天保2年(1831年)創業の藤居本家の当主、藤居さんは乾杯には日本酒を、というのが口癖だ。
新誉祭には御神酒を宮中に献上している、滋賀県の伝統的な造り酒屋だ。
愛知川の伏流水と地元産の酒造好適米を使い、能登杜氏が技術の枠をつくして酒造りをしているという。
旭日という銘柄の日本酒を、知っている人も多いだろう。
確かに、ビールで乾杯をするよりも、日本酒で乾杯をした方がTPPのお役に立てる気がする。
そう言えば、今夜もTPP交渉は長引いているのだろうか。
お互いに支援者からの圧力があるので、なかなか妥協できないのだろう。
私は、基本的には、TPPに反対だ。
以前は賛成だったが、最近はグローバル化に危機感を持つようになってきた。
一番大きな要因は、市町村合併だった。
これによって大きな市はより大きくなったが、小さな町が消えていった。
まるでブルドーザーで均したように、地方の良さがなくなっていった。
それはそうだろう。
多数を占める地域の意見が通りやすくなることは当然だ。
文部科学省の指導で、学会の再編も加速されている。
伝統はあるが弱小団体である日本陸水学会も、会員数が減少してきている。
生き残りが合併というのも、何だか切ないものがある。
学術大会も、地球惑星連合のような大規模なものに置き換わってきた。
若い時は大きな国際会議をいくつか手がけてきたが、今では小さな手作り会議の方が好みだ。
次々と出てくる回転ずしのような講演ではなく、ゆっくりじっくり話を聞いて議論する方が面白い。
年を取ったということなのだろうか。
それとも原点回帰なのかもしれない。
中国では、乾杯に白酒(ばいちゅう)が出てくる。
コーリャンから作った蒸留酒だ。
度数が高くて、かなり強い酒だ。
久しぶりに、中国で乾杯の嵐にあった。
湖北省は、まだ田舎なのかもしれない。
中国でビールで乾杯した経験はあまりない。
ホテルの部屋でテレビをつけて驚くのは、各省ごとに作られている地方番組の多さだ。
これでもかと思うくらい、地方の省の名前をつけた番組が並ぶ。
中国という国は、日本よりはるかに人間の多様性に富んだ国なのだ。
日本では、いつからビールで乾杯をするようになったのだろうか。
自国の文化や習慣を大切にすることも、大切なことなのかもしれない。