしてそれに伴って呼吸も荒くなって
ふうふう、はあはあ言っていたのだが
映画ではその効果音(息づかい)は皆無
代わりにヴィバルディの四季が流れていて
単なるイメージ画像に終始していた

登山の画面になる度にハアハアでは芸がないかもしれないが、
それだけ登山が厳しいモノだということは伝わるだろう

そして汗と顔
辛い登りをした割には汗が服に滲んでいないのは興ざめだ
そして何日も山に居たのだからヒゲも伸びていただろうし
疲労感も何らかの形で現れるだろうに
演技はこざっぱりとした感じに終始
リアリティーが無い

そして自然が厳しいモノとして表現する場合は
猛烈な吹雪、そして風の音を大げさなくらいに扱っていたが
残念なことにその寒さを感じることが全然できなかった
あれだけの風だったら実際は半端じゃない寒さを感じるはずで
そのことに耐えるシーンを映すだけで
厳しい自然をもっと効果的に表現できたのでは?

映画にリアリティー等必要は無く
ただエンターテイメントに徹すればいいのかもしれないが
この、汗もかかない山登り
呼吸も乱れない山登り
顔のむくみの無いような山登りは
正直なところ山登りの大事な点が
抜けているような気がしてならない

もっとも外国の映画でも、
またテレビの登山救援隊絡みのミステリーでも
汗や呼吸の乱れはたいして注目されていない

そういえば完璧主義と言われた黒澤明の「夢」の
雪女でも登山者の歩き方が「やまや」の歩き方ではなく
違和感を持ったことが未だに記憶に残っている

というわけで、話以前にちょっとばかり残念なシーンが多くて
集中できなかったのが本当のところ

ただ宮あおいの奥さんの役は可愛かった(性格的にも)
男だったらあんな奥さんを持ちたい!
と思うだろうが、これもまた男が描いた架空の世界のこと

エンタメかリアリティーか?
上質なエンタメのためにはリアリティは不可欠と思うのだが


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする