昨夜、アカデミー作品賞を受賞した「クラッシュ」を観る。井筒監督ならずとも失敗作と評するだろう。人種差別にまつわる複数のストーリーをシンクロさせたものだが、テーマを露骨に打ち出しすぎて作りが粗く見える。私見だが、映画におけるテーマとは、表層に現れるものではなくて、通奏低音のように流れるべきものである。ちなみに、この映画は、「”最も俗悪な映画”賞」も受賞している。
閑話休題。さて、法律事務所をいくつか訪問しているうちに、既に始まっている弁護士の二重構造化現象(巨大ローファームといわゆる町弁との二極分解)が、ここ数年でさらに進行するだろうと確信した。だが同時に、それが意味するところも大体理解した(と思う)。
以下は、ある掲示板からの引用(ただし若干修正を加えてある)。
日本の田舎町。小さな法律事務所が開設されていた。
田舎者の町弁が小さな相談室に客をとってきた。その客はなんとも羽振りがいい。
それを見た都会者の旅行者は、
「すばらしい客だね。どれくらいの時間、相談にのっていたの」
と尋ねた。
すると町弁は、
「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。
旅行者が、
「もっと相談に応じていたら、もっと客がきたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、
町弁は、
「自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だ」
と言った。
「それじゃあ、余った時間でいったい何をするの」
と旅行者が聞くと、
町弁は、
「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから相談に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって… ああ、これでもう一日終わりだね」
すると旅行者は、まじめな顔で町弁に向かってこう言った。
「ハーバード・ロー・スクールでLLMを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、相談に応じるべきだ。それで集まった紛争は提訴する。着手金が貯まったら大きな事務所を借りる。そうすると売上高は上がり、儲けも増える。
その儲けでイソ弁を2人、3人と増やしていくんだ。やがて大規模法律事務所ができるまでね。そうしたら同業者に客を譲るのはやめだ。自前の専門事務員を雇って、そこに破産事件をやらせる。
その頃には、きみはこのちっぽけな田舎を出て東京に引っ越し、大阪、名古屋と進出していくだろう。きみは、丸の内のオフィスビルから弁護士法人の指揮をとるんだ」
町弁は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」
「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」
「それからどうなるの」
「それから?・・・そのときは、本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、
「今度は事務所を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、田舎の小さな市街地に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。どうだい。すばらしいだろう」
(つづく)
閑話休題。さて、法律事務所をいくつか訪問しているうちに、既に始まっている弁護士の二重構造化現象(巨大ローファームといわゆる町弁との二極分解)が、ここ数年でさらに進行するだろうと確信した。だが同時に、それが意味するところも大体理解した(と思う)。
以下は、ある掲示板からの引用(ただし若干修正を加えてある)。
日本の田舎町。小さな法律事務所が開設されていた。
田舎者の町弁が小さな相談室に客をとってきた。その客はなんとも羽振りがいい。
それを見た都会者の旅行者は、
「すばらしい客だね。どれくらいの時間、相談にのっていたの」
と尋ねた。
すると町弁は、
「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。
旅行者が、
「もっと相談に応じていたら、もっと客がきたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、
町弁は、
「自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だ」
と言った。
「それじゃあ、余った時間でいったい何をするの」
と旅行者が聞くと、
町弁は、
「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから相談に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって… ああ、これでもう一日終わりだね」
すると旅行者は、まじめな顔で町弁に向かってこう言った。
「ハーバード・ロー・スクールでLLMを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、相談に応じるべきだ。それで集まった紛争は提訴する。着手金が貯まったら大きな事務所を借りる。そうすると売上高は上がり、儲けも増える。
その儲けでイソ弁を2人、3人と増やしていくんだ。やがて大規模法律事務所ができるまでね。そうしたら同業者に客を譲るのはやめだ。自前の専門事務員を雇って、そこに破産事件をやらせる。
その頃には、きみはこのちっぽけな田舎を出て東京に引っ越し、大阪、名古屋と進出していくだろう。きみは、丸の内のオフィスビルから弁護士法人の指揮をとるんだ」
町弁は尋ねた。
「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」
「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」
「それからどうなるの」
「それから?・・・そのときは、本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、
「今度は事務所を売却して、きみは億万長者になるのさ」
「それで?」
「そうしたら引退して、田舎の小さな市街地に住んで、日が高くなるまでゆっくり寝て、日中は釣りをしたり、子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。どうだい。すばらしいだろう」
(つづく)