DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

夢(100)

2014-04-25 21:46:54 | ButsuButsu


ロマン・ロランの作品に「ジャン・クリストフ」がある。

その中に、以下のような文章がある。

クリストフと叔父のゴットフリートの会話だ。

***

「じゃあお前は偉い人間になりたいんだな」

「そうだよ」

とクリストフは得意げに答えた。

彼はゴットフリートからほめられることと信じていた。

しかしゴットフリートはこう答え返した。

「なんのために?」

クリストフはまごついた。

考えてから言った。

「りっぱな歌をこしらえるためだよ!」

ゴットフリートはまた笑った。

そして言った。

「偉い人になるために歌をこしらえたいんだね。

そして歌をこしらえるために偉い人になりたいんだね。

お前は、尻尾を追っかけてぐるぐる回っている犬みたいだ」

***

この本は、1904年から1912年にかけて書かれた。

何だか身につまされる話だ。

深刻なデフレを解消するために金融緩和を行う。

こうしてダブついたお金で国債を買う。

国債維持のために多額な利子を払う。

結果、国の借金が増える。

返済のために更なる金融緩和を行う。

こうしてお金はぐるぐる回りだし、その価値を下げ始める。

いったいどこでこの輪から抜け出せばよいのだろうか。

ジャン・クリストフではこう続いている。

***

「おまえがもし、ここからコブレンツまでもあるほど偉大な人になったにしろ、たった一つの歌もとうていできやすまい」

クリストフはむっとした。

「もしこしらえたいと思ったら!.....」

「思えば思うほどできないもんだ。

歌をこしらえるには、あのとおりでなけりゃいけない。

お聴きよ.....」

月は、野の向こうに、丸く輝いてのぼっていた。

銀色の靄が、地面に低く、また鏡のような水の上に、漂っていた。

蛙が語り合っていた。

牧場の中には、蝦蟇の鳴く笛の音の旋律が聞こえていた。

コオロギの鋭いトレモロは、星の閃きに答えてるかと思われた。

風は静かに、ハンの木の枝をそよがせていた。

河の上の方から、ウグイスのか弱い歌がおりてきた。

「何を歌う必要があるのか?」

とゴットフリートは長い沈黙の後にほっと息をした。

「お前がどんなものをこしらえようと、あれらの方がいっそう立派に歌ってるじゃないか」

***

自然が作り出すものに解があるというのだろう。

だとすれば農業であり、水産業であり、林業であり、牧畜であり、基本はそこにある。

生産は自然から学ぶべきなのだ。

決して紙の世界ではないことを知るべきだろう。

4月24日(木)のつぶやき

2014-04-25 05:13:41 | 物語